史学雑誌
Online ISSN : 2424-2616
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134 巻, 3 号
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  • 2025 年134 巻3 号 p. Cover1-
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/25
    ジャーナル フリー
  • 2025 年134 巻3 号 p. cover2-
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/25
    ジャーナル フリー
  • 近代中国における海洋領有認識の形成
    佐藤 良聖
    2025 年134 巻3 号 p. 1-37
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/03/20
    ジャーナル フリー
    19世紀末から20世紀初頭にかけて、国際法やシーパワーといった、海洋世界との関わり方についての議論や概念が流入することで、中国は海洋を領有するという行為について独自の認識を形成した。本稿は、近代中国における海洋領有認識が、領海と海権という2つの概念の組み合わせから作り出される過程を考察した。
     中国は1865年の『万国公法』によって海洋領有の論理を学習し、その結果形成される領域の呼び名として領海という単語を20世紀初頭に獲得した。また中国は、シーパワーの和製漢語である海権を、包括的かつ排他的な海洋管轄を可能とする、ある国家が他国の干渉を排除しながら海に及ぼす力として理解した。張謇や周馥といった清末の実業家・政治家たちは、漁業を題材に領海と海権を組み合わせることで、海洋領有認識の素形を作り出した。陳紹寛や許継祥といった中華民国の海軍軍人は、清末官僚と共通した論理の上に包括的な海洋支配の構想を作り上げたが、他方同時代の国際状況による制約も受けた。
     近代中国にとっての海洋領有とは、海上を移動する主体によって領海を成立させ、領海に立脚して海権を展開し、それを根拠に主体の移動範囲を再設定する、という形で絶えず繰り返される運動である。海洋領有の結果出現する海洋領域もまた、絶えずその範囲を再設定されるような存在として認識されている。中国にとっての海洋領域は、主体の行動に依存して流動的に変動する、国家の力と法制度の結合体であると言える。
     見落としてはならないのは、本稿で取り上げた論者は、いずれも国家の防衛をその目的として海洋領有を唱えたという点である。しかし、中華民国海軍軍人たちの言説から見出されるように、近代中国は領海範囲の拡張や他国の圧迫を選択する可能性もあった。ここには、国家の防衛を目的に積極策を構想するという、中国の対外的姿勢を読み取ることができる。
  • 比企 貴之
    2025 年134 巻3 号 p. 42-68
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/03/20
    ジャーナル フリー
    伊勢神宮の古代から中世への変容についての到達点的理解は、11世紀を通じた土地所有制度や神宮組織の変化の結果、祭祀組織の頂点に祭主が位置する体系が形成されるというものである。ところで、命令下達の文書はその発給主体の所持した権力が如何なるものかを直接的に示す素材であり、またそれが具備されていく過程は組織機構の変容に直結する重要な問題であるはずである。しかしながら、これまでの伊勢神宮の古代・中世移行期に関する研究では、11世紀半ばに祭主下文や宮司庁宣など、それまでみられなかった文書が登場することの意味の解明は進まず、その時代移行論上への位置付けもなされないままであった。
    そこで本稿では、古代以来の宮司符や宮司庁宣・祭主下文の基礎的考察に取り組み、11世紀中葉に祭主や宮司らの下達文書に変化が生じた背景に存在した、当該期の祭主・宮司をめぐる歴史的状況を構造的に捉えることを試みた。結論としては、11世紀半ばの祭主・宮司の下達文書の変化は、当時の祭主永輔が伊勢神宮支配への進出を志向するなかで、古代的な影響力行使の方途を脱却し、宮司権限の簒奪を進めるとともに祭祀組織体系上にみずからを定位していく過程で下文が駆使され、一方の宮司庁宣は他方において符の発給不能に追い込まれた宮司が命令・伝達の意思を示そうとするなかから立ち現れた文書であると考えた。さらに祭主永輔が伊勢神宮へその影響を及ぼすことができた要因には、彼が当時の朝廷の中枢部(源師房)と人的な繋がりを有していたことがあり、その庇護によって彼の立場は保たれ、伊勢神宮支配への進出を強力に推し進めることができたのだと考えた。
    今後は、微視的には祠官・職掌人の動きも含めた総合的な伊勢神宮の時代移行期論を提示すること、そして巨視的には政権中央との特殊なコネクションのもと諸権門が権益を拡大させる現象を同時代史のなかで位置付けていくことなどが課題である。
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