日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
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56 巻 , 6 号
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  • 石井 信之
    原稿種別: 総説
    2013 年 56 巻 6 号 p. 481-487
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
  • 三冨 純一
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 6 号 p. 488-497
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    目的:光干渉断層画像法(Optical Coherence Tomography,以後,OCT)は,近赤外線を対象物に照射してその表層および内部で反射あるいは散乱する光の様相を光学干渉計によって捉えることで,光干渉強度と内部位置情報から二次元の精密断層像を構築する.したがって,既存の画像診断システムとは画像構築原理が異なることから,OCTイメージ像から歯質の状態変化を正しく把握するための解析法が必要である.そこで,エナメル質初期齲蝕病変におけるOCTイメージ像の解析法について,エナメル質にpHサイクルを負荷した際の状態変化を観察し,信号強度分布から最大ピーク強度値および1/e2幅を求めることによって検討した.材料と方法:ウシ下顎前歯歯冠部唇側面中央付近の歯質を,エナメル質および象牙質で構成されたブロックとして切り出したものを測定用試片とした.これらの試片を,0.1mol/l乳酸緩衝液に1日2回,各10分間浸漬した後,37℃の精製水あるいは人工唾液に保管する2条件のpHサイクルを適用した.試片のエナメル質内部における状態変化観察には,Super Luminescent Diodeを光源とする,Time-Domain型OCT装置(以後,TD-OCT)を用い,B-scan modeから断層像を得た.さらに,A-scan modeからTD-OCTに付属するソフトウェアを用いて信号強度分布を解析することで,最大ピーク強度値を検出するとともに1/e2幅を求めた.成績:精製水保管条件におけるOCTイメージ像は,実験期間の延長に伴ってエナメル質表層におけるシグナル輝度の上昇が観察された.また,最大ピーク強度値は実験期間の延長に伴って有意に大きくなるものの,1/e2幅の変化は認められなかった.人工唾液保管条件におけるOCTイメージ像は,実験期間の延長に伴ってエナメル質表層のシグナル輝度に変化は認められないものの,内部断層像に変化が認められた.また,最大ピーク強度値は実験期間の延長に伴って有意に低下するものの,1/e2幅は有意に大きくなった.結論:OCTを用いた歯質断層像の解析では,エナメル質が脱灰することによって生じた基質的変化が光線反射性および透過性に及ぼす影響を,OCTイメージ像の変化として捉えられることが示された.さらに,ピーク強度値および1/e2幅を測定することで,より詳細な解析が可能であることが示された.
  • 山田 健太郎
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 6 号 p. 498-506
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    目的:歯質の耐酸性を向上させるとともに再石灰化が期待できるフッ化物を含有したペーストを用いた,セルフケアあるいはPTCが行われている.そこで,象牙質へのフッ化物含有ペーストを用いたPTCが,セルフエッチアドヒーシブとの接着性に及ぼす影響について,剪断接着強さ試験および走査電子顕微鏡観察を行うことによって検討した.材料と方法:供試したセルフエッチアドヒーシブはBeautiBond,Bond ForceおよびG-Bond Plusの3製品であり,対照としてエッチアンドリンスシステムのSingle Bond Plusを用いた.接着試験には,ウシの下顎前歯の歯冠部を常温重合レジンに包埋し,耐水性シリコンカーバイドペーパーの#600まで研削して被着象牙質面とした.PTCペーストとしては,フッ化物を含有するMerssage Cleargelおよびフッ化物を含有していないPressageを用いた.PTCペーストの処理条件としては,象牙質面をPTCペーストで30秒間研磨後,10分間経過した後に水洗する群(直後群)およびPTCペーストの応用を1日2回,7日間繰り返した群(7日群)の2条件とした.これらの被着象牙質面に,アドヒーシブを製造者指示条件で塗布,光照射して,コンポジットレジンを接着させた.これらの試片は,24時間,37℃水中に保管した後,クロスヘッドスピード毎分1.0mmの条件で剪断接着強さを測定した.成績:PTCペーストの応用された象牙質面へのセルフエッチアドヒーシブの接着強さは5.7〜15.7MPaであり,対照としたエッチアンドリンスシステムでは8.3〜19.5MPaであった.Controlと比較して直後群では,フッ化物含有ペーストおよびフッ化物非含有ペーストともに,いずれのセルフエッチアドヒーシブにおいても接着強さは有意に低下した.また,7日群でも,フッ化物含有ペーストおよびフッ化物非含有ペーストともに,いずれの接着システムにおいてもその接着強さは有意に低下し,接着試験後の破壊形式においては界面破壊が増加した.結論:フッ化物含有PTCペーストの応用された象牙質に対するセルフエッチアドヒーシブの接着性は,応用されていない場合と比較して低下することが示唆された.
