日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
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50 巻 , 2 号
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原著
  • 衣笠 裕紀, 森 真理, 小林 孝雄, 塚越 慎, 斎藤 隆史, 中島 啓介, 古市 保志
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 2 号 p. 117-125
    発行日: 2007/04/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    感染根管治療期間中での急性発作発現は,患者にも術者にも予期せぬ出来事であり,患者との信頼関係に影響を与えてしまうこともある.北海道医療大学附属病院に所属する171名の歯科医師を対象とし,2004年2月に根管治療中に関するアンケート調査を行った.回収率は64.3%であり,回答者の平均臨床経験年数は7.9年であった.今回は感染根管治療と治療期間中での急性発作発現に着目し,それらについての6個の質問の集計結果について報告する.集められた回答を,臨床経験年数により,(A)1年未満,(B)1〜4年,(C)5〜9年,(D)10年以上の4グループに分類し,X^2検定にて群間の比較を行った.多くのものが感染根管治療期間中での急性発作発現を経験しており,A群では71.4%であった.また,B群は29.0%,C群は13.6%,D群は13.8%であった.A,B,C,D群でそれぞれ感染根管治療全体に占める急性症状発現の経験頻度は,14.4,8.0,8.9,7.2%との回答が得られた.多くのものが,下顎第一大臼歯が最も急性発作を経験しやすいと回答した.約50%のものから,急性症状発現は根尖周囲組織の機械的刺激が原因と考えられると回答していた.本研究結果より,根管治療の基本的な注意事項を守り,適切な処置を行うことが感染根管治療における急性発作発現の予防策の一つとなりうることが示唆された.
  • 山田 敦子, 高畑 安光, 吉光 景子, 田中 久美子, 野本 正盛, 田代 陽子, 大前 正範, 山路 公造, 神農 泰生, 土居 潤一, ...
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 2 号 p. 126-132
    発行日: 2007/04/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,ワンボトルワンステップ接着剤であるClearfil tri-S BondとG-Bondの採取後の放置時聞が,エナメル質および象牙質への接着に及ぼす影響について検討することである.ヒト抜去大臼歯のエナメル質または象牙質平坦面を,#600のシリコンカーバイドペーパーで研磨して被着面を得た.被着面には,恒温恒湿下で採取してから0,5,10,30分間遮光しておいた接着剤を用いて業者指示に従い歯面処理を行い,コンポジットレジンを築盛・硬化させた.試料体は,37℃水中に24時間保管後,連続切片を作製してマイクロテンサイル試験法で微小引張接着強さを測定した.接着強さの値の比較にはone-way ANOVAとDunnett testを用いて有意水準5%で統計処理を行った.採取してから30分後までの接着剤の重量変化についても測定した.放置時間の比較では,エナメル質の0分後と30分後との間に有意差が認められ,Clearfil tri-S Bondでは30分後に有意に高い接着強さを示し,G-Bondでは30分後には有意に低い接着強さであった(p<0.05).一方,象牙質では有意差が認められなかった.Clearfil tri-S BondとG-Bondの重量は放置時間とともに減少し,30分後にはClearfil tri-S Bondが82.7%,G-Bondが52.0%まで減少した.以上の結果から,ワンボトルワンステップ接着剤採取後の長時間の放置は,接着剤の溶媒の蒸発によってエナメル質に対する接着強さに影響を与える可能性が示唆された.
