日本歯科保存学雑誌
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55 巻 , 5 号
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ミニレビュー
原著
  • 諸冨 孝彦, 北村 知昭, 寺下 正道, 水上 正彦, 松本 典祥, 春名 千英子, 泉 利雄, 阿南 壽
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 5 号 p. 304-312
    発行日: 2012/10/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    目的:窩洞形成時の熱刺激は象牙質-歯髄複合体に傷害を与えるが,歯髄は傷害に対する組織修復能を有している.種々の外来刺激が象牙質-歯髄複合体に及ぶと,歯髄では防御反応として象牙芽細胞・象牙芽細胞様細胞により第三象牙質が形成されるが,その詳細な機序についてはいまだに不明な点も多く残されている.これらの機構を明らかにすることは,歯髄を保存し健全な歯を維持するうえで重要である.本研究では熱刺激が歯髄由来細胞に与える影響と,熱刺激後の生存細胞が示す反応について検討を行った.材料と方法:象牙芽細胞様の特徴を有するラット下顎切歯歯髄由来細胞株KN-3に43℃,45分間の熱刺激を加え,その後の細胞増殖能と細胞形態を確認した.また,熱刺激後の細胞をサンプルとして各種のタンパク質(HSP25, HSP70, HSP90, Cyclin D1, Cyclin E, p21, p27, DSPおよびDMP-1)の発現をウェスタンブロッティング法にて確認した.結果:熱刺激後12時間でKN-3細胞数は有意に減少した.この段階で,断片化した核を有する細胞も確認された.1日後以降には細胞数の増加が確認され,2日目以降は活発な細胞増殖が確認された.熱刺激後に生存した細胞ではHSP25, HSP70そしてHSP90の発現が増加した.細胞周期の進行に関与するタンパク質の発現は,Cyclin D1およびCyclin Eが熱刺激後6時間および24時間で増加した.一方,p21, p27の発現は熱刺激後6時間では増加していたが,24時間後には減少傾向に転じた.象牙芽細胞分化マーカーであるDSPおよびDMP-1の発現は熱刺激後6時間および24時間で増加した.結論:熱刺激はKN-3細胞のHSPs産生を促進し,一過性に細胞周期の進行を低下させ,その後象牙芽細胞様細胞への分化を誘導する.
  • 三谷 章雄, 大澤 数洋, 森田 一三, 林 潤一郎, 伊藤 正満, 匹田 雅久, 佐藤 聡太, 川瀬 仁史, 高橋 伸行, 武田 紘明, ...
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 5 号 p. 313-319
    発行日: 2012/10/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    目的:欧米では,心臓血管疾患と歯周病には関連性がみられるというデータが得られているが,日本人における心臓血管疾患と歯周病の関連についてはほとんど報告がない.そこで今回われわれは,東海地方での心臓血管疾患の罹患状況と歯周病の指数を比較することで,日本人における心臓血管疾患と歯周病の関係を明らかにすることを目的とし,健診のデータを基にその関連性の検討を行った.対象と方法:2008年に豊橋ハートセンターのハートの日健診において,一般健診を受診した者でかつ歯科健診を受けた者549名についてのデータを分析対象とした.心臓血管疾患データとして,血圧,脈拍,動脈硬化・不整脈の有無,狭心症・心筋梗塞の既往の有無,手術歴を,歯周病データとして,現在歯数,Community Periodontal Index (CPI)を用いた.これらのデータを用いて,心臓血管疾患の有無と健診時点での歯周病の指数を比較し,統計分析を行った.結果:対象者の平均年齢は61.7±13.6歳であった.狭心症,心筋梗塞,手術(経皮的カテーテルインターベンション)のいずれかの既往のある者を冠動脈心疾患(coronary heart disease: CHD)群(82名:男性44名,女性38名)とし,それに該当しない者,すなわち非CHD群(467名:男性122名,女性345名)と比較検討したところ,女性ではCHD群の現在歯数が有意に少なかった.また男性では,糖尿病,BMI,中性脂肪,HDL,総コレステロールおよび年齢の因子を調整してもなお,CHD既往のあるオッズ比は,CPIコード最大値2以下の者に比べ,CPIコード最大値3以上の者が3.1倍(95%信頼区間1.2〜7.7)高かった.結論:CPIや現在歯数と,CHDの既往があることの関連性が認められ,日本人においても歯周病とCHDに相関がみられることが示唆された.
