日本歯科保存学雑誌
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50 巻 , 3 号
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総説
原著
  • 岩井 啓寿
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 3 号 p. 284-291
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    Er:YAGレーザーのもつ波長は水の吸収スペクトルと一致していることから,水を含む被照射体の蒸散が可能であると報告されている.しかし,Er:YAGレーザーを使用した歯質の蒸散において,蒸散深さを予測することは困難で,照射出力やパルス数,照射時間,照射方法,先端チップの形状等だけでなく被照射体の性状によっても異なるものと考えられる.被照射体に関しては,口腔内環境において多くの水分を含有していると考えられる罹患象牙質に対してEr:YAGレーザーを使用することで選択的な除去の可能性が推測される.そこで,本研究ではウシの歯を使用して,健全な象牙質と人工的に脱灰した象牙質を被照射体として,Er:YAGレーザーの照射出力の違いによる蒸散能と被照射面の性状変化を調べることを目的として実験を行った.蒸散深さに関しては,C400Fの先端チップを使用して被照射面に接触照射し,総照射エネルギー量を同一にしたものと照射時間を一定にしたものについて検討した.そして,性状変化についてはエックス線回折にて調べ,さらに,被照射面の形態変化についてはSEMにて観察を行った.本実験条件において,Er:YAGレーザーの象牙質蒸散深さは,総照射エネルギー量に依存しておらず,1パルス当たりの照射エネルギー出力に左右されるものと考えられた.蒸散深さと照射エネルギー出力の関係は,健全象牙質において一次関数で良好な相関が得られ,蒸散深さの予測が可能と考えられた.また,水分を含んでいると考えられる脱灰象牙質では健全象牙質よりも蒸散深さが増加しており,56〜112mJ/pulse・10secで240〜290μm程度の蒸散深さが得られることから,蒸散深さの予測の一助となるものと考えられた.XRDでは,両試料条件において,レーザー照射でハイドロキシアパタイトの結晶性の向上がみられた.SEM所見から,同一の照射エネルギーでも象牙質表層の性状の違いにより被照射面は,おのおの異なった形態が観察された.
  • 椿本 貴教, 高坂 一貴, 齋藤 正寛, 寺中 敏夫
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 3 号 p. 292-301
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    歯乳頭細胞は外胚葉性間葉系細胞に由来する間葉系細胞で,歯胚発生過程においてエナメル上皮細胞との上皮-間葉系相互作用により象牙芽細胞へ分化誘導される.しかし,歯乳頭細胞から象牙芽細胞への分化誘導メカニズムは不明な点が多い.本研究では,マウス切歯歯乳頭細胞(Mice dental papilla cells:MDP)培養系の確立を試み,同細胞中に象牙芽細胞前駆体細胞が存在するか否かを検討した.MDPを分離培養後,安定した培養系を得るためにPDZドメインバインディングモチーフを欠失した変異型ヒトパピローマウイルス16型E6遺伝子を遺伝子導入し,不死化マウス歯乳頭細胞(MDPE6)を作製した.MDPE6は,細胞形態および増殖活性を維持したまま,集団倍加係数80回以上成長可能な不死化細胞であることが確認された.MDPE6の分化能力を調べるため,石灰化誘導培地で21日間培養したところ,高いAlkaline phosphatase(ALPase)活性と石灰化能を示し,骨形成関連遺伝子群であるBone sialoprotein(BSP),Osteocalcin(OC)およびOsterixの発現が認められたが,象牙質マーカー分子であるDentin sialoprotein(DSP)の発現は確認されなかった.以上の結果から,同培養条件下ではMDPE6を象牙芽細胞に分化誘導できないことが確認された.次に,MDPE6をbasic fibroblast growth factor(bFGF)を添加した培地で培養すると,MDPE6は長い突起を有する紡錘状の象牙芽細胞様の形態に変化し,bFGF未添加群と比較して3倍のDSPの発現が増強された.以上の結果から,MDPE6中にはbFGFシグナルにより象牙芽細胞へ分化誘導する象牙芽細胞前駆体が存在することが示唆された.また,MDPE6を用いた本培養システムが象牙芽細胞分化メカニズムの解析に有効であることが示唆された.
