日本歯科保存学雑誌
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57 巻, 1 号
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原著
  • 竹内 摂, 合田 征司, 吉川 一志, 堂前 英資, 池尾 隆, 山本 一世
    2014 年 57 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/04
    ジャーナル フリー
     目的 : 歯髄は, 象牙質への栄養供給・恒常性の維持などにかかわり, 修復象牙質形成に対し多大な役割を有している. 一方で, 齲蝕の進行に伴う歯髄の炎症によって歯髄組織にはInterleukin-1β (IL-1β) などの炎症性サイトカインが産生され, Matrix metalloproteinases (MMPs) などの酵素が産生され組織破壊へと進行していく. 歯髄炎の発症機序を解明することは, 歯髄保存のために重要である. そこでわれわれは, ヒト歯髄由来線維芽細胞における炎症性サイトカインIL-1β刺激によるMMP-3の産生と, 細胞内シグナル伝達物質であるExtracellular signal-regulated kinase 1/2 (ERK1/2) について検討した.
     材料と方法 : 大阪歯科大学医の倫理委員会における承認 (大歯医倫070716号) の下, 矯正治療における便宜抜去歯からヒト歯髄由来線維芽細胞を採取し, 初代培養後3∼10世代を本研究に供した. ヒト歯髄由来線維芽細胞はα-MEM (serum-free) にて培養後, IL-1β (0, 1, 2, 5, 10ng/ml) およびMEK阻害剤 (U0126) を添加した. 刺激後のMMP-3の産生およびERK1/2のリン酸化を, それぞれの抗体を用いてウエスタンブロット法にて検討した. また, 上清を1mg/mlのゼラチンを加えたSDS-PAGEにて電気泳動を行い, ゼラチンザイモグラフィー法にて検討した.
     成績 : ヒト歯髄由来線維芽細胞において, IL-1β刺激によりMMP-3の産生は増強した. ERK1/2のリン酸化は, IL-1β濃度依存性に増強した. さらに, MEK1/2阻害剤U0126添加することで, IL-1β刺激により増強したERK1/2のリン酸化およびMMP-3の産生が阻害された.
     考察 : 本実験の結果から, ヒト歯髄由来線維芽細胞におけるIL-1β刺激によるMMP-3産生はMEK1/2・ERK1/2経路が関与していることが示唆された.
  • 横田 啓太, 岩田 有弘, 保尾 謙三, 吉川 一志, 山本 一世
    2014 年 57 巻 1 号 p. 9-18
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/04
    ジャーナル フリー
     目的 : 近年, 歯の硬組織切削においてEr : YAGレーザーは特に優れた効果を示し, 臨床応用されている. しかしながら, 高速回転切削器具には切削効率では到底及ばず, 治療時間の延長などが問題となっている. 切削効率を向上させるために先端出力や繰り返し速度を上げる試みがされてきているが, 歯髄への影響などさまざまな問題を抱えている. われわれの研究グループは注水装置に着眼し, 従来の注水機構ではなく霧状に噴霧注水できる装置を利用し, モリタ製作所の協力の下, 注水方式を霧状に改良した試作チップを作製し, 切削効率について検討した.
     材料と方法 : 被験歯として健全ヒト大臼歯を用い, エナメル質および象牙質までモデルトリマーにて面出しを行い, 耐水研磨紙にて#2000まで研磨を行った後, 1mm/sでムービングステージを移動させ, レーザー照射を行った. レーザー照射は試料までの距離を0.5, 1.0mmおよび2.0mmに規定した. C600Fにてレーザー照射を行った群をコントロール群, 試作チップにてレーザー照射を行った群を霧状噴霧群とした. 各試料はレーザーマイクロスコープにて観察を行い, 断面積量を計測した (n=5).
     成績 : エナメル質では距離0.5mmで, 象牙質では距離0.5mmおよび1.0mmで霧状噴霧群はコントロール群よりも有意に高い値を示した (p<0.05).
     結論 : 歯の硬組織切削において, 霧状噴霧がレーザーによる切削効率の向上に有効であることが示唆された.