  • 小幡 登, 山中 武志, 山根 一芳, 南部 隆之, 円山 由郷, 真下 千穂, 小川 歓, 多々見 敏章, 古森 賢, 福島 久典
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 6 号 p. 507-515
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    目的:Prevotella intermediaは黒色色素産生偏性嫌気性グラム陰性桿菌で,近年の研究では,清掃した歯面にごく早期に定着するinitial colonizersの一員で,インプラント周囲炎の起因菌としても報告されている.P. intermediaの一部の菌株は,菌体外多糖を産生し,強固なバイオフィルムを形成するが,チタンプレートへの付着とバイオフィルム形成については不明の点が多い.そこで今回,性状の異なる3株のP. intermediaを用いて,チタンプレート上でのバイオフィルム形成性を検討した.材料と方法:供試菌株は,バイオフィルム形成能をもつP. intermedia strain 17(strain 17)と,strain 17から得たバイオフィルムを形成しないvariantであるstrain 17-2,P. intermediaの標準菌株であるATCC 25611(ATCC 25611)を用いた.15mlのpolystyrene tubeにチタン円板もしくはインプラントフィクスチャーを垂直に固定し,enriched trypticase soy broth(enriched-TSB)を10ml注いだ後,各菌株の24時間培養菌液より10^8CFUをそれぞれ接種した.24時間から48時間嫌気培養後に,通法に従い走査電子顕微鏡(SEM)観察を行った.インプラントフィクスチャーへのバイオフィルム形成については,細菌接種後,24時間ごとにフィクスチャーを新しいenriched-TSBに移し,5日間の嫌気培養後にSEM観察した.また,フィクスチャー上へのバイオフィルム形成に与えるマクロライド系抗菌薬の低濃度処理の影響についても併せて検討した.結果:Strain 17とATCC 25611はチタン円板に付着したが,バイオフィルム非形成株であるstrain17-2はほとんど付着することができなかった.付着量はATCC 25611が最も多かった.フィクスチャーのプラットフォームへは,各菌株単独ではほとんど付着しなかったが,ATCC 25611とstrain 17を等量接種したケースでは,顕著なバイオフィルム形成がみられ,バイオフィルム形成菌に特徴的な菌体周囲のメッシュワークも認めた.また,このバイオフィルム形成は,培地に1/2MICで14員環マクロライド系抗菌薬を加えることで顕著に抑制された.結論:以上の結果から,P. intermediaがインプラント上へのバイオフィルム形成能をもち,これがマクロライドの低濃度処理で抑制されることが示唆された.
  • 野村 雄司, 保尾 謙三, 岩田 有弘, 吉川 一志, 山本 一世
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 6 号 p. 516-525
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    目的:近年,齲蝕を伴わない一過性の冷痛または擦過痛を主とした象牙質知覚過敏症を罹患する患者が増加してきている.象牙質知覚過敏症の治療法のうち,薬物塗布による治療法は,簡便性と即効性の点から第一選択となることが多く,その作用機序も多岐にわたり,多数の製品が臨床応用されている.今回,薬物塗布に用いられる象牙質知覚過敏抑制材の象牙細管封鎖性について,知覚過敏症罹患モデル象牙質を用いて,象牙質透過抑制率の測定を行うことに加えて,知覚過敏抑制材塗布後の保管環境が透過抑制率の経時的な変化に与える影響について検討を行った.材料と方法:象牙質ディスクは抜去したヒト臼歯から作製した.Pashleyらの報告に準じて作製した装置を用いて,試料を装置に接続して内圧が25mmHgになるように規定した.象牙質知覚過敏抑制材としてGluma Desensitizer(GL),Super Seal(SS),MS Coat One(MO),Nanoseal(NS),Teethmate Desensitizer(TD),Shield Force Plus(SP)を用いた.各象牙質知覚過敏抑制材を塗布後,試料を蒸留水中(DW群)または人工唾液中(AS群)に24時間,1週間保管し,象牙質の透過性を測定した.結果:すべての象牙質知覚過敏抑制材のDW群で,塗布直後の象牙質透過抑制率と比べて,1週間後の象牙質透過抑制率は有意な低下,または低下傾向が認められた.SS,MO,NS,TDのAS群では,塗布直後の象牙質透過抑制率と比べて,1週間後の象牙質透過抑制率は有意な上昇,または経時的な上昇傾向が認められた.GL,SPのAS群では,塗布直後の象牙質透過抑制率と比べて,1週間後の象牙質透過抑制率は経時的な低下傾向が認められた.結論:以上より,ヒト口腔内を模倣した人工唾液中に保管した場合,象牙質知覚過敏抑制材Super Seal,MS Coat One,Nanoseal,Teethmate Desensitizerについて経時的な象牙細管封鎖性の向上が認められ,バイオアクティブな作用が起こる可能性が示唆された.