  • 藤野 富久江, 向井 義晴, 上條 和子, 富山 潔, 椎谷 亨, 冨永 貴俊, 寺中 敏夫
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 3 号 p. 302-312
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    in vitroおよびin vivoの多くの研究から,緑茶抽出物は茶葉に含まれるカテキンとフッ化物により抗菌性と抗齲蝕性を有することが示唆されている.本研究の目的は緑茶抽出物(PF-4,フッ化物濃度は3,900μg/g)由来のフッ化物のエナメル質および象牙質の脱灰に対する効果をin vitroにて究明し,さらに齲蝕予防法としての可能性を論ずることである.0,0.01,0.05,0.1,0.2,0.4および0.8重量%のPF-4と,NaFとして0.4 ppm Fおよび4.0ppm Fを有する脱灰緩衝液を用意した.窓空けし,よく研磨されたウシエナメル質と象牙質片をpH4.6とpH5.0の脱灰緩衝液に37℃で4日間浸漬した.ミネラルプロファイル,integrated mineral loss(IML)および病巣深さ(Ld)をtransversal microradiography (TMR)で分析した.低濃度のPF-4を含む緩衝液でエナメル質と象牙質に形成された病巣は,同一のフッ化物量(NaF)を含む緩衝液で形成された病巣に比較して,やや低いが厚いミネラルボリュームを示す表層と,より少ない脱灰病巣体部を有する特徴を示していた.エナメル質および象牙質のIMLは,PF-4の濃度が上昇するとともに,脱灰に対して徐々に予防的な効果を示した.形成されたエナメル質病巣はPF-4が増加するとIMLとLdの減少を示したのに対し,象牙質ではIMLは減少したがLdは減少しなかった.これらの所見はPF-4を含む緩衝液の脱灰様相の特徴であり,原因として茶由来の有機質,アミノ酸,ならびにアルミニウムやいくつかの金属イオンが歯質のアパタイトと結合して拡散障壁を形成するからであると考えられた.結論として,このin vitro研究からPF-4の脱灰抑制効果は病巣体部の脱灰減少ということで特徴付けられることが示され,また,この点において,低濃度のPF-4はNaFより効果的な役割を担っていることが示唆された.
  • 菅 俊行, 石川 邦夫, 松尾 敬志, 恵比須 繁之
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 3 号 p. 313-320
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    フッ化ジアンミン銀(サホライド®)は,齲蝕進行抑制剤および象牙質知覚過敏症治療剤として臨床で使用されている.しかしながら,フッ化ジアンミン銀は塗布後に銀の沈着による歯の黒変が起こる.したがって,フッ化ジアンミン銀は主に乳歯に使用されている.この欠点を改良するために,フッ化ジアミンシリケートを調製した.銀の代わりにシリカを導入した理由は,シリカは歯質の変色を起こさないこと,そして擬似体液からアパタイトの生成を誘導するからである.本研究の目的はヒト口腔内を模倣した環境下において,フッ化ジアミンシリケート処理後の象牙細管封鎖効果と持続性を評価することである.フッ化ジアミンシリケートの象牙細管封鎖効果は,ヒト抜去歯を用いて評価を行った.フッ化ジアミンシリケート処理直後および人工唾液浸漬7日後の象牙質プレートの表面を,走査電子顕微鏡(SEM)にて観察を行った.SEM観察の結果,開口象牙細管はフッ化ジアミンシリケート処理直後にはシリカ-リン酸カルシウム結晶により完全に封鎖されていた.さらに,人工唾液浸漬7日後には象牙質表面は新たに生成した結晶により覆われていた.EDXA分析によると,フッ化ジアミンシリケート処理直後に象牙細管内に析出した結晶はシリカ,カルシウム,リンを含有しており,シリカ-リン酸カルシウム結晶であることが明らかとなった.その結晶のカルシウムとリンのモル比はフッ化ジアミンシリケート処理直後には2.02であったが,人工唾液浸漬後には徐々に減少した.一方,象牙質表面に新たに生成した結晶は実験期間を通して,ほぼ一定の値(Ca/P=1.16〜1.28)であった.周囲の管間象牙質と比べて有意に低い値であることから,おそらくカルシウム欠損アパタイトが析出していると推察された.フッ化ジアミンシリケート処理は人工唾液中からリン酸カルシウムの析出を誘導し,したがって,ヒト口腔内を模倣した環境下において,持続的な象牙細管封鎖能を有することが明らかとなった.
