日本歯科保存学雑誌
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ISSN-L : 0387-2343
53 巻 , 3 号
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総説
原著
  • 鈴木 勝, 向井 義晴, 藤野 富久江, 寺中 敏夫
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 3 号 p. 230-237
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    茶葉にはカテキンのほか,比較的多量のフッ化物が含有され,齲蝕予防効果があることが報告されている.本研究では,芳香族系合成吸着樹脂によりカテキン画分を除去した非吸着画分の緑茶抽出物(PF-4,フッ化物濃度3,900μg/g)が象牙質初期脱灰病巣の再石灰化に与える影響についてin vitroで検討した.凍結保存したウシ下顎中切歯の歯根部象牙質面上に1×3mmの被験面を設定した.基準となる表層下脱灰病巣はゲルおよび脱灰液(1.5mmol/l CaCl2,0.9mmol/l KH2PO4,25mmol/l酢酸溶液,0.4ppm F,pH5.0)を用いる二層法で7日間浸漬することにより作製した.再石灰化は1.5mmol/l CaCl2,0.9mmol/l KH2PO4,130mmol/l KCl,20mmol/l Hepes緩衝液(pH7.0)に茶抽出物を終濃度がw/vで0%(陰性対照),0.025%,0.05%,0.1%になるよう添加した.また,陽性対照としてNaFを1ppm Fになるよう添加した群も設定した.試料を各再石灰化溶液に37℃で14日間浸漬した後,厚さ300μmの薄片を切り出し,顕微エックス線装置を用いてtransversal microradiography(TMR)撮影後,分析ソフトを使用してミネラルプロファイル,ミネラル喪失量(IML)および病巣深度(LD)を測定した.平均ミネラルプロファイルでは,基準病巣に比較しすべての再石灰化群で明瞭なミネラル量の上昇が認められ,特にPF-4添加全群では過再石灰化を示唆するような様相も認められた.IMLおよびLDにおいても再石灰化群では基準病巣に比較し有意に低い値を示し,なかでもPF-4を0.025%および0.05%添加した群では病巣体部も認められず,陰性対照群および陽性対照群に比較して有意に再石灰化が亢進していた.以上の結果から,茶抽出物PF-4は,唾液などのカルシウムイオンおよびリン酸イオンを含む液相中において含有するフッ化物および有機質の働きにより,再石灰化を効果的に誘導,促進することが示唆された.
  • 森 梨江, 大橋 桂, 二瓶 智太郎, 近藤 行成, 好野 則夫, 寺中 敏夫
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 3 号 p. 238-243
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究室では,細菌性プラークの付着,形成ならびに脱灰を抑制し,齲蝕および歯周疾患を予防することを目的として歯面改質剤を開発,研究を進めてきた.これまでに,長いフッ化炭素鎖をもつシランカップリング剤1H,1H,2H,2H-henicosafluorododecyltriisocyanatosilane(10F2S-3I),リン酸エステル塩型ハイブリッド界面活性剤sodium 1-(4-heptadecafluorooctyl-phenyl)hexylphenylphosphate(FH5),ならびにセルフエッチング効果のある新規界面活性剤1-[4-(perfluorooctyl)phenyl]hexylphosphate(F8H5P)を用い,エナメル質表面を改質することが可能であると報告した.今回は,これら改質剤の生体為害作用の有無を細胞毒性試験により評価した.20mmol/lに調製したFH5およびF8H5P,さらに3mmol/lに調製した10F2S-3Iで表面を改質したハイドロキシアパタイトディスクを細胞培養液に浸漬し,72時間,37℃,5%炭酸ガス培養器内に入れ抽出した.その後,抽出液のみを取り出し,これを100%抽出液とし,さらに培養液で2段階希釈し50%および25%試験液とした.培養は24ウェルマルチウェルプレートの各ウェルに1×102/mlに調製したチャイニーズハムスター肺由来繊維芽細胞を0.5mlずつ播種し,5%炭酸ガス培養器内にて18時間培養した.培養後,100%抽出液または各濃度の試験液0.5mlを加え培養し,5日後にギムザ染色を行った.細胞毒性評価は,50%コロニー形成阻害濃度(IC50)を求めた.その結果,FH5のIC50は75%であった.F8H5Pおよび10F2S-3Iは100%抽出液においても細胞のコロニー形成を阻害せず,IC50は>100%であった.したがって,F8H5Pと10F2S-3Iには細胞毒性が認められなかった.