  • 黄地 智子, 恩田 康平, 初岡 昌憲, 吉川 一志, 山本 一世
    2014 年 57 巻 1 号 p. 19-28
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/04
    ジャーナル フリー
     目的 : ヘッド部が小さく (直径2.1mm), 歯肉壁まで近接させて光照射を行うことができる新規LED光照射器 (以下, MIヘッド) を試作した. これと従来型LED光照射器であるペンキュアがII級窩洞の歯肉壁の接着に与える影響について, 比較, 検討を行った.
     材料と方法 : 抜去ウシ歯に象牙質被着面を形成し, クリアフィルメガボンドを用いて歯面処理を行い, ペンキュアおよびMIヘッドにて照射距離および照射時間を変えて光照射を行った. その後コンポジットレジン (以下, CR) 充填を行い, 24時間・37°C水中保管後, 引張接着強さ (以下, TBS) を測定した. ヒト抜去歯にII級窩洞を形成し, 隔壁後クリアフィルメガボンドを用いて歯面処理を行いペンキュアの場合は咬頭頂から, MIヘッドは窩洞の歯肉壁に近接させて照射条件を変えて光照射を行った. その後CRを充填し, サーマルストレスを負荷した. 各試料を5%塩基性フクシン水溶液に24時間浸漬した後, 光学顕微鏡下で色素浸透状態を観察した. 下顎人工模型の左側第一大臼歯近心にII級窩洞を形成し, 色素浸透試験と同様の照射環境でペンキュアとMIヘッドの光強度を測定した.
     結果 : TBSの測定でMIヘッドは有意に高い値を示したが, 色素浸透試験の結果では色素浸透を防ぐことはできなかった. 光強度はペンキュアのほうが有意に高い値を示した.
     結論 : MIヘッドを使用してII級窩洞のボンディング材に十分な接着力を与えるためには, 照射方法の工夫や光照射の追加が必要であることが示唆された.
  • 松田 有之, 恩田 康平, 谷本 啓彰, 吉川 一志, 山本 一世
    2014 年 57 巻 1 号 p. 29-42
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/04
    ジャーナル フリー
     目的 : Minimal Intervention (MI) の概念に基づき, 齲蝕が深部象牙質にまで進行し歯髄に近接する場合, 歯髄に近接する深部齲蝕象牙質を保存し, 露髄を回避する目的で暫間的間接覆髄法 (IPC) が行われる. 本研究では, 新規Knoop硬さ測定システムであるカリオテスターSUK-971 (三栄エムイー) を用いて象牙質試料の硬さを測定し, 覆髄剤が軟化象牙質へ与える影響を検討した.
     材料と方法 : ヒト抜去大臼歯から直径10mm, 厚さ2mmの象牙質試料を作製し, 象牙質試料の歯髄腔側からアスピレーターで吸引しながら, エナメル質側を20mmol/l乳酸溶液に浸漬して, エナメル質側の硬さが20KNH程度となる脱灰象牙質試料を作製した. 脱灰象牙質試料に, ハイボンドテンポラリーセメントソフト (松風), ネオダイン-α (ネオ製薬), ダイカル (デンツプライ三金), カルシペックスプレーンII (日本歯科薬品), 60%水酸化カルシウム混和物 (キシダ) を貼付し, ベースセメント (松風) で被覆したものを覆髄試料, 覆髄剤を貼付せずベースセメントのみで被覆したものをコントロールとして作製し, 湿度100%容器中または石灰化溶液中で1カ月間および3カ月間保管後, 脱灰象牙質の硬さを測定した. 試料数は各条件につき3試料とし, 得られた値は一元配置分散分析およびTukeyの検定にて統計解析を行った (α=0.05). また, 硬さ測定後, 覆髄剤貼付部のSEM画像の観察を行った.