  • 角田 晃, 鴨井 美子, 小泉 忠彦, 原 めぐみ, 寺中 敏夫
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 2 号 p. 133-139
    発行日: 2007/04/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は,神奈川歯科大学附属横浜研修センター横浜クリニックにおける,歯内治療にかかわる紹介患者について調査,分析することである.調査対象は,2002年7月から2005年8月までに,神歯大横浜クリニック成人歯科に外部の歯科医院や病院などから紹介された歯内治療にかかわる紹介状を有する症例とした.症例については,紹介状における依頼内容ならびに神歯大横浜クリニックでの診療録記載内容から,診断,処置内容および経過を調査,分析した.その結果,以下のことがわかった.1.最も依頼の多かった歯種は,上下顎ともに大臼歯であった.2.依頼内容で最も多かった診断名は根尖性歯周炎であった.しかしながら,神歯大横浜クリニックにおいて根尖性歯周炎と診断を下した歯のうち,約30%に紹介元施設の診断と差異がみられた.3.さらに,神歯大横浜クリニックにおいて歯根破折と診断した歯で,紹介元においてその疑いを示唆したものは23%であった.4.経過観察まで確認可能な根尖性歯周炎と診断された歯において,通常の感染根管治療・外科的歯内療法を施して経過良好もしくはおおむね良好と判断されたのは約78%であった.残余は,抜歯もしくは明らかに保存不可能と診断されたものが約18%,経過不良例が約4%であった.また,通常の感染根管治療だけで対応した歯に限れば,約85%が「経過良好」もしくは「おおむね良好」と判断された.紹介元において問題の解決にいたらなかった理由として,人工的穿孔や歯根破折の存在が認識されず,原因の追究が困難であったこと,そして確実な歯内治療が行われていなかったことが考えられた.われわれが経験した症例の半数は,診断・治療において歯科用CTや実体顕微鏡を使用しており,迅速な診断や効率の高い診療を求めるうえで,これらの機器による視覚的情報量の増加が重要な役割を担っていたと認識している.以上の結果から,適切な診断の下に確実な歯内治療を行うことにより,適切な歯の保存の可否の判断や成功率の向上を望むことも不可能ではないと考えられる.
  • 鈴木 英明, 小西 美徳, 木村 大, 森 俊幸, 鈴木 昌弘, 池見 宅司
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 2 号 p. 140-145
    発行日: 2007/04/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    齲蝕は口腔常在菌により引き起こされる内因疾患であり,誘発する主要原因菌としてStreptococcus属菌が優勢であるということが明らかにされている.近年,多くの研究者により種々の抗菌剤を用いた齲蝕予防の研究が報告されてきた.われわれは日本古来より生薬として用いられてきた柿蔕(Diospyros Kaki Thunb.)に着目した.本研究の目的はこの抽出成分が齲蝕抑制効果を発揮できるかどうかを調べることである.検討の結果,以下の知見が得られた.1.無菌ラット齲蝕実験における抗齲蝕作用で,0.05% Ursolic acidならびに0.05% Oleanolic acidを飼料に添加し飼育した群はコントロール群に比較して有意に低い齲蝕スコアを示した.2.柿蔕抽出成分はStreptococcus mutans PS-14株産生粗GTaseによるショ糖からの非水溶性グルカンを顕著に阻害した.以上のことより,ラット齲蝕実験において柿蔕抽出成分は抗齲蝕作用を有することが示唆された.
  • 島袋 善夫, 植田 真紀, 寺島 祥充, 寺倉 まみ, 橋川 智子, 山田 聡, 寺嶋 宏曜, 市川 朋生, 村上 伸也
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 2 号 p. 146-161
    発行日: 2007/04/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    ヒト歯髄細胞による,グリコサミノグリカンであるヒアルロン酸およびヘパラン硫酸産生に及ぼすFGF-2の影響について検討を行った.矯正による便宜抜去の歯から歯髄を除去し,10%FCSを含むα-MEMにて継代を行い歯髄細胞として実験に供した.Alkaline phosphatase(ALPase)活性はBesseyらの方法に準じて測定し,硬組織形成能はDahlらの方法に準じて解析した.ヒアルロン酸およびヘパラン硫酸量はそれぞれ,ヒアルロン酸結合タンパクを応用した競合法あるいはエライザ法を用いて測定した.各種細胞外基質発現,ヒアルロン酸合成酵素,およびヘパラン硫酸合成関連酵素のmRNA発現はRT-PCR法を用いて解析した.ヒト歯髄細胞は4種のFGF受容体を発現していた.FGF-2は10mmol/lβ-グリセロリン酸と50μg/ml L-アスコルビン酸を加えた石灰化培地にて,長期培養時に上昇するALPase活性および石灰化ノジュール形成を可逆的に抑制した.FGF-2はヒト歯髄細胞によるI型コラーゲン,DMP-1,およびDSPP mRNA発現を抑制した.一方,ヒト歯根膜細胞に対しては,I型コラーゲン発現とPLAP-1の発現を抑制した.III型コラーゲンに対しては両細胞とも変化がなかった.ヒト歯髄細胞はFGF-2刺激を受けてもヘパラン硫酸産生は変化しなかったのに対し,一方,ヒト歯根膜細胞はFGF-2刺激を受けてヘパラン硫酸産生量が増加した.また,ヘパラン硫酸合成関連酵素は両細胞ともFGF-2刺激を受けても変化しなかった.ヒアルロン酸の産生に関しては,ヒト歯髄細胞およびヒト歯根膜細胞ともにFGF-2刺激を受けて,ヒアルロン酸の産生亢進とHAS1およびHAS2 mRNA発現の亢進が認められた.以上のことより,FGF-2はヒト歯髄細胞のプロテオグリカン産生を調節しており,歯根膜細胞のそれとは異なっていることが示唆された.
