日本歯科保存学雑誌
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52 巻 , 6 号
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原著
  • 吉川 孝子, Nipaporn WATTANAWONGPITAK, 田上 順次
    原稿種別: 原著
    2009 年 52 巻 6 号 p. 441-445
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    弾性のある接着材を用いると,レジン修復物の辺縁封鎖性と窩壁適合性を向上させるが,窩底部象牙質におけるレジンの接着強さが低下することをすでに報告している.一方,フロアブルレジンは,レジン修復物の窩壁適合性を向上させることを確認している.しかしながら,レジン修復物の窩壁適合性と窩洞内各部の微少接着強さに与える影響を同時に評価した研究はわずかである.本研究では,レジン修復物の辺縁封鎖性ならびに窩壁適合性に及ぼす影響を色素浸透法を用いて数値的に評価すると同時に,レジンと窩底部象牙質との微小引張り接着強さに与える影響についても評価検討した.ウシ下顎永久切歯の唇側象牙質面に,直径3mm,深さ1mmの円柱状の窩洞(C-factor=2.3)を形成した.窩洞面を業者指示に従いClearfil Mega Bond(クラレメディカル)を用いて処理した後,Photo Clearfil Bright(PB,クラレメディカル)のshade USのハイブリッドレジンまたは,Filtek Flow(FF,3M ESPE)のshade A3 のフロアブルレジンを填塞した.光照射器を用い出力600mW/cm2で40秒間光照射を行い,重合硬化させた.37℃暗所水中に24時間保管後,試料から約1mmの厚みの薄板を切り出した.残存象牙質厚さ(RDT)を計測した後,レジン-象牙質界面が約1mm2となるようトリミングし,micro-tensile bond testに供した.試片を試験装置に接着し,クロスヘッドスピード1mm/minで微小引張り接着強さ(μ-TBS)を測定した.これらの結果について,one-way ANOVAとFisher's PLSD testを用いて統計処理を行った.次に,レジン修復物の辺縁封鎖性ならびに窩壁適合性を評価するため,同様に作製した試料の窩洞辺縁と半切面上で1.0%アシッドレッドプロピレングリコール溶液による色素浸透試験を行った.色素浸入度は,色素浸入部位の長さの窩縁または窩壁全周に対する百分率を算出した.これらの結果について,Kruskal-Wallis testとMann-Whitney U testで統計処理を行った.その結果,フロアブルレジンのFiltek Flowの窩壁適合性は,ハイブリッドレジンであるPhoto Clearfil Brightより有意に高かった(p<0.05).しかしながら,その窩底部象牙質に対する接着強さは,Photo Clearfil Brightより有意に低かった(p<0.05).
  • 菅 俊行, 柴田 眞吾, 松尾 敬志
    原稿種別: 原著
    2009 年 52 巻 6 号 p. 446-452
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    フッ化ジアンミン銀(サホライド®)の歯質着色の問題点を改良する目的で,フッ化ジアミンシリケート溶液( (NH4)2SiF6)を調製した.これまでの研究では,ほかのフッ素化合物と比較検討するために酸性リン酸フッ素溶液と同濃度に調製した9,000ppm濃度の溶液を用いて研究を遂行してきた.そのため,9,000ppm濃度以外の溶液を使用した場合の象牙細管封鎖能は不明である.本研究の目的は,各種濃度のフッ化ジアミンシリケート溶液処理後の象牙細管封鎖能を評価することにより,臨床で使用する際の最適な濃度を探索することである.各種濃度(100〜19,400ppmまで)のフッ化ジアミンシリケート溶液を調製して,ヒト抜去歯から作製した象牙質プレートに塗布し,SEM観察することによって象牙細管封鎖効果の評価を行った.また各種濃度のフッ化ジアミンシリケート溶液処理後に象牙細管内に析出した結晶の組成は,エネルギー分散型X線マイクロアナライザー(EDXA)にて分析を行った.SEM観察の結果,フッ化ジアミンシリケート溶液濃度にかかわらず,開口象牙細管は結晶性物質により緊密に封鎖されていた.EDXAにより象牙細管内に析出した結晶の組成を分析した結果,フッ化ジアミンシリケート溶液濃度に比例して,カルシウムとリンのモル比が1.5(100ppm溶液処理後)から2.1(19,400ppm溶液処理後)に上昇していた.フッ化ジアミンシリケート溶液は100〜19,400ppm濃度までいずれの濃度の場合においても象牙細管を緊密に封鎖したが,象牙細管内に析出した結晶の組成は変化しており,高濃度の場合には結晶中に占めるフッ化カルシウムの量が上昇していることが推察された.
