日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
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54 巻 , 2 号
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原著
  • 西村 知子, 平林 正道, 鈴木 二郎, 尾本 直大, 岡田 周策, 寺中 敏夫
    原稿種別: 原著
    2011 年 54 巻 2 号 p. 81-87
    発行日: 2011/04/30
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー
    従前のオフィスブリーチ法では高濃度の過酸化水素(H2O2)を用いるため,エナメル質や象牙質表面および口腔粘膜になんらかの悪影響を与えることが以前より指摘されてきた.本研究の目的は従来の約1/10の濃度のH2O2と,可視光領域で光触媒効果を発揮する二酸化チタンを混じて適応することで漂白効果が得られるPYRENEES®(PYR)のエナメル質表面に与える影響を,高濃度H2O2を用いるHi Lite™(HI)と比較し,評価することである.鏡面研磨したウシエナメル質を未処理(Cont)群,PYR群およびHI群の3群(各n=5)に分けた.PYRおよびHIは業者指定の漂白方法で,1週間に一度,3週処理した.なお,試料は漂白処理以外の期間は蒸留水中に保管した.漂白処置終了後,共焦点レーザー顕微鏡および走査電子顕微鏡を用いてエナメル質処理面の形態学的観察,および算術平均粗さを測定した.さらに電子線プローブマイクロアナライザーにて漂白エナメル質断面のカルシウムの点および面分析を行った.また,接触角計を用いて表面自由エネルギーを算出した.PYRの表面性状はCont群とほぼ近似であり滑沢性が良好に保たれていた.一方,HI群の表面性状はCont群と比較して有意に粗槌であり,脱灰様相を呈した.カルシウムの分析では,PYR群はCont群と同一であったのに対しHI群はエナメル質表面から約30μm程度まで脱灰されていた.Cont群に比較してPYR群およびHI群の蒸留水に対する接触角は有意に低く,ジヨードメタンに対する接触角は有意に高い値を示すとともに,表面自由エネルギーも有意に高かった.これらの結果より,PYRはエナメル質面の基質変化を伴うことなく漂白効果を発現することが示された.
  • 山本 俊郎, 市岡 宏顕, 山本 健太, 赤松 佑紀, 西垣 勝, 大迫 文重, 雨宮 傑, 坂下 敦宏, 中村 亨, 喜多 正和, 金村 ...
    原稿種別: 原著
    2011 年 54 巻 2 号 p. 88-96
    発行日: 2011/04/30
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー
    ヒト歯根膜由来細胞(hPDL細胞)は,歯周病原因子であるメカニカルストレス(mechanical stress;MS)や歯周病原菌に対して多くの炎症性サイトカインを産生する.そして,これらの炎症性サイトカインは歯根膜の炎症を惹起させ,歯根膜をはじめとした歯周組織に影響を与えている.近年,温州みかんに多く含まれるβ-クリプトキサンチン(β-cryptoxanthin;β-cry)には,歯槽骨吸収を抑制する作用があるとされるが,歯槽骨と同じ歯周組織である歯根膜に対するβ-cryの影響は知られていない.そこで今回は,β-cryが生理的咬合圧と同等のMSや歯周病原菌Porphyromonas gingivalis(P.gingivalis)に対するhPDL細胞のサイトカイン産生に与える影響について検討した.hPDL細胞は,抜歯後の歯根膜組織片を採取,10%FBS加DMEMで初代培養後,1×105cells/mlに調整した.次に,β-cry(1×10-7mol/l)を添加後(対照はβ-cryを非添加),MS(1ないし6MPa)(MS群)あるいはP.gingivalis(1×107CFU/ml)で刺激(細菌群),炎症性サイトカインであるインターロイキン(IL)-1β,IL-6,IL-8,腫瘍壊死因子(TNF)-αについてReverse transcription polymerase chain reaction法およびEnzyme-linked immunosorbent assay法で検討を加えた.そして,細胞形態は倒立位相差顕微鏡を用いて鏡検で確認した.β-cry存在の有無にかかわらず,細菌群ないしMS群の炎症性サイトカインIL-6とIL-8産生量が増加した.これらのサイトカイン産生量は,細菌群のほうがMS群に比べて有意に増加したが,β-cryの存在下では細菌群とMS群ともに産生量が減少した.さらに,β-cry添加/β-cry非添加の産生量の比は,MS群のほうが細菌群に比べて低値であった.なお,hPDL細胞の形態的変化はなかった.本結果から,口腔機能が生理的に営まれる環境において生じる咬合圧に匹敵したMSは,歯根膜のサイトカイン産生を誘導し,その誘導能は歯周病原菌と比べて弱いものであった.そして,β-cryはこれら歯周病原因子に対する歯根膜のサイトカイン産生を抑制するとともに,その抗炎症作用は歯周病原菌と比べMSに対して高いことが判明した.このことから,日常的なβ-cryの摂取は歯根膜のサイトカイン産生を抑制することから,この抗炎症作用を利用した治療薬としてのβ-cryの可能性が示唆された.
