日本歯科保存学雑誌
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53 巻 , 2 号
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原著
  • 吉田 武史, 井上 直樹, 小倉 由佳理, 瀧本 正行, 村山 良介, 安藤 進, 宮崎 真至, 宮 直利, 斎藤 充良
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 2 号 p. 99-105
    発行日: 2010/04/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    間接修復物の装着材として,被着面の前処理を必要としない自己接着性レジンセメントが開発,市販されている.これらのレジンセメントは,セラミクスを用いた間接修復物の装着にも使用されているものの,その接着安定性については不明な点が多い.そこで著者らは,自己接着性を有するレジンセメントのセラミクスおよび歯科用合金に対する接着強さについて,剪断接着強さ試験,試験後の破壊形式の判定および走査電子顕微鏡観察から検討した.さらに,セラミクス用として開発されたプライマーを併用し,これがレジンセメントの接着性に及ぼす影響についても検討を加えた.その結果,自己接着性レジンセメントは,対照としたレジン強化型グラスアイオノマーセメントと比較して有意差は認められないものの,高い接着強さを示した.また,接着試験後の破壊形式は,いずれのレジンセメントにおいてもプライマーを併用しないと界面破壊がその大勢を占めた.自己接着性レジンセメントとプライマーの併用は,接着強さには影響を及ぼさなかったものの,破断面の様相は複雑なものとなった.
  • 畦森 雅子, 松下 美樹子, 百武 弘登, 前田 英史, 坂井 貴子, 齋藤 桐枝, 後藤 康治, 椛島 浩明, 赤峰 昭文
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 2 号 p. 106-114
    発行日: 2010/04/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    われわれは前報において,MI(ミニマルインターベンション)に基づいた歯質保存的修復法(MI修復法)の普及は,生活歯に比べ失活歯において遅れていることを示した.さらに生活歯においては,「MIの認知」と「実際の症例に対する修復法の選択」との間に正の相関があるのに対し,失活歯ではそのような相関は認められなかった.しかし,生活歯においても,MIを認知しMI修復法の適用意向も強い歯科医師で,MI修復法を選択しない回答者もあった.そこで本研究では,実際の症例に対する修復法の選択とその選択理由との関連性について,判別分析を用いて解析し,MI修復法の普及を妨げている要因について検討した.九州大学病院歯科部門に所属する歯科医師133名に対し,MIに関するアンケート調査を行った.2枚の症例写真(症例1:生活歯で遠心隣接面に限局したう蝕を有する下顎第二小臼歯,症例2:MODの実質欠損を有する根管充填直後の下顎第一大臼歯)が提示されている質問票を用い,「MIの認知」「MI修復法の適用意向」および症例1・症例2に対し選択する修復法(「実際の修復法の選択」)とその選択理由について調査した.収集したデータに対し,判別分析を実施し,MI修復法および従来型修復法を選択した回答者の選択理由の特徴を把握し,MI修復法の普及を妨げている要因について検討した.その結果,MI修復法への選好が強い回答者に比べ,従来型修復法を選択した回答者は,生活歯の場合,「二次う蝕の予防」および「保持力の確保」を,失活歯の場合,「歯・歯根の破折防止」および「保持力の確保」を選択理由として多く指摘していた.これらの結果は,MI修復法の普及を妨げている要因は,接着材料の接着性能への懸念に加え,生活歯ではMI修復法を応用した場合のう蝕罹患性,失活歯では歯・歯根破折への懸念であることを示唆するものであった.さらに判別分析の結果,失活歯の場合,「残存歯質の保存」という選択理由だけで,選択する修復法を判別できることが明らかとなった.すなわち,従来型修復法への選好が強い回答者はこの選択理由をほとんど指摘していないのに対し,MI修復法への選好が強い回答者の大半がこの選択理由を指摘していた.したがって,MI修復法の普及のためには,接着材料を応用したMI修復法の有効性に関するエビデンス,および歯の長寿化にとって残存歯質の保存が重要であることを示すエビデンスの蓄積が必要である.