  • 梅里 朋大, 田辺 理彦, 東田 大輔, 平山 圭史, 木村 裕一, 山崎 信夫, 天野 義和
    原稿種別: 原著
    2009 年 52 巻 6 号 p. 453-459
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は,根管内器具破折モデルを使用した基礎的研究で,超音波装置の強さ,破折片の長さや大きさ,超音波装置使用時における注水の有無での破折片除去時間に関して,除去効果を比較検討することである.透明根管模型にピーソーリーマーで根尖相当部から1mm上方まで根管相当部の拡大を行い,根尖相当部をファイルで拡大後,破折ファイル片として切断したKファイルを透明根管模型に押し込み根管内でのファイル破折を再現した.超音波装置の強さを調べる実験では,長さ3mmで#30のファイル片を使用して周波数28.8kHz(以下,強さ1と略す),周波数29.6kHz,周波数30.4kHzで行い,破折ファイル片の長さに関する実験では,#30のファイルで長さ3,5,7mmのファイル片を作製して強さ1で行い,破折ファイル片の号数に関する実験では,長さ3mmで#20,#30,#40のファイル片を使用して強さ1で行い,超音波装置使用時における注水の有無に関する実験では,長さ5mmで#30のファイル片を使用して強さ1で行い,除去時間を測定し比較検討した.超音波装置の強さに関しては強いほうが破折ファイル片の除去に要した時間が有意に短く,破折ファイル片の長さと号数に関しては長くて大きくなるほど除去に要した時間が有意に増加した.また,超音波装置使用時における注水の有無では注水下のほうが除去に要した時間は有意に短かった.以上の結果より,透明根管模型では超音波装置の強さ,破折ファイル片の長さや号数,また注水の有無など,超音波装置の条件や破折状態が変化することによって破折ファイル片の除去に要した時間がほとんど規則的に変化したことから,破折片除去には条件や状態により規則性があることが示唆された.
  • 中塚 愛, 菅谷 勉, 川浪 雅光, 加藤 熈
    原稿種別: 原著
    2009 年 52 巻 6 号 p. 460-468
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    プラークや歯石の除去に用いる,音波スケーラーや超音波スケーラーは,チップの形状や使用圧,振幅の違いなどによって,使用後の表面粗さが異なることが知られている.従来の音波スケーラーは出力調整ができなかったが,出力調整が可能な音波スケーラーが市販され,使用方法が表面粗さや歯石除去効率に大きな影響を及ぼすと考えられる.本研究の目的は,出力調整可能な音波スケーラーを用いて,チップ形状と操作条件が象牙質表面形態と歯石除去効率にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることである.実験1として,ヒト抜去歯の歯根から平滑な象牙質面3×3mmを作製し,エアーソルフィー(モリタ製作所)を用い,16通りの使用条件で30秒間スケーリングを行った.さらにハンドスケーラーでスケーリングした群,スケーリングを行わないコントロール群を加え,合計18通りの実験条件とした.スケーリング終了後,表面粗さを計測し,SEMで表面形態を観察した.実験2として,ヒト抜去歯から歯石の付着が同程度になるように3×3mmの被験面を設定し,チップ2種類と3つの操作条件で,歯石が肉眼的に完全に除去できるまでスケーリングし,要した時間を計測した.その結果は以下のとおりである.1.チップ先端の形状は球状のほうが,表面粗さは粗糙になった.2.出力の影響は,接触圧が小さい場合は少ないが,接触圧が大きい場合は出力が大きくなると粗糙になった.3.エアーソルフィーの多くの条件でハンドスケーラーより表面粗さは小さかった.4.SEM観察では,エアーソルフィーを用いた場合,滑沢な面と粗糙面が混在していた.5.歯石除去時間はチップの形状と操作条件により有意差(p<0.05)が認められた.以上の結果から,エアーソルフィーは,歯石の付着が多い場合にはまず先端が球状のチップを用い,出力を大きく,チップの接触圧を強くして歯石を除去し,その後先端がストレートのチップを用いて,出力と接触圧を弱くして平滑化を行うと,根面の損傷が少なく安全で効率的にスケーリングを行うことができると考えられた.