  • 礪波 健一, 田村 友寛, 高橋 英和, 荒木 孝二
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 5 号 p. 320-327
    発行日: 2012/10/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    目的:近年,審美歯科へのニーズの高まりから,歯の漂白が歯科臨床で行われる機会が増えている.一方,漂白作用の本質を担う活性酸素の作用は非特異的であるため,象牙質の機械的特性にも影響を与えることがわかっている.本研究では,漂白処理後の歯の象牙質の引張強さについてワイブル分析を行い,処理面や処理回数といった条件の違いが象牙質の破壊原因の違いに及ぼす影響について検討した.材料と方法:牛切歯の歯冠唇面を薄切し,象牙質に漂白処理面を形成した.同面に漂白処理として,ハロゲンランプ照射下で30%過酸化水素水を15分作用させた.漂白処理回数は1回もしくは3回とした.漂白処理した牛切歯の歯冠唇側表面からの深さ2.5〜3.5mmの象牙質よりダンベル型の象牙質引張試験片を作成し,象牙質引張試験を行った.各条件ともn=10とし,引張強さの平均をその条件の引張強さとした.上記象牙質処理の2条件に加え,既報(J Med Dent Sci 2008; 55: 175-180)で得られたエナメル質処理2条件および,コントロールの引張強さを用いて,統計処理とワイブル分析を行った.ワイブル分析では,各条件のワイブルプロットについて,回帰直線の傾きとして得られるワイブル係数を求め比較した.成績:象牙質引張強さは,漂白処理回数が増えるほど低下する傾向を示したが,エナメル質処理,象牙質処理で象牙質引張強さに違いは認められなかった.一方,ワイブル分析ではエナメル質処理,象牙質処理でワイブルプロットに違いを認めた.すなわち,象牙質処理群では処理回数の増加に従い,ワイブルプロットが全体的に低強度側に移動したのに対し,エナメル質処理群では,漂白処理により強度の順位が高い試片の強度が下がる傾向を示した.象牙質処理では活性酸素の影響がほかの欠陥を凌駕して単一の破壊原因となる一方,エナメル質処理では活性酸素の影響が既存の欠陥と競合する形で破壊原因の一つに加わったことが,ワイブルプロットの違いとなったことが考えられる.ワイブル係数はエナメル処理群において処理回数とともに増加したことから,信頼性の点からはエナメル質処理のほうが象牙質強度に与える漂白処理のリスクが少ないことが考えられた.結論:以上の結果より,漂白歯の象牙質引張強さは漂白処理回数や,処理面に影響を受けるため,臨床において象牙質強度に配慮した漂白処置が必要であることが示唆された.
  • 石村 瞳, 花田 隆周, 小松 恵, 吉岡 俊彦, 八幡 祥生, 吉岡 隆知, 須田 英明
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 5 号 p. 328-332
    発行日: 2012/10/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的はエアスケーラーを用いて根管洗浄を行い,水酸化カルシウム材の除去効率を評価することである.材料と方法:実験には2根管性の樹脂製根管模型(ディーメック)21本を用いた.この樹脂製根管模型は,根尖から5,9mmの位置にそれぞれイスムスを有している.樹脂製根管模型に水酸化カルシウム材(カルシペックスII,日本歯科薬品)を緊密に填入した.7日後,樹脂製根管模型を7本ずつ3群に無作為に分類し,A(従来法での根管洗浄),B(エアスケーラー洗浄)およびC(超音波洗浄)群とした.A群では27G根管洗浄針(ニプロ)を用いて30秒間根管洗浄を行った.洗浄液は精製水とし,洗浄針の先端は根尖から3mmの位置とした.B群ではエアスケーラー(サリー,ヨシダ)を用いて15秒間注水下にて根管洗浄を行った.C群では超音波スケーラー(グランドピエゾ,ヨシダ)を用いて15秒間注水下にて根管洗浄を行った.根管洗浄終了後,マイクロフォーカスX線CT撮像を行った.得られた画像より,三次元画像解析ソフト(Amira5.3, Visage Imaging,オーストリア)を用いて根管内に残留した水酸化カルシウム材の体積を算出した.データは一元配置分散分析およびTukey-Kramer法を用いて統計学的解析を行った.有意水準は5%とした.結果:すべての群において,完全な水酸化カルシウム材の除去は不可能であった.A群ではB,C群と比較して有意に多い水酸化カルシウム材の残留を認めた.しかしながら,B,C群間において残留水酸化カルシウム材体積に有意差は認めなかった.結論:本研究の結果,エアスケーラーおよび超音波スケーラーを用いた根管洗浄は,洗浄針を用いた従来法での根管洗浄と比較して有意に良好な水酸化カルシウム材除去効率を示すことがわかった.また,エアスケーラーおよび超音波スケーラーを用いた根管洗浄において,水酸化カルシウム材除去効率に有意差を認めないことがわかった.
