日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
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ISSN-L : 0387-2343
57 巻 , 6 号
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総説
原著
  • 齋藤 恵美子, 齋藤 彰, 渋川 義宏, 弓削 文彦, 川浪 雅光
    2014 年 57 巻 6 号 p. 484-491
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/06
    ジャーナル フリー
     目的 : bone morphogenetic proteins (BMPs) は, 担体に配合して移植した後, ラットで異所性の骨形成を誘導したと報告されている. Thermoreversible gelatin polymer (TGP) は温度感応性高分子と親水性高分子との共重合体よりなる合成素材であり, 室温以下ではゾル状であるが, 体温付近ではゲル化する性質をもつ. 本研究の目的は, TGPがBMPの担体として有効であるか検索することである.
     方法 : 本実験動物にはWistar系雄性ラット (8週齢) 10匹を用いた. 各ラットの背部皮下に4つの移植部位を作製して, 以下の移植材を移植した.
     1. 実験群 (N=20) : rhBMP-2 (5μg) を配合したTGPゲル (配合比0.06μg/μl ; 直径10mm) に整形した.
     2. 対照群 (N=20) : rhBMP-2を配合しない直径10mmのTGPゲルに整形した.
     両群の観察期間を4週および8週に分けた (各N=10). 試料は脱灰後に分割して, 内面の移植材を10°Cの脱灰液にて水洗した後, 病理標本を作製し, Goldner's Masson trichrome染色を行って病理組織学的観察を行った.
     結果 : rhBMP-2を配合して移植した実験群では, 観察期間4, 8週いずれの群も移植材表面に沿って硬組織形成が認められ, 担体の内部に向かって結合組織および硬組織形成がほとんど認められなかった. TGPのみの対照群では観察期間4, 8週いずれの群もTGP周囲に炎症性細胞をほとんど認めず, 骨形成も認められなかった. また, 全試料のTGPは水洗の際にゾル状になり, 短時間に流出したため, すべての標本でTGPの残存は認められなかった.
     結論 : 本研究の結果から, このTGPは移植後も温度感応性の性質を維持することが示唆された. さらに, TGPとrhBMP-2を組み合わせて移植を行うと, 移植材周囲に異所性の骨形成が認められ, さらに形成骨は観察期間8週まで吸収されずに維持されることが示唆された.
  • 泉 利雄, 丸田 道人, 板家 圭祐, 水上 正彦, 松本 典祥, 畠山 純子, 中山 英明, 松家 茂樹, 阿南 壽
    2014 年 57 巻 6 号 p. 492-501
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/06
    ジャーナル フリー
     目的 : 生体活性ガラスbioactive glass (以下, BAG) は, in vitroでは骨芽細胞の活性を高めるとされているが, 骨髄腔の乏しいラットの頭頂骨での骨形成促進能は示されていない. ストロンチウム strontium (以下, Sr) は, 前骨芽細胞の骨芽細胞への分化を促進, 活性化する一方で, 破骨細胞の分化とその働きを抑制し, 骨形成促進作用を示すとされている. そこでわれわれは, BAGにSrを添加することでBAGの骨形成能を促進することを考え, Srを含有するBAGを試作し, その生体親和性と骨形成能を検討した.
     材料と方法 : SiO2 53 wt%, CaO 20 wt%, Na2O 23 wt%, P2O5 4 wt%の組成のガラス (Sr0) およびSr0のCaOの20 wt%をSrOで置換したガラス (Sr20) をおのおの合成した後, 直径10mm, 厚さ1mmのディスクと粒径250~300μmの粉末を得た. ラットの背部皮下にディスク状BAG, 対照としてディスク状ハイドロキシアパタイト (以下, HAP) を埋入し, 1カ月後にパラフィン包埋しHematoxylin-Eosin染色 (以下, HE染色) 標本を作製, 光学顕微鏡で鏡検した. ラットの頭頂部に直径8mmの骨欠損を作製後, Sr0およびSr20粉末を埋入した. 何も埋入しないものを対照群とした. 術後1, 3カ月および6カ月に屠殺し, パラフィン包埋しHE染色標本を作製, 光学顕微鏡で鏡検した.