  • 宮内 貴弘
    原稿種別: 原著
    2009 年 52 巻 6 号 p. 469-482
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    う蝕検知液を指標に保存されたう蝕象牙質内層は,う蝕原性細菌により一部脱灰しているが,適切な接着修復により経時的に生理的再石灰化を起こす.この生理的石灰化に加え,修復材料により再石灰化が促進,歯質の強化が起これば,さらなる長期接着耐久性が期待できる.本研究では,ヒト抜去大臼歯に作製した人工う蝕象牙質にさまざまなイオンを徐放するS-PRG(Surface Reaction Type Pre-Reacted Glass-ionomer)フィラーを含有したバイオアクティブ修復材料による修復を行い,修復1週後(1w)および12週後(12w)の象牙質接着界面周囲の超微小押し込み硬さ,元素組成分析およびSEM観察を行い,う蝕象牙質の再石灰化についてin vitroにおける検証を行った.ヒト抜去大臼歯に乳酸およびう蝕原性細菌を用いて,人工う蝕象牙質を作製した.窩洞内をう蝕検知液で染色し,赤染した象牙質をスチール製ラウンドバーにより1回削除後,次に示す2種類のレジン接着材とコンポジットレジンにより修復を行った.S-PRGフィラー含有バイオアクティブ修復材料として,フルオロボンドシェイクワンおよびビューティフィルフローF02(SO),ネガティブコントロールとしてクリアフィルメガボンドおよびクリアフィルマジェスティLV(MB)を用いた.修復後,リンゲル液を用いて15cm H2Oの歯髄内圧を再現し,1wおよび12w保管した.保管後,試料を半切し,通法に従い鏡面研磨を行い,超微小押し込み硬さ試験機による接着界面周囲の硬さ測定を行った.測定荷重は1mNとし,5μm間隔で200点測定後,さらに100μm間隔で40点測定を行い,1歯につき3部位測定を行った(n=3).硬さ測定値は,t検定および一元配置分散分析,Tukey多重比較(α=0.05)にて統計解析を行った.半切したもう一方の試料を用い,エネルギー分散型X線分析(EDX)による接着界面の元素組成分析およびFE-SEM観察を行った.硬さ測定において,12wでは脱灰の影響を最も強く受けている接着界面から5μm,そしてそこから90μmまでの測定点において,SOがMBより高い硬さ値を示した.またSOにおいては,接着界面から5μmまでの範囲そして80μmまでの測定点で,1wより12wのほうが高い硬さ値を示した.EDXの結果から,MB-1wではCaおよびPの比率が少なかったが,SO-1wでは,SO-12wおよびMB-12wと同程度のCa,Pが確認された.さらに,SOにおいては歯質中にSrの存在する可能性が示唆された.以上の結果より,S-PRGフィラー含有バイオアクティブ修復材料には,象牙質の再石灰化を促進する可能性が示唆された.
  • 松下 美樹子, 畦森 雅子, 前田 英史, 坂井 貴子, 吉田 桐枝, 後藤 康治, 椛島 浩明, 赤峰 昭文
    原稿種別: 原著
    2009 年 52 巻 6 号 p. 483-492
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    2002年に世界歯科連盟(FDI)によって提唱された(FDI Policy Statement)Minimal intervention(MI)の概念に則った歯質保存的修復法(MI修復法)は,健全歯質の削除量を最小にすることにより歯質の脆弱化を回避し,歯の長寿化につながる治療法である.しかしMIの認知状況や臨床現場での応用状況等についての情報が少ないことから,本研究では,MI修復法の臨床応用の実態を把握することを目的として,九州大学病院歯科部門に所属する歯科医師133名に対し,MIに関するアンケート調査を行った.アンケート調査はまず初めに「MIというう蝕治療コンセプトを知っているか否か(MIの認知)」について質問し,次にMIを知っている回答者に対して「日常の臨床において生活歯・失活歯にMI修復法を使用するか否か(MI修復法の適用意向)」について質問した.その後すべての回答者に対し,2枚の症例写真(症例1:生活歯で遠心隣接面に限局したう蝕を有する下顎第二小臼歯,症例2:MODの実質欠損を有する根管充填直後の下顎第一大臼歯)に対し選択する修復法(実際の修復法の選択)およびその選択理由について調査した.その結果,「MIを知っている」と回答した歯科医師は87%(116名)であった.これらの回答者のなかで,「日常の臨床でMI修復法を適用する」と回答したのは,生活歯の場合は69%,失活歯の場合は27%であった.また,「MI修復法を選択する」と回答したのは,症例1において全回答者の59%,症例2において23%であった.さらに,失活歯における「MIの認知」と「実際の修復法の選択」間を除き,「MIの認知」および「MI修復法の適用意向」と「実際の修復法の選択」との間に正の相関関係(p<0.05)が認められた.MI修復法を選択しない主な理由は,生活歯の場合「従来法への慣れ」「二次う蝕の予防」および「保持力の確保」であり,失活歯の場合「歯・歯根の破折防止」および「保持力の確保」であった.これらの結果より,1)MI修復法の普及が失活歯において遅れていること,2)生活歯の場合,MIを認知しているほど,あるいはMI修復法の適用意向が強いほど,実際にMI修復法を適用する確率が大きくなっていたのに対し,失活歯の場合は,MIを認知しているにもかかわらず,MI修復法を選択する確率が非常に小さいことが明らかとなった.
