1.資源ナショナリズムの抬頭など世界の政治, 経済の変化により, 国際資源企業が中心になって, 資源開発のリスクをプールして, 成功した開発事業の利益で他の国での失敗したリスクの費用を補填することは不可能になった。
2.この打開策の1つとして国連天然資源探査回転基金などもリスクの別のプールの方法として活動を開始したが, 多くの発展途上国で必ずしも本心から受け入れられていない。
3.世界的視野で資源の安定供給を維持するためには, 確認埋蔵量と生産能力の維持, 平和と自由貿易が重要で, 長期契約などは二義的なものである。
4.国際資源企業でも, 国連回転基金などでも, リスクをプールして確認埋蔵量を増加させることが困難であり, 別のシステムを探査リスクのプールに導入する必要がある。
5.発展途上国援助の増額が要請されている我が国の場合, 輸入資源の利用で得た利益からの税収の一部を, 次世代の資源の確保のために, 発展途上国援助として, 開発にリサイクルするのが最も実現しやすい方法である。
6.上記の援助は相当な規模で行なわれるべきであり, その援助の実施主体, 成功の場合の開発の実施企業, 生産品の処分方法などについて, 探査, 企業化調査など援助の時点で条件をつけるべきでない。
7.先進資源保有工業国の企業人は天然資源産業に対する政府の関与に反対しているが, 発展途上国の探査事業に, 先進諸国の政府の関与は不可欠である。などとなろう。
日本鉱業会が, 資源・素材学会と名前を変えて, 装いも新たに出発をする時, 我々資源産業人も少し, 物の考え方を変え, 長期的, 地球的視野に立って, 資源政治学や, 資源経済学について勉強をして行く必要があると思う。本稿では筆者が常に考えていた新しい探査リスクのプール方法についての考え方を述べて見た。関係各位のご批判を賜れば幸いである。
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