     成績 : Sr20およびSr0は, HAPと同様の良好な生体親和性を示した. 対照群の術後6カ月では, 欠損内には新生骨形成を認めなかった. Sr0群の術後6カ月では, BAG粒子は密な線維性結合組織で囲まれており, 粒子周囲に新生骨の形成を認めなかった. Sr20群の術後6カ月では, BAG粒子は著しく溶解し, 対照群とSr0群と比べ欠損内の新生骨量が有意に増加した. BAG粒子の断面積は, Sr0群の6カ月例と比べ有意に減少していた. Srの添加によりBAGの溶解度は増し, 放出されたSrイオンが骨形成を促進した可能性が推察された.
     結論 : Srを含有したBAGは, 骨補塡材として良好な生体親和性を示すとともに骨形成を促進する可能性があることが示唆された.
  • —根管湾曲度と根管壁変位量の相関関係—
    田中 美香, 武藤 徳子, 下島 かおり, 冨永 尚宏, 石井 信之
    2014 年 57 巻 6 号 p. 502-509
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/06
    ジャーナル フリー
     目的 : 本研究は, 往復運動により駆動するNi-TiシングルファイルReciprocとWaveOneの湾曲根管形成時の根管壁変位量を, 複数本で根管形成を行うProTaperと比較検討することを目的とした.
     材料と方法 : 実験には, 根尖部湾曲が10, 20, 30度の湾曲角度を有するJ型エポキシレジン製透明湾曲根管模型各42本, 合計126本を使用し根管形成実験群を6群 (各群n=7×3) に分類した. 各実験群は最終根管形成号数がISO#25のReciproc R25, WaveOne Primary, および対照群のProTaper SX-S1-S2-F1-F2と最終根管形成号数がISO#40のReciproc R40, WaveOne Large, および対照群のProTaper SX-S1-S2-F1-F2-F3-F4に分類した. 各実験群の切削効率の測定は, 根管形成前後の透明湾曲根管模型を重ね合わせ, その差異を実体顕微鏡Olympus SZX16およびデジタルカメラDP71を用いて撮影し, さらに計測用ソフトWinRoofを使用して計測を行い, 根管壁変位量とした.
     結果 : 切削効率を測定した結果, 最終拡大号数#25のReciproc R25, WaveOne Primary, および対照群のProTaperでは, すべてのファイルにおいて有意差が認められなかった. 一方, 最終拡大号数#40では湾曲10度の根管ではReciproc R40, WaveOne Large, 湾曲20度の根管ではProTaper, 湾曲30度の根管ではReciproc R40が, 最も根管壁変位量が小さく根管形態を保持していることが示された.
     結論 : Ni-TiシングルファイルReciprocとWaveOneによる根管形成は, 複数本で形成するProTaperと同様に正確な根管形成が可能であることが示された.
  • 芹田 枝里, 大橋 桂, 二瓶 智太郎
    2014 年 57 巻 6 号 p. 510-518
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/06
    ジャーナル フリー
     目的 : コンポジットレジン修復は, 材料の機械的性質の向上, 接着システムの向上, 患者の審美的要求により, 前歯や臼歯を問わず幅広く臨床に応用されている. コンポジットレジンの研磨後の表面性状は, 材料の臨床的予後や審美性に重要であることが知られている. この研究の目的は, 4種類のコンポジットレジンと4種類のワンステップ研磨材を用いて研磨した表面の, 表面粗さ (Ra) と光沢度を評価することである.
     材料および方法 : 実験に供試したコンポジットレジンは, クリアフィルマジェスティES-2 (CME : クラレノリタケデンタル, A3), フィルテックシュープリームウルトラ (FSU : スリーエムヘルスケア, A3B), プレミス (PRM : Kerr, BODY A3) およびエステライトΣクイック (ESQ : トクヤマデンタル, A3) の4種類とし, ワンステップ研磨材は, CRポリッシャーPS (CP : 松風, ディスク), オプチワンステップ (OS : Kerr, ディスク), PoGo (PG : デンツプライ三金, ディスク) およびアイポール (IP : へレウスクルツァージャパン, ディスク) の4種類を用いた. コンポジットレジン試料は, 円盤状 (ɸ11mm×3mm) に調整し, 耐水研磨紙#600にて30秒間研磨後, 各種ワンステップ研磨材で30秒間研磨し試料とした. 未研磨試料をNP群, 耐水研磨紙#600で研磨した試料を#600群, ワンステップ研磨材で研磨した試料を, それぞれCP群, OS群, PG群およびIP群とした. 試料は, 表面粗さ (Surfcom590A, 東京精密) とその光沢度 (GM-268Plus, コニカミノルタ) を測定し研磨効果を評価した. 得られた値は, 一元配置分散分析によりα=0.05で統計学的に処理し, Tukey HSDテストによる多重比較検定を行った. さらに, 表面粗さと光沢度に関してPearsonの相関分析を行った.