     結果および考察 : ダイカル, カルシペックスプレーンII, 60%水酸化カルシウム混和物を貼付した脱灰象牙質試料では硬さが向上し, SEM画像でも石灰化物の緻密な沈着が認められた. コントロール, ハイボンドテンポラリーセメントソフト, ネオダイン-αを貼付した脱灰象牙質試料では, 硬さは向上せず, SEM画像でも石灰化物の緻密な沈着は認められなかった. このことから, 水酸化カルシウムを27%以上含有する覆髄剤を脱灰象牙質に応用することで, コラーゲン線維表面に石灰化物の沈着が起こり, 脱灰象牙質が硬化したと考えられる. また, カリオテスターを用いることで, IPC後の象牙質の硬さの継時的変化をチェアーサイドで客観的に評価することが可能になると考えられる.
     結論 : 覆髄剤貼付による脱灰象牙質の再石灰化は, 覆髄材に含有される水酸化カルシウムの含有濃度に影響されることが示唆された.
  • 吉田 康一, 吉田 隆一, 吉田 隆一
    2014 年 57 巻 1 号 p. 43-57
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/04
    ジャーナル フリー
     目的 : メタクリル酸銀は純水には溶解度の低い有機金属化合物であるが, 親水基をもつ有機溶媒に対してこれを溶解した水溶液中の銀イオンは, 塩素イオンとごく微量でも反応し, 水に難溶性の塩化銀として析出し水溶液が白濁する. この原理を応用することで, 溶解液によって水中の塩素イオンの有無やその量を計測することが可能となる. 独自に合成したメタクリル酸銀に有機溶剤を添加することによって, 強電解酸性水中の塩素含有量の測定が可能な外添加用検知液の新規開発を試みた.
     材料と方法 : 検知液の作成にあたっては, 合成物を水溶性とするために5種類の水溶性有機溶剤 : アクリル酸, ホルムアルデヒド, N.N-ジメチルホルムアミド, 乳酸, アセトニトリルを選択し, メタクリル酸銀をそれぞれ0.01, 0.1, 0.5 wt%混合, 溶解した. 次に, 歯科領域で手術野や感染根管の消毒などに応用されている強電解酸性水の原液を, 超純水で0, 2, 4, 8, 16, 32, 64倍の各濃度に希釈した試験液を作成した. さらに, 残留塩素をわずかながら含む水道水や全く含まない超純水中に検知液を微量添加し, 生じた白濁による光の透過性の変化を, 紫外・可視分光光度計にて透過率 : Transmission (%T), 入射光 : 300nmの計測条件で注入から0, 30, 60分後にそれぞれ測定した. 得られた測定値を四元配置分散分析し, 残留塩素濃度測定液として実用上, 最適な溶剤種と濃度の検討ならびに, 検知液種ごとに注入後の最適測定時間を調べた. さらに各種検知液を, 各希釈倍率の強電解酸性水の検知液注入前の残留塩素濃度 (ppm) の数値と, 検知液の添加によって塩化銀が生成し変化した透過率 (%T) との間で, 相関・回帰分析を行い検討した.
     成績 : 使用溶剤種, メタクリル酸銀濃度, 検知液添加 (注入) 後の経過時間, 強電解酸性水の希釈倍率のすべての主効果と交互作用に有意差が認められた. また, 溶剤としてアセトニトリル, N.N-ジメチルホルムアミド, 乳酸を使用した検知液は, 酸性水への添加後の経時的な性状の変化が30分以上では少なく安定しており, 塩素イオンとの反応性もよく希釈倍率に応じた透過率の変化を示していた. 回帰分析を行った結果, メタクリル酸銀濃度0.01 wt%のN.N-ジメチルホルムアミド溶剤 (純度99.5%) を使用した検知液では, 0, 30, 60分の条件で検量線が得られ, 60分ではy=-0.081x+97.031 (r=0.9605**) であった.
     結論 : 今回作成した検知液は, 酸性水への注入後0∼60分で使用できるものもあり, 酸性水へも低濃度のメタクリル酸銀を微量作用させることで大きな混濁をもたらす. そのため, 実用的な歯科用酸性水の高濃度から低濃度までの残留塩素濃度測定液として使用可能なものと考えられ, 実際の歯科臨床での応用が期待できる.