  • 関 秀明, 小川 正明, 加藤 喜郎
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 3 号 p. 244-256
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    フッ素徐放性材料から放出されるフッ素イオンは,窩壁および周囲歯質に拡散し,耐酸性向上,脱灰病巣の再石灰化促進効果など,歯質強化や修復後の二次う蝕抑制に有効に作用することが知られている.近年これらの効果を期待して,フッ化物を含有する修復材料が開発されている.本研究では,フッ素徐放性を有する修復材料を用いてこれらの修復材の辺縁封鎖性,および周囲歯質に対するフッ素の取り込みについて観察を行い,フッ素徐放(リリース)能やフッ素取り込み(リチャージ)能について検討を行った.ウシ下顎前歯の唇側歯頸部に,近遠心径5.0mm,切縁歯頸側径3.0mm,深さ3.0mmの歯頸部椀型窩洞を形成した.Beautifil®とImperva Fluoro Bond®(松風,BF),Reactmer®とReactmer Bond®(松風,RR),Clearfil® STとClearfil® Mega Bond®(クラレメディカル,CM),Fuji II LC Capsule®とCavity Conditioner(ジーシー,F II),HY-Bond Glasionomer-F®(松風,HY)を,メーカー指示の方法に従って填塞した(n=5).48時間後仕上げ研磨を行い,修復物表面を除く全歯面にネイルエナメルを塗布してマスキングを行った.試料はコントロールとして14日間37℃蒸留水中に保管したC群と,同保存期間中,24時間ごとにフッ素濃度1,000ppmのフッ化ナトリウム溶液に5分間浸漬,および4℃と60℃のサーマルサイクリングを2,500回行った群をF群とし,それらの試料に色素浸透試験を行った.その後,窩洞中軸部を縦断して両側切断面の窩壁総距離と色素浸透距離を計測し,色素浸透距離率を百分率で算出して辺縁封鎖性の比較検討を行った.その後,窩洞内の窩縁部エナメル質,窩縁部象牙質および窩底部象牙質についてEPMAによる線分析を行って,歯質へのフッ素の取り込み状況を観察した.結果についての統計学的解析はKruskal-Wallis testおよびMann-Whitney U-testを用いた(p<0.05).色素浸透による辺縁封鎖性試験の結果,C群ではCM,F II,BF,RR,HYの順,F群ではCM,BF RR,F II,HYの順で,前者ほど良好な結果を示した.C群のCM-HY,F II-HY,F群のBF-HY,RR-HY,CM-HY間で,HYは有意に劣っていた.各材料ともサーマルサイクルにより色素浸透距離率が増加し,辺縁封鎖性が悪くなる傾向にあったが,HYのみC群とF群間で有意差が認められ,BE,RR,CM,F IIでは有意差はなかった.EPMAによる観察で,最も深部までフッ素の浸透がみられたのはHYとF IIで,平均約200μmであった.それに比較してBFは平均約40μm,RRは平均約90μmであった.CMではフッ素の浸透を認めなかった.またC群とF群との比較において,各修復物ともに窩洞のどの部位においても,フッ素溶液浸漬によるフッ素の取り込み深さに有意差は認められず,修復物のもつフッ素のリチャージ機能が窩壁へのフッ素取り込み深さに与える影響は認められなかった.