  • 松田 浩一郎, 新井 恭子, 北島 佳代子, 五十嵐 勝
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 6 号 p. 526-536
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    目的:本研究は,1本のファイルを往復回転運動で使用するNi-TiロータリーファイルReciproc(RE)とテーパーの異なる複数本を正回転で使用するNi-TiロータリーファイルProTaper(PT),および複数本を手用で使用するステンレススチール製Kファイル(SSK)を用い,拡大形成法の異なるファイルの切削特性を知ることを目的として行った.材料と方法:実験には27個の透明樹脂製湾曲根管模型を使用した.根管拡大したときの作業時間,押し込み荷重,引き抜き荷重を計測した.拡大前と後の根管の重ね合わせ画像を作製し,根管形態変化を比較した.拡大形成中に出た切削片の大きさを,画像解析ソフトで計測した.すべてのデータで統計解析を行った.結果:総拡大形成時間において,3種類のファイル間すべてで有意差がみられた.REが最も短く,SSKはNi-Tiファイルの6倍以上であった.押し込み荷重と引き抜き荷重ともにPT,RE,SSKの順に有意に小さく,PTの押し込み荷重は233±58gf,引き抜き荷重は127±36gf,REの押し込み荷重は370±92gf,引き抜き荷重は353±58gfであった.拡大形成後の根管形態変化は,SSKでは根管湾曲の外側と根管上部の内側に削り残しがあり,根管の直線化傾向がみられたのに対し,Ni-Tiファイルでは根管の全周にほぼ均等な切削が観察された.拡大形成中の根尖部への切削片の詰め込みやステップ形成は,SSKで生じたがREとPTではみられず,切削片の大きさはNi-Tiファイルのほうが大きかった.結論:以上の結果から,Ni-Tiファイルは湾曲根管の拡大形成を短時間に行うことができ,根管のほぼ均等な拡大形成ができるファイルであることが示された.
  • 中村 亨, 山本 俊郎, 丸山 日登美, 岸野 加奈美, 久保 惠津子, 赤松 佑紀, 西垣 勝, 大迫 文重, 雨宮 傑, 坂下 敦宏, ...
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 6 号 p. 537-543
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    目的:近年,がん患者の口腔に起こるトラブルを予防ならびに軽減するために,がんセンターや大学病院をはじめとしたがん拠点病院では,歯科によるがん治療への介入が勧められている.京都府立医科大学附属病院歯科(以下,当科)では,2011年7月から口腔ケアサポートチームを編成し,頭頸部がん患者のがん治療後の合併症を低下させるために活動している.そこで本報告では,当科の口腔ケアサポートチームの活動状況について報告する.方法:2011年7月1日から2012年12月31日までに当院耳鼻咽喉科から依頼のあった頭頸部がん患者を対象とし,患者背景,介入件数,合併症および介入時の口腔機能管理について後ろ向き観察研究を行った.成績:頭頸部がん症例102例(男性81名と女性21名),平均年齢は64.1歳であった.原疾患は,口腔がん29例,下咽頭がん24例,中咽頭がん18例,喉頭がん8例,原発不明がん6例,上咽頭がん5例,鼻腔がん4例,唾液腺がん4例,およびその他4例であった.耳鼻咽喉科での治療法は,半数近くが手術療法であり,次に化学療法と放射線治療の併用となっていた.口腔ケアサポートチームの介入時期は,がん治療前からの介入が8割近くを占めた.各月の平均介入件数は6件,合併症率は8.8%であった.口腔機能管理は,口腔衛生処置(歯または口腔粘膜のケア)が全症例に行われ,次に抜歯などの外科処置37例(35.3%),補綴処置(義歯,冠)16例(15.7%),保存修復処置(コンポジットレジン充填,インレー修復)5例(4.9%),歯内処置(抜髄処置,感染根管処置)5例(4.9%)およびう蝕予防処置(フッ化物歯面塗布)5例(4.9%),口腔機能訓練1例(1.0%)であった.結論:紹介されたほぼすべての患者は,口腔機能の管理が必要な状態であった.口腔ケアサポートチームが介入することで大きな有害事象は認められなかった.今後,さらなる検討を行い,口腔管理における歯科疾患に対する適切な治療方針ガイドラインを確立することが必要であると考える.