  • 黒川 弘康, 天野 紫乃, 瀧本 正行, 村山 良介, 浅野 和正, 宮崎 真至, 松崎 辰男, 市石 芳博
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 2 号 p. 115-122
    発行日: 2010/04/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    審美性および耐久性に優れた修復処置を確立する基礎的研究として,市販の光重合型コンポジットレジン9製品の衝突摩耗性について検討した.テフロン型にレジンペーストを填塞し,透明マトリクスを介して60秒間照射し,重合硬化させた.次いで,SiCペーパーの#2,000を用いて,照射面から0.5mm削除し,これを衝突摩耗用試片とした.実験条件としては,衝突摩耗試験機に装着したステンレス製ジグを用いて,落下距離5mm,水平的往復距離2mmおよび荷重5kgfの条件で衝突摩耗を行い,1回落下と1回水平往復を1サイクルとして50,000サイクル繰り返した.試験終了後の試片について,レーザー顕微鏡を用いて最大摩耗深さを測定し,これを摩耗量とするとともに,SEM観察を行った.その結果,以下の結論を得た.1.供試した光重合型コンポジットレジンでの衝突摩耗試験後の摩耗量は,83.9〜111.4μmと,製品によって異なるものであった.また,臼歯部用光重合型コンポジットレジンの摩耗量は,79.2μmおよび109.0μmであり,有意差が認められた.2.衝突摩耗試験後の光重合型コンポジットレジンのSEM観察からは,製品によって異なった表面性状を呈していたところから,摩耗量の違いを裏付けるものであった.
  • 渡辺 久, 萩原 さつき, 和泉 雄一
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 2 号 p. 123-132
    発行日: 2010/04/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    マスティックは,コショウボクから採取した樹脂である.慢性歯周炎に対する音波振動歯ブラシ(SB)とマスティック配合歯磨剤(MD)の臨床的・細菌学的効果をRandomized Control Test(RCT)により検討した.慢性歯周炎患者22名を無作為に試験群(SB+MD)11名(男性6名,女性5名,平均年齢:63.2歳)とプラセボ群(SB+マスティック非配合歯磨剤)11名(男性4名,女性7名,平均年齢:55.5歳)に振り分け,4週間モニターを実施した.被験部位は1名当たり3部位とした.Base line,2,4週目に臨床パラメーターによる臨床検査,Base lineと4週目にreal time PCR定量法による細菌検査を実施した.被験細菌はPorphyromonas gingivalis,Aggregatibacter actinomycetemcomitans,Treponema denticola,Tannerella forsythensis,Prevotella intermediaである.被験者の口腔症状には両群間で有意差はなかった.臨床指標のうち,腫脹,発赤,出血,プラーク指数,排膿について,両群ともにBase lineに比べ2週目および4週目で有意な改善がみられた.群間比較では出血の項目で,試験群はプラセボ群に比べて有意に優れていた(p<0.05).改善率でみると,試験群はプラセボ群に比べて,腫脹,出血,プラークの項目で有意に大きかった(p<0.05).細菌については,試験群のみに,Base lineに比べ4週目でP.gingivalisおよびRed Complexについて,総菌数に対する比率が有意に減少した(p<0.01,p<0.05).本研究の結果より,音波振動歯ブラシとマスティック配合歯磨剤が歯周病原性細菌数の抑制を介して,慢性歯周炎の炎症の軽減に有用であることが示唆された.