  • 藤林 久仁子, 湯浅 茂平, 岩瀬 弘和, 高水 正明
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 3 号 p. 257-265
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    可視光線重合型のコンポジットレジンが専用の光照射器以外の光でも重合を起こすことはよく知られている.臨床においても,付形に時間がかかる前歯部の大きな充填などの際に問題になることが多い.これは,室内照明や太陽光にコンポジットレジンの感光剤を反応させる波長域の光が含まれていることが原因であるが,特にユニット無影灯はほかの環境光と比較して光強度が著しく高いため,影響は大きいと思われる.本研究の目的は,臨床で使用されているユニット付属の無影灯の光がコンポジットレジンの操作時間に与える影響を確認することである.本学で使用されているユニット付属の無影灯の光学特性を測定し,代表的な無影灯を用いて3種のコンポジットレジンの操作時間の測定を行った.その結果,室内光と比較すると無影灯曝露下ではコンポジットレジンの操作時間は著しく短縮した.
  • 山崎 さとみ, 瀬戸 純子, 島村 穣, 田久保 周子, 小倉 由佳理, 黒川 弘康, 宮崎 真至
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 3 号 p. 266-273
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    ホワイトニングの最終ステップとして行われる歯面研磨ペースト(研磨ペースト)を用いた歯面研磨は,歯質の表面性状になんらかの影響を及ぼす可能性が考えられるが,その詳細は不明である.そこで著者らは,オフィスホワイトニング直後の歯面研磨がエナメル質の表面性状に及ぼす影響について,表面粗さの測定およびSEM観察を行うことによって検討した.ホワイトニング剤として松風ハイライトを用いた.研磨ペーストは,研磨粒子の異なる3製品とし,これらを単一あるいは組み合わせて用いた.ウシ下顎前歯唇側エナメル質面を平坦面が露出するよう研削し,エナメル質試片とした.このエナメル質試片の中央部付近を近遠心に二等分し,近心部は製造者指示条件に従ってホワイトニングを行うのみとし(コントロール群),同一歯の遠心部はホワイトニング終了後,研磨ペーストを用いて研磨を行った(研磨群).これらの操作を,1週間に1回,4週行い,そのつど表面粗さを測定するとともに,エナメル質試片表面の印象採得を行い,レプリカ模型を製作しSEM観察を行った.その結果,以下の結論を得た.1.コントロール群の表面粗さは,ホワイトニング4回終了後も変化は認められなかった.一方,研磨群では研磨ペーストの種類あるいは組合せによって異なり,研磨粒子の小さなペーストでは4回のホワイトニング+研磨終了後も変化は認められなかったが,研磨粒子の大きなペーストでは,ホワイトニング+研磨の回数とともに表面粗さが大きくなる傾向を示した.2.コントロール群のSEM像は,ホワイトニング前ではスミヤー層が観察されたのに対し,ホワイトニング4回終了後ではスミヤー層は除去され,SiCペーパーによる削条痕が観察された.研磨群のSEM像は,研磨ペーストの種類あるいは組合せによって異なり,いずれの研磨ペーストにおいても実験4週終了後には,SiCペーパーによる削条痕とともに細かい研磨痕が観察されたが,その程度は異なるものであった.すなわち,研磨粒子の大きなペーストおよびその組合せでは,研磨痕が多数観察されたのに対し,研磨粒子の小さなペーストおよびその組合せでは,比較的平坦な像を呈した.
