この論文は, アルミナとカリに富む珪酸塩原料(K
2O: 17-21wt.%, AL
2O
3: 22-24wt.%)として資源的価値が期待されるシニーライトという岩石について述べたものである. シニーライトの主要な分布は, シベリア, 特にバイカル-アムール鉄道に沿った地域に集中している. シニーライトを構成する鉱物とその堆積比はカリ長石(66-75%), カルシライト(15-25%), 霞石(10%程度まで)とフェミック鉱物(黒雲母, 時にざくろ石と輝石で1-5%)である. カルシライト, カリ長石は最もカリ含有量に富み, ネフェリン中のカルシライト成分は25-35mol%, 雲母はマグネシウム(100MgO/MgO+FeO25mol.%以上)に富みチタンに乏しい. ざくろ石は低アルミナ黒ざくろ石, 輝石は透輝石-灰鉄輝石-エジリン輝石系である.
大規模なシニーライト深成岩体は, バイカルースタノボイ地溝帯において古い固化した地殻の構造運動とアルカリ玄武岩マグマ活動に伴い生じたもので, 時代的には古生代から中生代に及んでいる. 深成岩体は大規模層状で, 雲母輝岩, ションキナイトプラスカイトからなる優黒色-中色の下部岩体と, 霞石偽白りゅう石閃長石, シニーライトからなる優白色の上部岩体からなっている.
両者は異なる分化系列の産物である. シニーライトは, 主に層状深成岩体の頂部や上部に濃集している. 底部から上部に向かいK
2O, AL
2O
3, SiO
2量は増加し, フェミック成分は現象する. 含シニーライト岩体は, 地下のかなり深部においてアルカリ玄武岩メルトのゆっくりした結晶分化作用により生じたもので, マグマ溜内部での分化作用, 結晶化作用を広範囲にわたり良く追跡できる. シニーライトは, 白りゅう石がマグマ溜頂部に濃集したのち, カルシライトやカリ長石に変化した結果生じたものと思われる.
シニーライトの利用法および加工法としては, 以下のようなものが考えられる. (1)シニーライトから機械的に鉱石鉱物・アパタイトを取りだし, 長期間保存可能な無塩素, 低濃度カリ肥料として利用する. (2)カリ長石, カルシライト濃集体は低鉄濃度であり, シニーライトの機械的濃集, 浮遊あるいは酸分解などによりカリ明礬を得ることができる. (3)シニーライトに様々な化学的処理を加えることにより, 全く不要物を出さずに高純度の無塩素カリ肥料, アルミナ, 微粉シリカなどを得ることができる.
抄録全体を表示