日本歯科保存学雑誌
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53 巻 , 4 号
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原著
  • 若木 卓, 海老原 隆, 新海 航一, 加藤 喜郎
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 4 号 p. 349-358
    発行日: 2010/08/31
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    本研究は,歯のマニキュアシステムであるビューティコート™を用いて上顎前歯唇側面をコーティングし,色調変化,知覚過敏,辺縁部変色,摩耗,表面粗さおよび破折・脱落について3ヵ月間の臨床的耐久性を評価した.また,分光光度計を用いて測色検査を行い,データの統計分析によりビューティコート™の短期臨床経過を色彩学的にも評価した.術前に歯面清掃を行った後,上顎前歯の左右側のどちらかをグロスメーカー群,もう一方をグロスリファイン群としてコーティングを行った.グロスメーカー群では,プライマー(A液,B液)を1滴ずつ混合し,唇側エナメル質面に塗布して3秒間放置後,中圧にてエアブローを行った.次にホワイトベース(BW3)を塗布し10秒間光照射,表面硬化剤のグロスメーカーを全体に塗布し30秒間光照射後,さらに水洗・乾燥を行った.グロスリファイン群では,プライマーを塗布して3秒間放置後中圧にてエアブロー,ホワイトベース(BW3)を塗布し30秒間光照射した後,表面の未重合層をガーゼで拭き取り,グロスリファインで即日研磨を行った.評価時期は,修復直後をベースラインとし,1週,1ヵ月および3ヵ月後とした.グロスメーカー群とグロスリファイン群を比較すると,表面粗さの術直後にのみ有意差が認められた(p<0.01)が,その他の診査項目に関してはいずれの評価時期においても統計学的有意差は認められなかった(p>0.05).実験群ごとに修復物の経時的変化について統計学的に分析すると,知覚過敏を除いたすべての診査項目に関して有意差が認められ,両群とも経時的に劣化傾向を示した.ビューティコート™は,非切削で迅速な歯の色調改善方法として臨床において有用であることが示された.
  • 川守田 暢, 安田 善之, 新田 督, 泉川 昌宣, 斎藤 隆史
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 4 号 p. 359-366
    発行日: 2010/08/31
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    キシリトールは,齲蝕原因菌に酸を産生させないことから非齲蝕性甘味料として使用されている.本研究の目的は,キシリトール溶液にて4週間洗口を行った場合の齲蝕予防効果を検討することである.はじめに,in vitroにおいてキシリトールの齲蝕原因菌の増殖への影響を調べた.キシリトールは濃度依存性にStreptococcus mutansやStreptococcus sobrinusの増殖を抑制したが,ソルビトールはほとんど影響がなかった.Lactobacillus caseiの増殖にはキシリトールとソルビトールはともに影響を与えなかった.次に,計40名の被験者を2群に分け,5%キシリトール溶液もしくは5%ソルビトール溶液にて洗口後の唾液中S.mutansレベルとプラーク付着率を調べた.キシリトール溶液の洗口4週後の唾液中S.mutans菌数は洗口開始前と比べて約65%減少したが,ソルビトール溶液の洗口4週後では約10%減少した.さらに,キシリトール溶液の洗口4週後ではプラーク付着率はソルビトール溶液の洗口に比べて約45%有意に低下した.以上の結果から,キシリトール溶液の洗口は唾液中のS.mutans菌数を減少させ,齲蝕予防に有効である可能性が示唆された.
  • 稲垣 裕司, 板東 美香, 中島 由紀子, 廣島 佑香, 木戸 淳一, 永田 俊彦
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 4 号 p. 367-375
    発行日: 2010/08/31
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    浸透圧変化が惹起する刺激源は一般にオスモティックストレス(osmotic stress)と呼ばれており,種々の組織や細胞に影響をもたらすことが知られている.しかし,オスモティックストレスが歯髄の組織や細胞にどのような影響を与えるのかを論じた成書や研究報告はぼとんどない.本研究ではラット由来の歯髄細胞培養系を用いて,オスモティックストレスと歯髄細胞の硬組織形成の関連性を検証した.また,オスモティックストレスによって硬組織形成関連タンパクであるオステオポンチン(OPN)の発現やリン酸化に変化が生じるかも検証した.その結果,歯髄細胞培養系においては,低張および高張のいずれのオスモティックストレスによっても細胞の形態や増殖に影響が認められ,硬組織形成も低下した.低張ストレスを付与するとOPNの発現量や総タンパク量に対するOPNの比率は上昇し,また発現したOPNはリン酸化されていた.一方,高張ストレスを付与するとOPNの発現量や総タンパク量に対するOPNの比率は低下し,脱リン酸化されたOPNが主に発現した.このように低張と高張のオスモティックストレスではOPNの発現量やリン酸化による修飾の程度が異なっていたことから,低張および高張のいずれのオスモティックストレスによっても石灰化は抑制されたが,その抑制のメカニズムは一様でないことが明らかとなった.以上より,オスモティックストレスは歯髄細胞の硬組織形成に影響を与え,OPNの発現およびそのリン酸化が制御因子として機能している可能性が示唆された.