  • 松本 典祥, 茂山 千英子, 泉 利雄, 阿南 壽
    原稿種別: 原著
    2009 年 52 巻 6 号 p. 493-504
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,破壊された根尖部歯周組織の創傷治癒に及ぼすEmdogain® gelの効果について解析することである.ラット下顎第一臼歯の髄腔を電気エンジンにて開拡し,遠心根管のみ#25K型ファイルにてファイリングすることによって,実験的にラット根尖病変が惹起された.そして7日間,開放のまま放置した.その後,遠心根管を機械的に清掃後,ラットを2群に分けた.一方はEMD処置群として,他方は対照としてEMDの担体であるPropylene glycol alginate処置群とした.その後,7,14,28日目にそれぞれ標本を採取し,免疫組織学的に検討した.その結果,EMD群では術後7日目に,TGF-β1またはBMP-2陽性を示すマクロファージの急激な増加が観察され,術後14日目にはセメント質および骨組織の著しい形成が認められた.一方,PGA群では実験期間を通じてTGF-β1またはBMP-2が陽性のマクロファージは少数であり,根尖病変周辺の歯周組織の回復はほとんど認められなかった.これらのことから,EMDの応用により誘導された根尖病変部の治癒においては,TGF-β1やBMP-2が陽性の修復性マクロファージが重要な役割を果たしている可能性が示唆された.
  • 坂田 篤信, 吉嶺 嘉人, 松本 妃可, 西垣 奏一郎, 後藤 千里, 牛島 寛, 佐藤 浩美, 西原 正治, 赤峰 昭文
    原稿種別: 原著
    2009 年 52 巻 6 号 p. 505-512
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    この論文は,歯根破折または穿孔を伴う慢性根尖性歯周炎の2症例において,より正確な診断を可能にした根管用内視鏡を用いた歯内療法について記載している.さらに内視鏡観察下にEr:YAGレーザーを併用することで,最小限の侵襲による治療が可能であった.コーンビームCTや歯科用実体顕微鏡と一緒に用いることで,根管用内視鏡は歯内療法の問題解決に有用な装置となることが示唆された.
  • 永井 旺介, 上田 剛史, 上島 茂明, 榎本 光夫, 大濱 美穂, 荻野 志保, 徳永 幸世, 平嶺 倫子, 武藤 徳子, 長谷 徹, 石 ...
    原稿種別: 原著
    2009 年 52 巻 6 号 p. 513-518
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    この研究では新しい世代のNi-Ti rotary instrumentであるプロテーパーの根管形成効果について,S字形の湾曲を有する規格透明プラスチック根管模型を使用して検討を行った.S字形根管は回転数とトルクを調整可能な低回転のエンジンX-Smartにプロテーパーを装着して形成された.根管は#15のKファイルで穿通後,SX,S1,S2およびF1の4種類のファイルにて形成された.60本の根管がプロテーパーの使用経験のない,6名の術者によって形成された.根管壁の削除量は術前,術後それぞれの画像を実体顕微鏡からコンピューターに取り込み計測を行った.根管形成が終了するまでの時間も計測した.歯冠側および根尖側の湾曲の内側がそれぞれ湾曲の外側より多く削除され,根管は滑らかなフレアー状に形成された.形成本数が増加するに従い,形成に要する時間は順次減少し,5根管形成後の形成時間はほぼ5分程度にまとまった.ファイルの破折は5根管に起き,レッジの形成も5根管にみられた.プロテーパーは初心者においてもS字状根管を形成するには適切であると考えられた.
