日本歯科保存学雑誌
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55 巻 , 6 号
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総説
原著
  • 鷲尾 絢子, 永吉 雅人, 平田-土屋 志津, 市丸 美希, 西野 宇信, 中川 愛加, 廉 〓勲, 西藤 法子, 吉居 慎二, 寺下 正道 ...
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 6 号 p. 365-372
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    目的:不用意な根管治療によって生じた根管内器具破折により,破折片より先の根管および根尖孔外の感染除去は困難となり予後不良の経過を辿ることが多い.また,根管内破折器具を除去するために根管自体を大きく拡大すると,根管壁穿孔や歯根破折といった二次的な偶発事故を招くこともある.今回,九州歯科大学附属病院保存治療科において実施した根管内破折器具の除去成功率について調査を行った.材料と方法:2008年度から2010年度の3年度間に本学附属病院保存治療科を受診した初診患者のうち,根管内破折器具が存在する歯の再歯内治療を行った31名35根管を対象とした.歯科用マイクロスコープ下において超音波装置および超音波チップを使用して実施した根管内破折器具除去症例の紹介・非紹介の別,根管内破折器具が存在する歯の歯種・根管の別・湾曲の有無,1根管当たりの破折器具数・存在位置,および除去成功率について調査した.結果:根管内破折器具が存在した症例のなかで,破折片除去を目的とした紹介患者の割合は約63%であり,破折器具が多く認められたのは下顎大臼歯近心根であった.1根管当たりの破折器具数は最大3本であったが,ほとんどは1本であり,その位置は根尖部あるいは根中央部で,根管上部では認められなかった.また,根管内破折器具の除去成功率は約89%で,ほかの方法による報告と比較して高い成功率を示し,機能回復も図られた.結論:以上の結果より,歯科用マイクロスコープ下で実施する超音波器具を併用した根管内異物除去法は,破折片除去率が高く有用であることが示された.
  • 鈴木 英明, 鈴木 義純, 岡田 珠美, 神谷 直孝, 森 俊幸, 藤田 光, 池見 宅司
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 6 号 p. 373-380
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    目的:過酸化尿素は,ホワイトニングに使用する薬剤に含まれており,主にホームホワイトニング剤に用いられている薬剤である.過酸化尿素の作用機序は,尿素と過酸化水素に解離し,活性酸素を放出することにより,着色や変色の原因になっている物質に作用し漂白することで歯を白くさせることが知られている.元来,この過酸化水素・過酸化尿素の両薬剤はホワイトニング用としてではなく,口腔用殺菌剤として使用されており,そのうえ,毒性や副作用をもたない安全性の高い薬剤といわれている.ホームホワイトニングで頻用されている過酸化尿素の齲蝕予防の可能性を検討する目的で,その抗菌作用についてin vitroにて実験を行った.材料と方法:実験には,Streptococcus mutans PS-14 (c)株,Streptococcus sobrinus 6715 (d)株,Actinomyces naeslundii ATCC 19246株を用い,10倍段階法にて最小発育阻止濃度の計測を行った.また,Resting cellに対する殺菌作用を濃度的変化ならびに経時的変化について検討した.さらに,不溶性グルカン生成阻害試験としてglucosyltransferase活性値の測定を行った.成績:1.S. mutansに対する最小発育阻止濃度は250μg/mlであった.2.S. sobyinusに対する最小発育阻止濃度は300μg/mlであった.3.A. naeslundiiに対する最小発育阻止濃度は300μg/mlであった.4.過酸化尿素の抗菌作用はS. mutans, S. sobrinusおよびA. naeslundiiのResting cellに対して殺菌的であった.5.過酸化尿素はS. mutans PS-14株ならびにS. sobrinus 6715株産生粗glucosyltransferaseのsucrose依存性不溶性グルカン合成活性を顕著に阻害した.結論:以上のことより過酸化尿素は,齲蝕原因菌に対して顕著な殺菌作用が認められ,抗齲蝕作用を有することが示唆された.