  • 増田 宜子, 大場 崇史, 山田 嘉重, 藤島 昭宏, 宮本 洋一, 木村 裕一, 上條 竜太郎
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 3 号 p. 274-280
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    近年,修復象牙質を産生する象牙芽細胞様細胞に分化する歯髄の幹細胞の存在が注目されてきている.抜去歯を保存する際,歯髄組織も将来有効に活用できる可能性があると考えられることから,今回,Cells Alive System(以下,CAS)プログラムフリーザー®を用いてラット下顎骨を凍結・解凍し,細胞の特性の変化を通常の-80℃で凍結・解凍した場合と比較検討することを目的に,本研究を実施した.5週齢の雄性Wistarラット2匹の下顎骨をα-MEM培地に,そして6匹の下顎骨をセルバンカー1®に浸漬し,CASプログラムフリーザー®にて凍結し1カ月後に37℃ water bathにて解凍した.下顎切歯からそれぞれ歯髄組織を摘出し,collagenase,trypsin,EDTAを含む酵素液にて細胞を分離し,5% CO2条件下にて10% FBS含有α-MEM培地で培養し,トリパンブルー染色を行った.1週間後に12ウェルプレートに4×104個/wellにて継代し,300μg/ml β-glycerophosphate,50μg/ml ascorbic acidを培地に加えて培養した.継代7,14日にてそれぞれtotal RNAを精製しcDNAを合成,Dspp,osteocalcin,TGF-β1遺伝子の発現の変化をRT-PCRによって調べた.さらに一部の細胞は,ヤギ抗actin(C末端ヒトactin)を用いて染色し,共焦点レーザー顕微鏡にて細胞の構造の変化を観察した.コントロールとして,下顎骨を-80℃で凍結・解凍したものを同様に調べた.α-MEM培地を用いCASプログラムフリーザー®で凍結した場合は解凍直後の細胞生存率は約3%であり,セルバンカー1®にて凍結した場合では約22%であった.通常の-80℃凍結では,セルバンカー1®に浸漬し凍結した場合でも細胞生存率は約7%であった.CASプログラムフリーザー®を用いセルバンカー1®にて凍結したものは,β-glycerophosphate,ascorbic acidをα-MEM(FBS含有)に加えて培養した場合ではDspp,osteocalcin,TGF-β1遺伝子の発現が認められた.共焦点レーザー顕微鏡にて解凍後の細胞を観察したところ,CASプログラムフリーザー®を用いセルバンカー1®にて凍結したものは細胞膜が破壊されずに残っていた.CASプログラムフリーザー®を用いて凍結・解凍した歯髄は,通常の-80℃で凍結・解凍した場合と比較して細胞の生存率が有意に高く,将来歯髄を保存し活用するためには有効であると示唆された.凍結保存の際は,浸漬する保存液によって細胞の状態が影響を受けたため,保存液の役割も重要であることが判明した.
  • 初岡 昌憲, 恩田 康平, 保尾 謙三, 竹内 摂, 福井 優樹, 善入 寛仁, 加茂野 太郎, 井上 昌孝, 山本 一世
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 3 号 p. 281-295
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    現在の歯科臨床の場には,MMA系レジンセメントやコンポジット系レジンセメント,セルフアドヒーシブレジンセメントといったさまざまなレジンセメントが存在する.今回われわれは,さまざまなレジンセメントのエナメル質,象牙質,12%金銀パラジウム合金(以後,金銀パラジウム合金)およびセラミックに対する引張接着強さを測定し,レジンセメントの接着性について検討を行った.実験には,MMA系レジンセメントとしてスーパーボンドC&B®(サンメディカル)およびマルチボンドII(トクヤマデンタル)を使用し,コンポジット系レジンセメントとしてレジセム(松風)およびパナビア®F2.0(クラレメディカル)を,前処理を行わないセルフアドヒーシブレジンセメントとしてクリアフィル®SAルーティング(クラレメディカル)およびリライエックス™ユニセムクリッカー™(3M ESPE),マックスセム(Kerr)を使用した.ウシ抜去歯に#600の耐水研磨紙を用いてエナメル質および象牙質平坦面を作製し,エナメル質および象牙質被着面とした.金銀パラジウム合金にサンドブラスト処理(0.5MPa)を行い金銀パラジウム合金被着面とし,セラミックブロックにサンドブラスト処理(0.3MPa)を行いセラミック被着面とした.被着面積は直径3mmに規定した.クリアフィル®CRインレー(シェードXL,クラレメディカル)をテフロンモールドに填塞,硬化させCRブロックを作製した.それぞれのレジンセメントの製造者指示に従い,各被着面に対しCRブロックを接着させた.接着後24時間37℃水中保管した後,万能試験機(IM-20,Intesco)を用いてクロスヘッドスピード0.3mm/minにて接着強さを測定した.各被着面につき8試料とした.なお統計処理は,一元配置分散分析およびTukeyの検定を行った(α=0.05).前処理を行うMMA系およびコンポジット系レジンセメントは,セルフアドヒーシブレジンセメントよりもエナメル質および象牙質,金銀パラジウム合金,セラミック被着面に対する引張接着強さが有意に高い傾向が認められた.セルフアドヒーシブレジンセメントは前処理を必要としないため使いやすい材料であるが,前処理を行うレジンセメントよりも各種被着面に対する接着性が低下することが懸念される.