  • 小西 秀和, 小西 康成, 小西 稔尉
    原稿種別: 原著
    2009 年 52 巻 6 号 p. 519-526
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    歯科医師は,歯冠修復物を除去する際には,その歯の保存治療による延命化を目標において行う.しかし鋳造修復物の除去は難しく,除去後に歯牙(歯根)破折などのトラブルが起こるケースが少なくない.このことから患者に快適で安全・安心な歯科医療を提供するためには,修復物除去の時間短縮(Speedy),除去の確実性(Sure),患者への最小限の侵襲および安全性(Safe)を考慮する必要があると考えられる(3S).そこで本研究では,3Sをクリアできる鋳造修復物の除去方法について臨床的な検討を行った.平成21年5月21日から7月31日までの間に王喜歯科医院に来院した患者のうち,下記の条件で鋳造修復物を除去した歯を対象とし,除去に要した時間,歯牙(歯根)破折や自発痛・打診痛の発現などについて評価した.1.メタルクラウンの除去:FGカーバイドバー#1/2を用いて,歯冠の唇(頬)側面と咬合面の中央部を近遠心へ二分するように最小限の深さでクラウンの金属部のみに切れ込みを入れ,マイナス型ドライバーの先端を適合させて少しずつ捻転し,インレー・クラウンリムーバーを用いて脱離させ除去した.2.メタルインレー・アンレーの除去:FGカーバイドバー#1/2を用いて,歯冠の金属マージン部全周に最小限の深さで切れ込みを入れ,エキスカベーターの先端を適合させて少しずつ捻転しながら脱離させ除去した.3.メタルコア(鋳造ポスト)の除去:FGカーバイドバー#1970を用いて,唇(頬)側面と舌(口蓋)側面のコアの金属マージン部にポストにまで達する深さで切れ込みを入れた.さらにポストコアリムーバーの先端の嘴部をこの二ヵ所の切れ込みに適合させ,金属ポストの方向(歯の中心方向)へ少しずつリムーバーの把握力を加えながら,鋳造ポストを脱離させ除去した.来院患者の鋳造修復物の除去は,上記のいずれかの方法を用いてもほとんどの場合5分以内に除去できた[メタルクラウン:25/26,メタルインレー・アンレー:18/18,鋳造ポスト:18/18(単位:本)].鋳造修復物の種類別の除去時間を比較したところ,メタルクラウン133±82秒,メタルインレー・アンレー78±62秒,鋳造ポスト103±77秒で,メタルインレー・アンレーの除去はメタルクラウンの除去に比較して除去時間が有意に短かった(Mann-Whitney U test,p<0.05).また鋳造ポストの部位別の除去時間を比較したところ,前歯部88±64秒,小臼歯部93±78秒,大臼歯部133±91秒で統計学的有意差はなかった(Mann-Whitney U test,p≧0.05).なお,先端の径の小さいFGカーバイドバー#1/2および#1970を用いることにより,鋳造修復物除去時の歯質の削除による侵襲を可及的に小さくできていた.さらに鋳造ポストの除去にポストコアリムーバーを用いたが,除去後に歯牙(歯根)破折や自発痛・打診痛の発現,歯周ポケットの形成,歯の動揺はほとんど生じていなかった.とりわけ,除去処置前と除去処置から1カ月以上経過後の,鋳造ポスト除去歯の状態を比較すると,除去歯の打診痛および歯周ポケット(プロービング深さ),歯の動揺の状態が有意に改善されていた(Wilcoxon signed rank test,p<0.05).以上のことから,鋳造修復物を除去するほとんどのケースで上記の方法をおのおの適用することにより,迅速・確実・安全(3S)に各種鋳造修復物を除去できる可能性が示唆された.