  • 小正 玲子, 合田 征司, 吉川 一志, 池尾 隆, 山本 一世
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 6 号 p. 544-550
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    目的:歯髄組織ではう蝕の進行に伴い,TNF-αなどの炎症性サイトカインが産生され,歯髄炎が惹起される.刺激を受けた歯髄組織では細胞外マトリックス分解酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)などが産生され,歯髄組織を破壊し病態が進行する.歯髄炎の発症機序を解明することは,歯髄の保存のために重要であると考える.small G proteinは,炎症に深くかかわっているタンパク質として知られている.そこで今回,ヒト歯髄由来線維芽細胞におけるTNF-α刺激によるMMP-3産生に対するsmall G proteinの関与について検討した.材料と方法:実験については,大阪歯科大学医の倫理委員会において承認を得た(大歯医倫110751号).ヒト歯髄由来線維芽細胞を初代培養し以下の実験に用いた.ヒト歯髄由来線維芽細胞をα-MEM(serum-free)にて培養後,TNF-α(0,5,10,20,50,100ng/ml)およびRac1 inhibitor(NSC23766)を添加し,24時間共培養を行った.刺激終了後,上清中のMMP-3の産生およびp38のリン酸化をウェスタンブロット法にて検討した.また,培養上清を1mg/mlのgelatinを加えたSDS-PAGEに供し電気泳動を行い,Comassie blueにて染色後Destain bufferにて脱染色し,ザイモグラフィー法にて検討した.結果:ヒト歯髄由来線維芽細胞においてTNF-α濃度依存性にMMP-3の産生は増強したが,MMP-2の産生に影響は認められなかった.次に,TNF-α刺激により増強したMMP-3の産生およびp38のリン酸化は,Rac1阻害剤であるNSC23766により有意に増強した.結論:以上より,ヒト歯髄由来線維芽細胞においてTNF-α刺激によるMMP-3の産生はsmall G proteinのRac1が関与していることが示唆された.
  • 藤岡 陽介, 両角 俊哉, 久保田 健彦, 吉江 弘正
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 6 号 p. 551-559
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    目的:歯周炎患者口腔内のあらゆるニッチ(未処置の歯周ポケット,舌,粘膜,扁桃)には主要な歯周病原細菌が定着しており,口腔内伝播が起きている.本研究の目的は,慢性歯周炎患者の口蓋扁桃,舌苔,歯周ポケットにおける歯周病原細菌数および揮発性硫黄化合物(VSCs)濃度に対する包括的口腔ケア(ブラッシング,フロッシング,リンシング)の微生物学的効果を検討することである.材料と方法:中等度〜重度の広汎型慢性歯周炎患者43名を無作為に2群(実験群:N=23,対照群:N=20)に分け,口腔内3カ所における試料採取(口蓋扁桃拭い液,舌苔,歯周ポケット内プラーク)およびVSCs濃度測定を行った.その後,実験群は包括的口腔ケアを,対照群は通常の口腔清掃(ブラッシングのみ)を継続した.4週後,再び試料採取および測定を行った.得られた試料からInvader PLUS assay変法により,総細菌数,Porphyromonas gingivalis数,Prevotella intermedia数およびTannerella forsythia数を定量した.VSCs濃度測定は簡易ガスクロマトグラフィー(Oral Chroma)により硫化水素とメチルメルカプタンのガス濃度が測定された.結果:実験群では,口蓋扁桃拭い液の総菌数(p<0.05),P. intermedia数(p<0.01)およびT. forsythia数(p<0.05)が有意に減少した.また,歯周ポケットの総菌数(p<0.05)とT. forsythia数(p<0.05)も有意に減少した.VSCs濃度測定では,メチルメルカプタンの臭覚閾値より高値を示す被験者数が,実験群において有意に減少した(p<0.05).対照群では,いずれの項目においても有意な変化は示さなかった.結論:包括的口腔ケアは,口蓋扁桃や歯周ポケットの細菌数,およびメチルメルカプタン濃度を減少させるのに有効であることが示唆された.