  • 島村 穣, 高橋 史典, 竹中 宏隆, 吉田 ふみ, 池田 昌彦, 森 健太郎, 黒川 弘康, 安藤 進, 宮崎 真至
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 5 号 p. 333-339
    発行日: 2012/10/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    目的:OCTイメージへの影響因子として,歯質の乾燥状態がOCTイメージおよび信号強度に及ぼす影響について検討した.材料と方法:実験には,光源に中心波長1,310nmのSuper Luminescent Diodeを用いたTime-Domain型OCT装置(モリタ東京製作所)を用いた.測定においては,ヒト抜去歯を精製水から取り出し,サンプルステージに静置直後の歯質表面が湿潤している条件,エアブローを10秒間行うことによって歯質表面の水分を除去した条件,エアブロー後1,5分あるいは10分間放置した条件の合計5条件を設定した.以上の条件で得られたOCTイメージおよび信号強度を比較検討した.成績:いずれのOCTイメージにおいても,内部断層構造の観察が可能であり,エナメル質および象牙質が色調の違いとして識別できた.湿潤条件においては歯質表面付近に2本の高輝度のラインが観察されたのに対して,ほかの条件のいずれにおいても高輝度のラインは1本のみ観察された.また,湿潤条件においてはエアブロー条件と比較して得られたOCTイメージが不明瞭であったのに対し,放置条件では放置時間の経過とともに歯質表面の信号強度が強くなる傾向を示した.結論:歯質の乾燥状態は,OCTによって得られる画像に影響を及ぼすことが明らかとなった.臨床的には,観察部表面に対してエアブローを10秒間行うことによって可及的に水分を除去することで,より鮮明なOCTイメージが得られることが示唆された.
  • 田久保 周子, 横川 未穂, 古市 哲也, 野尻 貴絵, 安田 源沢, 山本 明, 利根川 雅佳, 坪田 圭司, 宮崎 真至
    原稿種別: 原著
    2012 年 55 巻 5 号 p. 340-348
    発行日: 2012/10/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    目的:超音波測定法を用い,光強度およびプライマー塗布の有無がデュアルキュア型コンポジットレジンセメントの重合硬化挙動に及ぼす影響について検討した.材料と方法:供試したレジンセメントは,ビスタイトII(トクヤマデンタル,BT),リンクマックス(ジーシー,LM)およびレジセム(松風,RC)の3製品である.超音波送受信装置を用い,試片の厚さとの関係から縦波音速を求めた.重合硬化挙動の測定は,照射を行わない,あるいは200mW/cm2および600mW/cm2の条件で照射を行う3条件とし,その各条件にプライマーを塗布したものと塗布しないものの合計6条件で行った.さらに,硬化させたレジンセメント試片の研磨面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した.成績:供試したいずれのレジンセメントにおいても,音速は照射の有無にかかわらず経時的に上昇したが,光強度の違いとプライマーの有無によって,製品による違いが認められた.照射を行わない条件では,光強度が600mW/cm2と比較して,プライマー塗布の有無にかかわらず,音速の上昇は緩除になるとともに,いずれの製品においても最終的に到達する音速の値は有意に低くなった.結論:光強度とプライマー塗布の有無は,レジンセメントの重合硬化挙動に影響し,その程度は製品間で大きく異なっていた.これらのレジンセメントを臨床使用するにあたっては,製造者指示のプライマーを使用するとともに,光照射条件に留意すべきであることが示唆された.
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