  • 西山 貴洋, 樋口 繁仁, 遠藤 達雄, 笹崎 弘巳, 小松 正志
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 2 号 p. 162-173
    発行日: 2007/04/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    現在,審美修復に対する関心は高く,審美的要求は臼歯にまで及ぶ場合が多くなってきている.臼歯部の審美修復材としての陶材は,審美性,耐変色性,耐摩耗性,生体親和性といった観点から,大いに推奨される材料である.セラミックスインレーは,陶材のみで構成され,陶材の利点がそのまま生かされた修復法であるが,引張り力,衝撃力に対して弱いため壊れやすいとされている.そこで本研究では,貴金属薄膜をコーピングして,焼成法,鋳接法で製作したセラミックスの接合界面を観察し,機械的強度を測定するとともに,同様の方法にて製作したセラミックスインレーの適合状態を測定し,貴金属薄膜コーピング材の効果について検討した.実験に使用したコーピング材はCaptek™(以下,Captek)である.焼成用陶材にはVintage Halo®(以下,Vintage Halo),鋳接用陶材にはIPS Empress I®(以下,IPS Empress I)を用いた.物性試験は曲げ強度,破壊靭性値を測定した.コーピング材とセラミックスの接合界面の観察はSEMにて行った.また,MODセラミックスインレー窩洞形成模型を用いて,IPS Empress I単体とCaptek/IPS Empress I複合体について,適合性を検討した.曲げ強度(MPa)はIPS Empress I単体は151.4±5.7,複合体は200.0±4.5であった.Vintage Halo単体は82.9±3.0,複合体は149.6±13.0であった.IPS Empress I,Vintage Haloとも複合体は,単体の曲げ強さより有意に高かった(p<0.05).破壊靭性値(MNm-3/2)では,IPS Empress Iにおいて,複合体(1.57±0.06)は単体(1.39±0.05)より有意に高い値を示した(p<0.05).一方,Vintage Haloでは,複合体(0.90±0.08)は,単体(1.14±0.12)より有意に低い値を示した(p<0.05).SEMによる接合界面観察では,両複合体とも良好な接合が観察された.コーピングを用いると,IPS Empress Iの物性は向上した.一方,Vintage Haloではコーピングを用いると破壊靭性値が低下した.これは,Vintage HaloとCaptekの熱膨張係数差により,応力発生後,微小な亀裂が生じたためと考えられる.適合精度はCaptekを使用すると,IPS Empress I単体と比較してすべての箇所でセメント層の厚みが大きくなり,特に側壁,窩底においては有意差が認められた.これは,コーピング作製時におけるCaptekの耐火模型材からのはがれや変形が原因と考えられる.以上より,本焼結金属システムCaptekを応用する場合,適切な陶材を選択することが,コーピング効果を得るためには重要である.また,インレー窩洞に応用する場合には,Captek自体の変形,浮き上がりに対して,今後さらなる検討が必要と考えられる.