  • 岡 正信, 堀田 正人, 堀田 康明, 小竹 宏朋, 作 誠太郎, 山本 宏治
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 3 号 p. 321-324
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    S-PRG(表面改質型酸反応性機能ガラス)フィラーの微細構造の観察と,元素分析を行った.それぞれ,RMFガラス(粉砕ガラス)フィラー,MFガラスフィラー,S-PRGフィラーを含有する試作レジンを使用した.供試材料の表面観察および元素分析を走査電子顕微鏡(SEM)と,エネルギー分散型X線分析装置を用いて行った.SEM観察では各試料間に大きな差は認められなかった.また,元素分析においても,S-PRGフィラーの主要構成元素であるAl,Si,SrとB,O,C,F,Naが認められ,各試料間に大きな差は認められなかった.透過電子顕微鏡(TEM)観察では,S-PRGフィラーにのみコアガラス外層に電子密度の低い層が認められた.これは,S-PRG化したことによるフィラー表面の変化であると考えられた.今回の研究より,S-PRGフィラー表面の変化を観察することができた.
  • 大岡 悟史, 坪田 圭司, 吉田 武史, 天野 紫乃, 木島 武尊, 井上 直樹, 砂田 識敦, 宮崎 真至
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 3 号 p. 325-331
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    近年,光重合型レジンの歯質接着性が飛躍的に向上するとともに,臨床応用範囲が拡大したことから,一般歯科臨床での使用頻度は増加している.光重合型レジンを用いた歯質接着の修復術式を習得するために,従来はヒト抜去歯を用いて基礎実習が行われてきた.しかし,現状ではヒト抜去歯を入手することが困難となってきた.そこで,光重合型レジンを用いた修復用に開発された試作人工歯を用いて,AQ Bond Plus,Clearfil Mega BondおよびSingle Bondの3製品を使用してその有効性を検討した.試作人工歯を常温重合メタクリレートレジンに包埋し,人工エナメル質あるいは人工象牙質の平坦面が得られるように耐水シリコンカーバイドペーパーの#600にて調整した.被着面に対して,各接着システムの製造者指示に従って接着処理を行って接着試験用試片を製作した.これらの接着試片は,37℃の精製水中に5分間および24時間保管した後,クロスヘッドスピード1.0mm/minの条件で剪断接着強さを測定した.その結果,5分間群の人工エナメル質に対する接着強さは8.2〜12.9MPaであり,24時間群においては8.9〜17.9MPaであった.一方,5分間群の人工象牙質に対しては7.1〜14.0MPaであり,24時間群では7.5〜19.8MPaであった.AQの接着強さは他の2製品に対して有意に低い値を示した.本実験の結果から,使用した人工歯の接着強さは,エナメル質と象牙質とでほぼ同等であり,比較的安定した被着体として使用できる可能性が示唆された.
  • 堀田 正人, 長井 康平, 今出 昌一, 佐野 晃, 山本 宏治
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 3 号 p. 332-337
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    舌苔が口臭を引き起こす原因であることはよく知られており,剥離上皮,白血球,微生物などの付着停滞が生じて舌苔となると考えられている.したがって,舌苔の機械的除去が生理的口臭の治療として使用されており,適切な舌ブラシ使用(清掃)方法の指導をしなければならない.そこで,本研究では市販のデンタルプロ®舌ブラシ(用毛の太さ:2.5mil)と試作舌ブラシ(用毛の太さ:4milと6mil)を用い,33名の被験者について舌ブラシ圧に注目し,染色した舌の舌ブラシ圧について検討を行った.得られたデータは一元配置分散分析(ANOVA)とScheffeの多重比較検定および対応のあるt検定を行った.その結果,用毛の大さが2.5,4,6milの各舌ブラシ圧はそれぞれ61.3±39.7g,56.8±50.0g,49.3±20.7gで,用毛の太さが大きいほど小さい舌ブラシ圧を示す傾向にあったが,統計学的に有意差は認められなかった.また,染色した舌と染色しなかった舌での舌ブラシ圧はそれぞれ88.8±59.2g,56.7±43.6gとなり,染色した舌における舌ブラシ圧は有意に大きい値を示した.このことから,舌苔が著明に認められる場合の舌ブラシ圧は大きくなることが予想された.