  • 大森 かをる, 池島 巌, 伊藤 祐子, 齋藤 渉, 秋本 尚武, 桃井 保子
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 2 号 p. 133-139
    発行日: 2010/04/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    歯面コーティング材は,歯質を切削することなく短時間で歯の色調を改善することを目的に開発され,未切削エナメル質のほか金属面,変色したコンポジットレジンやレジン前装冠の前装部にも適応可能である.歯面コーティング材の耐用期間は,1〜3ヵ月とされている.そこで本研究では,現在市販されている2種類の歯面コーティング材を臨床的方法により仕上げた際の色調安定性について,長期臨床経過を想定した加速変色試験法によって評価した.実験に供した歯面コーティング材は,ビューティコート(松風)とホワイトコート(クラレメディカル)で,コンポジットレジンのクリアフィルAP-Xを,歯面コーティング材塗布面およびコントロールとして使用した.直径15mm,厚さ1mmのコンポジットレジンディスクに,ビューティコートのホワイトベースを臨床使用条件に従って塗布しグロスメーカーとグロスリファインで仕上げた標準仕上げ群,ホワイトベースを塗布・照射後,乾燥ガーゼで未重合層を除去し,グロスリファインを塗布し専用バフで研磨をした即日仕上げ群,ホワイトベースを塗布・照射後,グロスメーカーで被覆し,照射を行ったグロスメーカー群,ホワイトコートのベースコートをメーカー指示に従って塗布・光照射し未重合層を除去した後,トップコートで仕上げたホワイトコート群および未処理のAP-X群の5条件につき,3試料ずつ試料を作製した.ディスクの半側を遮光のためにアルミ箔で被覆し,ISO4049の色調安定性試験法に準拠して,キセノン耐光試験機(Suntest CPS+ Type X:45,Heraeus,Germany)に試料を設置し,37℃水中下24時間,150,000Lux±10%の光照射を行った.施術後の試料の測色は,分光式色彩計(Spectro Color Meter SE-2000,日本電色)で,グレー,白,黒の背景色におけるCIE L*a*b*を測定し,遮光側と露光側の色差ΔE*abおよびTP値を算出し,比較検討した.その結果,以下の結論を得た.1.露光側と遮光側の色差ΔE*abは,グロスメーカー群が4.29で最も大きい値を示し,ホワイトコート群が3.40,即日仕上げ群が3.20,標準仕上げ群が2.46であった.2.歯面コーティング材は,露光することにより黄色方向に変色する傾向を示した.3.即日仕上げ群において,露光後に透明性の変化が認められた.
  • 金子 実弘, 金子 友厚, 砂川 光宏, Uraiwan CHOKECHANACHAISAKUL, 河村 隼, 須田 英明
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 2 号 p. 140-146
    発行日: 2010/04/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    著者らは,これまでラット臼歯歯髄刺激に対し応答性を示す歯髄駆動ニューロン(tooth pulp driven-neurons:TPDNs)を内側視床核群の内側背側(MD)核内に同定し,細神経興奮性物質かつ起炎性物質であるallyl-isothiocyanate(mustard oil:MO)を歯髄に適用すると,MD核内TPDNsの応答性の増強が生じ,中枢性感作が成立することを報告した.また,この過程にはGlutamate N-methyl-D-aspartate型受容体(NMDAR)が関与している可能性が高いと考えられた.本研究では,ラット歯髄へMOを適用し,MD核内でNMDARの機能がどのように活性化するかを検索することを目的とし,神経生理学的および分子生物学的に研究を実施した.生理学的検索から,歯髄へのMO適用により増強されたMD核内のTPDNsの反応性は,MD核内TPDN記録部位周囲への非競合的NMDAR拮抗薬(MK-801)の微小投与(200nmol/0.5μl)により,有意に減弱された.さらに,分子生物学的検索の結果から,視床におけるNMDAR mRNAの発現はMO臼歯歯髄刺激により増強され,MK-801の微小投与により減弱された.以上の結果より,視床MD核内におけるTPDNsの活性化にNMDARが強く関与していることが示された.
