日本歯科保存学雑誌
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55 巻 , 2 号
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原著
  • 飯塚 純子, 向井 義晴, 高垣 裕子, 寺中 敏夫
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 2 号 p. 127-133
    発行日: 2012/04/30
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    唾液中の高分子成分は,エナメル質表層下脱灰病巣内に侵入し,ハイドロキシアパタイト結晶表面に吸着しているといわれており,次亜塩素酸溶液を使用することにより,エナメル質病巣内の唾液タンパク質が除去され,アパタイトの結晶成長が促進されるという報告がある.一方,オフィスブリーチング材は20〜35%のH2O2を含有しており,これが有色成分を変性もしくは分解することで漂白作用を示す.われわれは,オフィスブリーチング材のエナメル質病巣内の高分子を変性させるという機能を治療的に利用することで再石灰化を促進することが可能であるという仮説を立てた.本研究ではヒト唾液タンパク質に30%H2O2を作用させ,それらの化学的変性について検討した.4℃, 10,000rpmにて30分遠心した自己安静時唾液上清に氷冷イソプロパノールを終濃度70vol%になるように加えて約3時間静置後,4℃, 7,000rpmにて10分間遠心分離した.回収した沈澱を以下に示す2群に分けて処理を行った.1)過酸化水素水群(H2O2群):沈澱に対し30%過酸化水素水を加え,30分間室温にて反応させ,再度イソプロパノールを加え上記と同様の条件にて遠心分離し,上清と沈澱を回収した.2)コントロール群(DW群):沈澱に対し脱イオン水(DW)を加え30分間室温に静置し,1)と同様に遠心分離し,上清と沈澱を回収した.1)と2)の画分をSDS sample bufferに溶解し,94℃, 5分熱変性処理後,SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)にて分析を行った.ゲルはCBBおよびStains-All染色を行ったほかに,Western blottingにてタンパク質のタンパク化学的性状変化を検討した.SDS-PAGEの結果から,30%H2O2処理で特定のタンパク質が不可逆的に酸化され,分子量が変化することが判明した.さらに,albuminやstatherinの抗体を使用したWestern blottingの結果から,著しく特異的に変化をするバンドも認められた.すなわち,30%H2O2処理によりalbumin抗体は幅広い分子量で検出されたと同時にstatherin抗体の反応が消失した.以上の結果から,安静時唾液に含まれる唾液タンパク質は30%H2O2の作用により,断片化あるいは新たな結合による集合体を形成することが示された.なかでも,statherinの変性は石灰化抑制力の喪失を意味していると考えられ,オフィスブリーチング材を用いたエナメル質表層下脱灰病巣の再石灰化治療の可能性が示唆された.
  • 坪田 圭司, 石井 亮, 清水 裕亮, 古宅 眞由美, 市野 翔, 高見澤 俊樹, 陸田 明智, 宮崎 真至, 植原 俊雄, 長谷川 賢
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 2 号 p. 134-140
    発行日: 2012/04/30
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    近年,接着技術の発展に伴って接着性は向上するとともに,接着操作も簡略化する傾向にある.最近,あらゆる被着体に対して,一つの処理材で行うことを目的とした多目的接着システムが製品化された.そこで,多目的接着システムとして開発されたマルチ処理材ビューティボンドマルチおよび付属するシランカップリング剤のビューティボンドマルチPRプラスについて,セラミックス,歯科用合金および歯質に対する接着性について検討を行った.被着体として,アルミナ,ジルコニア,ポーセレン,12%金銀パラジウム合金,ウシエナメル質および象牙質を用いた.被着面を調整し金型を固定した後,コンポジットレジン(ビューティフィルII)を填塞,重合させ接着試片とした.試片は24時間水中保管した後,万能試験機を用いてクロスヘッドスピード毎秒1mmの条件で剪断接着試験を行った.破断後の試片に関しては,走査電子顕微鏡を用いてレジン側を観察した.その結果,多目的接着システムであるビューティボンドマルチの接着強さは,ジルコニアで16.2MPa,アルミナで14.8MPa,ポーセレンで16.6MPa,金銀パラジウム合金で18.1MPa,ウシエナメル質で15.4MPaおよび象牙質で16.8MPaであった.接着強さはアルミナと12%金銀パラジウム合金間で有意差が認められたものの,いずれの被着体に対しても同程度の値を示したことから,臨床応用が十分に期待できることが示された.