  • 岡田 英俊, 石田 喜紀, 龍方 一朗, 長山 克也
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 2 号 p. 174-186
    発行日: 2007/04/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    この研究の目的はボンディング材の保管および操作条件がエナメル質の接着強さに及ぼす影響を検討することである.実験に用いたボンディング材は1ステップ型を2種類(以下,GB,AB),2ステップ型(セルフェッチング+アドヒーシブ)を1種類(MB),3ステップ型を1種類(MP)用いた.被着体は牛歯エナメルとフロアブルタイプのコンポジットレジンを用いた.ボンディングシステムの保管温度は室温条件(23℃)および冷蔵条件(4℃)とした.さらには冷蔵で保管し,使用8時間前に室温へ戻した条件も追加した(4℃⇔23℃).保管期間は1,30,60,90,180日とした.また,1ステップ型についてはディッシュ採取0,1,2分後にボンディング操作を行った条件でも実験を行った.接着試料は24時間水中浸漬後,剪断接着試験を行った.その結果,以下の結論が得られた.1.GBとMBを室温で保管した場合,1,30日と比較して90,180日で接着強さの値が有意に小さかった.2.ABとMPを室温で保管した場合,1,30日および60日と比較して90,180日で接着強さの値が有意に小さかった.3.GB,MBおよびMPを冷蔵,あるいは冷室で保管した場合,1日と比較して180日で接着強さの値が有意に小さかった.4.ABを冷蔵,あるいは冷室で保管した場合,1日と比較して90,180日で接着強さの値が有意に小さかった.5.GB,ABにおいてはすべての保管期間,保管温度条件で,ディッシュ採取後の操作時間が0,1,2分の各条仲間で接着強さの値に有意差は認められなかった.
  • 中島 伸之, 遠藤 達雄, 小松 正志
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 2 号 p. 187-197
    発行日: 2007/04/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    印象採得を行うにあたって,印象材をいつ撤去したらよいかは,変形の少ない,精密な印象を採得するうえで,また診療時間の短縮という面からも非常に重要な問題である.これまでは,印象材を患者口腔内に圧接後,メーカー指示の時間が経過したこと,あるいは術者の指などによる印象材の硬度の触診等により,印象材硬化の確認を行った後,口腔内より撤去しており,明確な指標となりうるものが存在していない.そこで本実験では,工業界において金属や岩石の物性評価に使用されている硬さ試験器「エコーチッブ硬さ試験器」(プロセク,スイス)を弾性印象材の測定に応用した.本試験器はEquo原理を応用した試験器で,対象となる試料が小型でも非破壊的に測定でき,さらに打撃方向も自由に指定できる.現在臨床で一般的に使用されている3種類4製品,Provilnovo(Heraeus Kulzer),Imprinsis(トクヤマデンタル),Flexicon(ジーシー),Surflex(ジーシー)の弾性印象材を用意し,それぞれ練和開始60分後の硬さをエコーチップ硬さ試験器で測定し,得られた硬さ値(L値)と,同じ条件下で測定されたヤング率との相関を調べた.また同試験器にて,印象材の練和開始からの経時的な硬さ変化を測定し,従来印象材の測定に用いられてきたレオメータで得られた測定値と比較検討した.これらの実験を通して,エコーチップ硬さ試験器で測定された硬さ値Lが印象材の硬化挙動や物性の指標となりうるか,ひいては印象材撤去の客観的な指標となりうるかについてその可能性を検討した結果,以下のような結論を得た.1. Injection type およびPutty typeの弾性印象材のヤング率と硬さ値Lの間には,正の相関関係がみられた.2. レオメータによる測定波形とL値測定波形には,各印象材ごとに対応相似する特徴的なカーブが描かれることが判明した.3. レオメータによる測定波形は使用するバネの強さの影響,つまり試料に与える荷重の影響を大きく受け,それに伴ってその波形グラフから導かれるデータにも影響が出るのに対し,エコーチップ硬さ試験器の測定値Lにおいては,試料に与える荷重の影響が,レオメータのそれより小さいことが判明した.4. エコーチップ硬さ試験器が,弾性印象材の物性や経時的な挙動を測定するために大変有効であり,本試験器で測定される印象材ごとの最適な撤去時期でのL値は,印象材撤去の指標となりうることが判明した.
