史学雑誌
Online ISSN : 2424-2616
Print ISSN : 0018-2478
ISSN-L : 0018-2478
129 巻, 12 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 2020 年 129 巻 12 号 p. Cover1-
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/16
    ジャーナル フリー
  • 2020 年 129 巻 12 号 p. Cover2-
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/16
    ジャーナル フリー
  • 〈広域地方結合〉の成立を中心に
    出水 清之助
    2020 年 129 巻 12 号 p. 1-38
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー
    本稿は、西日本の政党の動向と、懇親会という運動形態に注目することで、民権運動の停滞期(明治一六~一八年)に特有の運動の論理と展開について解明しようとするものである。
    明治一七年の関西懇親会は、自由党と立憲政党の主導のもと準備・開催された。同懇親会は、大同団結が強調され、関西を中心に多数の地域から参加者を得たほか、四大政党の関係者が一堂に会するなど盛況を極めた。党派と地域を問わず、広く同主義の人々を糾合し、持続的に懇親を重ねることで、緩やかな連帯の成立を目指した点に同懇親会の特質があった。こうした特質をもつ懇親会は、集会条例改正後の「隔地割拠」(中央―地方関係の疎遠化)と、偽党撲滅運動後の党派対立の激化という、当該期の政党運動が抱えていた課題を克服する可能性を有するものであった。
    以上のような特質を帯びた懇親会は、人々が集まって親交を深めるような単なる懇親会ではなく、規約・主義に基づいた、組織性のある一種の政治団体的性格を持つものであった。関西懇親会を主導した立憲政党は、この政治団体的な性格を有する懇親会を、党名簿や党規則を伴う有形政党ではない、同主義者の結合である「無形結合」として捉えていた。この時期、立憲政党や、同党と気脈を通じる有志は、東北・関西・九州といった一定の地域を単位とする懇親会形態の「無形結合」(=〈広域地方結合〉)を日本各地に創出しつつ、最終的にそれらを結びつけて〈全国的大同団結〉を図ろうとする長期的な構想を有していた。関西懇親会もそうした長期的な「無形結合」路線の一環として位置づけられていたのである。
    以上のように、民権政党の停滞期には、懇親会が政党運動の重要な形態として浮上した。こうした漸進的に懇親を重ねるという運動形態は、この時期に発生した激化事件とは異なる論理を有し、社会から一定の支持を集めていた。当該期は政党運動が停滞したと評価されてきたが、こうした大同団結運動につながる可能性をもつ、この時期固有の運動が展開していたのである。
  • 北海道移民とブラジル移民をめぐって
    井上 将文
    2020 年 129 巻 12 号 p. 39-62
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は、一九三二年~一九三四年に北海道庁(以下、道庁と略記する)が北海道を対象として推進した農業移民政策の検討を通じて、二つの移民政策の受け手側に立つ農家自身の主体性の一側面を抽出する。本稿では、北海道第二期拓殖計画(第二期拓計)下の農業移民政策(民有未墾地開発事業)とブラジル移民政策が、競合関係にあったことを論じた。一九三二年の拓務省による支度金交付は、凶作・水害下の道内農家に対して、ブラジルへの移動という選択肢を与えるものであった。北海道における一九三二年~一九三四年のブラジル移民の増加は、拓務省が提示した選択肢を選んだ農家が少なからず存在していたことを示す。生活維持が困難な農家の立場からすると、一定程度の資本が必要となる民有未墾地開発事業よりも無資本でも受給できる支度金は、利用しやすい政策であったといえよう。ただし、農家の移動・定着を決定づけたものは、道庁・拓務省といった政策主体側の意向ではなく、結局のところは、政策の受け手側に立つ農家自身の意思であった。この点を端的に示しているのが、名寄町(上川支庁管内)の事例である。一九三二年九月、名寄町では支度金の周知徹底を目的とした宣伝事業が行われたが、同月以降に同町から移民した農家は、皆無であった。一方、凶作・水害下の北海道において、道庁が推進する民有未墾地開発事業を利用して道内に定着しようとする農家もまた、限定的であった。本稿では、農家が移住・定着する要因として、移民個々の自由意思が重要な意味を持つと結論付けたい。
feedback
Top