  • 稲毛 寛彦, 安田 源沢, 宇山 聡, 前田 徹, 児島 智美, 高見澤 俊樹, 青島 裕, 宮崎 真至
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 3 号 p. 338-343
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    超音波を応用した画像処理は非破壊検査法として多くの分野で使用され,特徴的な性質を有するところから診断や研究にも用いられている.超音波診断は,人体の軟組織,特に腹腔,頭蓋内部あるいは眼内部などの医学分野に応用されている.本研究の目的は,超音波の性質を応用して象牙質とレジン充填物における欠陥を検出することである.ダイヤモンドポイントを用いてウシ下顎前歯唇側象牙質に規格窩洞(φ4×2mm)を形成した.次いで,窩洞内面に欠陥を付与あるいは付与することなく接着操作を行い,レジンペーストを填塞した.超音波フェーズドアレイ法にはOmniScanMX® (RD Tech)を用いた.測定を行う際フェーズドアレイ探触子は,試片表面に接触させASスキャンモードにて行った.超音波フェーズドアレイ法を用いて象牙質とレジン充填物間の欠陥が検出される可能性が示唆された.本実験の結果から,超音波フェーズドアレイ法を用いて,歯質とレジン充填物間における接着欠陥の検出が可能であった.
  • 山本 俊郎, 堀井 真哉, 若森 めぐみ, 大迫 文重, 雨宮 傑, 林 誠司, 中西 哲, 家原 知子, 杉本 徹, 金村 成智
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 3 号 p. 344-349
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    目的:今回われわれは,小児神経芽細胞腫の治療である化学療法が及ぼす歯の形成障害について検討を加えたので報告する.方法:京都府立医科人学附属病院小児科にて神経芽細胞腫と診断された11症例(男児7症例,女児4症例)に対して,化学療法前後で口腔内診査およびパノラマX線写真診査を施行した.結果:化学療法開始年齢は,2カ月〜5歳3カ月であった.そのうち2歳までに化学療法を開始した7症例において,パノラマX線写真所見上,第一小臼歯,第二小臼歯,上顎側切歯,第二大臼歯に歯の形成障害が認められた.そして,歯胚形成時期と石灰形成時期に化学療法を開始した症例においては,化学療法終了後,歯の形成障害が認められた.結論:本報告から,神経芽細胞腫における化学療法は歯の形成障害と関連があることが示唆された.
  • 五明 俊二, 河野 哲, 吉田 隆一, 関根 一郎
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 3 号 p. 350-357
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    根管充填の目的は,根管および根尖部を緊密に封鎖し,根管経由の外来刺激から根尖歯周組織を防御し,歯を半永久的に保存することである.現在の根管充填は物理的に封鎖する方法が主流であるが,根管充填材の劣化が原因で根尖性歯周炎となることがある.よって,積極的に根尖部に硬組織を形成させ,根尖を封鎖させる方法がよいと思われる.しかし,この形成された硬組織が根尖部根管を完全に封鎖しているかどうか,また,感染に対して防壁となるのかは不明である.そこで今回,生体材料であるTBCおよびα-TCPを用い,実験的に根尖部に硬組織を形成させ,再び根管を開放することで,根尖部が完全に封鎖しているのかどうか,新生硬組織が感染に対する防壁となりうるのかどうかを病理組織学的に検討した.その結果,TBCおよびα-TCP 12カ月経過例では炎症性細胞の浸潤も認められず,根尖部において新生硬組織による緻密な封鎖を認め,根管を開放したにもかかわらず,根尖歯周組織には炎症が認められなかった.よって,根尖部の硬組織による封鎖の重要性が示唆され,形成された新生硬組織は感染に対する防壁となった.
  • 瀧川 智子, 菅野 直之, AKMS Rahman, 山村 淳一, 嶋田 照子, 高根 正敏, 蛭間 重能, 佐藤 秀一, 吉沼 直人, 伊 ...