  • 鈴木 英明, 三田 肇, 藤田 光, 小泉 直也, 岡田 珠美, 水野 恭子, 有川 量崇, 池見 宅司
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 3 号 p. 296-303
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    齲蝕は口腔内の細菌が産生する酸によって引き起こされる疾患であり,連鎖球菌の1種であるStreptococcus mutansを代表とする齲蝕原因菌による内因性疾患であることが明らかにされている.現在,実用化されている齲蝕予防法には,宿主対策としての歯質強化を目的としたフッ化物の応用があるが,それ以外は効果的な齲蝕予防対策が得られていないのが現状である.近年,齲蝕罹患率の減少や予防のためにさまざまな研究が行われており,齲蝕予防効果を付与した種々の口腔用剤や飲食物が考案されてきている.アントシアニンは,フラボノイドの1種で植物性食品素材の色素成分として検出され,抗酸化作用,抗肝障害作用,視神経機能改善作用,抗炎症作用,動脈硬化改善作用などを有する.今回,われわれはアントシアニン系のなかからナスの皮に含まれるポリフェノールの1種であるナスニンに着目した.本研究の目的は,デルフィニジン型アントシアニンに属するナスニンに齲蝕予防の可能性があるかどうかを,その抗菌作用についてin vitro実験において調べることである.検討の結果,以下の知見が得られた.1.S.mutansに対する最小発育阻止濃度は500μg/mlであった.2.Streptoccus sobrinusに対する最小発育阻止濃度は250μg/mlであった.3.Actinomyces viscosusに対する最小発育阻止濃度は500μg/mlであった.4.ナスニンの抗菌作用は,S.mutans,S.sobrinusおよびA.viscosusのresting cellに対して殺菌的であった.5.ナスニンは,S.mutans PS-14株ならびにS.sobrinus 6715株産生粗glucosyltransferaseのsucrose依存性非水溶性グルカン合成活性を顕著に阻害した.以上のことより,ナスニンは齲蝕原因菌に対して顕著な殺菌作用が認められ,抗齲蝕作用を有することが示唆された.
