日本歯科保存学雑誌
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55 巻 , 3 号
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総説
原著
  • 根本 章吾
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 3 号 p. 185-194
    発行日: 2012/06/30
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    目的:自由電子レーザー(FEL)は波長可変性だけでなく,極短パルス幅のミクロパルスを発振させることができる.そのため,研究対象のレーザー機器と同じ波長に調整し,パルス幅の異なるレーザーを発振させることによって,パルス幅の違いが被照射体に与える影響について有益な情報を与えてくれるものと考えられる.材料と方法:FELの極短パルスの効果に着目し,エルビウムヤグ(Er:YAG)レーザーと同じ2.94μmの波長に調整したFELを用いて,ウシ象牙質蒸散時の様相を高速度カメラにて観察するとともに,蒸散時の削片を走査電子顕微鏡(SEM)にて観察し,蒸散深さをEr:YAGレーザーと比較検討した.さらに,FELの波長を2.50, 2.94, 3.50, 4.00μmに変化させてウシ象牙質に照射した際の蒸散深さ,照射部(照射側)および照射部直下の試料背面(歯髄側)の温度上昇を放射温度計にて測定した.成績:1.高速度カメラで得られたウシ象牙質蒸散時のフレームレート8,000fpsの画像から,Er:YAGレーザー照射では象牙質削片の飛散が観察でき,収集した削片のSEM像では,10〜100μmの大小さまざまな削片を観察できた.一方,FELではレンズの拡大率50倍とした画像から削片の飛散を観察できなかったが,収集した削片のSEM像では,10〜20μmの微細な削片が多く認められた.2.本実,験条件におけるEr:YAGレーザーとFELの蒸散深さは,それぞれ208, 670μmで,FELではEr:YAGレーザーの3倍以上の蒸散深さであった.3.FELの波長を2.50, 2.94, 3.50, 4.00μmに変化させた際の蒸散深さは,それぞれ35, 671, 414, 220μmとなり,波長2.94μmにおいて有意に蒸散深さが深くなることが示された.4.FELの波長を2.50, 2.94, 3.50, 4.00μmに変化させた際の温度変化は,照射側でそれぞれ2.4, 2.2, 2.0, 2.2℃であり,歯髄側では1.1, 1.1, 1.3, 1.3℃であった.結論:2.94μmに近似した波長で,パルス幅が熱緩和時間よりも短いレーザーを使用することで,象牙質を効率的に蒸散できることが判明した。
  • 周 秦
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 3 号 p. 195-201
    発行日: 2012/06/30
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    目的:今日の間接的修復処置では,インレーや全部冠の形成後にレジンコーティング法が応用されるようになってきた.レジンコーティング法を採用することによって,形成歯面の汚染防止や,生活歯における歯髄保護や象牙質知覚過敏を予防することができる.最近では,コンポジットレジン修復のボンディングとしてだけでなくレジンコーティングを目的とした1ステップ型接着材のハイブリッドコート(HyC)が市販されるようになった.著者は,本材料の象牙質接着性のさらなる向上を目指して,HyCコート材にトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)を配合したT33コート材を試作し,HyCコート材よりも高い剪断接着強さが得られた.しかし,その剪断接着強さはHyCコート材に比べて有意に高いものではなかった.そこで,本研究ではT33コート材の象牙質接着性の改善を目的として,T33コート材中の光増感剤であるカンファーキノン(CQ)の量を3倍にしたレジンコーティング材のNCコート材を新規に試作した.材料と方法:コートスポンジに関しては,N-フェニルグリシン(NPG)の含有量の異なるコートスポンジを使用して,NCコート材をそれらのコートスポンジで混和した試料の象牙質剪断接着強さを調べた.さらに,その際の象牙質接着性に影響を与えると考えられる重合率に関して検討を行い,CQとNPGの適切なモル比について調べた.成績:1.T33コート材中のCQ量を重量で1〜15倍にしたCQコート材の象牙質剪断接着強さは,CQを3倍量としたコート材において最も高い平均値を示したが,すべての試料間で有意差は認められず,CQを増量しても剪断接着強さの向上は認められなかった. 2.NPG含有量の異なるコートスポンジをNCコート材に応用した場合,象牙質勇断接着強さはCQに対するNPGのモル比が4.4あるいは7.3において上昇し,HyCコート材と比べて有意に高い値を示した.しかし,NPGのモル比が11.7, 14.7と多くなると剪断接着強さは低下した. 3.NPG含有量の異なるコートスポンジを用いてNCコート材を重合したときの重合率は,CQに対するNPGのモル比が4.4あるいは7.3で上昇した.しかし,NPGのモル比が11.7, 14.7と多くなると重合率は減少した.結論:以上のことから,T33コート材中のCQ量を重量で3倍にしたNCコート材は,CQに対するNPGのモル比が4.4あるいは7.3のコートスポンジを使用することで,象牙質勇断接着強さと重合率は向上することが明らかになった.