  • 畠山 純子, 畠山 雄次, 松本 典祥, 春名 千英子, 諸冨 孝彦, 泉 利雄, 沢 禎彦, 笹野 泰之, 阿南 壽
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 6 号 p. 560-569
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    目的:アメロジェニンスプライシングバリアントの一つであるleucine rich amelogenin peptide(LRAP)は,破骨細胞と骨芽細胞の成熟,歯根膜細胞の遊走および増殖を促進するシグナルペプチドとして示唆されている.近年,軟骨にアメロジェニンの発現が報告されている.しかし,LRAPが軟骨形成に関与するかについての詳細は不明である.本研究の目的は,軟骨形成におけるLRAPの機能を明らかにすることである.材料と方法:C57BL6/CrSlcマウスの胎生10日齢の肢芽を摘出後,トリプシン/コラゲナーゼ処理により細胞を分離し,マイクロマスカルチャーを行った.ブタリコンビナントLRAP(マウスLRAPと〜85%の相同性,Dr. Gibson(ペンシルバニア大学,USA)より供与)と陽性コントロールとしてマウスリコンビナントGrowth Differentiation Factor-5(GDF-5,R&D Systems,USA)を,1,10,100ng/mlずつ培地に添加した.培養開始2,4,6日後にアルシアンブルー染色を行った.24,48時間後にBrdU assayを行い,細胞の増殖を確認した.12,24,48時間後にRNAを抽出し,軟骨のマーカーであるSox9,II型コラーゲン(Col2a1)およびAggrecanの半定量的RT-PCRを行った.有意差検定にはANOVAとBonferroni's post hoc testを用いた.結果:添加24・48時間後で,LRAP添加0.1,1,10ng/mlのいずれにおいても,濃度依存的にBrdU陽性細胞がコントロール群と比較して有意に増加していた.コントロール群では添加2日後にアルシアンブルー染色陽性結節の出現がみられ,培養期間が長くなると陽性結節の染色性が増加したが,LRAPおよびGDF-5を添加した群では,濃度依存的・培養期間依存的にアルシアンブルーの染色性が強くなった.LRAP添加群では,24・48時間後にSox9の遺伝子発現が,また48時間後にCol2a1およびAggrecanの遺伝子発現上昇がコントロール群と比較して有意に上昇した.結論:これらの知見は,アメロジェニンスプライシングバリアントの一つであるLRAPが,軟骨形成を促進していることを示唆している.
  • 堅田 和穂, 掘江 卓, 堅田 尚生, 冨士谷 盛興, 千田 彰
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 6 号 p. 570-579
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    目的:偶発的露髄に対しては,従来から水酸化カルシウム製剤を用いた直接覆髄が行われているが,近年Mineral Trioxide Aggregate(以下,MTA)をこの直接覆髄に用いることが注目されている.MTAは良好な被蓋硬組織形成能を有し,露髄創傷部の治癒効果が高いとされている.しかし一方で,臨床操作が煩雑で,さらに硬化に時間を要するなどの問題点がある.したがってMTAのような高い治癒効果をもち,臨床操作がより容易な材料が求められている.今般MTAの主成分であるケイ酸カルシウムならびに数種の無機成分に,高親水性のレジンモノマーを添加し,光硬化性と簡便な操作性を有する覆髄剤が新たに開発された.本研究では,本材料をラット臼歯の露髄窩洞に応用した場合の露髄創傷部の炎症性変化と修復性変化を病理組織学的に観察し,その直接覆髄剤としての治癒効果をMTAを使用した場合と比較検討した.材料および方法:全身麻酔を施したWistar系ラットの上顎第一臼歯にラバーダムを装着し,露髄窩洞を形成した.当該窩洞を10%次亜塩素酸ナトリウム水溶液と3%過酸化水素水にて交互洗浄後,滅菌生理食塩水で洗浄し,止血を確認した.窩洞を乾燥後,右側第一臼歯には,TheraCal LC(Bisco,USA)を露髄面に塗布し,20秒間光照射した(TCL群).また,反対側(左側)の第一臼歯は,プロルートMTA(デンツプライ三金)を露髄面に塗布し,5分間放置し対照群とした(MTA群).いずれも硬化を確認後,窩洞をスーパーボンド(サンメディカル)で封鎖し,咬合による影響を避けるため対合歯を抜去した.7,14日後にラットを屠殺し,上顎骨ごと被験歯を取り出し,通法に従って固定・脱灰後,パラフィン連続切片を調製した.ヘマトキシリン・エオジン二重染色を施し,光学顕微鏡により歯髄の炎症性変化ならびに修復性変化を病理組織学的に検討した.結果:7日後では,TCL群・MTA群ともに,露髄部直下に軽度の慢性炎症性細胞浸潤が観察されたほかは,著変は認められず,露髄部は新生被蓋硬組織によりほぼ完全に覆われていた.14日後では,両群ともに炎症性反応はほぼ消退し,露髄部は規則的な細管構造を有する被蓋硬組織により完全に覆われていた.結論:ケイ酸カルシウムと高親水性レジンモノマーを含有した光硬化型覆髄剤は,操作が簡便であり,かつ,MTAと同程度の良好な修復能を有する直接覆髄剤であることが明らかになった.