  • 笹本 実, 鈴木 奈央, 渡辺 猛, 力丸 哲也, 鬼塚 得也, 永井 淳, 森 智昌, 加藤 熈, 坂上 竜資
    原稿種別: 原著
    2011 年 54 巻 2 号 p. 97-102
    発行日: 2011/04/30
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー
    口臭の原因物質として口腔内プラークに由来する硫黄化合物があることはよく知られている.現在,種々の口臭抑制剤が市販されているが,それらの口臭抑制効果をin vitroで調査した報告は少ない.そこで今回われわれは,硫黄化合物を揮発させる材料として99.0%メルカプトエタノールに着目し,口臭抑制剤としてカキノキDiospyros kaki Thunbergの果実より得られた柿抽出液にトレハロースを加えて作られた消臭剤「パンシル®」(以下,パンシルと略す)を用いて,in vitroにおける口臭抑制剤の効果を検定する手法を開発した.メルカプトエタノールから揮発したガスを分離したガスクロマトグラフの波形グラフからは,硫化水素,メチルメルカプタン,メルカプトエタノールが検出された.メルカプトエタノールに由来して発生した気体内の硫黄化合物の総量は,蒸留水に混和するパンシルの濃度が増加するに従って減少し,パンシル4%水溶液群では蒸留水でのコントロール群の0.61%となった(p<0.01).パンシルは,メルカプトエタノールに起因する硫黄化合物に由来する臭い物質の発生を強力に抑制することが明らかになった.
  • 後藤 千里, 吉嶺 嘉人, 赤峰 昭文
    原稿種別: 原著
    2011 年 54 巻 2 号 p. 103-111
    発行日: 2011/04/30
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー
    シリンジと洗浄針を用いた根管洗浄の効率に関するin vitroの研究を行った.長さ10mmで根尖部の直径が0.4と1.0mmのガラス製の人工根管模型を可視化と高速度カメラによる撮影に用いた.液体の動きはトレーサーとしてガラスビーズを用いて調べた.今回の研究結果から,平坦型洗浄針では,洗浄液の押し出しの危険性を軽減するために,洗浄針の挿入深さと洗浄針のサイズに応じて押し出し速度を加減する必要があることがわかった.すなわち,押し出し速度0.10ml/secの場合,平坦型洗浄針25Gを根尖から5mmの位置に設置した条件が安全にかつ効率よく洗浄できると考えられる.一方,側方型洗浄針では,効果的な洗浄を行うには,孔の方向を変える必要があることがわかった.ガラスビーズと高速度カメラを用いた流体解析は,根管の洗浄効率を評価するうえで有用であると考えられる.