     結果および考察 : 表面粗さ (Ra) は, CMEのNP群が最も高い値を示し, PRMのIP群は最も低い値を示した. 光沢度では, FSUのOS群が最も高い値を示した. 今回使用したワンステップ研磨材でOSとIPは, コンポジットレジン表面を滑沢にし, 高い光沢が得られた. Pearsonの相関分析から, 表面粗さと光沢度の間には, 中等度の負の相関が認められた.
     結論 : 本実験の結果から, ワンステップ研磨材はコンポジットレジンの種類によって, 異なる研磨効果が得られることが明らかとなった.
  • 小田中 瞳, 下地 伸司, 竹生 寛恵, 大嶌 理紗, 宮田 一生, 菅谷 勉, 藤澤 俊明, 川浪 雅光
    2014 年 57 巻 6 号 p. 519-529
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/06
    ジャーナル フリー
     目的 : 安心・安全な歯科治療を行うためには, その治療が全身状態に及ぼす影響を解明することが重要である. 著者らは, 歯科治療の影響を評価するための自律神経活動モニターシステムを開発してきた. 本研究では, 新規開発モニターシステムを用いて, 健全な20歳代のボランティアに対して, 歯科治療のなかで偶発症の発生頻度が高い局所麻酔および超音波スケーラーを用いたスケーリングを行った際の自律神経活動の変化について, 検討を行った.
     対象と方法 : 10名 (25.8±0.8歳) のボランティアに対して処置前座位 (2分間), 処置前仰臥位 (2分間), 局所麻酔 (1/80,000エピネフリン添加塩酸リドカイン, 2分間), スケーリング (5分間) および処置後座位 (2分間) を順に行った際の, 血圧, 心拍数および自律神経活動について新規開発モニターシステムを用いて評価した. 自律神経活動は, 心電図のR-R間隔を高周波成分と低周波成分に周波数解析することで, 交感神経活動および副交感神経活動を評価した. 統計学的分析はSteel-Dwass検定を用いて行った.
     成績 : 血圧および心拍数については, 処置中にほとんど変化がなく, 有意な差は認められなかった. 副交感神経活動は処置中に上昇したが, 有意な差は認められなかった. 交感神経活動は処置前座位時よりも局所麻酔時やスケーリング時に有意に下降した. このことから, 健全な20歳代に対して局所麻酔を行う際は, 処置中の侵害刺激よりも精神的なストレスの影響が大きい可能性が示唆された.
     結論 : 健全な若年成人では, 処置開始前の座位時に比べて仰臥位で局所麻酔とスケーリングを行った際に交感神経活動が低かった.
  • —封鎖性への影響と殺菌効果—
    新井 裕基, 吉嶺 嘉人, 松本 妃可, 木原 智子, 磯辺 量子, 赤峰 昭文
    2014 年 57 巻 6 号 p. 530-539
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/06
    ジャーナル フリー
     目的 : この研究では, Er : YAGレーザーおよび超音波装置で形成した逆根管窩洞の超微構造の比較と封鎖性ならびに殺菌作用を評価することを目的とした.
     方法 : ヒトの小臼歯を用いた. 歯冠を除去し, 根管を#90のサイズに機械的に拡大した. 根の長軸と直角に3mmの根尖を切断した. 切断面から3mmの深さの逆根管窩洞を, 円錐型チップを装着したEr : YAGレーザーとコントロールとしてレトロチップを装着した超音波でそれぞれ形成した. レーザーのエネルギーは, 80mJ・20ppsにセットし, 注水とエアを用いた. 形成後に試料を長軸方向に切断し, SEMで観察した. 色素浸透試験では, MTA充塡後に試料を24時間蛍光微粒子を含む溶液に浸漬し, 長軸方向に割断した表面の象牙質/材料の界面を共焦点レーザー顕微鏡で観察した. さらに, レーザー照射の抗菌作用を調べるために, 7日間窩洞象牙質にEnterococcus faecalisを培養した. その後, 試料を長軸方向に分割し, LIVE/DEAD染色を施しCLSMで観察した.