  • 坂上 斉, 吉岡 俊彦, 須藤 享, 花田 隆周, 石村 瞳, 吉岡 隆知, 須田 英明
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 4 号 p. 376-383
    発行日: 2010/08/31
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,象牙質接着性シーラーであるMetaSEAL™およびEpiphany® SE™を用いて根管充填を行い,シーラー内の空隙の発生について検討することである.被験歯として,単根管性ヒト上顎小臼歯42本を用いた.あらかじめ歯冠を除去し,歯根長を12mmに調整した.被験歯をMAF#40および#80の2群に21本ずつ無作為に分け,根管形成を行った.次いで,下記のとおり,両群の被験歯をそれぞれA〜Cの3群(各群n=7)に無作為に分けて根管充填した. A群ガッタパーチャポイント(GP)+RoekoSeal Automix®:垂直加圧充填法 B群GP+MetaSEAL™:単一ポイント根管充填法 C群Resilon™+Epiphany® SE™:垂直加圧充填法 根管充填終了後,cone-beam computed tomographyを用いて被験歯を撮影した.その後,歯軸に垂直な水平断面画像,および歯軸と平行な頬舌断面画像を積算したRaySum画像を作成し,ファインキューブビューアV7およびノート型パーソナルコンピュータ上に提示した.それらの画像の評価は,3名の歯科医師によって行った.すなわち,各実験における空隙の位置,数および投影面積について,「MAF」および「根管充填方法」を要因とした二元配置分散分析およびTukey-Kramer testを用い,有意水準5%にて統計学的に解析した.空隙の位置,数および投影面積については,「MAF」に関する統計学的な有意差は認められなかった.また,1歯当たりの根管壁に面しか空隙の平均発生数についても,「根管充填方法」に関する有意差は認められなかった.しかしながら,シーラー内部に限局した空隙の1歯当たりの平均発生数については,「根管充填方法」に関し,B群がA群よりも有意に多かった(p<0.05).さらに,1歯当たりの空隙の平均投影面積について,「根管充填方法」に関し,B群がA群よりも有意に大きくなった(p<0.05).MetaSEAL™を用いて単一ポイント法で根管充填を行った場合,垂直加圧根管充填法と比較し,シーラー内部に限局した空隙の数,および空隙の投影面積が増加した.
  • 佐藤 治美, 馬場 宏俊, 下岡 正八
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 4 号 p. 384-395
    発行日: 2010/08/31
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    スケーリングでは各種スケーラーを用いるが,スケーラーやペリオドンタルキュレットは使用目的や部位に合わせて,刃部や頸部形態が異なる.歯科衛生士は,スケーリングを行うために部位に合わせたスケーラーを選択し,安全で効率のよい処置を行うことが求められる.本研究では,歯科衛生士学生がグレーシー型キュレットを選択する際に,キュレットの構成部の確認箇所と選択について眼球運動の測定を行い,人の認知活動について調べた.研究対象者は,日本歯科大学新潟短期大学歯科衛生学科でスケーリングについて基礎実習のみを終了した第1学年45名(1年次生)と,基礎実習を終了し臨床実習中の第2学年43名(2年次生)の学生である.その結果,グレーシー型キュレットを選ぶ際は,1,2年次生ともにスケーラーの刃部および頸部と番号を見ていた.1年次生では刃部および頸部よりも番号を,2年次生では番号よりも刃部および頸部を多く見ており,臨床実習の経験によって注目点は異なった.正解者と不正解者との間では,刃部および頸部と番号を見るということは同じであった.正解者は早い段階で選択を決断できていた.不正解者は注目点にばらつきがあり,さまざまなスケーラーを見た結果,正解を判断できないという傾向がみられた.教育で視覚素材を用いる際には,学習者が視覚素材を教育者と同等に認知していないことに留意し,視覚素材の構成や説明に配慮の必要なことが示唆された.