  • 三橋 晃, 下出 真道, 平田 哲也, 石井 信之
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 6 号 p. 580-587
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    目的:近年,歯科用マイクロスコープの使用によって,エナメル質や象牙質に多数の微小亀裂が存在することが明らかになっている.微小亀裂は窩洞形成,咬合性外傷,外傷および加齢などによってエナメル質や象牙質に発生し,細菌侵入経路になると同時に歯髄炎の原因になることが指摘されている.また,窩洞形成時に生じたエナメル質の微小亀裂は,修復処置後の術後疼痛,修復物脱落,二次齲蝕および歯の破折要因になる可能性が示されている.本研究は,cracked tooth syndromeの原因,予防および対策を検討することを目的として種々の切削器具で窩洞形成を行い,エナメル質に発生する微小亀裂を解析した.材料および方法:水中保管のヒト抜去天然歯エナメル質唇側面に窩洞形成し,形成後のエナメル質の微小亀裂を観察した.バーの素材・形態が微小亀裂発生に与える影響を評価するために,窩洞形成には,4種類の切削機器(エアータービン,マイクロモーター,レーザー,超音波)と2種類の素材(ダイヤモンド,カーバイド),2種類の形態(フィッシャーバー,ラウンドバー)の切削器具を用いておのおの組み合わせ,比較検討した.窩洞形成に使用したバーおよびチップは,ダイヤモンドフィッシャー,ダイヤモンドラウンド,カーバイドラウンド,カーバイドフィッシャー,レーザーチップを各切削機器に合わせて選択し供試した.各窩洞周囲の微小亀裂の有無は,走査型共焦点レーザー顕微鏡(Olympus)にて観察し,発生頻度および形態を解析した.成績:回転切削器具と超音波機器によって形成された窩洞周囲エナメル質は微小亀裂の発生を認めたが,レーザー機器による切削では認められなかった.ダイヤモンドフィッシャーバーを用いた窩洞形成では,ダイヤモンドラウンドバーよりも微小亀裂を生じにくい傾向を示し,この傾向はカーバイドバーでも同様にみられた.考察および結論:窩洞形成に使用する切削器具により,窩洞周囲エナメル質に微小亀裂が発生することで歯髄炎や歯の破折を引き起こす可能性が示された.本研究結果から,切削効力を考慮する必要があるが,レーザーチップ+レーザーによる切削と,回転切削器具においてはマイクロモーター+ダイヤモンドフィッシャーバーの切削が,微小亀裂の発生を抑制することが示された.
  • 大口 景子, 大下 尚克, 岸本 崇史, 金田 桂典, 冨士谷 盛興, 千田 彰
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 6 号 p. 588-599
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    目的:本研究では,ポータブルタイプに改良された歯垢内細菌数測定器(パナソニックヘルスケア,以下,細菌カウンタ)の臨床的有用性を検証することを目的に,細菌カウンタがチェアサイドで簡便かつ短時間に口腔の清掃状態の推移を評価可能であること,および細菌カウンタによる測定値が口腔の清潔程度(以下,口腔清潔度と称する)の指標となりうることなどについて検討を行った.材料と方法:5名の被験者を対象に,Ramfjordの歯垢インデックスに準拠して選択した代表8歯を用いてブラッシング前後の歯垢内細菌数の変化を測定し,細菌カウンタがチェアサイドで簡便かつ短時間に口腔の清掃状態の推移を評価可能か検討した.その際,従来の測定法である嫌気培養法による測定値との比較を行い,細菌カウンタ測定値の信頼性についても検討した.次いで,29名の被験者を対象に,同じくRamfjordの歯垢インデックスに準拠して選択した代表4歯の細菌カウンタによる測定値と口腔内検査項目の一つであるO'LearyのPlaque Control Record値(O'LearyのPCR値)の関連性を検討し,細菌カウンタによる歯垢内細菌数測定値が,口腔清潔度の指標となりうるか検討した.結果:被験者による検出細菌数の違いはあったが,ブラッシング前に比べブラッシング後では,細菌カウンタによる測定値は有意に低い値を示した(p<0.001).また,嫌気培養法による測定値との間には,ブラッシング前後ともに強い相関が認められた(それぞれγ=0.72,γ=0.78,p<0.001).さらに,代表4歯における測定値とO'LearyのPCR値との間にも有意な相関が認められた(γ=0.59,p<0.01).結論:細菌カウンタはチェアサイドにおいて,簡便かつ短時間に嫌気培養法と同様の信頼性をもって歯垢内細菌数ならびにその変化を測定でき,さらに本器による代表4歯の測定値は口腔清潔度の指標としても有用であることが判明した.したがって,細菌カウンタは,チェアサイドにて簡便かつ短時間に口腔清潔度の評価が可能であり,臨床的に有用であることが明らかとなった.