     成績 : レーザーで形成した象牙質は, スミヤー層がなく, 開口した象牙細管を伴う, 完全に蒸散された窩壁を示した. 超音波法では, 象牙細管が閉鎖し, 表在性デブリーをもつ窩壁を示した. 漏洩試験では, レーザー群および超音波群において, 象牙質/MTA間の界面に漏洩は認められなかった. LIVE/DEAD染色では, 窩壁の深部に生菌の侵入が認められた. 20秒間のレーザー照射後には, 窩壁の表層に死菌がみられた (約100μmに及ぶ象牙細管内).
     結論 : これらの結果は, Er : YAGレーザー照射による逆根管窩洞の仕上げ形成が優れた逆根管窩洞形成に役立つ可能性を示唆している.
  • 森上 誠, 陶山 雄司, 佐藤 暢昭, 宇野 滋, 山田 敏元, 杉崎 順平
    2014 年 57 巻 6 号 p. 540-546
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/06
    ジャーナル フリー
     目的 : 近年, ビスフォスフォネート (BP) 製剤投与患者のなかには, 侵襲的歯科処置を実施していないにもかかわらず, 顎骨壊死を発症した症例がみられるようになってきた. 本研究の目的は, 虎の門病院歯科において, BP製剤投与患者のなかで顎骨壊死を発症した症例について調査を行うことである.
     方法 : 調査対象は, 2009年7月1日以降に顎骨壊死が発見された症例とした. BP製剤を投与されている患者のうち, 顎骨壊死がみられた症例について, 1) 患者氏名・年齢・性別, 2) 疾患名 (骨粗鬆症または悪性腫瘍名), 3) BP製剤名, 4) BP製剤の投与期間, 5) 侵襲的歯科処置の有無, 6) 顎骨壊死の発見時期, 7) 顎骨壊死の発症部位, 8) 発症部位が義歯床下粘膜であるか否か, 9) 転帰の各項目について, 歯科担当医が記録した.
     結果 : 2014年6月末日までに, 顎骨壊死がみられたのは12名の患者の13部位であった. 全12名のうち, 抜歯後に顎骨壊死を発症した者は4名であり, その他の8名は侵襲的歯科処置を行っていないにもかかわらず, 顎骨壊死を発症した. これら8名のうち, 義歯床下に発症した者が3名であった. 転帰としては, 腐骨分離による自然治癒が1名, 歯科担当医が腐骨除去した結果治癒した者が2名, 本院形成外科へ処置を依頼した者が1名, 他病院へ処置を依頼した者が1名, 肺癌の進行により死亡した者が1名, 現在も経過観察中の者が7名であった.
     結論 : BP製剤投与患者では, 侵襲的歯科処置を実施していない場合でも, 顎骨壊死を発症する可能性が示唆された.
  • 鈴木 茂樹, 永安 慎太郎, 荒川 真, 小武家 誠司, 星野 博昭, 箸方 厚之, 本山 智得, 西村 英紀
    2014 年 57 巻 6 号 p. 547-554
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/06
    ジャーナル フリー
     目的 : Matrix trioxide aggregate (MTA) は高い被蓋硬組織形成能を有することから, 穿孔部の閉鎖や直接覆髄材として用いられている. 破折や術中の露髄を歯髄組織の物理的損傷と捉えれば, 損傷組織への周囲残存組織からの歯髄細胞の遊走, 遊走細胞の基質への接着, 増殖や分化などの細胞機能の発現からなる一連の経過が歯髄保存的処置の成否に重要である. そのような背景から, 直接覆髄材が歯髄細胞に対して接着・増殖誘導能をもつかは, 露髄後組織修復の予後を左右すると考えられる. 臨床では, 歯髄に近接する深い窩洞や軽度露髄に対してはコンポジットレジン (CR) 充塡も選択される. そこで, 本研究ではMTAの歯髄細胞に対する接着や接着後の増殖, アポトーシス誘導能を, CRおよび間接覆髄剤であるグラスアイオノマーセメント (GIC) を対照群として検討した.
