史学雑誌
Online ISSN : 2424-2616
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131 巻, 6 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 2022 年 131 巻 6 号 p. Cover1-
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/27
    ジャーナル フリー
  • 2022 年 131 巻 6 号 p. Cover2-
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/27
    ジャーナル フリー
  • フランス第三共和政前期(一八七〇―一九一四年)のブーシュ=デュ=ローヌ県を中心に
    谷口 良生
    2022 年 131 巻 6 号 p. 1-34
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー
    近現代フランス議会のひとつの「伝統」に議員職の兼任がある。このようにフランス近現代の議会政治の大きな特質をなす議員職の兼任は、しかし、これまで十分な歴史研究の対象となってこなかった。また、数少ないこれまでの研究も全国的な「上から」の俯瞰で兼任をとらえ、それゆえの課題を残している。これに対して本稿は、兼任が本格化・定着する第三共和政期のブーシュ=デュ=ローヌ県を舞台に、議員たちが複数の議員職を兼ねることになった際の行動を分析し、複数の議会での兼任議員の活動に着目する。こうしたローカルな「下から」の視点を導入することで、兼任の実践のあり方と議会政治における兼任の意味も明らかになると考える。
     兼任という状況が発生する瞬間に目を向けると、その決定は議員や候補者と後援会や有権者たちとの関係のなかでなされていたことがわかる。また、兼任議員たちは、単に同時に複数の議会に在籍していただけでなく、政治的意図の実現のために複数の議会の政治的構成の差異を利用していた。「下から」兼任の実践をとらえると、「上から」の俯瞰では明らかにされてこなかった兼任の複雑な姿が浮かびあがってくる。
     以上が本稿の結論であるが、この知見をより大きな文脈に位置づけなければならない。上記の結論からは、兼任をめぐって、選挙における各主体が、ローカルな関係性のなかで、複数の議会での政治状況に共時的に目配りをしなければならなかったことがわかる。つまり、彼らにとって各議会は、ある程度自律しつつ、ひとつの政治的世界のなかでとらえられていた。また、兼任議員たちが同時に複数の議会を政治的に利用していたように、議員職の兼任とは、複数の議会を政治的実践が展開されるひとつの政治的「舞台」としてつなぎあわせてもいた。「議会政治」における兼任の役割とは、こうした認識上そして実践上での「議会政治」の空間の創造であったといえる。
  • 『国策』樹立による『挙国一致』から戦時体制への民智総動員へ
    茶谷 翔
    2022 年 131 巻 6 号 p. 35-59
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー
    本稿は、日中戦争勃発の前後に当たる一九三六年末から一九三八年における国策研究会と大蔵公望の動向について、主に同会の会誌や大蔵日記を元に検討し、以下のことを明らかにした。
    国研について、第一に、国研の積極的な政治協力が見られるのは第一次近衛内閣期からであり、第二に、それが戦時政策・「革新」政策への民間の意向を把握し政策の実現や妥協を円滑に進めるための役割を担ったこと(「民智総動員」)、第三に、一方で前身の国策研究同志会から唱えられていた指導精神としての「国策」樹立には成功しなかったことである。
    大蔵について、大蔵は個人の動向としても国研の掲げる「国策」研究を通じた「挙国一致」実現の方針に忠実であり、特定の政治勢力に与しない中立的傾向を持ち、関係各方面からの意見聴取や国研での集団的検討を元にした政策立案・提供に専念していた。反面、政局への関心や情報把握は弱く、通説的には宇垣側近とも見なされるものの、宇垣をめぐる政局への関与も政策提供以外にはほとんど確認できない。
    以上の実証的成果を踏まえ本稿では、当該期の国研が官僚出身者や利害関係者(例えば統制経済下の財界人)など〝実務家層〟を中心とした、戦時政策の立案・遂行を円滑化する「官民一致」の調整機関としての機能を獲得したと評価した。国研の「挙国一致」的志向や中立性については、従来筆者や高杉洋平氏の研究により指摘されていたが、これにより、その性格が戦時体制の開始時期においていかなる役割を得たかが明らかになった。
    また、これを元に、総力戦体制における統制政策や国家総動員の立案・遂行過程、あるいは近年再評価されつつある戦時議会が持った重要性の軽重について、国研が有用な検討対象となり得ることを展望として示した。
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