  • 遠藤 直樹, 下西 充, 岩松 正明, 菊池 雅彦
    原稿種別: 原著
    2011 年 54 巻 2 号 p. 112-120
    発行日: 2011/04/30
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー
    臨床医学のさまざまな疾患において,その症状の発現に日内変動が存在し,臨床検査値や薬物の効果に大きな影響を及ぼすことが知られるようになってきている.歯髄炎に伴う歯痛が夜間に発生しやすいことは経験的に知られているが,日内変動と急性歯髄炎に伴う歯痛との関係についてはいまだ不明である.本研究は歯痛を訴える患者に対し,歯痛の日内変動に関する調査を行った.急性歯髄炎に伴う歯痛を主訴に来院した患者73名に対し,インフォームドコンセントを得たうえで,性別,年齢,歯種,痛みの症状,痛みの発症時刻,1日の生活習慣(起床時間,食事時間,入浴時間,就寝時間)に関するアンケート調査を行った.統計分析には,カイ2乗検定と回帰分析を用いた.急性歯髄炎における歯痛は,夕方から深夜の時間帯と朝の7時から8時に集中的に発症していた.1日の生活習慣である起床,食事,入浴,就寝について歯痛発症時間との相関関係を調べたところ,朝7時から8時に歯痛を訴えた患者においては,起床時間と歯痛発症時間の間に相関関係がみられたが,夕方から深夜に歯痛を訴えた患者においては1日の生活習慣との相関関係がみられなかった.男女別,年代別,歯種別によって歯痛の発症時間に相違はみられなかった.これらのことより,急性歯髄炎による歯痛発症時間には日内変動の存在が認められた.
  • 森 健太郎, 高見澤 俊樹, 大塚 詠一朗, 遠藤 肇, 前田 徹, 山路 歩, 小倉 由佳理, 坪田 圭司, 宮崎 真至, Mark A. ...
    原稿種別: 原著
    2011 年 54 巻 2 号 p. 121-130
    発行日: 2011/04/30
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー
    光重合型コンポジットレジン(以後,光重合コンポジット)のwear挙動は,その発現機序が複雑であるところからいまだに十分に解明されたとはいいがたく,詳細な検討が必要と考えられる.特に,光重合コンポジットは,その耐摩耗性の向上を図るためにフィラー含有量,形状,粒径,粒度分布あるいは表面処理法に改良が加えられている.最近では,ナノサイズのフィラーを含有する光重合コンポジットも市販されているが,そのwear挙動に関しては不明な点が多い.そこで著者らは,ナノフィラーを応用した光重合コンポジットのwear挙動について,日常のブラッシングあるいは咬合接触をシミュレートした歯ブラシ摩耗および衝突摩耗試験を行うことによって検討した.その結果,摩耗量はいずれの試験法においても,不定形フィラーを含有するナノハイブリッドコンポジットで少なくなる傾向を示した.一方,試片の表面性状の変化は,試験法および含有されているフィラー形状によって異なるものであった.本実験の結果から,ナノフィラーを応用した光重合コンポジットのwear挙動は製品によって異なるため,材料選択に際しては含有フィラーの特性を十分勘案したうえでの使用が望まれることが示唆された.