  • 堀田 正人, 小竹 宏朋, 望月 久子, 岡崎 愛, 大橋 静江, 今出 昌一, 佐野 晃
    原稿種別: 原著
    2009 年 52 巻 6 号 p. 527-533
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    3種類の断面の異なる歯ブラシ刷毛(三角,四角,円形)を使用した新しい片側高度テーパー型歯ブラシの硬さとプラーク除去効果について,先丸加工歯ブラシ刷毛(コントロール:Cont.)を使用した従来型の歯ブラシと比較検討を行った.歯ブラシの硬さ測定は各種歯ブラシ5本について万能試験機(EZ Graph)を用い,座屈強度を測定した.プラーク除去効果は5名の被験者について1週間前に各歯ブラシを渡し,普段の生活のなかで使用してもらった.ブラッシング方法は特に指導せず,試験当日は8時間,ブラッシングしないように我慢してもらい,ブラッシング前後に染色されたプラークをO'Learyのプラークコントロール記録を準用して,プラーク除去率(%)の判定を行った.その結果,刷毛部の座屈強度の平均値は四角が14.1N,三角が15.3N,円形が12.2N,Cont.が46.0Nであった.三角,四角,円形の間には有意差は認められなかった(ANOVA/Scheffe,p<0.05).プラーク除去率は三角が44.2%,四角が42.9%,Cont.が39.0%,円形が21.5%で,三角と四角がCont.に比較して増加する傾向を示した.今後,三角と四角について詳細な研究を行う予定である.
  • 田中 美由紀, 北迫 勇一, 二階堂 徹, 半場 秀典, 池田 正臣, 田中 智子, 滝井 寛, 釜阪 寛, 田上 順次
    原稿種別: 原著
    2009 年 52 巻 6 号 p. 534-542
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    馬鈴薯デンプンより酵素処理した分解物から抽出されたリン酸化オリゴ糖カルシウム(Phosphoryl Oligosaccharides of Calcium,以下,POs-Ca)は,水溶性がきわめて高く,デンタルガム(ポスカ®,江崎グリコ)の再石灰化促進成分として配合利用されている.POs-Caは,in vitroにおいて,う蝕原性細菌であるミュータンスレンサ球菌の栄養源にならないこと,ショ糖の発酵によるプラーク内pH値の低下を抑制すること,エナメル質初期う蝕の再石灰化を促進することが報告されている.しかし,実際の口腔内環境下におけるPOs-Caの再石灰化効果についての報告は少なく,特に,下顎臼歯頬側への口腔内装置装着での再石灰化効果および再石灰化部の微細構造変化に関する報告はない.そこで本実験では,ヒト口腔内環境下における再石灰化効果および微細結晶構造変化を明らかにするために,POs-Ca配合ガムならびに口腔内装置を用いた群間並行臨床試験を実施し,Transversal Microradiography(以下,TMR)法を用いて観察し,その再石灰化効果について定量的に評価するとともに,高輝度エックス線を用いてハイドロキシアパタイト結晶量の定量的な変化およびその配向性を測定し,再石灰化前後におけるエナメル質初期う蝕のミネラル量変化と微細結晶構造変化について検討を加えた.被験者20名に,エナメル質初期う蝕サンプルを取り付けた口腔内装置を装着した状態で,1粒あたりPOs-Caを2.5%配合したガムまたは非配合のガムを1回2粒,1日3回,14日間摂取させた.ミネラル量の変化についてはTMR法を,ハイドロキシアパタイト結晶量の変化については,広角エックス線を用いて解析し,得られたデータはt検定を用いて危険率5%にて検定を行った.その結果,POs-Ca配合ガム摂取群では,POs-Ca非配合ガム摂取群に比べ有意に高いミネラル密度の回復が認められ,また,POs-Ca配合ガム摂取群はPOs-Ca非配合ガム摂取群に比べ有意に高い結晶量の回復が認められた.さらに,ハイドロキシアパタイト結晶量の回復した部位において,健全部と同じ配向性を有した部位が認められた.以上より,ヒト口腔内環境下において,POs-Ca配合ガムを摂取することで,エナメル質初期う蝕の再石灰化が促進されることが示唆された.また,その再石灰化は安定したハイドロキシアパタイト結晶の形成によるものと推察された.これにより,POs-Ca配合ガム摂取を行うことは,エナメル質初期う蝕における再石灰化レベルを,配向性の整ったハイドロキシアパタイトの再結晶化まで引き上げ,より健全歯質に近接した状態まで回復することが期待され,食生活習慣から介入可能なセルフケアの一手法として有効であると考えられた.
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