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 3 号 p. 358-364
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    グラム陰性の偏性嫌気性菌であるPorphyromonas gingivalisは,歯周病の最も有力な原因菌であると考えられている.P.gingivalisの産生するジンジパインは,発育増殖に不可欠な因子であると同時に,宿主タンパクを広範に分解し宿主免疫機構の破綻をきたす重要な病原因子である.本研究では,ジンジパインを標的とした受動免疫による歯周病治療の可能性について検討した.ジンジパイン抗原を免疫した鶏卵から抽出した抗ジンジパイン鶏卵抗体(IgY-GP)を含有するタブレットを調製し,被験者に8週間投与した.その結果,投与前後で臨床症状に顕著な変化は認められなかったが,細菌学的評価では,唾液中の総細菌数に対するP.gingivalisの割合がIgY-GP含有タブレットを服用した群で統計学的に有意に減少した.今後,さらにIgY-GPの有用性を明らかにし,効果的な使用方法を確立するために,さらなる研究が必要であると考えられる.
  • 細田 幸子, 辰巳 順一, 谷田部 一大
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 3 号 p. 365-372
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    インプラント周囲炎に罹患した患者において,インプラント体表面の除染はインプラント体周囲の消炎や骨の再結合を得るために,きわめて重要である.しかし,この除染方法についてはいまだ確立していないのが現状である.そこで,インプラント体と同様の表面処理を施したチタン合金表面に付着した歯周病原性細菌の効果的な除菌方法をin vitroにおいて調べ,インプラント周囲炎に対する効果的な治療方法の基礎的検討をする目的で本実験を行った.まず,ハイドロキシアパタイト-ブラスト酸処理インプラントサンプル表面への歯周病原性細菌の付着は,Actinobacillus actinomycetemcomitans Y4株を好気条件下で37℃で4時間静置培養して行った.培養後,細菌除去方法として,生理食塩水(control群),0.1%クロルヘキシジン(CHX群),35%リン酸ジェルによるエッチング処理(Etch群),弱酸性水(EO群),高圧水洗浄(WA群)および高圧水+重曹粉末噴霧(PA群)により除染操作を行った.各処理終了後,走査電子顕微鏡を用いてインプラント試料表面の細菌残存状態を観察した.また,electron probe microanalyzer(EPMA)を用いてインプラント試料表面に残存している元素の定性・定量分析を行った.走査電子顕微鏡による観察の結果,PA群が最も細菌除去効果が高かったが,control,Etch群では除染効果は低かった.EPMAによる元素分析の結果,PA,WA,EO,CHX群では高い除染効果が認められたが,controlとEtch群ではほとんど認められなかった.さらにPA群では,元素分析の結果では除染効果が最も高かったが,SEM像からインプラント試料表面の表面形状は,未処置のものと比較し平坦化していた.これに対しWA群はPA群と比較しやや除染効果は低下するものの試料表面の形状に変化は認められなかった.以上の結果より,WA群がインプラント表面形状に影響せず除染効果が高いことから,今回検討した除染法のなかでは最も効果的な除染法であった.また,SEM像と元素分析による汚染物の定量的評価を併用することにより,インプラント試料表面の除染法を評価できることが示唆された.
  • 中澤 妙衣子, 加藤 純二, 平井 義人
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 3 号 p. 373-378
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    office bleaching法は,短期間で確実に漂白効果を表すことができ,歯科医師の管理下で行うことができるが,用いる薬剤は高濃度過酸化水素を主成分としており,歯質に与える影響や軟組織の保護など,考慮しなければならない点が多い.そこで,歯質や軟組織に対してより安全で,確実な漂白効果を期待できるoffice bleaching剤の開発研究が必要になっている.野浪らは,二酸化チタンが光を照射することで脱色効果を示す点に着目し,二酸化チタン光触媒と低濃度の過酸化水素からなる歯科用漂白剤を開発した.現在,その漂白効果およびその使用法に関して報告されているが,高濃度過酸化水素の漂白剤との相違点など,いまだ不明な点が多い.そこで今回われわれは二酸化チタン含有低濃度過酸化水素漂白剤を用いた漂白法の効果を検証するため,一定時間ごとに色と表面粗さを測定した.試料は冷凍保存したウシ抜去下顎前歯を用いた.実験群は,二酸化チタン含有低濃度過酸化水素漂白剤にて漂白を行う群(以下,P群),35%過酸化水素を主成分とした漂白剤にて漂白を行う群(以下,H群)の2群に設定した(n=20).漂白剤は二酸化チタン含有3.5%過酸化水素漂白剤ピレーネ®(三菱ガス化学,以下,ピレーネ)と,35%過酸化水素を主成分とした松風ハイライト™(松風,以下,ハイライト)を用いた.光照射器には高出力ハロゲンランプハイパーライテル(クラレメディカル)を用いた.測色には微小面分光色差計VSS300H(日本電色工業)を用いた.CIE1976 L*a*b*表色系のL*,a*,b*を測定し,Δを求めた.表面粗さの測定には,handysurf E-30A(東京精密)を用い,粗さ(Ra)の値からΔRaを求めた.P群,H群ともに,L^*値は有意に増加した.a*値は両群ともにわずかに増加したが,有意な変化は認められなかった.b*値は両群ともに,ほぼすべての試料において有意に減少した.色差値は,P群で平均3.38,H群で平均3.65であった.このことから,ピレーネはハイライトとほぼ同様の効果を表すことができると考えられる.表面粗さ(Ra)について,P群ではほぼ変化が認められなかったが,いくつかの試料では減少傾向が認められた.H群でもほぼ変化は認められなかった.これらのことから,ハイライトとほぼ同様の漂白効果を表すことができると示唆された.