  • 渡邉 弘淳, 下西 充, 高橋 健, 小松 正志, 菊池 雅彦
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 2 号 p. 141-150
    発行日: 2012/04/30
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    歯の萌出後,断裂して残った上皮細胞の集団であるマラッセの上皮遺残は上皮-間葉間相互作用によって歯根膜の恒常性維持に関与している可能性がある.エナメルマトリックスタンパク質のamelogenin, ameloblastinおよびエナメルマトリックスプロテアーゼのMMP-20, KLK4はエナメル質形成に大きく関与するが,セメント質形成後の関与に関してはいまだ不明である.本研究では,マラッセの上皮遺残由来上皮細胞と歯根膜由来線維芽細胞を同一シャーレ内で共培養し,その細胞間相互作用によるamelogenin, ameloblastin, MMP-20およびKLK4の発現に関する検討を行った.東北大学病院口腔外科外来で抜歯した第三大臼歯より歯根膜組織片を採取し,無血清混合培地により同一組織片より上皮細胞および線維芽細胞を培養した.上皮細胞および線維芽細胞間の境界部を確認した後,サンプルとして実験に用いた.細胞は,10分間4%paraformaldehydeで固定後,通法に従いin situ hybridization法,半定量的RT-PCR法にてamelogenin mRNA, ameloblastin mRNA, MMP-20 mRNA, KLK4 mRNAの発現を解析した.コンドルとして,上皮細胞のみを培養したものを用いた.in situ hybridization法では,共培養したサンプルの上皮細胞にamelogenin mRNA, ameloblastin mRNA, KLK4 mRNAの発現が強くみられたが,MMP-20 mRNAは発現がみられなかった.コントロールの上皮細胞はamelogenin mRNA, ameloblastin mRNAの発現が強くみられ,KLK4 mRNAの発現は弱かった.MMP-20 mRNAは発現がみられなかった.RT-PCR法では,amelogenin mRNAの発現に有意差はみられなかった.また,共培養したサンプルにameloblastin mRNAおよびKLK4 mRNAの有意な発現がみられた.一方,MMP-20 mRNAの発現はいずれも観察されなかった.上皮細胞-線維芽細胞間相互作用によってamelogenin, ameloblastin, KLK4およびMMP-20の発現が調節されていることは,歯の萌出後,マラッセの上皮遺残が歯根膜に影響を及ぼしている可能性を示唆するものと考えられる.
  • 木暮 ミカ, 飛田 滋, 長谷部 日
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 2 号 p. 151-157
    発行日: 2012/04/30
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,年齢,臨床経験,生活習慣,眼疾患の有無,黄斑部網膜厚と色弁別能との関連を調査し,高齢者の色覚特性に影響する眼光学系の加齢変化による歯科領域の業務への影響を検討することである.対象は21歳から64歳の男女22例44眼である.日本眼科学会認定眼科専門医による眼科検診を受診し,矯正視力,眼圧,無散瞳カメラによる眼底検査,光干渉断層計による黄斑部網膜厚の測定をした.また,100色相配列検査器による色弁別能力検査を行い,総偏差点を求めた.次いで,眼科検診の結果と総偏差点とを統計的に処理し,両者の相関係数を求めた.なお照明には蛍光ランプを用い,作業面の照度は1,000luxとした.40歳以上に白内障や緑内障を有する者が有意に認められたが,いずれも初期病変と診断され,視力・中心視視野は正常であり,黄斑部網膜厚との間に相関は認められなかった.色弁別能検査の総偏差点の平均値は81.6±68.6点であったが,年齢と総偏差点の間にr=-0.4の負の相関が認められ,若年者より高齢者の色弁別能が有意に高かった.さらに眼疾患の有無と総偏差点に相関は認められなかった.これまでの研究では,加齢により赤色および青色の領域での色弁別能が低下するとされていた.しかし今回の調査結果から,加齢による眼光学系の基質変化が色弁別能に与える影響は低く,色弁別能は弁別経験を蓄積することで向上ないしは維持することが可能であることが示唆された.