  • 力丸 哲也, 加藤 熈, 坂上 竜資
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 2 号 p. 198-202
    発行日: 2007/04/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    福岡歯科大学附属病院歯周病科にて慢性辺徐性歯周炎と診断され,受診中の患者50名(患者群)および福岡歯科大学歯周病学分野所属の歯科医師20名(コントロール群)に対し,口臭測定器BBチェッカー(タイヨウ)を用いて口臭測定を行い,その有用性について検討し,以下の結果を得た.1. ブラッシング前の測定値は患者群が有意に高く,歯周疾患と口臭の関与が示唆された.2. 患者群ではブラッシング後の測定値が有意に低下したことから,口臭の程度とプラークコントロールの関与が確認された.3, 患者群において深い歯周ポケットを有する割合と測定値の間には相関が認められなかったことから,口臭に関与する歯周ポケット以外の因子の存在が示唆された.4.可燃性ガスの測定は,口臭の簡便かつ有効な測定法であることが確認された.
  • 高橋 哲哉, 小林 健二, 小谷 依子, 呉 崇史, 片山 直
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 2 号 p. 203-212
    発行日: 2007/04/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    根管治療の偶発症の一つに,根管形成用器具の根管内破折が挙げられる.これまでに根管内の器具破折片に対して,機械的除去法,化学的除去法あるいは外科的療法が検討されている.しかし解剖学的な困難性や生体への為害性が問題となる.ニッケルチタン(以下,NiTi)製ファイルに関する除去法の報告は少ない.NiTi合金は不動態被膜による耐食性に優れた金属であり,その不動態被膜はハロゲンイオンにより破壊されることが知られている.そこで本研究では,高濃度の強酸ではなくNiTi合金の腐食が報告されている薬剤について,6種のNiTi製ファイルの腐食性を検討した.各ファイルは先端より5mmの部位で回転して破折させ,試料とした.溶液には,10%NaClO+19%NaCl溶液(以下,NCN)とpH4.5に調整したリン酸酸性2%NaF溶液(以下,APF)を用いた.浸漬試験による経時的重量変化の測定,電子線マイクロアナライザーを用いたSEM像による表面観察,NiとTiの特性X線像と定量分析による表面分析を行った.結果は以下のとおりである.1. いずれのファイルもNCNとAPFへの浸漬による24時間以内の腐食・溶解が認められた.2. NCNでは破断側から腐食が進み,腐食生成物が生じ,SEM像で凹凸の顕著な崩壊性溶解像が認められた.APFでは全体から腐食が進行し,腐食生成物は生じず,SEM像で連続した孔食による溶解像が観察された.3. 特性X線像から,NCNではNiの選択的な減少部位が認められ,APFではNiとTiが一様に認められた.4. Ti/Ni比から,NCNでは相対的にNiの減少が認められ,APFではNiとTiともに減少が認められた.以上の結果から,腐食によるファイル破折片除去の可能性が示唆された.
  • 小谷 依子, 松見 秀之
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 2 号 p. 213-224
    発行日: 2007/04/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    根管形成後に続く根管洗浄は,根管充填を成功させるための大切な要因の一つである.通常の診療においては,薬剤や超音波による根管洗浄が行われている.本研究では,周波数と出力がコントロール可能な,En,Cr:YSGG laser systemを使用して,根管壁の最終仕上げを行った.最初に,根管形成後の根管内壁面に照射条件の異なったレーザー照射を行い,その根管壁の状態をSEIにより観察した.また,レーザー照射後,根管充填を行った根管壁と根管充填材の界面のSEI観察を行った.最後に,根尖部の根管充填材の封鎖性を確認するため,色素浸透試験を行った.これらの実験結果によって以下の結論を得た.1. レーザーを照射した根管内壁面のSEI観察において,レーザーの周波数が高く,出力が小さいほど,根管壁面は滑沢であった.また,すべての照射条件において,スミヤー層が観察できず,象牙細管の開口が観察できた.2. 根管内内壁と根管充填材との界面のSEI観察により,CL群(Canals-N+ガッタパーチャポイント:側方加圧充填法),WV群(Obturation-gutta NT:Warm gutta-percha法)で高い壁着性を示した.SS群(Super-Bondsealer+ガッタパーチャポイント:単一ポイント充填法)では,壁着性は悪くはなかったが,根管壁と根管充填材の界面に部分的に間隙を認めた.3. 根尖から1.5mmのところでは色素浸透は確認できなかった.Er,Cr:YSGG laser systemを根管形成後の最終仕上げとして用いる場合には,根管充填法の違いを考慮し,照射条件を変えることが必要と考えられる.以上より,臨床応用に際し,有用性があることが示唆された.
