史学雑誌
Online ISSN : 2424-2616
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130 巻, 2 号
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  • 2021 年 130 巻 2 号 p. Cover1-
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/16
    ジャーナル フリー
  • 2021 年 130 巻 2 号 p. Cover2-
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/16
    ジャーナル フリー
  • 明治一六年海軍軍拡以前を中心に
    賀 申杰
    2021 年 130 巻 2 号 p. 1-36
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/20
    ジャーナル フリー
    これまで、明治期の横須賀造船所の事業状況に関する研究は主に焦点を国内の軍需と民需の両面にあてて論じているが、本稿は外国船の修理という視点を導入し、明治一六年の海軍軍拡の開始まで、船舶の修理事業に重点を置いた横須賀造船所の事業状況、とりわけ外国船修理の受入れに対する造船所・海軍省の態度ついて検討を試みました。
    この時期、部外船の修理の受入れに対する海軍の態度に関する考察として金子栄一・小林宗三郎、室山義正らの研究があげられる。これらの研究は修理船の外需の排除を海軍の方針として理解し、その上で、ヴェルニーの解雇の原因として外国船修理に関する彼の方針への海軍の反発があったと理解している。さらに、ヴェルニーが解雇されて以降も、造船所が依然として広く外国船の修理に従事したことについてそれを海軍の意図に反するやむを得ない選択として理解している。
    しかし、前掲の各研究は史料的制約に規定され、その説は充分な実証に支えられているとは言いがたい面も多い。実際当時海軍・外務両省の公文を分析すると、当時両省はむしろ外国船修理の受入れに歓迎していた。
    以上の研究を踏まえ、本稿は従来では史料的な裏付けが弱かった横須賀造船所における外国船修理状況に注目し、外国船の修理申請に関する規則の制定過程を明らかし、その上で、外国船修理の受入れに対する海軍・外務両省の態度を再検討したい。よって、第一章ではフランス人主導時代の横須賀造船所における外国船修理の受入れ状況を分析し、当時造船所の経営上に存在した問題を究明する。そして第二章では、ヴェルニーの解雇前後における外国船修理の申請手続きに関する規則の制定・改正の過程に注目し、規則の制定をめぐる海軍の意図を明らかにしようとする。最後の第三章では、ヴェルニーの解雇後の明治一〇年代前半における外国船修理の事業状況を分析し、外国船修理の受入れに対する海軍の態度を分析する。
  • 中近世ドイツ犯罪史研究における動向から
    齋藤 敬之
    2021 年 130 巻 2 号 p. 37-57
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/20
    ジャーナル フリー
    1990年代初頭からドイツ歴史学の中で活況を見せる歴史犯罪研究は、中近世における傷害や殺人などの暴力をはじめとする犯罪の社会史を論じている。その系譜は、ドイツ社会史研究の盛り上がりや、人類学にも接近した「新しい文化史」の台頭といった、1970年代以降の歴史学の趨勢に位置づけられる。G・シュヴェアホフやM・ディンゲス、J・アイバッハといった研究者は、犯罪社会学の概念やP・ブルデューの名誉や男性性に関する見方を積極的に摂取することで、N・エリアスの文明化論でしばしばネガティヴに描写されてきた前近代の暴力を文化史的に捉え直した。すなわち、とくに男性間での名誉をめぐる揉め事に、中傷や挑発の言動に端を発して最終的に身体的な実力行使に至るというエスカレートの規則性や儀礼化を見出すことで、感情や攻撃欲の無制限の発露、非文明的な行為としての暴力像を退けた。こうした理解はその後の研究に受け継がれつつも、P・シュスターやP・ヴェットマン=ユングブルートらは暴力と名誉の関係をより緩やかに捉えており、さらに近世の決闘の諸相を検討したU・ルートヴィヒや19-20世紀ベルンにおける暴力犯罪を分析したM・コティエーは男性の名誉と結びついた暴力を一種のゲーム、つまり自己目的化したコミュニケーション形態と理解することで、暴力の感情的次元を改めて視野に収めている。
    本稿での整理から導かれる今後の課題として、18世紀フランクフルトの犯罪を分析したアイバッハの研究を決闘研究や感情史研究と接続させ、19世紀まで射程に入れて暴力の形態や行動様式、認識の変化をたどるとともに、名誉を守る必要性と暴力による負傷や命の危険との間に葛藤を抱いていたのかといった点を問うことが有意義である。このような暴力の社会的位置づけの検討を通じて、「端境期(ザッテルツァイト)」と呼ばれる18世紀から19世紀の時代的特質の解明にも貢献できると思われる。
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