  • 吉永 美穂, 鵜飼 孝, 吉永 泰周, 白石 千秋, 金子 高士, 岸本 隆明, 佐藤 佳昌, 吉村 篤利, 原 宜興
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 2 号 p. 158-164
    発行日: 2012/04/30
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    本実験の目的は,軽度の炎症を認める歯肉にテーパード毛を使用した歯ブラシ(ディープクリーン®;花王)を使用したときの臨床効果を明らかにすることである.被験者は,長崎大学病院歯周病治療室にメインテナンスのために通院中の患者のうち,以下の条件を満たす者30名とした.1.上下顎4〜4のうち3歯のそれぞれの頬側に,Probing depth (PD)が2〜4mmのBleeding on Probing (BoP)を伴う歯周ポケットが1カ所以上存在する.この3歯の頬側を被験部位とする.2.被験部位には歯頸部マージンが不適合な補綴物が装着されていない.3.過去1カ月以内に抗菌薬,抗炎症薬,ステロイド剤を服用していない.実験には歯ブラシD(ディープクリーン®)と対照歯ブラシとしてすでに市販されている歯ブラシS(デンターシステマ®;ライオン)を用いた.試験期間は4週間で,その間被験者が通常行っているブラッシング法は変更せず,1被験部位当たり試験歯ブラシを用いたバス法による10秒間のブラッシングを追加した.ベースライン(BL)時,2週目,4週目にPlaque Index (PlI), PD, BoPなどの臨床パラメーターの計測を行った.その結果,BL時との比較において歯ブラシS群の2週目のPlI, PD, BoP (p<0.05, p<0.01, p<0.05)と4週目のPlI, PD, BoP (p<0.05, p<0.01, p<0.05)で有意な減少を認めた.また歯ブラシD群でもBL時との比較において2週目のPlI, PD, BoP (p<0.05, p<0.01, p<0.01)と4週目のPlI, PD, BoP (p<0.01, p<0.01, p<0.001)で有意な減少を認めた.また,どの時点においても群間の差は有意ではなかったが,BoPとPlIは歯ブラシDで低い傾向にあった.以上の結果から,テーパード毛を採用している歯ブラシを軽度の炎症が認められる歯肉に使用することは,その改善に効果的と考えた.
  • 長谷川 哲也, 中野 健二郎, 山田 三良, 冨士谷 盛興, 千田 彰
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 2 号 p. 165-174
    発行日: 2012/04/30
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,ポスト孔の根管象牙質に対するレジン接着における,新しい化学重合型接着システムの有用性について,従来のデュアルキュア型接着システムと比較し検討した.本実験は,ヒト抜去小臼歯を用いて行った.抜去歯を歯冠と歯根に低速切断機を用いて分割し,得られた歯根部に通法に従い根管拡大形成を行った.その後,深さ5mmおよび10mmのポスト孔を形成した.これらの歯根に対して,デュアルキュア型のエステライトコアクイックボンド(DC)および新しい化学重合型のDBC-510(CC)を用いて根管象牙質に対して接着処理を行った.その後,コア用レジンを填塞し光重合硬化させた.各試料を歯軸と水平に切断した後,根管象牙質とレジンとの接着界面を,走査電子顕微鏡(SEM)および表面形状測定顕微鏡を用いて検索した.また,ポスト孔の深さ5mmの実験群は上部(rd1)と下部(rd2)に分類し,ポスト孔の深さ10mmの実験群は,上部(RD1),中央上部(RD2),中央下部(RD3),下部(RD4)に分類し,微小引張接着試」験にて接着強さを測定した.その結果,接着界面のSEM観察および表面形状測定顕微鏡観察から,DCおよびCCを用いた試料の接着界面はともにギャップが認められなかった.DCはCCより高い接着強さを示したが,DCにおけるポスト孔下部のRD4は,上部のRD1と比較して接着強さが有意に低かった.CCはDCと比較して,いずれの試料でも接着強さが低い傾向を示したが,ポスト孔の深さに影響を受けず,同様な接着強さを示した.以上より,新しい化学重合型接着システムは,デュアルキュア型接着システムと同様に,ポスト孔における根管象牙質へのレジン接着に有用であることが示唆された.
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