  • 前田 宗宏, 小澤 稔史, 勝海 一郎
    2014 年 57 巻 1 号 p. 58-66
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/04
    ジャーナル フリー
     目的 : ニッケルチタン製の根管口拡大形成器具は, 根管口および根管上部1/3の切削用に設計されている. 本研究の目的は, 2種の回転数における10回の繰り返し根管切削で生じるトルクの変化を比較し, 器具の損耗を検証することにある.
     材料と方法 : ニッケルチタン製テーパー8/100のエンドウェーブ (モリタ, 以下, EW) と真っすぐな根管を有する樹脂製の規格化根管模型を用いた. 模型は, 象牙質と切削感を類似させたものを使用した. コンピュータ制御の根管切削トルク測定装置を使用し, 回転数はそれぞれ300rpmと600rpmに設定した. 器具を根管の8mm内方まで進入させた. 根管への器具の押し込み速度は0.01mm/secに設定し, 各実験条件での発生トルクを記録した. 切削後の刃部をナイロンブラシで清掃し, 5分間の超音波洗浄を行った後, 根管の切削, 刃部の清掃操作を10回繰り返して行った. なお, 各実験条件につき5本の根管模型を用いた. 切削の評価は, トルク-進入距離を基としたトルク変動の算出 (ΔT) により解析を行った. 加えて, 10回繰り返し切削後のEWの形態の変化を観察した.
     成績 : 根管口部の拡大では, 根管内にファイルが進入していくに伴いトルクが発生し, EWのトルク-変位曲線において, 切削回数が増加すると切削トルクが増大することが示された. いずれの回転数でも切削回数の増加によりΔTは増大し, 切削効率は低下した. 刃部断面の観察で, 10回切削終了後の切れ刃には損耗が認められた. この損耗がΔTの増大をもたらしていることが示された.
     結論 : これらの結果から, ニッケルチタン製テーパー8/100のEWを過度に繰り返して使用すると, 切削効率の低下を招くことが示唆された.
  • 吉川 孝子, SADR Alireza, 田上 順次
    2014 年 57 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/04
    ジャーナル フリー
     目的 : コンポジットレジンの接着強さは, 平坦面の象牙質被着体に対して評価されることが多いが, その平坦面被着体のほとんどは咬合面象牙質であり, 象牙質側壁面に対するレジンの接着強さについての報告はほとんど認められない. そこで本研究では, 2種のボンディングシステムを使用したレジンの, 接着強さに及ぼす側壁象牙質の部位の違いの影響について検討した.
     材料と方法 : ヒト大臼歯の咬合面エナメル質を削除した, 象牙質平坦面に3×5×4mmのI級窩洞を形成した後, 窩洞形成後に頬舌側窩壁を取り除いた近心平坦面と遠心平坦面の側壁平坦面試片を1歯から各2試料作製した. これらの側壁平坦面を2種の接着システム, Clearfil Mega Bond (クラレノリタケデンタル), Clearfil tri-S Bond (クラレノリタケデンタル) を用い製造者指示に従い処理した後, 処理面にZ100 (3M ESPE) のハイブリッドコンポジットレジンを縦7mm, 横3mm, 高さ2mmに築盛した. 実験用ハロゲンランプ電圧可変光照射器 (ジーシー) を用い, 出力600mW/cm2で40秒間光照射を行いレジンを重合硬化させた. 37°C暗所水中に24時間保管後, レジン-象牙質界面に垂直に, 界面の面積約1mm2の試片を切り出し, 残存歯質厚さ (RTT) を測定した. これら試片の両端を試験装置にシアノアクリレートで接着させ, 万能試験機 (EZ test, 島津製作所) に装着して, クロスヘッドスピード1mm/minで微小引張り接着強さ (μTBS, MPa) を測定した. 測定値 (n=6) は, Bonferroni testを用いて統計処理を行った. 接着強さはRTTにより, RTT<2mm, RTT≧2mmの2群に分けた. 試料は各群につき6試料作製した. 得られた測定値は, Bonferroni testを用いて統計処理を行った.