  • 黒川 弘康, 瀧本 正行, 白土 康司, 飯野 正義, 石井 亮, 竹中 宏隆, 鈴木 崇之, 山路 歩, 宮崎 真至
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 6 号 p. 600-609
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    目的:レジンセメントに機能性モノマーを含有させることで,前処理を不要とした自己接着性レジンセメント(以後,自己接着セメント)の臨床使用頻度が増加している.これらの自己接着セメントの接着性を知ることは,臨床的にも重要であると考えられるものの,その初期における挙動については不明な点が多い.そこで,光線照射の有無が自己接着セメントの初期接着挙動に及ぼす影響について,象牙質に対する剪断接着強さを経時的に測定するとともに接着試験後の破断面の観察を行うことで検討した.材料と方法:供試した自己接着セメントは,クリアフィルSAセメントオートミックス(SA),リライエックスユニセム2オートミックス(UC)およびビューティセムSA(BC)の3製品である.硬質レジンを硬化させた試片(直径4mm,高さ2mm)の表面をサンドブラスト処理した後,練和したセメント泥を塗布,ウシ歯象牙質被着面に加圧,圧接した.余剰セメントを除去した後,光強度を600mW/cm^2に設定し,30秒間光線照射を行う,あるいは照射を行わないものを接着試片とした.これら接着試片を37±1℃,相対湿度90±5%の条件で10分および1,6,12,24時間保管した後,剪断接着強さを測定した.また,接着試験後のレジン側破断面についてSEM観察を行った.成績:自己接着セメントの接着強さは,供試したいずれの製品においても光線照射の有無にかかわらず経時的に上昇したが,その上昇傾向は光線照射を行わない条件で大きかった.また,いずれの製品においても,光線照射を行わない条件と比較して光線照射を行う条件で有意に高い接着強さを示した.接着試験後の破断面のSEM観察では,光線照射を行わない条件では,10分後ではいずれの自己接着セメントにおいてもセメントの歯質からの剥離が観察されたのに対し,24時間後ではUCでは歯質とレジンとの混合破壊像を示した.光線照射を行う条件では,10分後ではいずれの自己接着セメントにおいてもセメントの歯質からの剥離が観察されたのに対し,24時間後ではUCでレジンの,BCでセメントの凝集破壊像が観察された.結論:自己接着セメントの初期接着挙動は,光線照射を行う条件と比較して光線照射を行わない条件で有意に低い値を示した.したがって,自己接着セメントを臨床使用するにあたっては,光線照射条件に留意するとともに,各製品の硬化特性を十分に考慮して一連の修復操作を行うことが重要であることが示された.
  • 武藤 徳子, 川島 栄里子, 下島 かおり, 石井 信之
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 6 号 p. 610-616
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    目的:WaveOneとReciprocは往復運動機能により,1本のファイルで正確,迅速な根管形成を可能にしたNi-Tiロータリーファイルである.本研究は,WaveOne,Reciprocによる湾曲根管形成の所要時間,および形成後の根管形態をProTaperと比較検討し,シングルNi-Tiロータリーファイルの切削特性を解析した.材料と方法:根管形成は30度の湾曲を有するJ型エポキシレジン製透明湾曲根管模型60本を使用し,4群(各群n=15)に分類しWaveOne Small,WaveOne Primary,Reciproc R25,および対照群としてProTaperを実験に使用した.各実験群の根管形成の評価は切削時間を計測し,さらに切削効率の測定では,根管形成前後の透明根管模型を重ね合わせ,その差異を実体顕微鏡Olympus SZX16およびデジタルカメラDP71を用いて撮影し,さらに計測用ソフトを使用して計測を行った.結果:WaveOneとReciprocの根管形成所要時間は,対照群のProTaperに比較して有意に減少した.切削効率を測定した結果,WaveOne Smallは内湾側切削量が外湾側切削量よりも有意に減少していた.一方,外湾側切削量は,いずれの実験群においても有意差のないことが明らかにされた.根管壁切削量の測定値および根管形成所要時間は,有意に減少した(p<0.05).結論:WaveOne,Reciprocは迅速で適切な根管形成を可能にし,本来の根管形態を維持した形態に形成することが可能であった.
  • 間 奈津子, 淺井 知宏, 手銭 親良, 末原 正崇, 森永 一喜, 村松 敬, 古澤 成博
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 6 号 p. 617-622
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は,PMTCに用いる歯面研磨材によるコンポジットレジン表面の粗さの違いが,表面の着色に与える影響を検討することである.材料と方法:試料にはクリアフィルマジェスティLVを用い,直径5mm,高さ3mmの円柱リングに填塞し,光照射により硬化させた.硬化確認後,試料を24時間37℃蒸留水中に浸漬し,試料表面を注水下で#1,000の耐水研磨紙まで研磨し,これを基準研磨面とした.これらの試料を,37℃インキュベーター内でコーヒー(C群)および赤ワイン(W群)中に4週間浸漬した後,微小面分光色差計VSS300Hで測色し,計測結果をL*a*b*表色系を用いて評価した.成績:最終的に用いた研磨ペーストが,RDAの高いものから低いものになるに従い,表面に形成された凹凸が減少していることが観察された.色差はC群,W群ともに表面粗さによる統計学的有意差は認められなかった.結論:コーヒーと赤ワインではコンポジットレジン表面の着色程度は大きく異なったが,同一種類の色素では着色の程度に表面粗さの違いによる差は認められなかった.