  • 松本 妃可, 吉嶺 嘉人, 西垣 奏一郎, 小野 真紀子, 赤峰 昭文
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 3 号 p. 379-385
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    歯内治療の結果を成功させるには,根管内を可及的に無菌化することが非常に重要である.機械的拡大や化学的清掃を補う手段としてのレーザーの可能性に着目し,本研究では,Er:YAGレーザーによる根管内殺菌効果に関して,ウシの歯根象牙質感染モデルを用いて,顕微鏡レベルでの形態学的な観察を行った.実験には,ウシの前歯歯根の象牙質を使用した.歯髄組織を除去後,試料をEnterococcus faecalis菌の入った培地中で5日間培養し,その後,根管内照射用チップR135T(先端内径135μmの円錐型チップ)を装着したEr:YAGレーザーを30,50,70mJのエネルギー量で照射した.殺菌効果の観察は,光顕と透過型電顕にて行った.5日間の培養後,多数のグラム陽性菌が約500μmの深さまで象牙細管内に侵入している様子が観察された.レーザー照射後,皿状の陥凹部が形成され,陥凹部はエネルギー量に比して大きくなる傾向にあることが光顕で観察された.陥凹部の表層直下では,いくらかの細菌が観察されたが,透過型電顕で観察すると,それらの細菌はその基本的形態を保持していた.また,コントロール群として5%NaOClに3分間浸漬した象牙質片の光顕像では,表層の象牙細管内にも多数の細菌を認めた.結果より,Er:YAGレーザーの殺菌効果は主に蒸散作用によることが示唆された.また,洗浄液を効果的に作用させるためには使用法や使用時間に配慮する必要があると考えられる.Er:YAGレーザーを用いて象牙質深部の細菌を完全に死滅させるのは困難であるように思われた.