  • 瀧本 晃陽, 川島 伸之, 鈴木 規元, 小泉 悠, 山本 弥生子, 齋藤 正寛, 原田 英光, 中島 美砂子, 須田 英明
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 3 号 p. 202-210
    発行日: 2012/06/30
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    目的:matrix metalloproteinase (MMP)-3は,典型的な細胞外マトリックスタンパクの分解酵素であるMMPファミリーの一員である.MMP-3はさまざまな生理学的および病理学的プロセスに関与している.近年,傷害を与えた歯髄組織にMMP-3を貼付すると,血管新生と創傷治癒が誘導されることが報告されたが,MMP-3の抗炎症作用の詳細についてはいまだ不明である.本研究の目的は,マクロファージ(RAW264)およびマウス歯乳頭細胞(mice dental papilla cells: MDP)からの炎症性メディエーター産生に対するMMP-3の効果を評価することである.材料と方法:RAW264およびMDPは,10% fetal bovine serum含有培養液中に,lipopolysaccharide (LPS, 100ng/ml)を添加し,一酸化窒素(nitricoxide: NO)および炎症性メディエーター産生を誘導した.その際同時にMMP-3 (100ng/ml)を添加し,添加しなかった群と比較検討した.また,LPSを添加しなかったRAW264およびMDPをコントロール群として用いた.NO産生はGriess法を用いて測定し,炎症性メディエーター発現はreal-time PCR法により評価した.さらに,MMP-3が細胞増殖とcaspase-3活性に与える影響についても検討した.成績:MMP-3添加により,LPS刺激によって活性化されたRAW264からのNO産生量が有意に低下した.炎症性メディエーター(interleukin (IL)-1β, IL-6, tumor necrosis factor-α, cyclooxygenase (Cox)2)のmRNAは,LPS刺激を加えたRAW264において発現が亢進していたが,MMP-3を同時に添加するとそれらの発現が抑制された.LPS刺激を与えたMDPにおけるCox 2 mRNAの発現は,MMP-3添加によって有意に抑制された.MMP-3は,LPS刺激下におけるRAW264とMDPにおける細胞増殖とcaspase-3活性に影響を与えなかった.結論:MMP-3はマクロファージおよび歯乳頭細胞からの炎症性メディエーター産生を抑制したことから,歯髄の炎症を軽減するための治療薬として応用できる可能性が示唆された.
  • 陸田 明智, 小倉 由佳理, 古宅 眞由美, 飯野 正義, 石井 亮, 市野 翔, 坪田 圭司, 安藤 進, 宮崎 真至, 日野浦 光
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 3 号 p. 211-218
    発行日: 2012/06/30
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    目的:シングルステップアドヒーシブのエナメル質接着性に対するフッ化物含有ペースト塗布の影響を検討した.材料と方法:供試したシングルステップアドヒーシブはBeautiBond, BondForceおよびG-Bond Plusの3製品である.ペーストの塗布条件としては,エナメル質面をペーストで30秒間研磨後,10分間経過した後に水洗する群(直後群)およびペーストの塗布を1日2回,7日間繰り返した群(7日群)の2条件とした.これらの被着エナメル質面に,アドヒーシブを製造者指示条件で塗布,光照射して,コンポジットレジンを接着させた.これらの試片は,24時間,37℃水中に保管した後,クロスヘッドスピード毎分1.0mmの条件で剪断接着強さを測定した.成績:フッ化物含有ペーストの塗布されたエナメル質面へのシングルステップアドヒーシブの接着強さは,ベースラインと比較して,直後群においては,いずれの製品においても有意差は認められなかったが,フッ化物非含有ペーストの塗布においては,その接着強さは製品によって異なるものであった.一方,7日群においては,フッ化物含有ペーストおよびフッ化物非含有ペーストともに,その接着強さは有意に低下し,接着試験後の破壊形式においても界面破壊が大勢を占めた.結論:フッ化物含有ペーストの塗布されたエナメル質に対するシングルステップアドヒーシブの接着性は,塗布されていない場合と比較して低下することが示唆された.