  • 深谷 芽吏, 野村 義明, 桃井 保子
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 6 号 p. 623-630
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    目的:われわれは,12歳以降の若年者に急増する齲蝕の発生を将来に向け抑制するには,中学・高校時代に行われる歯科健診において,各人の齲蝕リスクを評価しフィードバックすることが有効ではないかと考えた.そこで,これに科学的根拠を与える目的で,12〜13歳(中学1年生)と15〜16歳(高校1年生)の唾液を歯科健診時に採取し,唾液中の齲蝕原生細菌Streptococcus mutansとStreptococcus sobrinusの菌数をリアルタイムPCRで測定し,菌数レベルとDMFTとの関係を検討した.材料と方法:対象は,中学1年生262名と高校1年生334名の計596名とした.唾液中の齲蝕原性細菌数の測定は,口腔健康診断時に刺激唾液を採取し,リアルタイムPCRにて唾液1ml中のS. mutansとS. sobrinusの菌数を測定することで行った.歯科健診は歯科医師8名によって行われた.成績:12〜13歳グループ(262名)では,S. mutansが検出限界以下(<103cells/ml)の者は25.6%(67名)であった.一方,S. mutansが105cells/ml以上の者は17.9%(47名)であった.また,S. sobrinusが検出限界以下の者は94.7%(248名)で,105cells/ml以上の者は1.1%(3名)であった.15〜16歳グループ(334名)では,S. mutansが検出限界以下の者は23.4%(78名)であった.一方,S. mutansが105cells/ml以上の者は20.7%(69名)であった.また,S. sobrinusが検出限界以下の者は90.1%(301名)で,105cells/ml以上の者は1.8%(6名)であった.DMFTの平均値は,12〜13歳グループにおいては0.9,15〜16歳グループにおいては1.8であった.また,両菌種とDMFTとの関係では,すべての対象者においてS. mutansのみを保有する群と,両菌種をともに保有しない群との間に,統計的に有意差(p<0.05)が認められた.結論:12〜13歳と15〜16歳の唾液中のS. mutansとS. sobrinusの菌数レベルとDMFTとの関係を検討したところ,すべての対象者においてS. mutansのみを保有する群のDMFTは,両菌種を保有しない群のDMFTより有意に高かった.
  • 高橋 宰達, 田口 洋一郎, 安井 菜津希, 田中 昭男, 梅田 誠
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 6 号 p. 631-640
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    目的:幼若ブタの歯胚から抽出されたエムドゲイン®(以下,EMDと略す)は,歯槽骨吸収の著しい歯周炎患者の歯周組織再生,特に無細胞セメント質を誘導し歯周組織の再生を促す材料として現在広く臨床応用されている.しかし,EMDは生物由来材料のため,未知の病原体の問題点を払拭できず患者からの拒否感があるのも事実であり,生物に由来しない合成ペプチドの開発が望まれていることから,EMDの基礎研究から得た成果を基に新規合成ペプチドを作製した.今回,硬組織の分化誘導過程における重要な歯周組織構成細胞であるヒト微小血管内皮細胞に対する,EMD由来新規合成ペプチドの影響について検討した.材料と方法:ヒト微小血管内皮細胞として,市販されている皮膚由来のヒト微小血管内皮細胞を実験に使用し,ヒト微小血管内皮細胞に対する新規合成ペプチドの影響としては,細胞の増殖,遊走,管腔の形成および細胞接着分子の発現について検討した.実験群では合成ペプチドを100ng/mlの濃度で培地に溶解させヒト微小血管内皮細胞に応用し,対照群は合成ペプチド無添加とした.細胞増殖に関しては,30分,1,3,6,24,72時間培養後に,細胞遊走に関してはBoyden chamber法を改良して,1,3,8時間後にそれぞれを測定した.管腔の形成は,三次元培養を施し培養6日後に細胞骨格を蛍光染色し,観察した.細胞接着分子の発現は,培養3日後のICAM-1の発現について比較検討を行った.結果:細胞増殖は,すべての培養時間で実験群はコントロール群に比べて有意に高かった.細胞遊走は,すべての培養時間でネガティブコントロール群よりも有意に高く,ポジティブコントロール群とほぼ同様の結果となった.三次元培養においては,実験群はコントロール群に比べて細胞突起の発生が顕著であった.ICAM-1の発現について,実験群はコントロール群に比べて有意に高かった.結論:これらの結果から,EMD由来の合成ペプチドは歯周組織再生の過程でみられる硬組織の分化誘導過程の栄養供給に関与する,ヒト微小血管内皮細胞の増殖・遊走・管腔の形成および細胞接着分子の遺伝子発現を促進することが示唆された.
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