日本歯科保存学雑誌
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53 巻 , 6 号
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原著
  • 小澤 有美
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 6 号 p. 549-561
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    天然歯は,部位によって色調や透明性などが異なっている.光重合型コンポジットレジンで歯冠修復を行うとき,天然歯と調和するように修復しなければならないが,半透明性のこの材料で着色歯質や変色歯など背景の影響を遮蔽し修復するのはきわめて困難である.本研究は,背景色の明度の違いによってどのように積層充填をすればよいのかを明らかにするため,光重合型コンポジットレジンのインサイザルシェード(I),スタンダードシェード(S)およびオペークシェード(O)を積層した状態で測色を行い,背景の影響を受けずに高い明度が得られる積層充填法に関する基礎的な検討を行った.3種類のコンポジットレジン,エステライトΣクイック(トクヤマデンタル),クリアフィル®マジェスティ®(クラレメディカル),ビューティフィルII(松風)の各インサイザルシェード,スタンダードシェードA3,オペークシェードA3を用いて試料を作製した.試料の厚さは,0.5,1.0,1.5,2.0mmとした.各試料を組み合わせて厚さを2.0mmになるように積層した.積層法は,各試料の厚さを変えて下層にO上層にS,下層にS上層にI,下層にO中層にS上層にIの積層試料を作製した.試料は白色板,黒色板あるいはグレー色票(L*10〜L*80)上に置き非接触式分光測色器を用いて測色を行った.測色結果からXYZ値およびCIELAB値を算出し,(1)白色板,黒色板上でのL*値およびC*ab値,(2)Translucency parameter(TP値),(3)Contrast ratio(CR値)および(4)各グレー色票上でのL*値を求めた.その結果,ビューティフィルIIはエステライトΣクイックやクリアフィル®マジェスティ®より透明性が低く背景色遮蔽効果があることがわかった.シェード別で比較をすると,Oは透明性が低く背景の影響を受けにくいが,試料の厚さが1.0mm以上になると背景よりも試料自体の色のほうが影響力をもつため,厚さ2.0mmの積層試料においてOを用いなくても背景色遮蔽効果を示し,高い明度が得られることが判明した.コンポジットレジンの種類が異なれば,同一シェードであったとしても明度,彩度および透明性も違うことから,臨床においては使用するコンポジットレジンの特徴に留意すべきことが示唆された.
  • 小林 一行, 山崎 泰志, 福田 貴久, 鳥塚 慎二, 小澤 寿子, 新井 高
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 6 号 p. 562-569
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    今日,医科領域では臨床診断や治療に対し,ファイバースコープ(FS)内視鏡システムが広く応用されている.しかしながら,歯科領域においては,いまだ普及されていない.歯肉縁下の硬組織・軟組織をリアルタイムで直視することは,より効率的な歯周治療を可能にする.そこでわれわれは,1996年から歯科,特に歯内・歯周領域に使用するためにFS内視鏡システムを開発してきた.また,Er:YAGレーザーは,多くの研究により歯肉縁下歯石や感染セメント質に対する卓越した除去能が報告されている.本研究の目的は,歯肉縁下の歯周治療におけるEr:YAGレーザーとFS併用の有用性を評価することである.人工歯にマニキュアを塗布したオリジナル顎模型をファントームに装着し,実験に用いた.上顎右側側切歯(#12)口蓋側,上顎右側第一小臼歯(#14)近心面,下顎右側第一大臼歯(#46)根分岐部にマニキュアを塗布,標的とし被験人工歯とした.レーザー装置は,Er:YAGレーザーでコンタクトチップを用いた.コンタクトチップとしてFS未使用群では,C400F(φ400μm)を,FS使用群では,E200FL(φ200μm)を用いた.用いたFSシステム(画素数6,000pixels,外径1.1mm)は,レーザー用チャンネル,水流用チャンネルおよびライトガイドを有する.術者は,FS・Er:YAGレーザー使用経験者である5名とした.はじめに,被験人工歯に対してEr:YAGレーザーのみの照射を行った(FS未使用群).FS未使用群で処置された歯を新しい人工歯に交換後,FS観察下でレーザー照射を行った(FS使用群).レーザーは,それぞれの被験人工歯に対して80mJ,10pps,注水下で1分間照射した.そして,それぞれのマニキュア残存率を解析するために歯根表面を観察した.それぞれのマニキュア残存率の平均(FS未使用群:FS使用群)を以下に示す.#12口蓋側面(82.48±13.57%:23.08±4.15%),#14近心面(79.74±11.60%:19.05±8.08%),#46根分岐部(80.16±8.12%:22.39±3.31%)であった.FS使用群は未使用群より有意にマニキュア残存率が低かった(Mann-Whitney U test:p<0.05).Er:YAGレーザー照射後の歯根表面の観察において,FS使用群は,未使用群に比べてマニキュア以外の部分への照射は少なかった.この結果から,Er:YAGレーザーとFSとを併用した場合,併用しない場合と比較して歯肉縁下の歯周治療においてより効果的であることが示唆された.