  • 海老沢 政人, 大島 朋子, 長野 孝俊, 五味 一博
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 3 号 p. 386-394
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    現在,歯周組織再生療法の一つにエナメルマトリックスデリバティブ(EMD)を利用した方法がある.EMDを含むEmdogain®-Gel(Emd®-Gel)を用いた処置は,通法の歯周外科処置と比較して術後の治癒が良好であり,炎症反応の抑制が知られている.その理由の一つに,EMDが抗菌作用を有することが考えられているが,先行研究において一定した評価は得られていない.この理由として,EMDはアメロゲニン(AMEL),エナメリン,シースリンといった複数のタンパク質やタンパク質分解酵素を含む粗精製物であることが考えられる.このうち,AMELは最も豊富な構成物質で,EMDの約90%以上を占め,さまざまな分子量のAMELが会合して存在している.本研究の目的は,EMDの主要成分であるAMELの口腔内微生物に対する抗菌効果を評価することである.EMDは,ブタ下顎骨の幼若ブタ歯胚エナメル質から抽出し,Sephadex G-100を用いたゲル濾過クロマトグラフィーにより精製された25kDaとその誘導体である20kDa,13kDa,6kDa AMELを用い, Porphyromonas gingivalis, Prevotella intermedia, Actinobacillus actinomycetemcomitans, Candida albicansに対する抗菌効果を判定した,また,Emd®-Gel,PGA,BSA,histatin 5との効果の比較を行った.Emd®-Gelはすべての菌に抗菌効果を示し,Emd®-Gelの溶媒であるPGAは歯周病関連細菌に強い抗菌作用を示したが,C. albicanには効果を示さなかった.250μg/ml濃度の25kDa,20kDa,6kDa AMELはP. gingivalisに対して抗菌効果を示したがその効果は低かった,P. intermediaおよびA. actinomycetemcomitansに対して,AMELは抗菌作用を示さなかった.したがって,Emd®-Gelの歯周病関連細菌に対する抗菌効果はPGAがその主体であることが示唆された.一方,C. albicansに対してすべてのAMEL画分は,濃度依存的に強い抗菌効果を示した.したがって,Emd®-GelのC. albicansに対する抗菌効果はAMELによるが,EMDにはAMEL以外にエナメリンやシースリンといったタンパクが含まれるため,これらの非AMELタンパクが抗菌作用を有する可能性も考えられる.今後,EMDに含まれるAMELおよび非AMELタンパクの特性の解明は,抗菌ペプチドの開発や臨床応用の可能性を検索するうえできわめて重要であると考える.
  • 川崎 孝一, 五十嵐 勝, 北島 佳代子, 渡辺 学
    原稿種別: 原著
    2007 年 50 巻 3 号 p. 395-403
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー
    1977年,石川らによって発表されたビタペックス®(ネオ製薬工業)は,水酸化カルシウム系根管充填材(剤)で抜髄や感染根管治療において永久歯,乳歯の臨床に広く応用されてきた.本剤は感染根管歯の根尖病巣内に過剰に溢出すると,明確なX線不透過性を示すが,X線写真による経過観察では生体によって吸収されて認められなくなるといわれる.また本剤の特徴として,根管への填塞操作の簡便さ,根尖到達性やX線造形性にも優れており,応用後は根尖孔部がセメント質様あるいは骨様硬組織による骨性瘢痕治癒が期待されるという.患者は,47歳の女性で上顎前歯部の211にみられた歯根嚢胞様病変を有する3歯に応用されたビタペックス®が,X線写真上において3歯とも根尖孔外(根尖病巣内)では造形性は2〜3カ月後完全に消失し,さらに4カ月後には1の根管内に造影性の強い消失傾向を認めた.後者の根管内消失例では根尖病変の拡大,歯肉の著明な発赤・腫脹・圧痛などの急性化膿性根尖性歯周炎症状を呈したため根管治療を再度試みることとなった.本論文は,歯根嚢胞様病変に応用された前医のビタペックス®根管治療法の臨床経過を明らかにするとともに,ビタペックス®のX線不透過性(造影性)の消失,吸収や応用法などの問題点について論述している.さらに⌊1の根管には6%NaOClと3%H2O2の交互洗浄により嚢胞上皮を溶解除去する非外科的歯内治療(根管治療)を施した.3カ月間のアクリノール綿栓による開放療法を経て病巣の肉芽化を図り,根管充填では根尖2〜3mm部はFR-Ca(guajacol-formaldehyde resin, 東京歯材社)を填塞し,その手前はキャナルス®(昭和薬品化工)とガッタパーチャポイント併用の側方加圧根管充填による同時積層根管充填法(root canal filling doubled simultaneously with a paste and the combined)を行った.その後20年間経過観察し,骨の再形成を伴う良好な予後成績が確認された.なお,本症例の下顎前歯部には明らかに多発性に根尖性セメント質異形成症(periapical cemental dysplasia)と思われる所見がX線像として観察された.歯内治療学的には,その初期段階において歯髄由来の根尖病変と誤診される可能性のあるX線透過像として現れるために,歯根嚢胞や歯根肉芽腫との鑑別診断を行う必要がある.諸検査の結果,多発度根尖性セメント質異形成症(multiple periapical cemental dysplasia)と診断され,その成熟の一過程と考えられた.さらに全顎の多数歯に著明な根尖セメント質の増殖肥大(hypercementosis)を示す臨床上特異な興味ある1例と考えられた.
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