     材料および方法 : 96ウェルプレートをMTA, CR, GICまたはfibronectinでコートし, 血清非存在下でヒト歯髄細胞をコートずみウェルに播種し, 1.5時間後の接着細胞数を定量した. MTA, CR, GIC上での細胞増殖能の検討は, 播種1.5時間後に血清培地に交換し72時間後まで検討した. アポトーシス誘導能はカスパーゼ3/7活性を指標に検討した.
     結果 : MTAは血清非存在下でヒト歯髄細胞の接着を誘導したが, CRおよびGICは誘導しなかった. 一方, ヒト歯髄細胞のMTAへの細胞接着数をfibronectinと比較すると, MTAのヒト歯髄細胞接着誘導能は有意に低かった. MTAへのヒト歯髄細胞の接着は播種72時間後においても認められたが, その細胞数は播種後と比較して減少していた. CRやGICに播種したヒト歯髄細胞ではカスパーゼ3/7活性の著しい上昇が認められたが, MTA上に播種したヒト歯髄細胞では活性の上昇はみられなかった.
     結論 : MTAはCRやGICと比較して有意に高いヒト歯髄細胞の接着誘導能を示した. これはCRやGICと異なり, MTA上ではヒト歯髄細胞のアポトーシスが誘導されないためと示唆される. 一方, MTAの増殖誘導能は低く, 接着誘導能はfibronectinと比較すると非常に弱かったことから, 今後, 遊走・接着能をもつ有機質接着因子とMTAの混合利用により, さらに良好な創面被覆, 歯髄組織再生が行える可能性がある.
  • 白圡 康司, 植田 宏章, 金澤 智恵, 平井 一孝, 辻本 暁正, 髙見澤 俊樹, 宮崎 真至
    2014 年 57 巻 6 号 p. 555-562
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/06
    ジャーナル フリー
     目的 : シングルステップアドヒーシブ中の溶媒を効果的に除去するとともにその重合硬化性を向上させることを目的として, ウォームエアブローが考案された. そこで, ウォームエアブローがHEMA未含有シングルステップアドヒーシブのエナメル質接着性に及ぼす影響について界面科学的見地から検討するとともに, 剪断接着強さならびにSEM観察を行った.
     材料と方法 : 供試したシングルステップアドヒーシブは, BeautiBond Multi (松風) である. 試片の製作に際して, ウシ下顎前歯歯冠部唇側面をSiCペーパーの#600まで研削したものをエナメル質被着面とした. 被着歯面にアドヒーシブを塗布した後, ウォームエアブローを行った試片 (Warm群) およびエアシリンジを用いてエアブローを行った試片 (Control群) の2条件とした. 表面自由エネルギーの測定には, 表面自由エネルギーが既知の液体として, 1-ブロモナフタレン, エチレングリコールおよび蒸留水を使用した. 接触角の測定は, 全自動接触角計を用いてセシルドロップ法でそれぞれの液滴を1μl滴下し, θ/2法で行った. 接着試験は, 通法に従って試片を製作し, 万能試験機を用いて剪断接着強さを測定した.
     成績 : 表面自由エネルギーは, Control群とWarm群で差が認められなかった. 表面自由エネルギーを構成する各成分で比較すると, van der Waals力が支配的でありウォームエアブローによる影響は認められなかった. また, 酸-塩基成分を構成する各成分で比較すると, Lewis酸性成分は両群間で差が認められず, Lewis塩基性成分は, Control群と比較してWarm群で有意に低い値を示した. 接着試験の結果からは, ウォームエアブロー時間の違いによる影響は認められなかった. また, 接着試験後の破壊形式は, いずれの製品においても界面破壊が大勢を占め, ウォームエアブロー時間の違いによる影響は認められなかった.
     結論 : 本研究において, HEMA未含有シングルステップアドヒーシブを用いて, ウォームエアブローが表面自由エネルギーおよびエナメル質接着性に及ぼす影響について検討したところ, その影響は認められなかった.
  • —硬化深度と封鎖性に関する研究—
    松本 妃可, 吉嶺 嘉人, 新井 裕基, 木原 智子, 磯辺 量子, 赤峰 昭文
    2014 年 57 巻 6 号 p. 563-569
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/06
    ジャーナル フリー
     目的 : 光硬化型MTA様レジンであるセラカルLCは, MTA同様の優れた生体適合性に加えて, 光硬化型フロアブルレジンとしての良好な操作性をもつ材料として注目されている. 本研究では, セラカルを逆根管充塡材として応用する場合の光硬化深度と封鎖性を検討した.