  • 馬場 玲子, 江面 晃
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 4 号 p. 396-406
    発行日: 2010/08/31
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    高齢化が進む現代において,骨粗鬆症は注目される疾患の一つである.骨粗鬆症は骨の脆弱化から骨折のリスクが生じやすくなる疾患と定義されている.2000年にGrossiらの疫学的調査より歯周病のリスクファクターの一つであると提示され,現在にいたるまで歯周病と骨粗鬆症の関係についてさまざまな検索がされているが,歯周病のリスクファクターとしての因果関係について明確な見解がない.本研究ではカルシウム・リン欠乏飼料(以下,Ca・P欠乏飼料)を与え意図的に代謝阻害を起こし,骨粗鬆症を惹起させた雄ラットの下顎骨と大腿骨を対象として,骨の構造変化を未脱灰研磨標本とマイクロフォーカスX線CT(以下,マイクロCT)所見による三次元画像観察と骨梁構造解析を中心に検討した.雄Wistar系ラットを用い15週齢より実験を開始し,実験期間を10週と20週として,通常飼料のコントロール群とCa・P欠乏飼料群に分け飼育した.屠殺後に採取した左側下顎骨と大腿骨はマイクロCTを用いて解析を行い,右側下顎骨と大腿骨は未脱灰研磨標本作製後,コンタクトマイクロラジオグラム(以下,CMR)の撮影を行い観察した.その結果,以下の知見を得た.1.CMRとマイクロCT所見1)CMR画像から10週Ca・P欠乏飼料群の大腿骨皮質骨では空洞化がみられ,20週ではさらに空洞化が進行していた.また,10週Ca・P欠乏飼料群の下顎骨では槽間中隔に空洞化がみられ,20週ではさらに空洞化が進行し皮質骨の内側にも空洞化がみられた.2)マイクロCT画像から10週Ca・P欠乏飼料群の大腿骨と下顎骨の海綿骨はともに骨梁構造が細くなり,20週ではさらに骨梁構造が細くなり骨梁間隙に広がりがみられた.2.骨梁解析結果1)大腿骨と下顎骨の10週,20週のCa・P欠乏飼料群の骨梁解析では,骨組織体積と骨表面積に有意差を認めなかった(p<0.05).また,骨梁数に差はなく骨梁幅と骨密度が減少し,骨梁間隙が有意に大きくなった.2)皮質骨の厚さは下顎骨歯頸部のCa・P欠乏飼料群で有意に薄くなっていた.これらの結果から,Ca・P欠乏飼料群の大腿骨と下顎骨はともに実験的に骨粗鬆症を惹起したと考えられた.下顎骨と大腿骨の海綿骨は,骨梁構造の骨梁幅が細くなり骨梁間隙が広がり,槽間中隔の空洞化がみられ骨密度が低下し,骨の脆弱化が進行していた.以上より,骨粗鬆症の生じた下顎骨の歯は通常の咬合圧を十分に支えられない構造となり,咬合性外傷を惹起することが考えられる.それにより,歯周病をさらに進行させるリスクファクターとなることが示唆された.
  • 周 秦, 関根 哲子, 根本 章吾, 岩井 仁寿, 小里 達也, 酒井 周一, 〓 宜, 西山 典宏, 池見 宅司
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 4 号 p. 407-412
    発行日: 2010/08/31
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    コンポジットレジン接着システムの応用として,レジンコーティング法が挙げられる.レジンコーティング法はインレー修復窩洞形成後の知覚過敏や窩洞汚染の予防,さらにはインレー体の歯質接着性向上を図るうえで有益な治療手法となりつつある.最近では,レジンコーティングを主目的としたワンステップ型のコート材が市販されるようになった.そのコート材の性質の一つとして,強固な象牙質接着性を有することが求められる.そこで,著者らは,市販されているハイブリッドコート(サンメディカル,以下,HyC)にトリメチロールプロパントリメタクリレート(新中村化学工業,以下,TMPT)を配合したレジンコート材の象牙質接着性を調べることを目的として実験を行った.本実験では,HyC中のアクリル酸エステル類(以下,Ac)とTMPTの配合比を変化させたレジンコート材を試作し,象牙質に対するせん断接着強さを調べ,TMPTの適正な配合比について検討した.さらに,接着試験後の試料について,ステレオズーム顕微鏡とコンピュータを使用して凝集破壊の面積を計測し,せん断接着強さとの相関について調べた.その結果,以下の結論を得た.1.HyC成分中のAcとTMPTをそれぞれ67,33%の重量比で配合した試作レジンコート材(33%T)において最も高い接着強さを示し,それ以上にTMPTの重量比を多くすることで接着強さは低くなる傾向を示した.2.全60試料のせん断接着強さと凝集破壊面積のピアソンの積率相関係数は,|r|=0.717>0.330=r0.01で相関のあることが示され,各群の平均値による相関係数は|r|=0.945>0.917=r0.01となった.したがって,各群のせん断接着強さと凝集破壊面積はp<0.01で相関のあることが示され,試作レジンコート材の33%Tにおいて凝集破壊面積が最も大きいことが確認された.3.破断面の観察ではステレオズーム顕微鏡を用いることで,立体的に破壊形態を判別することができ,得られた画像からコンピュータにて凝集破壊面積の算出が可能となった.