  • 玉崗 慶鐘, 東光 照夫, 久光 久
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 2 号 p. 225-235
    発行日: 2007/04/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,漂白されたエナメル質表面に,表面処理材を適用した場合の変化を検討することである.35%過酸化水素を含むOffice Bleach剤,あるいは10%過酸化尿素を含むHome Bleach剤は,エナメル質表面になんらかの影響をおよぼしていると考えられる.臨床では漂白後に全く仕上げを行わない,あるいはフッ素を含む研磨材の仕上げが行われるのみで,漂白後のエナメル質の仕上げについての報告は多くない.漂白後の有色飲食物や喫煙の制限の緩和,漂白後の知覚過敏の発生や色の後戻りの低減を目的とし,微細なハイドロキシアパタイト粒子を含むPMTC用ペーストで漂白後のエナメル質表面を処理し,その影響を他の表面処理材と比較・検討した.被験歯には水道水に保管したヒト抜去歯46本を用いた.漂白剤として「NITEホワイト・エクセル™」「松風ハイライト™」,35%過酸化水素水を用いた.コントロールは人工唾液である.漂白処置はメーカーの指示書に従った.表面処理材にはフツ素含有歯面研磨材「松風Merssage」,CPP-ACP含有の歯面塗布用ペースト「GCMI-ペースト」,そしてナノハイドロキシアパタイト含有歯面処理材「サンギRenamel」を用いた.表面処理材の粒度分析を検討し,表面処理後のエナメル質表面はSPM(Scanning Probe Microscope:走査プローブ顕微鏡)により観察し表面粗さ(Ra)を測定した.さらに表面処理後の色素耐性を知るために,コーヒー液への浸透試験を行った.その結果,表面処理材を漂白後の歯面に適用後の表面性状変化と表面粗さは,松風Merssage処理でエナメル質表面に荒れた像が認められ,粗さ(Ra)も増加した.しかし,Renamel処理では性状や粗さに変化はみられなかった.色差試験では,松風ハイライト™により漂白しRenamel処理すると色素の沈着が阻害されたが,NITEホワイト・エクセル™漂白の場合には,色素浸漬の影響は差が認められなかった.漂白されたエナメル質の表面への影響を少なくする処理材としては,Renamelが有効である可能性が示唆された.