  • 岩田 有弘, 林原 久盛, 保尾 謙三, 恩田 康平, 善入 寛仁, 福井 優樹, 田中 芳人, 吉川 一志, 山本 一世
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 2 号 p. 147-158
    発行日: 2010/04/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    今回,われわれはEr,Cr:YSGGレーザーの硬組織切削に最適な照射条件を確立するため,各種照射条件(照射出力,周波数,水および空気量)により照射された除去歯質量(直径,深さおよび削除体積量)の計測および歯質の観察を行い,検討した.被験歯として,健全ヒト大臼歯を使用し,エポキシ樹脂に包埋後,エナメル質あるいは象牙質をモデルトリマーを用いて露出し,耐水研磨紙にて#2,000まで研磨を行い,試料とした.Er,Cr:YSGGレーザーの水および空気量をそれぞれ30あるいは60%に固定し,照射出力を0.25,1.00,3.00,5.00Wに,また周波数を10,20,50Hzにそれぞれ設定し,照射距離1mmにて1秒間照射後,直径,深さおよび削除体積量を計測し,SEM観察を行った.その結果,エナメル質,象牙質のいずれにおいても,照射出力を高くすることにより,また周波数を下げることにより,削除量は増大した.エナメル質では照射出力5.00W,周波数20Hz,象牙質では照射出力3.00W,周波数20Hzという条件において効果的な除去が可能となったが,熱による影響を受けた像やクラックが観察された.Er,Cr:YSGGレーザーの出力をエナメル質では照射出力5.00W,周波数20Hz,象牙質では照射出力3.00W,周波数20Hzに設定し,水および空気量を変化させ,照射距離1mmにて1秒間照射後,直径,深さおよび削除体積量を計測し,SEM観察を行った.エナメル質においては,水量は95%,空気量は100%の設定で,また象牙質においては,水量は75%,空気量は100%の設定で最も除去効率が優れていた.しかしながら,エナメル質,象牙質のいずれにおいても,熱による影響を受けた像やクラックが観察された.今回のEr,Cr:YSGGレーザーにおける照射歯質に関する研究の結果,以下の結論を得た.1.エナメル質,象牙質双方において,出力を高くすることにより,また周波数を下げることにより削除量は増大した.2.エナメル質,象牙質双方において,熱による影響を受けた像やクラックが観察された.3.エナメル質では照射出力5.00W,周波数20Hzでレーザー切削面における直径,深さおよび削除体積量が最大となった.また象牙質では照射出力3.00W,周波数10Hzでレーザー切削面における直径および削除体積量が最大となった.4.水および空気量はエナメル質においては,水量は95%,空気量は100%の設定で,また象牙質においては,水量は75%,空気量は100%の設定でレーザー切削面における直径,深さおよび削除体積量が最大となった.
  • 石村 瞳, 坂上 斉, 花田 隆周, 吉岡 隆知, 須田 英明
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 2 号 p. 159-165
    発行日: 2010/04/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,レジン系シーラーを用いた根管充填の封鎖性について検討することである.被験歯として,抜去後水中保管したヒト下顎小臼歯34本を用いた.歯冠を切除し,歯根長を12mmに調整した.被験歯のうち2本をネガティブコントロールとした.ネガティブコントロールには根管形成を行わず,根管上部をパラフィンワックスにて封鎖した.残り32本は無作為に8本ずつA〜Dの4群に分類し,根管形成および根管充填を行った.A群:.10テーパーでの根管形成後,ガッタパーチャポイント(.02テーパー)+キャナルス®Nを用いて側方加圧充填にて根管充填.B群:.10テーパーでの根管形成後,ガッタパーチャポイント(.02テーパー)+MetaSEAL™を用いてシングルポイント充填法にて根管充填.C群:.06テーパーでの根管形成後,ガッタパーチャポイント(.02テーパー)+MetaSEAL™を用いてシングルポイント充填法にて根管充填.D群:.06テーパーでの根管形成後,ガッタパーチャポイント(.06テーパー)+MetaSEAL™を用いてmatched taper single cone techniqueにて根管充填.根管充填終了後,0.06%メチレンブルー溶液を注入したポリプロピレンチューブを歯根上部に取り付け,根尖部2mmをガラス容器内の精製水に浸漬した.浸漬1,4,8,15日および30日後に,歯根を通って精製水中へ溶出した色素の吸光度をマイクロプレートリーダーにて測定し,2-way ANOVAおよびTukey-Kramer法を用い有意水準5%にて統計学的解析を行った.次に,すべての被験歯より1mm幅の歯根横断面を作製し,デジタルマイクロスコープ倍率100倍で観察および撮影後,得られた画像に画像処理ソフトを用いて各断面のシーラー占有率を求め統計学的解析を行った.色素漏洩について,根管充填材の種類および日数の経過に関して統計学的有意差が認められた(p<0.05).また,30日後の漏洩量はB群がほかの3群よりも有意に多かった(p<0.05).切断面の観察において,A,B群およびD群ではすべての切断面にて色素侵入を認めたが,C群では全く色素侵入を認めなかった.根尖5mmおよび6mmの断面ではA,B群間,A,C群間,B,D群間,C,D群間においてシーラー占有率に統計学的有意差を認めた.レジン系シーラーを用いた根管充填においては,シーラー占有量が根管封鎖性に影響を及ぼすことが示唆された.シーラー占有量が少ない場合,従来型のシーラーでもレジン系シーラーを用いた場合と同様の根管封鎖性が得られることが示唆された.また,より太いポイントを使用してシーラー占有量を少なくすることを目的としたD群は,シーラー占有量を最小限にする点では有効であったが,根管封鎖性の向上に関してはA,C群と有意差を認めず,有効とはいえなかった.