  • 柴谷 貴子, 畠中 能子, 花谷 早希子, 中山 真理, 大岡 知子, 濱元 一美, 細見 環
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 4 号 p. 413-418
    発行日: 2010/08/31
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    アマルガムは,優れた理工学的特徴と硬化後の安定性を有する優れた修復材料である.それゆえに100年以上にわたり咬合力の負荷がかかる咬合面に適用されてきたが,1970年代から水銀による環境汚染と生体への影響の懸念からアマルガム修復は減少していった.そのため,アマルガム修復の実態に関する最近の報告は少ない.そこで,2007年から2009年までのK女子短期大学歯科衛生学科新入生308名における歯科検診結果から,智歯を除く臼歯咬合面に修復物を有する者を調査対象者とし,調査対象者の咬合面修復数に占めるアマルガム修復数の割合すなわちアマルガム修復率(%)を調べることにより,アマルガム修復の実態を検討した.その結果,アマルガム修復率の平均値は,2007年では11.5%,2008年では9.4%,2009年では6.0%であった.アマルガム修復率のパーセンタイル値は,すべての年度で中央値も第3四分位値も0%で,最大値は100%であった.アマルガム修復率が0%である者は,2007年68名(n=86),2008年67名(n=81),2009年71名(n=81)であり,すべての年度で8割以上がアマルガム修復率0%である偏った人数分布を示した.Median検定の結果,調査年間に統計学的有意差はなかったが,経年的な平均値の減少傾向がみられた.2009年で19歳の学生の永久歯修復は,1996年前後の第一大臼歯萌出以降である.つまり,アマルガム修復は減少してきているが,1996年以降でも臼歯咬合面にアマルガム修復が行われていることが示唆された.
  • 根本 章吾, 岩井 仁寿, 鈴木 英明, 神谷 直孝, 岩井 啓寿, 壹岐 宏二, 池見 宅司
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 4 号 p. 419-427
    発行日: 2010/08/31
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    エルビウムヤグ(以下,Er:YAG)レーザーあるいは歯科用レーザーのさらなる改良・開発を目的とした研究では,波長可変性を有する自由電子レーザー(以下,FEL)が有益な情報をもたらしてくれる.そこで,著者らは日本大学量子科学研究所電子線利用研究施設所有のFELを使用し,象牙質蒸散時の昇温と形態変化について調べることを目的として実験を行った.比較対象としては,歯科臨床で使用されているEr:YAGレーザーを使用した.その際の照射条件は,波長ならびに照射エネルギー密度,毎秒の繰り返しパルス数(以下,pps),照射時間を同一にして行い,FELは無注水下,Er:YAGレーザーでは無注水下と注水下にて照射した.被照射体にはウシ象牙質を使用して,それぞれのレーザーを照射した際の照射部(以下,照射側)および照射部直下の試料背面(以下,反対側)の温度を放射温度計にて測定し,昇温を求めた.さらに,照射部象牙質の形態変化について電子顕微鏡(以下,SEM)による観察を行った.その結果,以下の結論を得た.1.3ppsと5ppsの両条件において,照射側と反対側ともにFELが最も低い昇温で,注水下Er:YAGレーザー,無注水下Er:YAGレーザーの順に高い昇温を示した.おのおののレーザー条件について3ppsと5ppsを比較すると,5ppsのほうが照射側と反対側のいずれにおいても高い昇温を示した.2.照射試料表層のSEM観察では,FELにおいて蒸散部の径は約200μmで,Er:YAGレーザーのC400Fチップでは約500μmの径となることが示された.3.照射試料縦断面のSEM観察では,3ppsと5ppsの各試料において同様な象牙質面の形態が観察され,FELではすべての試料において象牙細管が明瞭に観察された.注水下Er:YAGレーザーでは,溶岩状に変成した組織と象牙細管の認められる部分の混在している像が観察された.無注水下Er:YAGレーザーでは,溶岩状に変成した組織で全面が覆われている形態が観察され,一部に象牙細管が認められた.