  • 日向 剛, 重谷 佳見, 吉羽 邦彦, 興地 隆史
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 6 号 p. 381-388
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    目的:Reciprocは,1本の器具で正逆回転の往復運動により根管形成することを特徴とするニッケルチタン合金製ファイルである.本研究では,Reciprocの湾曲根管切削特性の検討を目的とし,Twisted File (TF)を対照として,湾曲根管模型における形成時間と根管形態変化とを検索した.Reciprocの切削特性に及ぼすglide path (Ni-Tiファイルのための誘導路)の影響も併せて検討した.方法:エポキシレジン製透明根管模型(湾曲30度)を1群(Reciproc (R25: 25/.08)で形成),2群(RaCe (10/.04)でglide pathを形成後Reciproc (R25)で形成),3群(RaCe (10/.06)でglide pathを形成後Reciproc (R25)で形成),4群(TF (25/.08)で形成)に分け(各n=8),形成時間を測定しながら所定の形成を行った.次いで,デジタル画像解析にて根尖孔から1, 2, 3, 4, 5, 7, 9, 12mmの位置で内・外湾側での根管幅径増加量を計測し,centering ratioを算出した.一元配置分散分析およびBonferroni Dunn検定(危険率5%)で統計処理を行った.成績:根管幅径増加量は,4群が1〜3群と比較して,内湾側では1〜4mmおよび7,9mmの位置で有意に少量,また外湾側では7〜12mmの位置で有意に多量であった.Centering ratioは,1,2mmおよび7〜9mmの位置で4群が1〜3群のいずれか,もしくはすべてと比較して有意に低値であった.総形成時間は,1群が他群と比較して有意に大きい値であった.Reciprocの形成時間は,1群と比較して2,3群で有意に短縮した.結論:今回の実験条件では,Reciprocにより,TFと比較して根尖部および根管上部で変位の少ない根管形態が,glide pathの有無によらず得られた.Reciprocの形成時間は単独ではTFより長かったが,glide pathを付与した場合は有意に短縮し,総形成時間もTFと同等となった.
  • 西野 宇信, 矢野 淳也, 永吉 雅人, 鷲尾 絢子, 市丸 美希, 平田-土屋 志津, 吉居 慎二, 西藤 法子, 廉 〓勲, 中川 愛加 ...
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 6 号 p. 389-397
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    目的:ミラー・スキル修得に効果的な実習・教育方法を確立することを目的として,特定実習(上顎咬合平面を想定した平面に貼付した用紙にアルファベットを書く実習)を被験者(学生)に行わせ,実習方法の違いが窩洞形成技術向上とミラー・スキル修得に与える影響を検討した.材料と方法:被験者を無作為にグループ1(n=7),グループ2(n=7)に振り分けた.実習は上顎左側第一大臼歯へのMO窩洞形成実習とし,実習(A)(特定実習を行ってからマネキン実習を実施),実習(B)(特定実習を行わずにマネキン実習を実施)に分けるとともに,期間を前半(グループ1:実習(A),グループ2:実習(B))と後半(グループ1:実習(B),グループ2:実習(A))に分け,群が入れ替わるようにして実施した.評価は,窩洞形成所要時間,評価者評価,および学生自己評価にて行い,結果の有意差を統計学的に求めた.結果:両グループとも実習1日目と比較して7日目では窩洞形成所要時間が短縮した.また,両グループとも窩洞形態は経日的に改善し,グループ1ではグループ2より早い段階で形態の改善傾向が認められた.自己評価における選択項目の変化では,器具の取扱い・基本的操作,窩洞形態において5日目以降で両グループに異なった傾向が認められた.また,到達度の変化は,両グループにおいて特定実習の開始初日に著しく増加する傾向を示し,被験者が特定実習により習熟した感覚をもつ可能性が考えられた.結論:特定実習は,学生にミラー・スキルによる窩洞形成を効果的に修得させるために有効であり,また,実習初期に特定実習を行ったほうがより短期に技能の向上および注意点の高度化が期待できることが示唆された.
  • 林 真希
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 6 号 p. 398-410
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    目的:エナメル質表層下脱灰層やそれを再石灰化したときの形態や化学分析に関する報告はあるが,再石灰化された表層下脱灰層を再び脱灰したときのエナメル質の性状変化に関する報告はほとんど見受けられない.本研究は,表層下脱灰層を再石灰化処理後,再度脱灰したときのエナメル質表層,表層下および深層部の性状変化について検討した.方法:ウシエナメル質よりブロックを切り出し,乳酸二層法を用いて表層下脱灰層を調製した.これを,カゼインホスホペプチド-非結晶性リン酸カルシウム複合体(CPP-ACP)含有ペーストあるいは酸性フッ素リン酸(APF)ゲルを用いて1週間再石灰化処理を施した後,酢酸人工脱灰液に6日間浸漬し再び脱灰した.まず,各処理の施されたエナメル質表層下脱灰層の表面変化を走査電子顕微鏡にて観察した.次に,表層下脱灰層調製後,再石灰化処理後,および再脱灰処理後の各試料より切片を調製し,Contact Microradiogram (CMR)撮影を行い,ミネラルプロファイルを作成し,表層下脱灰層部とそれより下方の深層部における再石灰化の様相やミネラル喪失量を評価した.さらに,フィールドエミッション電子プローブマイクロアナライザを用いて,各切片の縦断面の微細構造とCaやPの元素分布の変化を観察した.結果:再石灰化されたエナメル質表層下脱灰層を再度脱灰したときのエナメル質表面では,小柱鞘部の脱灰は認められたが,実質欠損は認められなかった.また,本研究により,CPP-ACPおよびAPFは表層下脱灰層部の再石灰化を引き起こし,エナメル質表層および表層下脱灰層部では耐酸性が獲得されることが明らかとなった.しかしながら,それより下方の深層部では,ミネラル密度が健全エナメル質と同等のため,再石灰化はほとんど起こらず,再脱灰時には表層および表層下脱灰層部に比べ,より強い酸の侵襲を被ることが判明し,また,エナメル小柱部分が小柱鞘に比し,優先的かつ顕著に脱灰されることが確認された.結論:本研究の条件下では,再石灰化された表層下脱灰層を再度脱灰した場合,エナメル質表層ならびに表層下脱灰層部は耐酸性を獲得することが判明した.一方,再度脱灰すると深層部は,酸による強い侵襲を被り,エナメル小柱部分が小柱鞘に比し,優先的かつ顕著に脱灰されることが判明した.