  • 坂田 篤信, 吉嶺 嘉人, 松本 妃可, 西垣 奏一郎, 後藤 千里, 牛島 寛, 佐藤 浩美, 磯辺 量子, 西原 正治, 赤峰 昭文
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 2 号 p. 166-173
    発行日: 2010/04/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    この論文は,分岐根管を伴う下顎側切歯の慢性根尖性歯周炎の2症例において,より正確な診断を可能にした根管用内視鏡を用いた歯内療法について記載している.さらに内視鏡観察下にEr:YAGレーザーを併用することで,最小限の侵襲による治療が可能であった.コーンビームCTや歯科用実体顕微鏡との併用で,根管用内視鏡は歯内療法の問題解決に有望な装置である可能性が示唆された.
  • 高橋 知多香, 松井 智, 和田 陽子, 小峯 千明, 三浦 浩, 高瀬 俊彦, 宇都宮 忠彦, 辻本 恭久, 松島 潔
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 2 号 p. 174-181
    発行日: 2010/04/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,クロラミンTの根管洗浄剤としての機能を明らかにすることである.クロラミンTおよびH2O2から発生したフリーラジカルが,ラット腹直筋におけるタンパク質溶解に及ぼす影響や,ヒト歯根膜培養細胞を用いた細胞毒性試験について,検討を行った.ラット腹直筋の湿重量変化において,クロラミンTおよびH2O2を1時間作用させたところ,5.0,10.0%のクロラミンTおよび3.0%H2O2において,湿重量の減少が認められた.しかしながら,0.5,1.0%クロラミンTおよび1.0%H_2O_2を作用させても,湿重量変化は認められなかった.pH値測定において,クロラミンTのpH値は,6.22(0%),6.85(0.5%),7.83(1.0%),9.33(5.0%),9.97(10.0%)を示した.ラット腹直筋をクロラミンTに作用させたとき,pH値は,6.30(0%),7.07(0.5%),7.45(1.0%),7.52(5.0%),7.51(10.0%)に変化した.またH2O2では,6.22(0%),5.20(1.0%),4.65(3.0%)を示した.ラット腹直筋にH2O2を作用させることで,6.54(0%),6.84(1.0%),6.72(3.0%)に変化した.不対電子の検出を行うelectron spin resonance(ESR)法を用いた,フリーラジカルの検出において,クロラミンTでは,0.5%>1.0%>5.0%>10.0%>0%の順で,HClOやほかの酸化還元物質と反応して捕捉されるDMPO-Xの増加が認められた.一方,H2O2では,濃度依存的にOH・の増加が認められた.ラット腹直筋をクロラミンTに作用させたとき,タンパク質構造が破壊され,メチル基由来のカーボンセンターラジカル(C・)が認められたが,H2O2に作用させたとき,ESRシグナルの変化は認められなかった.ヘマトキシリン・エオジン染色において,ラット腹直筋は,クロラミンTおよびH2O2の濃度依存的に筋線維の萎縮,結合組織の融解および横紋構造の消失が認められた.ヒト歯根膜培養細胞を用いた24時間後の細胞毒性試験において,細胞生存率はクロラミンTでは,100%(0%),38.5%(0.5%),33.6%(1.0%),33.6%(5.0%),23.0%(10.0%)であったのに対し,H2O2では,100%(0%),14.9%(1.0%),14.7%(3.0%)であった.これらの結果から,クロラミンTは,H2O2と比較し,組織傷害性および細胞毒性が低い根管洗浄剤であり,高濃度ではタンパク質溶解を促進することが示唆された.