  • 中村 俊美, 織田 洋武, 佐藤 聡
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 6 号 p. 570-578
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    微酸性電解水は2〜6%の塩酸を電気分解することにより生成され,pH5.0〜6.5,酸化還元電位800〜1,100mV,遊離塩素濃度10〜30ppmを示す.微酸性電解水は強酸性電解水と同様強力な殺菌力を有し,環境汚染も少なく,医療分野での応用が期待されている.本研究は,口腔内病原細菌に対する殺菌効果,ならびに口腔内細胞への影響についてin vitroにて検証した.殺菌試験については,材料として,Streptococcus mutans(ATCC25175),Aggregatibacter actinomycetemcomitans(ATCC29522),Porphyromonas gingivalis(W83,ATCC33277),Prevotella intermedia(ATCC25611)の5菌種を使用した.各種細菌を洗浄後,滅菌蒸留水にて倍々希釈した微酸性電解水(0,6.25,12.5,25.0,50.0,100w/w%)にて1分間処理した.その後希釈し,寒天培地に塗抹後,A.actinomycetemcomitans,S.mutansは48時間,P.gingivalis,P.intermediaは72時間培養を行い,評価はColony Forming Units(CFU)で行った.細胞毒性試験については,材料としてヒト歯肉線維芽細胞とヒト皮膚線維芽細胞を用いた.細胞を培養後,滅菌蒸留水にて希釈した微酸性電解水(0,12.5,25.0,50.0,100w/w%)を30秒,1,2,4分間それぞれ作用させた.その後8日間の細胞増殖の変化を測定した.また,歯肉線維芽細胞と皮膚線維芽細胞に対し,微酸性電解水を0〜80w/w%に調製した培養液にて培養し,検討を行った.その結果,微酸性電解水は,S.mutans(ATCC25175),A.actinomycetemcomitans(ATCC29522),P.gingivalis(W83,ATCC33277),P.intermedia(ATCC25611)の5菌種に対して1分間の作用で完全な殺菌効果を示し,その効果は25%希釈溶液までみられた.さらに微酸性電解水原液では,歯肉線維芽細胞の細胞増殖に抑制作用を示した.この作用は希釈により低下し,50%希釈溶液では,抑制作用は認められなかった.以上の結果から,微酸性電解水は宿主細胞に影響しない濃度下で口腔内細菌に対して強い殺菌作用を示すことが認められた.