     方法 : 1根管のヒト健全下顎小臼歯を使用した. 歯冠部を切断除去した後, #90までK-ファイルを用いて根管拡大を行い, 根尖側3mmを切断除去した. セラカルLCを根管内に注入し, 20秒間の光照射を行った. 顕微鏡カメラを用いて画像を撮影し, 硬化部分の長さを計測した. 色素浸透試験においては, 歯冠側にガッタパーチャを挿入, 根尖側3mmにセラカルLCまたはMTAを充塡した. すべての歯根を蒸留水で希釈した蛍光色素に24時間浸漬し, 歯軸方向に割断し, 色素浸透を共焦点レーザー顕微鏡で観察した.
     成績 : 窩洞内のセラカルLCは, 20秒間の光照射によって約7.5mmの硬化深度を示した. セラカルLCとMTAを充塡した全試料において, 色素浸透は観察されなかった.
     結論 : これらの結果は, 光硬化型MTA様レジンであるセラカルLCの逆根管充塡材としての応用の可能性を示唆している.
  • 實吉 安正, 飯塚 純子, 岡田 周策, 長谷川 晴彦, 倉持 江里香, 向井 義晴
    2014 年 57 巻 6 号 p. 570-577
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/06
    ジャーナル フリー
     目的 : ブリーチングは一般的な歯科治療の一つとして普及してきている. 本研究では, フッ化物含有ホームブリーチング剤のエナメル質および象牙質脱灰抑制能を調べることにより, 齲蝕予防材料としての有効性を検討した.
     材料と方法 : ウシ切歯からエナメル質および象牙質試料を切り出し, 耐酸性バーニッシュにより2×3mmの被験面を規定した. これらの試料を以下の4群に分けた. なお, 各群の試料数は6とした. 1. CONT (Control : 非処理), 2. HSU (Shofu HiLite Shade Up : 10%過酸化尿素), 3. OER (Ultradent Opalescence Regular : 10%過酸化尿素, 2.45 ppmF), 4. OPF (Ultradent Opalescence PF : 10%過酸化尿素, 1,220 ppmF, 硝酸カリウム) 各ホームブリーチング剤を被験面に適用, 37°C, 100%湿度下で2時間静置した後, 流水下で歯ブラシを用いて30秒間洗浄, さらに脱イオン水で30秒間水洗した. その後, 試料を脱灰溶液 (1.5mmol/l CaCl2, 0.9mmol/l KH2PO4, 50mmol/l酢酸, エナメル質用は0.1 ppmF含有pH 4.6, 象牙質用は0.2 ppmF含有pH 5.0) に37°Cで22時間浸漬した. 本サイクルを4日間繰り返した後, エナメル質からは150μm, 象牙質からは300μmの切片を被験面に垂直に切り出し, トランスバーサルマイクロラジオグラフィーで得られた画像からミネラルプロファイル, 病巣深度 (Ld) およびミネラル喪失量 (IML) を算出した. また, EPMAによりエナメル質病巣中のCaおよびFの分布を測定した.
     結果 : エナメル質のCONTは高度に脱灰された表層下病巣を示し, HSUにおいても表層下脱灰病巣が確認された. OERは4つの明瞭なミネラルピークを有する表層下脱灰病巣を示した. HSUとOERのIMLは, CONTと比較し有意に低い値であった (ANOVA, Tukey's, p<0.05). OPFは軽度に脱灰されたミネラルプロファイルを示し, IMLはほかのグループに比較し有意に低い値であった. 象牙質では, CONT, HSU, OERともに類似したミネラルプロファイルを示した. また, OERにおいては4つのミネラルピークが観察されたが, エナメル質に比較して不明瞭であった. 一方, OPFのプロファイルはほかの3群とは明らかに異なっており, 約50%のミネラルボリュームを有するピークを有し, IMLもほかの3群に比較し有意に低い値であった. 病巣深度に関しては, エナメル質および象牙質ともにCONT, OPF群間における有意差は認められなかった. エナメル質病巣におけるEPMAでは, ミネラルピークに一致してCaが高く検出された.
     結論 : フッ化物含有ホームブリーチング剤はエナメル質および象牙質の脱灰を抑制することから, 齲蝕予防手段の一つとして利用できる可能性が示唆された.