  • 森 梨江, 二瓶 智太郎, 大橋 桂, 倉田 茂昭, 近藤 行成, 好野 則夫, 寺中 敏夫
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 2 号 p. 182-190
    発行日: 2010/04/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    水に易溶性で歯磨剤に添加可能な1分子内にカルシウムと結合するリン酸エステル塩基と,フッ化炭素鎖および炭化水素鎖を有するハイブリッド界面活性剤であるsodium phenyl 1-[(4-perfluorohexyl)phenyl]-1-hexylphosphate(F6H5OP)を新規に合成した.F6H5OPで処理したハイドロキシアパタイト焼結体(HAP pellet)ならびにハイドロキシアパタイト粉末(HAP powder)を用い,表面自由エネルギーおよびタンパク質の吸着抑制能を測定し,プラーク形成抑制効果を基礎的に検討した.表面自由エネルギーは,HAP pelletを1.0〜5.0mmol/lのF6H5OP水溶液で処理後,直後および37℃水中に3,12時間保管後に測定した.HAP powderに対するF6H5OPの吸着量は,F6H5OP水溶液にHAP powderを加えて5〜60分反応後高速液体クロマトグラフィーにて測定した.タンパク質の吸着抑制効果は,F6H5OP水溶液でそれぞれ改質したHAP powderを1,000μg/2mlのホスビチンに加えて10分〜12時間反応させ,ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した.また,改質HAP powderの水による洗浄に対する耐久性と,洗浄後のホスビチン吸着抑制効果についても検討した.F6H5OPで改質されたHAP pelletの表面自由エネルギーは水中保管12時間においてもコントロールと比較して有意に低い値であった.HAP powderへのF6H5OPの吸着量は,改質開始5分で70〜80%,60分後には80〜95%であった.改質HAP powderに対するホスビチンの吸着量は,2時間後で146〜276μgとコントロールと比較して有意に低い値を示した.また,改質HAP powder 2回洗浄後のホスビチン吸着量は反応12時間後も約40%の抑制を受けた.以上の結果より,F6H5OPによるハイドロキシアパタイトの改質は,表面に撥水性および撥油性,ならびにホスビチンの吸着抑制効果を12時間以上にわたって維持し,プラークの歯面付着を抑制しうることが示唆された.
  • 田村 大輔, 作 誠太郎, 山本 宏治, 堀田 正人
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 2 号 p. 191-206
    発行日: 2010/04/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    当教室ではこれまで酸反応性フッ素含有ガラスフィラー(S-PRGフィラー)を含む市販コンポジットレジン(ビューティフィル,松風)に対して抗プラーク性を確認した.その抗プラーク性には唾液成分が関与し,レジン表面に形成される構造物を元素分析したところ,S-PRGフィラーの主要組成であるAl,Si,Srが検出された.そこで本研究では,S-PRGフィラー含有コンポジットレジン(S-PRGレジン)と抗プラーク性メカニズムをさらに解明するために,S-PRGレジンおよびS-PRGフィラーに吸着する特異的唾液タンパクを検索する目的で,SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて,エナメル質に形成されるペリクルとのタンパク組成およびそれらの吸着性を比較検討し,さらにin vivoにおけるタンパク吸着性を金コロイド標識抗体法を用いて検索した.その結果,口腔内に装着したS-PRGレジンおよびベースレジン表面に構造物が確認されたものの,その構造物の分析結果に含まれる元素組成(F,Al,Si,Sr)に異なりを認めた.また,プラークの形成に差が認められ,S-PRGレジン表面へのプラークの付着は部分的に付着を認める局在傾向にあったのに対し,ベースレジンにおいては成熟プラークの形成を認めた.電気泳動の結果では,2時間浸漬条件にてS-PRGレジンに特徴的なタンパク吸着(約25kDa以下)が観察された.また,フィラー自体を対象とした電気泳動結果では,S-PRGフィラー,およびMulti Functionalガラスフィラー(MFガラスフィラー)のみに約14kDaの唾液タンパクが特異的に吸着する傾向がみられた.さらに,金コロイド抗体標識法にてS-PRGレジン表面に優位に吸着したタンパクはCystatin-CとLysozymeであった.本研究において,S-PRGレジンをはじめとする供試材料に対して吸着する唾液タンパクを比較したところ,2時間浸漬条件下でS-PRGレジンに特徴的なタンパク吸着(約25kDa以下)が確認され,この結果はエナメル質に吸着する唾液タンパクと異なる傾向にあった.また,金コロイド抗体標識法においてS-PRGレジン表面に優位に吸着したタンパクはCystatin-CとLysozymeであった.これらの結果は,in vitroでのS-PRGレジンおよびS-PRGフィラーの電気泳動での結果に類似していた.以上のことから,これまでの一連の研究で得られたS-PRGレジンの抗プラーク性に,唾液タンパクのCystatin-CおよびLysozymeが関与していることが示唆された.