  • 向井 義晴, 椎谷 亨, 坂本 英里, 室野井 麻紘, 飯塚 純子, 藤野 富久江, 寺中 敏夫
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 6 号 p. 579-584
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    ブリーチングは審美的歯科治療の一つの選択肢であるが,その対象となるエナメル質表面にホワイトスポットと呼ばれる表層下脱灰病巣が認められることが少なくない.このような場合,白斑病変を含めたブリーチング処理の是非は不明であり,ブリーチングシステムが白斑病変の重篤化に関与するか否かを検討した報告はない.本研究の目的は,エナメル質表層下脱灰病巣に対するオフィスブリーチングの影響をin vitroで確認することである.ウシエナメル質より切り出したブロック表面を平坦にした後,2×3mmの試験面を残して耐酸性バーニッシュを施し,以下の4グループを作製した.ブリーチンググループ(BT):オフィスブリーチング剤として35%の過酸化水素水を主成分とする松風HiLite(以後,HiLite)を使用し,健全エナメル質上に設定した試験面を指定の方法により処理した.ブリーチング処理は3度の処理を1セッションとし,水洗,乾燥後6セッション行った.脱灰病巣グループ(SL):白斑病変を模倣する目的で人工的にエナメル質表層下病巣を作製した.表層下病巣はエナメル質試料をpH4.6の0.1mol/l乳酸ゲル中に37℃で10日間浸漬することにより作製した.脱灰病巣+ブリーチンググループ(SLBT):エナメル質表層下病巣はSLグループと同様の方法で作製し,その後HiLiteをBTと同様の方法で適用した.コントロールグループ(CS):未処理健全エナメル質をコントロールグループとして使用した.作製された各エナメル質試料を薄切し,Transveral Microradiographyを撮影後,TMR2000を用いてミネラルプロファイルを作製,ミネラル喪失量(IML:vol%×μm)を算出した.SLのミネラルプロファイルは典型的なエナメル質表層下病巣を示していた.SLBTのミネラルプロファイルからはHiLite処理による病巣の進行は認められなかった.SLとSLBTのミネラル喪失量および病巣深度を比較したところ,それぞれ3,816.5,3,675.1vol%×μmおよび117.6,109.5μmであり,ともに有意差は認められなかった.さらに,BTとCS間においてもこれらのパラメーターに有意差は確認されなかった.これらの結果から,白斑病変が存在するエナメル質に対しそれらを含めたオフィスブリーチングが,病巣を重篤化させることはないことが示唆された.
  • 岸本 麻実, 神農 泰生, 穴吹 優佳, 中田 貴, 田中 久美子, 西谷 佳浩, 吉山 昌宏
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 6 号 p. 585-591
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    本研究は各種漂白剤処理後のエナメル質に対するコンポジットレジンの接着性を評価するために,漂白直後の未研削エナメル質を用い,エッチングの有無を含めて検討を行った.実験には,齲蝕のないヒト抜去前歯(エナメル質,未研削)を用いた.漂白剤として松風ハイライト®(松風:HL),ピレーネ®(三菱ガス化学:PY),松風ハイライトシェードアップ®(松風:SU)の3種類を,接着システムとしてクリアフィルメガボンド®(クラレメディカル)を使用した.これらを,漂白処理を行わないControl群とそれぞれの漂自処理群の4群に分け,さらにそれらをエッチング操作の有無(以下,E(+),E(-))に分け,全8群に分類した.まず,メーカー指示どおりにHLおよびPY,SUを用いて漂白操作を行った.漂白処理終了直後に,E(+)群は前歯部唇面をエッチングし,水洗乾燥後ただちに接着操作を行った.E(-)群はエッチング操作を省き,同様の手順で行った.その後37℃にて24時間水中保管を行い,接着界面が1×1mmの短冊状切片を作製し,微小引張り接着強さ(MPa)を測定した(n=20).測定値は,twoway ANOVAおよびTukey methodを用いて有意水準5%で統計処理を行った.各漂白剤間での比較では,Controlはすべての漂白処理群に比べ有意に高い値を示した.HLはSU,PYの値と比較し有意に高かったが,SUとPYの間に有意差は認められなかった.HLはPY,SUよりもpHが低く,SEMから明瞭なレジンタグの形成は認められないものの,歯の表層に微小な凹凸構造が生じ,ほかの2つよりも有意に接着強さが高くなったと考えられた.E(+,-)による比較では,E(+)のほうがE(-)と比較し接着強さが有意に高かった.以上の結果から,漂白直後の未研削エナメル質では未漂白の場合と比較して接着強さが低下し,接着強さの低下の度合いは漂白剤の種類によって異なることが示唆された.
  • 隈部 俊二, 高間 敬子, 三上 淑子, 三上 博子, 加藤 侑, 薮内 崇督, 柿木 栄幸, 藤平 智広, 辻 則正, 稲本 雄之, 至田 ...