  • 東 春生, 渡辺 聡, 和達 礼子, 海老原 新, 小倉 陽子, 勝海 一郎, 須田 英明
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 3 号 p. 304-308
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    根管治療時の仮封材として水硬性セメントを使用する際,乾燥綿球に代わり消毒薬を含有した綿球を髄室内に置くことは,歯髄腔内の無菌化に有用であると予想される.しかし,消毒薬により水硬性セメントの硬化が阻害される可能性がある.硬度が低下したセメントは摩耗しやすく,漏洩を生じ髄室が汚染される懸念がある.本研究の目的は,消毒薬が水硬性仮封材の硬化に及ぼす影響を検討することである.髄室を模したポリエチレンテレフタラート製チューブ100本のうち,50本に水硬性仮封材(Caviton®,ジーシー)を填塞し,残りの50本には各10本ずつ以下の被験薬剤を含ませた綿球を封入した.A群:6%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(次亜塩6%「ヨシダ」,吉田製薬),B群:83%エタノールおよび3.7%イソプロパノール(メディアルコットME-S,白十字),C群:水酸化カルシウム材(カルシペックス®II,日本歯科薬品工業),D群:蒸留水,E群:なし(乾燥綿球のみ,コントロール群).なお,C群では綿球を使用しなかった.これらのチューブは接合し,Caviton®の上面以外をユーティリティワックスにて固定,封鎖した.37℃の水中で3日間保管後,Caviton®の表面を耐水研磨紙にて#2,000まで研磨し,小型卓上試験機(EZ-TEST,島津製作所)にて測定針をCaviton®の被験薬剤側に刺入し,20Nに達するまでの刺入距離を測定した.統計学的解析は,一元配置分散分析およびTukey-Kramer testを用い,有意水準5%で行った.その結果,D群と比較しC群およびE群では被験薬剤に接するCaviton®への刺入距離は有意に長かった.一方,A群およびB群では,D群との統計学的な有意差は認められなかった.以上の結果から,Caviton®を根管治療時の仮封材として用いる場合,髄室に次亜塩素酸ナトリウム水溶液,エタノール,あるいは蒸留水を含む綿球を置くことにより,乾燥綿球と比較して深層のCaviton®の硬化が促進されることが示された.
  • 和田 隆史
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 3 号 p. 309-319
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    インプラント治療と歯周病治療後の骨の再生に,メカニカルフォースが効果的であることが知られている.近年,メカニカルフォースの一つであるLIPUS(Low-intensity Pulsed Ultrasound)治療は,骨折の治癒を促進させることが知られている.それは,ultrasoundが骨形成に良い刺激を与えるだけではなく,骨芽細胞の分化を引き起こすためである.しかしながら,LIPUSによる骨細胞においての細胞的事象はまだ明確にされてはいない.今回の実験は,形態学的・免疫組織化学的分析を用いて骨欠損部の骨のリモデリングにおけるLIPUSの生物学的効果を調べることを目的として行った.雌SDラットを使用し,デンタルバーを用いてエンジンドリルにより脛骨に骨欠損を作製した.左側脛骨(US群)は手術24時間後から毎日15分間,1.0MHz,0.24Wを繰り返して1,2,3,4週間LIPUSの照射を行い,右側脛骨(Cont群)はLIPUSの照射を行わなかった.脛骨は,採取後三点曲げ試験,二重エネルギーエックス線法(DEXA),軟エックス線撮影,骨形態計測および組織化学的に分析を行った.軟エックス線像は手術後2,3週のCont群より,US群で骨欠損部位にわずかに新しい骨の形成がみられた.US群の脛骨は,術後2週においての三点曲げ試験でCont群の脛骨より固さが向上していたにもかかわらず,すべての実験群においてDEXA分析でCont群とUS群の間で骨密度に著明な差はみられなかった.H-E染色切片では,手術後2,3,4週のUS群の欠損部位での皮質骨の厚さは,Cont群と比較して増加していた.カルセインを使用した骨欠損範囲での骨形態計測では,US群でCont群と比較して2倍の石灰化濃度を示した.オステオポンチンを用いた免疫組織化学的染色による骨欠損部の新生骨での骨芽細胞,骨細胞の染色性は,US群とCont群で違いがみられなかった.これらの結果は,骨形成においてLIPUSが外骨膜の骨芽細胞を刺激することを示している.そして,LIPUSは皮質骨での骨形成を刺激することによって骨欠損部の治癒を促進することが示された.