  • 濱田 康弘, 前田 宗宏, 橋本 修一, 勝海 一郎
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 4 号 p. 428-448
    発行日: 2010/08/31
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    グアヤコールは,クレオソートの主成分で,歯髄炎症の鎮静など歯内療法分野で応用されている.本研究は,酸化亜鉛とグアヤコールの練和物(ZOG)について,練和物からのグアヤコールの遊離動態や歯髄への流入,窩洞形成によるラット下顎切歯歯髄実験的炎症モデルにおけるZOGの作用,歯髄内ヒスタミン生成に及ぼす影響,さらに骨芽細胞様細胞に対するグアヤコールの作用を調べることを目的に検討を行い,以下の結果を得た.ZOGから浸漬液中へ遊離したグアヤコールは填塞後5分で最大値を示し,練和物中のグアヤコール量に比例して遊離量が増加した.また,ヒト抜去大臼歯の窩洞に填塞したZOGから象牙質を透過し浸漬液へ遊離したグアヤコール量は,填塞後10分で最大となった.さらに,ラット下顎切歯窩洞形成部にZOGを填塞した際の遊離グアヤコール量は,填塞後15分で歯髄への流入量が最大となった.また,ZOGは酸化亜鉛とユージノールの練和物であるZOEよりも早期に硬化し,持続的なグアヤコールの遊離は起こらなかった.窩洞形成により増加した切端側歯髄の顆粒球数は,ZOGの填塞30分後に増加が有意に抑制された.また,粉液比の異なるZOG(P/L2.86〜6.67)の填塞では,切端側歯髄の顆粒球数はZOGのグアヤコール量に依存して減少する傾向が認められた.窩洞形成により歯髄内ヒスタミン量は形成後早期に増加したが,ZOG填塞により1時間後の歯髄内ヒスタミン量はコントロール値に対して,その約60%まで有意に減少した.なお,ZOGによるヒスタミン生成の抑制は,ZOGの成分であるグアヤコールによってもたらされることが示唆された.また,ZOG中のグアヤコール量が増加する(P/L2.86〜5.00)につれてヒスタミン量は減少したことから,ZOGのヒスタミン生成抑制は濃度依存的に起こることが認められた.骨芽細胞様細胞における24時間後の細胞表在アルカリ性ホスファターゼ(ALP)活性は,0.01mmol/l以下のグアヤコール濃度ではALP活性に有意な影響を及ぼさなかったが,1mmol/l以下の濃度ではコントロール値に対し,その69%以下にまでALP活性を低下させた.また,細胞から抽出したALPにグアヤコールを作用させたところ,0.001〜10mmol/lの濃度では酵素活性に全く変化は生じなかった.骨芽細胞様細胞へのグアヤコールの取り込み量は,反応後30分でユージノールの約2倍となった.また,両者は,細胞の膜分画中に可溶性分画とほぼ同程度存在した.以上の結果から,窩洞形成部へのZOG填塞により歯髄内ヒスタミンの生成が抑制され,歯髄の鎮静ならびに消炎効果がもたらされる可能性が示唆された.さらに,持続的にユージノールを遊離するZOEに対して,ZOGは硬化時間が短く,窩洞が短時間で封鎖されるとともに,組織への刺激軽減の観点からも評価される製剤であることが認められた.
  • 田口 洋一郎, 安井 菜津希, 富永 和也, 橋本 典也, 至田 宗泰, 玉置 敏夫, 北条 博一, 武田 昭二, 林 宏行, 田中 昭男, ...