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 6 号 p. 592-600
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    デンタルエックス線写真は,臨床において根管形態を知るうえで最も簡便かつ有用な方法である.しかし,撮影方向が唇(頬)舌方向に限定されるため,完全な根管形態の把握は難しいと考えられる.近年,マイクロフォーカスエックス線CTが開発され,根管形態をより正確に知ることが可能となってきた.そこで,これまで使われてきたデンタルエックス線写真では根管形態についてどの程度の情報を得ることができているのかを評価するため,デンタルエックス線写真の読影から得られた結果と,同一歯から得られたマイクロフォーカスエックス線CT像を形態学的に分析し比較した.ヒト下顎骨7体分左右合計14本の下顎第一大臼歯を試料とした.下顎骨に植立された状態の歯を,正放線投影法と偏心投影法によりデンタルエックス線撮影し,経験を積んだ歯内療法専門医が,根管数,分岐根管,根尖分岐,歯髄結石,網状根管について分析した.同じ試料を抜去し,マイクロフォーカスエックス線CTを用いて根管の3D-CT画像を得た.CT画像から得られた結果を正としてデンタルエックス線写真から得られた結果との一致率を調べた.(1)根管数は,近心根で87.5%,遠心根で75.0%の一致率が得られた.根尖分岐は3D-CT画像では明白に確認できたが,デンタルエックス線写真では不正確であった.(2)分岐根管の有無は,正放線投影法で近心根25%,遠心根75%の一致率を得られたが,偏心投影法を加味すると遠心根では42.9%に一致率が低下した.(3)歯髄結石の有無は,正放線投影法で近心根4.5%,遠心根10.7%の一致率を得られたが,偏心投影法を加味すると像の重なりが増えたため一致率はやや低下した.(4)根管形態の把握に際して,偏心投影を加味すると正放線投影単独よりも多くの情報が得られるが,各検討項目について,特に歯髄結石がみられる遠心根で一致率が低下した.3D-CT画像と比較した結果,デンタルエックス線写真は根管数と分岐根管についてはかなり正確な情報が得られることが示唆された.しかし,根尖分岐,歯髄結石,網状根管など複雑な根管形態の詳細を確認することは困難であることが示唆された.
  • 河野 智生, 重松 伸寛, 高橋 貫之, 田幡 元, 田中 昭男, 上田 雅俊
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 6 号 p. 601-610
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    糖尿病は歯周病に対する重要なリスクファクターと考えられており,歯周病は,網膜症,腎症,神経障害,細小血管障害,大血管障害に続く糖尿病の第6番目の合併症と提唱され,その合併症のどれもが血管障害に起因するものである.血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)は,血管内皮細胞の増殖・分化,血管透過性の亢進,強力な血管拡張作用などをもつ糖タンパク質である.また,VEGFは悪性腫瘍や糖尿病網膜症などの異常な血管新生や血管透過性亢進が認められる病態に大きく関与していることが知られるようになってきた.そこで本研究では,歯周組織の創傷治癒過程における微小循環の回復に糖尿病がいかなる影響を及ぼすかを明らかにするために,2型糖尿病モデルラットであるGoto-Kakizaki(GK)ラットの臼歯部に人工的に作製した歯周組織欠損の治癒過程におけるVEGFの局在を免疫組織化学的に検索し,さらに新生された毛細血管の超微形態を観察した.生後8週齢のSD系ラットを対照群,GKラットを実験群とし,両群の上顎臼歯部口蓋側の歯肉粘膜骨膜弁を剥離し,ハンドスケーラーにて掻爬して歯周組織欠損を作製した.その後,歯肉弁を元の位置に戻し1糸縫合を行い,術後3,5,7日にラットを各群6匹ずつ安楽死させ,上行大動脈からの灌流固定の後,被験歯根を含む周囲組織を一塊として採取し脱灰した.脱灰後,各群4匹についてはパラフィン切片を作製し,VEGFの免疫染色を行い,光学顕微鏡で観察した.残りの2匹については,Epon812に樹脂胞埋し,超薄切片を作製し透過型電子顕微鏡にて観察した.その結果,術後3,5日目において歯周組織欠損部の結合組織にVEGFの局在が両群ともに認められたが,実験群では特に毛細血管周囲に強く局在し,活発な毛細血管の新生像も観察された.術後7日目において対照群ではVEGFの局在はほとんどみられなかったが,実験群では歯周組織欠損部およびその周辺の結合組織中の毛細血管周囲にその局在が認められ,電顕像では血管の新生像も依然としてみられた.さらに実験群には,基底膜の多層化のみられる毛細血管も観察された.以上の結果より,実験群では対照群に比較してVEGF発現が促進され,術部での血管新生,血管透過性亢進が実験期間を通じて持続し,それによって歯周組織欠損部に低酸素状態が作り出されることによりさらなるVEGFの発現が誘発されて,そのことが歯周組織の創傷治癒における微小循環の回復に影響を及ぼしていることが示唆された.