  • 藤原 英明, 八重柏 隆, 畠山 節子, 武田 泰典, 石平 洋二, 國松 和司
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 2 号 p. 207-213
    発行日: 2010/04/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    インターロイキン(IL)-6は,組織の障害や細菌感染に対する宿主応答の主要なメディエーターで,主要な炎症性サイトカインであり,病的炎症部位で高濃度に検出される.近年,齲蝕などで失われた象牙質・歯髄複合体の再生に線維芽細胞増殖因子(FGF)-2を臨床応用する研究が報告されているが,歯髄細胞が産生するFGF-2を調節する因子やメカニズムについてはほとんど解明されていない.そこで本研究では,ヒト歯髄細胞のFGF-2発現に及ぼすIL-6の作用について検討した.ヒト培養歯髄細胞にIL-6(0〜10ng/ml)を添加し,3週間培養後にFGF-2のmRNA発現をreal-time PCR法にて検索した.得られた定量値を,一元配置分散分析法による統計学的解析にて比較検討した.また,タンパク質の局在を調べるために免疫組織化学的染色を行った.その結果,IL-6は培養歯髄細胞のFGF-2 mRNA発現を抑制し,さらに免疫組織化学的染色においても,IL-6添加群では非添加群と比較してFGF-2の染色性が減少していた.以上より,IL-6が歯髄細胞中のFGF-2発現を抑制することが明らかとなった.
  • 雨宮 傑, 足立 圭司, 赤松 佑紀, 西垣 勝, 大迫 文重, 山本 俊郎, 金村 成智
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 2 号 p. 214-221
    発行日: 2010/04/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    歯周病などで失われた歯周組織の再生は大きな目標である.近年,歯周組織再生に重要と考えられている歯根膜組織を採取し,in vitroにて培養・増殖させ得られた歯根膜由来細胞を基質と組み合わせて移植することで,歯周組織が再生される報告を散見する.これまでに歯根膜由来細胞の培養にさまざまな基質を用いる研究がなされているが,理想的な歯周組織の再生のための基質はまだ開発されておらず,また,基質上における歯根膜由来細胞の評価はなされていない.そこでわれわれは,移植可能な培養歯根膜由来細胞シートの開発を念頭に,生物学的材料としてさまざまな医療分野で利用されている羊膜を基質として,歯根膜由来細胞の培養を行い,免疫組織化学的な検討を加えた.羊膜は,帝王切開時の胎盤より採取したものを研究に供した.また歯根膜組織は,便宜抜歯により得られた抜去歯歯根より採取した.得られた歯根膜組織の初代培養を行い,3〜4代継代したものを歯根膜由来細胞とした.得られた細胞を羊膜上に播種し,約2週間の培養を行い,作成した羊膜上培養歯根膜由来細胞は,細胞増殖マーカーであるKi-67,間葉系マーカーであるvimentin,デスモソームに対するマーカーであるdesmoplakinおよびタイト結合に対するマーカーであるzonula occludens protein-1(ZO-1)のそれぞれについて免疫染色を行った.歯根膜由来細胞は培養開始後約2週間で,羊膜上にて単層構造を示し,蛍光抗体法にてKi-67およびvimentin陽性細胞の局在を認め,desmoplakin,およびZO-1の発現を認めた.歯根膜由来細胞は羊膜上においても増殖し,なおかつ歯根膜様の性質を保持している可能性が考えられ,デスモソームおよびタイト結合といった強固な細胞間接着装置が存在することが示された.以上より,羊膜は歯根膜由来細胞の培養に適当な足場(基質)を形成し,また歯根膜由来細胞は個々の細胞ではなく,羊膜上にて1枚の細胞シートを形成しているものと考えられた.
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