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 4 号 p. 449-456
    発行日: 2010/08/31
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    幼若ブタの歯胚から抽出されたエナメルマトリックスデリバティブ(以下,EMDと略す)は,歯槽骨吸収の著しい歯周炎患者の歯周組織再生,特に無細胞セメント質を誘導し歯周組織の再生を促す材料として,現在広く臨床応用されている.しかし,EMDは生物由来材料のため,未知の病原体の問題点を払拭できず患者からの拒否感があるのも事実であり,生物に由来しない合成ペプチドの開発が望まれていることから,EMDの基礎研究から得た成果を基に新規合成ペプチドを作製した.今回,創傷治癒過程における重要な歯周組織構成細胞であるヒト歯肉上皮細胞に対する,EMD由来新規合成ペプチドの影響について検討した.ヒト歯肉上皮細胞として,歯周外科時に採取された歯肉から樹立され,epi4と命名されたヒト歯肉上皮細胞株を実験に使用し,ヒト歯肉上皮細胞に対する新規合成ペプチドの影響としては,細胞の増殖,接着および遊走について検討した.実験群では合成ペプチドを100ng/mlの濃度で培地に溶解させヒト歯肉上皮細胞に応用し,対照群は合成ペプチド無添加とした.細胞増殖に関しては,1,3,24,72時間培養後に,細胞接着に関しては培養1時間後に,細胞遊走に関してはBoyden chamber法を改良して,1,4,8時間後にそれぞれを測定した.細胞増殖は,培養1,3,24時間後の実験群では対照群に比べて有意に低かった.培養後72時間後の細胞増殖は,実験群は対照群に比べて低いものの有意差は認められなかった.細胞増殖は経時的に有意な増殖傾向を示した.細胞接着は,実験群のほうが対照群よりも有意に低かった.細胞遊走は,実験時間において対照群よりも有意に高かった.これらの結果から,EMD由来の合成ペプチドは歯周組織再生の過程でみられる創傷治癒に関与するヒト歯肉上皮細胞の増殖,接着を抑制し,遊走を促進することが示唆された.
  • 前田 朋己, 前田 宗宏, 勝海 一郎
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 4 号 p. 457-470
    発行日: 2010/08/31
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    本研究は,直線根管用のエンジン用RTファイル(ERTファイル)による根管拡大形成時の切削トルクの測定と,切削による根管の形状変化を知ることを目的に行った.根管が直線的なヒト抜去上顎切歯22本,下顎切歯6本,下顎小臼歯8本に対し,テーパーが14/100のERTファイルを用い,根管切削トルク測定装置で切削トルクを測定しながら根管上部を切削,拡大した.その後,テーパーが6/100のERTファイルのなかから,D0が0.40,0.50,0.60mmのサイズの器具を根管の先端径に対応して選択し,前述の装置を用い測定した作業長から逆算して根尖側8mmの根管の切削を行い,切削時のトルクを連続的に測定するとともに最大切削トルクと仕事量(ΔT)を求めた.またマイクロフォーカスX線CT装置により連続的に断層撮影を行い,画像処理ソフトを用い切削前後の根尖側8mmの根管容積を求めるとともに,根管切削量を算出,さらに断層画像と三次元構築像から根管形態の変化を調べ,以下の結果を得た.14/100のERTファイルによる切削では,最大切削トルクは切削した根管の長さ,太さ,形態により値はさまざまであった.6/100のERTファイルによる切削により,上顎切歯群では226.4gcm,下顎切歯群で368.8gcm,下顎小臼歯群で230.1gcmの最大切削トルクが測定され,一元配置分散分析により歯種間で最大切削トルクに高度な影響(p<0.01)が認められた.6/100のERTファイルによる切削により,上顎切歯群では69,373,下顎切歯群で143,812,下顎小臼歯群で48,839のΔTが算出され,一元配置分散分析の結果,歯種間でΔTに高度な影響(p<0.01)が認められた.切削前の根管容積は,上顎切歯群で3.24mm3,下顎切歯群で1.84mm3,下顎小臼歯群で3.49mm3の値が測定され,一元配置分散分析の結果,歯種間で根管容積に高度な影響(p<0.01)が認められた.また上顎切歯群の根管先端径が異なる群間に高度な有意差(p<0.01)がみられ,根管先端径が細い根管では根管容積全体も小さいことが認められた.切削後の歯種間の根管切削量は,上顎切歯群で0.34mm3,下顎切歯群で0.69mm3,下顎小臼歯群で0.68mm3が測定され,一元配置分散分析により歯種間で切削量に高度な影響(p<0.01)が認められた.以上から,最大切削トルクとΔT,根管切削量は,根管形態と根管容積に影響されることがわかった.また画像解析から,偏平傾向のある下顎切歯,下顎小臼歯の根管では根管の両端部に未切削部が残存しやすいため,次亜塩素酸ナトリウム剤による十分な清掃が必要であることがわかった.
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