  • 藤田 光, 岩井 仁寿, 岡田 珠美, 鈴木 英明, 西山 典宏, 池見 宅司
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 6 号 p. 611-618
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    現在市販されているワンステップボンディング材は,長時間の保管や高温度下での保管により,歯質に対するレジンの接着強さが低下する傾向がある.本研究では,ワンステップボンディング材で処理した歯質に対するレジンの接着強さが低下する原因を検討することを目的とし,ワンステップボンディング材に含まれるモノマーの変質に及ぼす影響を,せん断接着強さと核磁気共鳴法(13C NMR法)を用いて比較検討した.ワンステップボンディング材としてボンドフォース(トクヤマデンタル)を使用し,0,3,7,14週間,40℃恒温槽中に保管したものを試料とした.13C NMRの試料として,ボンドフォース300mgとジメチルスルポキシド250mgをNMR管に精秤した後,振盪・攪拌して13C NMR法により解析を行った.また同じ保管期間の試料を用いて,エナメル質および象牙質とのせん断接着強さの測定も行った.その結果,ボンドフォース水溶液を40℃恒温槽に保管すると,メタクリル酸のカルボキシル基カルボニルカーボンおよびエチレングリコールのメチレンカーボンに帰属されるNMRピークが検出され,保管時間が長くなるに従いそれらのNMRピーク強度は増大した.ボンドフォースを40℃で14週間保管すると,HEMAのメタクリロキシエステル基は22.39%分解した.これはHEMAのエステル基が加水分解し,メタクリル酸およびエチレングリコールが生成されたからである.また,エナメル質との接着強さは,保管期間0日(コントロール)の場合16.2MPaであったが,保管期間が長くなるにつれて接着強さは低下し,保管期間が14週間では5.5MPaと大きく低下した.またエナメル質の接着強さと同様に,象牙質の接着強さは,保管期間が長くなると,接着強さは12.7MPaから6.0MPaまで低下した.歯質に対するレジンの接着強さは,ワンステップボンディング材中のHEMAが保管期間とともに加水分解して変性し,接着強さが低下した.以上のことから,歯質に対するレジンの接着強さの低下はワンステップボンディング材の劣化に起因することがわかった.
  • 佐藤 将洋, 河瀬 雄治, 齋藤 喜久, 鍋山 篤史, 内山 真紀子, 安西 正明, 音琴 淳一, 山本 昭夫, 笠原 悦男
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 6 号 p. 619-626
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    アナターゼ型二酸化チタンの光触媒作用(Photocatalytic Effect)は,光を照射することにより触媒作用を示す光化学反応の一種と定義される.近年,歯科領域においてこのアナターゼ型二酸化チタンの光触媒作用を,歯の漂白などに応用する研究が行われている.本研究は,粒子径の違うアナターゼ型二酸化チタンであるST-01(平均粒子径約7nm)とST-21(平均粒子径約20nm)について,歯科領域での応用を踏まえて,粒子の観察,結晶構造の解析,光触媒作用の解析など基礎的データの収集を目的とした.二酸化チタン粒子の観察には,透過型電子顕微鏡(TEM)を,結晶構造と結晶性の解析は,X線回折装置(XRD)を使用した.光触媒作用の解析は,チタン含有メチレンブルー(MB)溶液の色素分解により判定した.MB溶液とST-01,ST-21の混合溶液を1.5mlセミミクロキュベットに採取し,UV(365nm)とLED(420〜480nm)の歯科用可視光線照射器の照射光を照射し,吸光度を計測した.ST-21よりも粒子径の小さいST-01に,より強い光触媒作用の効果が示された.また,照射光は,波長の短い光のほうがTiO2の光触媒作用の効果を強く発現させることが明らかとなった.一方,可視光線領域の波長でも光触媒作用の効果が認められた.