  • 山口 真一郎, 二瓶 智太郎, 大橋 桂, 倉田 茂昭, 近藤 行成, 好野 則夫
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 3 号 p. 320-329
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    シランカップリング剤の反応機構は複雑で,種々の要因に影響される.本研究の目的は,4種のシランカップリング剤を用い,酸触媒添加と,処理後コンポジットレジン接着までの経過時間が引張接着強さに及ぼす影響について検討することである.3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(3-MPS),ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン(4F)と3-MPSとの混合シラン(4F/3-MPS),3-{[1'-(ペルフルオロ-3-メチルブチル)メチル-2'-(メタクリロイルオキシ)]エトキシ}プロピルトリメトキシシラン(MA5bF)ならびに3-{[1'-(ペルフルオロ-9-メチルデシル)メチル-2'-(メタクリロイルオキシ)]エトキシ}プロピルトリメトキシシラン(MA11bF)を2 mass%エタノール溶液として調製した.さらに,上記シラン溶液に酢酸を10vol%添加した計8種のシラン処理剤を用意した.各シランで処理したガラスを,5分間および60分間,ならびに1,2,7日および14日間恒温恒湿下で保管した処理面に対する,Bis-GMAとTEGDMAとの混合レジンモノマーの接触角を測定した.同様に保管した後,化学重合型コンポジットレジンを接着し,7日間37℃水中に浸漬する群と10,000回のサーマルストレスを与える2群に分け,それぞれの引張接着強さを測定した.その結果,3-MPSは2日後で小さい接触角となり,接着強さも5分後と比べて有意に高い値となったのに対し,酸触媒を添加すると経過時間の延長とともに接触角が上昇し,コンポジットレジンの接着強さも低下する傾向であった.4F/3-MPSは,酸触媒添加の有無にかかわらず,2日後は5分後と比較してレジンモノマーの接触角が小さくなり,接着強さも水中保管およびサーマルストレス後で有意に高かった.同一分子内に疎水性のフルオロアルキル基とマトリックスレジンと反応するメタクリロイル基をもつMA5bFとMA11bFの接触角は,経過時間の延長とともに小さくなる傾向を示し,酸触媒を添加すると1日もしくは2日後で高くなった.特にMA5bFの接着強さは,7日後接着で3-MPSと比較して水中保管およびサーマルストレス後ともに有意に高い値であり,破断面もコンポジットレジンもしくはガラスの凝集破壊を示した.以上の結果から,化学式量の高いシランカップリング剤で処理する場合は,触媒を添加してただちに接着するよりも,触媒を添加せずに接着までの経過時間を長くしたほうがレジンとのぬれ(相溶性)も向上し,接着強さも高くなる傾向が示された.
  • 古澤 成博, 細川 壮平, 早川 裕記, 井田 篤, 吉田 隆, 渡部 光弘
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 3 号 p. 330-338
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー
    日常臨床において慢性化膿性根尖性歯周炎と診断された場合,大多数の症例では通法の感染根管治療を行うことにより治癒に向かうことが多い.しかしながら,咬合時痛や打診痛などの症状がなかなか消失せず,いわゆる難治性根尖性歯周炎と診断される場合が少なからず存在する.今回われわれは,水酸化カルシウム製剤「カルビタール®」の根管治療薬としての効果を検討する目的で,開業医にて難治性根尖性歯周炎と診断され,東京歯科大学水道橋病院総合歯科に紹介された症例100例に対して,本剤を2週間から1カ月間隔で根管治療薬として応用し,経過観察を行った.その結果,100例中症状の消失をみたものは91例であり,症状が軽減したものの,消失にはいたらなかった症例が9例であった.そのうち,外科処置に移行した症例が3例,神経因性疼痛と診断された症例は6例であった.すなわち,91%の症例で症状の消失が得られ,本剤の強アルカリ性に由来する創傷治癒作用と,長期応用の結果得られた根管内の環境変化によるものと考えられた.以上から,難治性根尖性歯周炎に対して根管治療(消毒)薬として水酸化カルシウム製剤「カルビタール®」を応用することは,有用性が高いものと思われた.
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