  • 田上 順次, 千田 彰, 大槻 昌幸, 二階堂 徹, 中島 正俊, 友田 篤臣, 山田 三良, 河合 利浩
    原稿種別: 原著
    2011 年 54 巻 2 号 p. 131-141
    発行日: 2011/04/30
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,可視光応答型酸化チタン光触媒を含むオフィスブリーチング材(ティオンオフィス,ジーシー)の効果と安全性を評価した.本臨床試験は,東京医科歯科大学歯学部附属病院治験審査委員会,および愛知学院大学歯学部附属病院治験審査委員会の承認を得て,東京医科歯科大学歯学部附属病院むし歯外来,および愛知学院大学歯学部附属病院歯科保存科に来院した72名の前歯を対象とした.文書による説明と同意取得の後,対象歯をティオンオフィスを用いて製造業者の指示どおり,漂白材の塗布と光照射を3回繰り返して,漂白処置を行った.漂白処置前後の歯の明度は,シェードガイド(Vitapan Classical Shade Guide,Vita,Germany)を用いて視感比色で測定した.一定の基準で,各被験者の一歯を代表歯として選択し,漂白効果の評価を行い,Wilcoxonの検定で有意水準5%で統計学的検討を行った.また,術中・術後に認められたすべての有害事象を記録した.すべての症例において漂白効果が認められたが,その程度はまちまちであった.なお,漂白処置前後の明度には統計学的有意差が認められた.13症例に有害事象が認められ,そのうち11例において,漂白材の偶発的な接触が原因と思われる辺縁歯肉の白化が認められた.これらは,いずれも軽度なもので,次回来院時には消失していた.1例は処置とは無関係と思われる歯肉の炎症であった.他の1例は漂白処置後の上唇の軽度の違和感で,漂白処置との因果関係を否定することはできなかったので副作用とした.術中の痛み,術後の知覚過敏などは認められなかった.以上から,ティオンオフィスは,安全で効果的なオフィスブリーチング材であることが明らかになった.
  • 山田 嘉重, 増田 宜子, 川中 岳雄, 木村 裕一, 真鍋 厚史, 久光 久, 藤島 昭宏, 宮崎 隆
    原稿種別: 原著
    2011 年 54 巻 2 号 p. 142-152
    発行日: 2011/04/30
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は,化学-機械的齲蝕除去法としてブロメライン酵素とオレンジオイルを含有する新たな薬剤を試作し,その薬剤による齲蝕除去能,齲蝕除去後のレジン修復処置への影響に対して評価することである.本研究では歯頸部に慢性齲蝕を有するヒト抜去永久歯60本を使用した.実験グループ.は10%ブロメライン酵素と10%オレンジオイルを含有するBO試薬I,10%ブロメライン酵素と20%オレンジオイルを含有するBO試薬IIとカリソルブを用いた計3グループで齲蝕除去を行った.齲蝕除去後の試料から10本ずつ選出し,そのうち各グループ5本ずつは未処理,残りの5本は齲蝕面に1分間EDTA水溶液を作用させた.各グループにおいてEDTA処理およびEDTA未処理試料の窩洞表面性状を実体顕微鏡,走査電子顕微鏡を用いて観察した.各グループ残り10本の試料はEDTA処理後通法に従いコンポジットレジンにて窩洞内を充填した後,5本ずつ選出し辺縁漏洩試験を行った.その後試料をダイヤモンドディスクにより分割し,走査電子顕微鏡にて観察した.また各グループの残りの5本は4規定塩酸溶液にて象牙質を溶解しレジンタグの有無を観察した.齲蝕除去までに要した薬剤使用回数および作業時間は,BO試薬Iで平均2.7回の使用回数で465秒(7分45秒)の作業時間,BO試薬IIでは平均で2.2回,385秒(6分25秒),カリソルブでは平均で3.3回,512秒(8分32秒)でありBO試薬IIが使用回数,作業時間ともに有意に少なかった.齲蝕除去後の窩洞表面はEDTA処理において3グループともスミヤー層の消失が認められ,走査電子顕微鏡所見においても明確な問題点は認められなかった.辺縁漏洩試験の結果では3グループとも辺縁漏洩はほとんど認められず,漏洩程度もほぼ類似した状態を示した.また象牙質・レジン間の接着状態に対する走査電子顕微鏡観察においても,3グループとも良好な接着像を呈していた.さらに両実験試薬ともに顕著なレジンタグが観察された.これらの結果からBO試薬はカリソルブと同様に齲蝕除去効果を有すること,またその効果はカリソルブより優れていることが確認された.さらにコンポジットレジンへの接着に対しても影響がないものと考えられた.BO試薬間においては,20%オレンジオイルを含有しているBO試薬IIのほうが齲蝕除去能に優れていることが示唆された.
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