  • 成橋 昌剛
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 6 号 p. 627-643
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,CO2レーザー照射にナノハイドロキシアパタイトを併用した歯根象牙質面のアパタイトコーティングに関する検討を行った.まず,試作ナノハイドロキシアパタイト(Pentax Newceramics)とハイドロキシアパタイト(和光純薬)の超微細構造を,SEM,TEMにより観察した.また,結晶構造の分析を,X線回折装置および赤外分光分析装置により行った.形態学的観察により,いずれのアパタイトもクラスター構造を呈し,ナノハイドロキシアパタイトのクラスターはナノサイズであった.また,微小XRD図形やFT-IRスペクトルの測定により,ナノハイドロキシアパタイトの結晶性はハイドロキシアパタイトと全く同一のものであった.次に,ナノハイドロキシアパタイトを塗布した象牙質面におけるCO2レーザー照射の影響を検索する目的で,アパタイトペーストの熔融性,熔融したアパタイトの結晶構造変化ならびに象牙質面への熔着性について検討した.ヒト抜去小臼歯歯根に#2000仕上げの平坦面を調製し,10%クエン酸で10秒間処理した後,ハイドロキシアパタイトペースト,あるいはナノハイドロキシアパタイトペーストを処理面に塗布した.次いで,CO2レーザー(Panalas CO5Σ,パナソニックヘルスケア)をRPTモード,0.5秒,3パルスの条件下で3W(34.3J/cm2),2W(24.2J/cm2),または1W(14.1J/cm2)の各出力で照射した.その後,照射面を非蒸着,湿潤下でSEM観察し,顕微FT-IRを用いて結晶の組成分析を行った.さらに,これらの試料を,5,10,20,30分間超音波洗浄し,SEMにて熔着アパタイトの残留の様相を検討した.象牙質面の処理法により5つの実験群が設置された.すなわち,ナノHAP群(クエン酸/ナノハイドロキシアパタイト/レーザー),HAP群(クエン酸/ハイドロキシアパタイト/レーザー),L群(レーザー),C群(クエン酸),および無処理群である.形態学的観察によると,ナノHAP群では象牙細管の封鎖が認められ,また照射エネルギーによってはアパタイトが象牙質に熔着していることが判明した.一方,分析化学的検討によると,ナノHAP群とHAP群の結晶性はほぼ同一で,L群,無処理群,およびC群の結晶化度はこの順で低くなることが明らかとなった.本研究により,特にナノハイドロキシアパタイトを併用した象牙質面に対するCO2レーザー照射は,たとえは高齢者の歯によくみられる露出歯根の象牙質におけるアパタイトコーティングに非常に有効であることが判明した.
  • 長倉 弥生, 新田 俊彦, 奈良 陽一郎
    原稿種別: 原著
    2010 年 53 巻 6 号 p. 644-660
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,All-in-one adhesive systemの初期引張接着強さ(ITBS)に基づく接着特性と信頼性を明らかにすることを目的に,代表的な6システムを選択し,in vivo/in vitro両用小型接着試験器を用いて,ヒト抜去上顎小臼歯頬側歯頸部に形成した規格化V字状窩洞のエナメル質面ならびに象牙質面に対するITBS測定を行い,評価検討した.得られた測定値に対しては二元配置分散分析,Tukeyのq検定およびメジアンランク法によるワイブル分析を行った.さらに,試験後の破断面についてデジタルマイクロスコープによる観察を行った.本実験の結果,今回検討した6システムは,エナメル質より象牙質を接着対象とする場合に,有意に大きな接着強さを獲得できることが判明した.また,各システム固有の接着強さ獲得に際しての信頼注はシステムによって異なり,エナメル質を対象とする場合に優れた信頼ら生を発揮するシステムと,象牙質において優れた信頼性を発揮するシステムとに類別できた.さらに,6システムのエナメル質および象牙質に対するITBS値は,環境因子とシステムの違いによって影響を受けた.エナメル質が接着対象である場合には,各システム固有の接着強さ獲得に際しての信頼性には有意差が認められるものの,特定のシステムによる顕著な優劣は確認できなかった.また,接着耐久性に対する環境因子の影響はシステムによって異なった.一方,象牙質においては,各システム固有の接着強さ獲得に際しての信頼ら生に有意差を認め,グループ化された優劣が確認できた.また,接着耐久性に対する環境因子の影響はシステムによって異なった.加えて,接着試験後の破断面において最も多く観察できた破壊様相は,混合破壊であった.
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