  • 村山 良介, 松吉 佐季, 柴崎 翔, 土屋 賢司, 瀧本 正行, 川本 諒, 黒川 弘康, 宮崎 真至
    2014 年 57 巻 6 号 p. 578-588
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/06
    ジャーナル フリー
     目的 : S-PRGフィラー含有コーティング材が, ウシエナメル質の脱灰抑制に及ぼす影響を, 光干渉断層画像法 (Optical Coherence Tomography, OCT) を用いて検討した.
     材料と方法 : ウシ抜去歯エナメル質を4×4×2mmのブロック体に調整した. コーティング材としては, PRGフィラーを含有するPRGバリアコートを用いた. 試片に対する脱灰条件としては, 1日につき2度, 0.1mol/lの乳酸緩衝液 (pH 4.75) に10分間浸漬を行い, 37°C人工唾液に保管した. バリアコートを塗布して脱灰条件で保管した試片をPRG群, これを塗布せずに脱灰条件で保管した試片をDe群, 脱灰を行うことなく37°C人工唾液中に浸漬した試片をControl群とした. 次いで, OCTによる測定によって得られた信号強度分布の解析を行った. 得られた各測定値から, 有意水準0.05の条件で統計学的分析を行った.
     成績 : OCT測定の結果から, シグナル強度と1/e2幅の積に関しては, Control群においてはシグナルの変化はほとんど認められなかったが (1,855~2,425), De群では有意な低下が認められた (1,521~1,990). 一方, PRG群では, 実験開始から7日目でこの値は倍となり, その後緩やかに上昇する傾向が認められた (1,560~3,666). これは, エナメル質表層の結晶構造の緻密化によって散乱光が減少し, 透過光成分が増加したためと考えられた.
     結論 : 本実験の結果から, S-PRGフィラーを含有するコーティング材は, エナメル質の脱灰抑制効果を有することが明らかになった. また, OCTを用いることによって, エナメル質における初期の脱灰および石灰化の様相を検討することが可能であることが示された.
  • 呉本 勝隆, 前薗 葉月, 北川 蘭奈, 竹田 かほる, 新野 侑子, 松下 健太, 伊藤 祥作, 野杁 由一郎, 林 美加子
    2014 年 57 巻 6 号 p. 589-596
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/06
    ジャーナル フリー
     目的 : 歯の自家移植は1歯欠損に対する処置法の選択肢の一つであり, 天然歯にほぼ一致した組織学的・解剖学的構造の再生が得られ, 天然組織の保存を図ることができるという利点を有し, 良好な経過を示す臨床症例が多数報告されている. しかしながら, 移植歯のサイズや形態に制限があり, 症例選択の際には熟考を要する. 一般的に, 移植歯は移植自体の手技, および移植歯に対する根管治療の難しさから単根歯でかつ歯根の湾曲が小さい歯が用いられることが多いが, 今回は歯根の湾曲が著しい上顎右側第三大臼歯を上顎左側第二大臼歯部に移植し良好に経過している症例について報告する.
     症例の概要 : 患者は37歳男性. 以前より体調不良時に上顎左側第二大臼歯の違和感を覚えていたが, 頰側および口蓋側に腫脹を認め来院. 来院時, 上顎左側第二大臼歯頰側および口蓋側に瘻孔を形成していた.
     治療経過 : 補綴物を除去すると髄床底に破折を認め, 保存困難と診断した. 患者より上顎右側第三大臼歯を用いた移植を希望する申し出があり, 上顎右側第三大臼歯には術前のコーンビームCT (CBCT) による診査で歯根の肥大・湾曲を認めたものの, 移植可能と判断し移植歯として用いることとした. 上顎左側第二大臼歯を抜歯し, 同日に上顎右側第三大臼歯を抜歯し口腔外にてNi-Tiロータリーファイルを用いて根管治療を行い, 上顎左側第二大臼歯部に移植し固定した. 移植歯の固定は1カ月後に除去し, 支台築造および暫間被覆冠の作製を行った. 移植後6カ月経過時に歯周組織の安定を確認したうえで, 最終補綴物を作製した. デンタルエックス線写真において, 移植歯周囲歯槽骨および歯槽硬線の回復が認められ, 現在術後1年以上経過しているが, 経過は良好である.
     結論 : 本症例では, CBCTによる術前診査の後に歯根の肥大および湾曲が認められる上顎大臼歯の自家移植を行い, 良好な結果が得られた.
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