史学雑誌
Online ISSN : 2424-2616
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128 巻, 4 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 2019 年 128 巻 4 号 p. Cover1-
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/08/26
    ジャーナル フリー
  • 2019 年 128 巻 4 号 p. Cover2-
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/08/26
    ジャーナル フリー
  • 県参事会員登用時の請願書を手がかりに
    岡本 託
    2019 年 128 巻 4 号 p. 1-33
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/08/26
    ジャーナル フリー
    本稿では、アン県およびドローム県をケース・スタディーとして、近代フランスの行政制度が複雑化と拡大化を経験した、第二帝政期の地方幹部候補行政官である県参事会員の登用を分析し、専門職化の実態解明を試みた。
    まず、数値的分析から、第二帝政期県参事会員の性質変化をみてみると、年齢では時代が進むごとに若年化が進み、出身県ではあらゆる地方出身の若者が両県に赴任したことが明らかとなった。また、経歴面では、第二帝政期の県参事会員は短期間に多くの県と公職で職歴を積み、地方幹部候補行政官として養成されていったのである。
    次に、叙述史料の分析から、以下のことが明らかとなった。第一に、請願書における候補者の属性に関する記述は、第二帝政期になると、前任者や父親からの公職継承は衰退することとなり、七月王政期に比べて属性的要素は減少したといえる。第二に、請願書における候補者本人の能力に関する記述は、七月王政期と第二帝政期ともに、性格に関する主観的な評価、教育からもたらされた行政知識に関する評価、そして公職の現場での経験に対する評価という三つの評価基準が中心に記述されていたが、第二帝政期の県参事会員の性質変化により、候補者本人の能力がより詳細に記述されるようになった。また、第二帝政期から、多くの県参事会員登用者が知事官房に関わる職を経験することにより、行政的能力を磨いていった。
    最後に、C・シャルルは、支配的原理としての属性主義の原理がまだ優位であった1830年代から1880年代にかけて、能力主義の原理が徐々に浸透していったとし、その転換点は第三共和政期初頭であると指摘した。この見解を地方幹部候補行政官に当てはめてみると、第三共和政期初頭の転換の準備は第二帝政期に既に整えられていたのである。
  • アヴィニョン大学神学部を中心に
    梶原 洋一
    2019 年 128 巻 4 号 p. 34-58
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/08/26
    ジャーナル フリー
    一三世紀以来ドミニコ会は大学と緊密な関係を保っていたが、一四世紀半ばはその転機となった。従来ごく限られた大学にしか設置されなかった神学部が各地で新設され、ドミニコ会士の学位取得が格段に容易になったためである。結果、適性に欠ける学位保持者や取得を巡る不祥事の増加に直面したドミニコ会は、修道士の学位取得を厳密かつ中央集権的に管理する体制を一五世紀を通じて構築した。本稿ではこうした新しい制度的環境における、ドミニコ会士による学位取得に関わる規範と実践の関係を解明することを試みた。このためアヴィニョン大学神学部に注目し、学位取得のための修道士の大学派遣を記した修道会総会の決議記録や総長の書簡記録簿といったドミニコ会史料と、アヴィニョン大学の会計簿を対照することで、学位取得を目指した修道士たちについてプロソポグラフィ的分析を行った。一五世紀末のアヴィニョン神学部は、北フランスに広がっていたフランス管区出身のドミニコ会士をとりわけ引きつけたが、アヴィニョンでの学位取得を修道会から命じられた修道士の多くが、より格式の高いパリ大学における取得を望み、この任命を辞退した。修道会が指定する派遣先に不満を抱いたとき、修道士たちは上層部と積極的に交渉し、より有利な任命を引き出そうとした。フランス管区の修道士たちにとってアヴィニョンでの学位取得は、必要な課業について大幅な免除が受けられるという意味において安易である反面、パリでの取得と比べれば魅力に欠けていた。しかし反対に、アヴィニョン修道院を包摂するプロヴァンス管区のドミニコ会士たちにとっては、重要な出世コースとして機能し、修業の期間も長期化した。地方大学が代表するこうした多面的な役割、修道会や地域の情勢に応じ揺れ動く一つの神学部に対する評価は、中世末期の社会ヒエラルキーの中に大学学位が深く埋め込まれていた証左である。
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