  • 畑野 優子, 鈴木 奈央, 米田 雅裕, 廣藤 卓雄
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 3 号 p. 219-226
    発行日: 2012/06/30
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    目的:Enteyococcus faecium WB2000株配合歯磨剤による口腔清掃が口腔内環境に与える影響について,二重盲検式ランダム化比較試験を行いて評価した.方法:本研究に対してインフォームドコンセントが得られた成人のボランティア64名を被験者とした.被験者はE. faecium WB2000株配合歯磨剤(実験群)あるいはE. faecium WB2000株無配合歯磨剤(プラセボ群)を使用して,4週間口腔清掃を行った.実験開始前日(ベースライン),実験開始2,4週後に口腔内診査と唾液採取を行い,口腔内環境の変化を評価した.また採取した唾液より細菌DNAを調製し,Real-time PCR法を用いてStreptococcus mutans, Streptococcus sobrinus, E. faecium, Poyphyromonas gingivalis, Aggregatibacter actinomycetemcomitans, Fusobacteyium spp., Prevotella intermedia, Tyeponema denticolaの定量解析を行った.結果:分析対象者59名の内訳は実験群30名(男性25名,女性5名,平均年齢44.3±3.9歳),プラセボ群29名(男性22名,女性7名,平均年齢43.9±4.2歳)であり,ベースラインにおいて年齢,性別,喫煙習慣,口腔内診査項目における群間の違いはみられなかった.実験群では4週後に有意な唾液量の増加と唾液緩衝能の改善がみられた.プラーク付着スコアは実験群では2週後に,プラセボ群では4週後に有意な減少がみられた.歯周病罹患指数はプラセボ群で4週後に有意な増加がみられたが,実験群では変化しなかった.唾液中の総菌数に占める菌種の割合について比較したところ,う蝕原因菌については,実験群でS. sobrinusが有意に減少し,プラセボ群で有意な増加がみられた.歯周病原細菌については,両群でA. actinomycetemcomitansとP. intermediaの減少,実験群でT. denticola,プラセボ群でFusobacterium spp.の増加がみられた.E. faeciumの割合は,両群ともに有意な減少を示した.結論:E. faecium WB2000株配合歯磨剤による口腔清掃は,唾液量の増加,唾液緩衝能の改善,プラーク付着抑制,S. sobyinusの繁殖抑制などの口腔衛生改善効果があり,う蝕予防に役立つ可能性が示唆された.
  • 田口 洋一郎, 高橋 宰達, 富永 和也, 小正 聡, 至田 宗泰, 林 宏行, 田中 昭男, 梅田 誠
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 3 号 p. 227-235
    発行日: 2012/06/30
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    目的:近年,歯周組織再生療法の普及により,幼若ブタの歯胚から抽出されたエナメルマトリックスデリバティブ(以下,EMDと略す)が現在広く臨床応用されている.EMDとは歯槽骨吸収の著しい歯周炎患者の歯周組織再生,特に無細胞セメント質を誘導し歯周組織の再生を促す材料である.しかし,EMDは生物由来材料であるため,未知の病原体についての問題点を払拭できず患者からの拒否感があるのも事実であり,生物に由来しない人工の合成ペプチドの開発が望まれていることから,EMDの基礎研究から得た成果を基に新規合成ペプチドを作製した.われわれはこの新規合成ペプチドを用い,Sprague Dawley (SD)系ラット骨髄細胞の硬組織形成細胞への分化誘導に及ぼす影響およびSDラットに対する動物実験によって,新規合成ペプチドが骨形成を促進し,セメント質様の硬組織を形成する知見を得た.今回,歯周組織再生に不可欠である歯根膜細胞に対する新規合成ペプチドの影響について明らかにするために,ヒト歯根膜細胞(HPdLF)を用いて,細胞の増殖,接着および遊走を比較・検討した.材料と方法:実験群では合成ペプチドを100ng/mlの濃度でHPdLFの培養液に溶解させ,対照群では合成ペプチドを無添加とした.細胞増殖としては培養開始1, 3, 24, 72時間後に,細胞接着に関しては培養開始1時間後に,細胞遊走に関してはBoyden chamber法を改良して,1, 4, 8時間後にそれぞれを測定した.結果:細胞増殖は,培養開始1, 3, 72時間に実験群では対照群に比べて有意に高かった.また,増殖は経時的に増加傾向を示した.細胞接着・遊走ともに実験群では対照群と比較して各測定時において有意に高い値を示した.結論:以上より,EMD由来の新規合成ペプチドはHPdLFの増殖,接着および遊走能を向上させることが示唆された.
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