  • 石井 理恵, 木村 裕一, 木下 潤一朗, 増田 宜子, 高松 透子, 山田 嘉重, 松本 光吉
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 2 号 p. 236-244
    発行日: 2007/04/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    現在,感染根管治療において根管充填の時期を判定するために浸出液や腐敗臭の有無,または簡易細菌培養試験などが用いられているが,客観性が低く不正確になりやすく,また手間と判定までの時間がかかることからあまり利用されていない.本研究の目的は,齲蝕診断に有用なDIAGNOdent®を用いて根管貼薬に使用したペーパーポイントを測定し,根管充填の時期を判定することへの応用の可能性を探ることである.まず,予備実験として根管貼薬剤の影響を調べるため,根管貼薬剤として用いるホルムクレゾール,ホルマリン・グアヤコール,フェノール・カンフル,クレオドン,メトコール,クロラムフェニコール,ヨードをペーパーポイントにしみ込ませ,経時的な変化をDIAGNOdent®で測定した.次に,臨床症例で感染椎管治療中に淡黄色膿汁と透明浸出液を採取し,これらの経時的な変化をDIAGNOdent®で測定した,また,感染根管治療中の患者において臨床症状と根管貼薬に使用したペーパーポイントのDIAGNOdent®値(以後,D値と略す),そして48時間後の簡易細菌培養試験結果とD値の相関関係を,Spearmanの順位相関を用いて危険率5%で判定した根管貼薬剤にはそれぞれ固有のD値があり,経時的に増加するものや減少するものがあったが,D値で1〜5の範囲にあった.淡黄色膿汁のほうが透明浸出液よりD値が高く,淡黄色膿汁と透明浸出液のD値は経時的に緩やかに上昇した.感染根管治療中の患者においては,臨床症状とD値には有意な相関関係が認められたが,簡易細菌培養試験結果とD値には相関関係はなかった.臨床症状とD値で有意な相関関係が認められたことより,根管貼薬に使用したペーパーポイントのD値を測定することは臨床的に根管充填における時期判定のなんらかの指標になることが示唆された.
  • 山田 嘉重, 木村 裕一, 清水 由子, 増田 宜子, 木下 潤一朗, 中村 幸生, 川中 岳雄, 石井 理恵, 松本 光吉
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 2 号 p. 245-255
    発行日: 2007/04/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は,Carisolv™処置後の象牙質において従来の判定法と,齲蝕検知用染色液(カリエスチェック)およびDIAGNOdent®を用いた齲蝕除去の判定法における,齲蝕象牙質除去の有用性を比較検討することである.本研究ではヒト抜去歯で,浅在性齲蝕のある20本と深在性齲蝕のある20本を選別し,それぞれ2つのグループに分けた.Carisolv™を用いて齲蝕除去を行った後,残存した齲蝕に対して従来行われている視覚的・感覚的な判定法,またはカリエスチェックとDIAGNOdent®を併用した判定法を行った.齲蝕を除去して,通法に従い光硬化型レジン充填後,試料をローダミンB液に浸漬し,実体顕微鏡と走査電子顕微鏡にて観察するため2分割した.結果として,従来の方法を用いた判定基準後の象牙質は,浅在性齲蝕において20%,深在性齲蝕において50%の割合でカリエスチェックにより染色された.辺縁漏洩試験と走査電子顕微鏡による診査では,従来の判定法を用いたほうが象牙質とレジンとの間にギャップが観察され,特に深在性齲蝕においては有意差が認められた.臨床においてCarisolv™を用いて齲蝕除去を行う場合は,カリエスチェックやDIAGNOdent®を併用し,齲蝕除去終了を判断するほうがよいことが示唆された.特に深在性齲蝕の除去においては,この新たな判定法を参考に処置を行う必要性があると考えられた.
  • 丸山 敬正, 韓 臨麟, 興地 隆史, 岩久 正明
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 2 号 p. 256-265
    発行日: 2007/04/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    近年,歯の軽度な変色に対する改善の要求は増加しており,低侵襲で審美的改善が可能な漂白処置に注目が集められている.現在有髄歯を対象とした漂白法は,歯科医が治療室で漂白処置を行うoffice bleachingと,患者が家庭内で行うhome bleachingの2種に大別される.しかしながら,このような漂白処置が健全なエナメル質にどのような影響を与えるかについては検討の余地が残されている.そこで,本研究では生活歯の漂白処置がエナメル質表層に与える影響を明らかにするために,若年者(20,30歳代)もしくは高齢者(60歳以上)より得られたヒト新鮮抜去歯を,office bleaching剤(Hi Lite®)あるいはhome bleaching剤(Nite White Excel®)により漂白し,漂白前後におけるエナメル質表層部の微細構造変化を走査型共焦点レーザ顕微鏡にて観察するとともに,歯の色調変化についても検討した.また,漂白処置面のエナメル質耐酸性の向上を目的としてフッ化ナトリウム・リン酸酸性溶液(9,000ppmF)の塗布を行った後,歯面からのカルシウムイオン溶出量を測定してその効果を検討したところ,以下の結論を得た.1. Hi Lite, Nite White Excelともに,歯面への適用によりエナメル質表層部が脱灰,粗造化することが明らかになった.また,その後の歯面研磨によって,エナメル質表層の粗造化の改善が観察された.2. 若年者群のほうが高齢者群よりも脱灰深さおよび表面粗さの値が大きかった.3. 色調変化については,いずれの漂白法も有効であったが,高齢者群と比較して若年者群で明度変化量が大きかった.4. 漂白・研磨後の歯面に対してフッ化物を塗布することにより,カルシウムイオンの溶出量が有意に減少することが明らかとなった.その際,エナメル質表層部の微細構造に大きな変化はみられず,色調に対する影響も認められなかった.したがって,漂白後のケアとして,歯面研磨のみならず,フッ化物応用による歯質耐酸性の向上を図ることが有用であることが示唆された.