  • 福田 秀光
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 6 号 p. 411-423
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の仮説は,同じCO2レーザーでも波長が異なれば,歯質の無機成分に対するエネルギーの吸収程度が同じでも歯質の表面に異なる性状変化が起こるということである.そこで,CO2レーザーの象牙質に対する吸収の程度の違いが象牙質の表面改質に及ぼす影響を検索するため,波長9.3μmおよび波長10.6μmのCO2レーザーを種々のエネルギー密度を設定して象牙質に照射し,象牙質表面の性状変化について比較検討した.材料と方法:ヒト抜去大臼歯から調製した象牙質に,9.3μmの波長をもつ試作CO2レーザー(タカラベルモント)と10.6μmの波長をもつCO2レーザー(ベル・ラクサー,タカラベルモント)をおのおの照射し,象牙質の形態変化を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し,結晶学的変化を赤外分光分析装置(FT-IR)および微小部X線回折装置(XRD)により分析した.また,原子吸光分光光度計を用いて測定した溶出Ca量の変動から耐酸性変化を検討した.結果:波長9.3μmのCO2レーザーを照射した象牙質には照射野に限局した亀裂が認められたが,波長10.6μmのCO2レーザーを照射した象牙質には,照射野外に及ぶ亀裂が認められた.また,波長93μmのCO2レーザーを照射した象牙質において,波長10.6μmの場合に比べ多くの熔融物の生成と象牙細管の閉鎖が観察され(SEM),高い結晶性が認められた(XRDおよびFT-IR).また,耐酸性が向上していることも明らかとなった.結論:波長9.3μmのCO2レーザーを照射した象牙質においては,波長10.6μmとエネルギーの吸収程度が同じでも異なる性状変化が生じることが示唆された.これは象牙質に対するレーザーの吸収程度,すなわちエネルギーの取り込み効率の違いが影響していると思われる.
症例報告
  • 清水 康平, 佐藤 隆夫, 羽鳥 啓介, 小林 千明, 柴崎 郁恵, 重森 葉子, 加藤 岳詩, 橋本 一浩, 佐藤 洋子, 澤田 朋美, ...
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 55 巻 6 号 p. 424-431
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    目的:咀嚼筋における筋筋膜痛症候群による「非歯原性歯痛」と根尖性歯周炎およびフェネストレーションにより誘導された「歯原性歯痛」を同時併発した症例に対する診査・診断および治療経過を報告する.症例および治療経過:来院時,患者は上顎左側側切歯のみではなく,同側顔面部に広がる放散痛も訴えていた.各種診査より,本疾患は左側側頭筋 筋筋膜痛症候群,上顎左側側切歯 慢性根尖性歯周炎およびフェネストレーションを併発した疾患であることが明らかとなった.筋筋膜痛症候群と口腔顔面痛の関係に対する患者の理解や協力の下に,認知行動療法,家庭理学療法を併用し,通法に従い感染根管治療を行ったところ良好な予後を得た.考察および結論:初診時に患者が訴えている疹痛症状の由来を,歯原性歯痛あるいは非歯原性歯痛として正確に把握することが重要であり,緊急性が高い疾患からの治療を優先することで効果的に疾病の治癒が図れるものと考えられた.本症例では,咀嚼筋における筋筋膜痛症候群による「非歯原性歯痛」と根尖性歯周炎およびフェネストレーションにより誘導された「歯原性歯痛」を同時併発した症例に対し,正確な診査・診断および適切な治療を行うことで良好な予後が得られることが示された.
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