史学雑誌
Online ISSN : 2424-2616
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126 巻, 4 号
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  • 2017 年 126 巻 4 号 p. cover1-
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー
  • 2017 年 126 巻 4 号 p. cover2-
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー
  • 吉田 満利恵
    2017 年 126 巻 4 号 p. 1-33
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー
    大正二年、司法部刷新のための五法案が成立し、全国で 312 の区裁判所の内 128 の廃止、1510 人の判事及び検事の内 232 人の休職が定められた。また、裁判所構成法に判事の反意転補を可能にする規定が追加された。本 稿の目的は、この司法部大改革を巡る議論を通して、この時代における司法問題の扱われ方とその影響を明らかにすることである。
    判検事の休職法では、本来定員が別に定められ、その身分保障に差のあった判事と検事が同列に扱われ、休職となる判検事の合計数しか規定されなかった。その結果、判事の定員が大幅に削減されたのに対して検事の定員は微減に止まった。また、検事の精選が行われ、定員の減少数を大幅に上回る数の検事が休退職処分となった。
    休職法と裁判所構成法改正案は裁判官の独立を侵害する危険を持っていたが、区裁判所廃止という人民の利害に直接関わる問題に議論が集中したことで、議会での審議は低調のまま終わった。判事の身分保障を脆弱にする危険のある新法律・条項案が提出されても、議会で争点となりやすい他の論点の存在によって、十分に審議されない傾向があった。
    そして、当該法案がほとんど批判のないまま成立したことにより、判事の身分保障を規定する憲法五八条二項の「職」という文言を「官」の意味であると解し、裁判「官」であることさえ免じなければ「職」を免じても良いとする解釈が、大正十年に採用された。
    明治憲法下において司法権の独立が不十分であったのは、裁判所構成法に、裁判所に対する司法省優位の性質があったからだけでなく、行政によって漸次的に法律解釈が変更されたことや 、新法律・条項が追加されたこと、また、それに抵抗する議員や判事、在野法曹が少なくなったことにも要因があるといえる。大正二年司法部大改革は、司法省、議会、そして法曹界自身によって、裁判官の独立の形骸化が促進された事例の一つであった。
  • 「総合国策十ヵ年計画」の策定過程
    髙杉 洋平
    2017 年 126 巻 4 号 p. 34-58
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー
    国策研究会は一九三四年にその前身たる国策研究同志会が設立されて以来、現在まで続く民間の総合的国策研究機関である。戦前、国策研究会は政界・官界の重要人物を多数会員にし、様々な政策研究に従事した。そのなかには、政府の政策決定に大きな影響を与えたものもある。そのため、国策研究会はときに「民間企画院」とも称された。
    国策研究会を語るとき、特に問題とされるのは陸軍との関係である。多くの研究者が、国策研究会と陸軍省軍務局との強い関係を指摘し、国策研究会を陸軍のブレイン・トラストと見做している。しかし実際の政策研究の場で、陸軍の意志がどのように国策研究会の研究に反映され、また陸軍に還元されたのか、具体的にはほとんど明らかになっていない。
    本稿は、国策研究会が関わった諸研究のなかでも「総合国策十ヵ年計画」に着目する。先行研究によれば、同計画は軍務局の直接の依頼によって国策研究会が研究立案し、のちに第二次近衛文麿内閣の「基本国策要綱」の原型となったとされる。すなわち、先行研究は、一民間団体である国策研究会が陸軍ブレイン・トラストとして国家の最高政策立案を事実上担当していたとする。
    本稿は、国策研究会と「総合国策十ヵ年計画」の関係について新たな解釈を提示する。同計画の策定を実際に担当したのは、国策研究会ではなく個人的人脈によって結ばれた陸軍・革新官僚のグループであった。研究の実態は国策研究会内でも徹底的に秘匿され、研究を欺瞞するためのダミー・グループまで形成された。国策研究会は会自体としては従来言われていたほど陸軍ブレイン・トラストとして党派性を帯びた存在ではなかった。そしてそれゆえに、陸軍からは政治利用するに足る存在となっていた。同時に、その政治利用に際しては細心の配慮が必要とされたのである。
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