  • 大森 明, 川崎 孝一
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 2 号 p. 266-276
    発行日: 2007/04/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,多根歯分岐根を有する歯において根管の拡大形成後,根管充填が施されなかったことにより生じた根管内死腔の根管ならびに周囲組織にみられる長期経過後の変化を主に病理組織学的に調べることである.材料は推定年齢6歳以上のカニクイザル成猿雄1頭の永久歯で,上下顎小・大臼歯20歯24根管を用いた.全身麻酔下で被験歯の歯肉に2%Xylocain®(フジサワ)の浸潤麻酔を施し,ラバーダム防湿下で抜髄処置を行った.根管長の測定は,術前のX線写真を参考にしてエンドドンティックメーターS(小貫)を用いる電気的根管長測定で行った.根管の抜髄後の拡大形成は手用リーマーとKファイルを用い,根管拡大は#20〜#35の大きさまで適宜行った.根管の拡大形成後,大半の根管は根尖外組織に#10〜#15のリーマーやKファイルを1mmほど押し出すオーバーインスツルメンテーションがなされた.根管は適宜6% NaOClと3% H2O2で交互洗浄し,最後に滅菌生理食塩液で洗った.ブローチ綿栓で根管を清拭乾燥し,根管口部に無貼薬の滅菌小綿球の包摂,リン酸亜鉛セメントで裏層,接着陸コンポジットレジンのClearfil Posterior®(クラレ)を窩洞に填塞した.術後1.5,9,11〜27,屠殺の31カ月特にX線写真撮影を行い,X線的経過を観察した.10%ホルマリン灌流固定を行い,20%ギ酸脱灰,8μmのパラフィン連続切片を作製し,H-E染色とグラム細菌染色を施し,光顕的に観察した.結果は,以下のとおりである.1. X線的には根管内死腔を有する根尖周囲と根分岐部側には1.5カ月例ですでに大きなび漫性X縁透過像が認められた.根尖病変は経時的に多数の歯に現れた.2. 根管内死腔には多くの例で根尖孔から根管内への肉芽組織の侵人増殖がみられたが,数歯において根管口付近や髄室内にまで達していた.3. 肉芽組織は先端部から変性壊死に陥る傾向が強くみられた.息肉先端の壊死部に接する生活組織に限局して,好中球を含む炎症性細胞浸潤がみられた.一方,壊死組織内には細菌がしばしば観察されたが,多くはレジン充填窩洞の辺縁漏洩による唾液の細菌感染が原因するものと推察された.4. 根管内の炎症性肉芽組織の増殖が関係したと思われる歯根の内部吸収が多くみられ,高度に進行すると根分岐部側に穿孔していた.その象牙質吸収部には稀薄な骨様組織の添加もみられた.5. 根尖歯周組織には,多くの例で歯根肉芽腫や慢性歯槽膿瘍が成立していた.6. 根管内の無菌性が維持された1歯には,肉芽組織の線維化や石灰化組織による根管の狭窄・閉塞化を示し根尖歯周組織に炎症がみられなかった.しかしながら,根管内死腔を放置すれば発炎性の刺激源となり,その影響は長期にわたり拡大波及していくものと思われる.
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