     成績 : Clearfil Mega Bondは, RTTが2mm未満, 2mm以上のどちらにおいても接着強さに有意差は認められなかった (p>0.05). 一方, Clearfil tri-S Bondは, RTT 2mm以上のほうがRTT 2mm未満より接着強さが有意に高くなった (p<0.05).
     結論 : ツーステップセルフエッチングシステムのClearfil Mega Bondの接着強さは, 残存歯質厚さの影響を受けなかったが, ワンステップセルフエッチングシステムのClearfil tri-S Bondは残存歯質厚さの影響を受けることが判明した.
  • 田沼 哲也, 小竹 宏朋, 日下部 修介, 堀田 正人
    2014 年 57 巻 1 号 p. 73-82
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/04
    ジャーナル フリー
     目的 : 象牙質に対する良好な接着を得るためには, エッチングによりスミヤー層を除去し, プライミングとボンディングにより脱灰象牙質にレジンが浸透し, 重合硬化することが必要であると広く認識されている. しかし, これらの処理は時間を要し, 複雑でテクニックセンシティブであるため, 簡単な臨床操作のコンポジットレジン修復システムが強く望まれている. 歯面接着処理が全く不要である自己接着型コンポジットレジンは究極の性能であり, 特に高齢者や小児歯科には有用で, コンポジットレジン修復の新しいアプローチであることは明らかである.
     そこで, まず裏層材料として臨床応用が可能ではないかと考え, 既存のフロアブルコンポジットレジンやワンステップボンディング材を利用して流動性の高い自己接着フロアブルコンポジットレジンを試作し, ヒト象牙質に対する接着性の評価を行った.
     材料と方法 : 研削象牙質とスミヤー層除去象牙質に対する試作自己接着フロアブルコンポジットレジン (以下, 自己接着レジン) の接着強さを測定した. さらにこの試作レジンを微振動させて充填し, 象牙質に接着させたものについても測定に供した. 37°C, 24時間, 蒸留水中に浸漬後, 引張り接着強さを測定し, 各試作グループの平均値を求め評価した.
     成績 : その結果, ビューティフィルフローF02 (90, 80 wt%) とビューティボンド (10, 20 wt%) を用いた試作自己接着レジンの接着強さの平均値は, 2MPa以下と非常に低いものであった. 一方, 溶媒成分を除去したボンドフォースにフィラーを50 wt%混入して作製した自己接着レジンの接着強さの平均値は5.26MPaを示し, 現在アメリカで市販されているFusio Liquid Dentinの5.62MPaと同程度であった. さらに, 試作した自己接着レジンが水分に触れたときのpHは3.0以下であった. また, 被着面のスミヤー層を除去した後の各種試作自己接着レジンの接着強さは増加傾向を示し, 特にボンドフォースを使用した自己接着レジンの接着強さの平均値は6.49MPaを示した. さらに, 溶媒成分を除去したクリアフィルトライエスボンドを使用した自己接着レジンを接着させるときに, 微振動を与えた場合の接着強さの平均値は6.55MPaを示した.
     結論 : 以上のことから, 市販の2種類のワンステップボンディング材より作製した試作自己接着フロアブルコンポジットレジンの接着強さは十分臨床応用できることが示唆された.
  • 山田 正, 柵木 寿男, 奈良 陽一郎
    2014 年 57 巻 1 号 p. 83-90
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/04
    ジャーナル フリー
     目的 : 審美的な歯冠修復は, 患者が願う治療成果のなかでもとりわけ強いニーズとして挙げることができ, その対象は限局した症例から広範な症例まで多種多様になっている. 本研究の目的は, 機能咬頭を被覆するアンレー修復に焦点を絞り, 動的荷重がハイブリッドセラミックアンレー修復の微少漏洩に及ぼす影響について検討することである.
     材料と方法 : ヒト抜去健全下顎大臼歯に規格化MODB窩洞を形成した. その後, 象牙質レジンコーティング, 印象採得, 作業用模型作製後, Estenia C & B (Kuraray Noritake Dental) を用いてハイブリッドセラミックスアンレーを作製した. 合着操作は, 窩洞内の象牙質レジンコーティング部にはClearfil Ceramic Primer (Kuraray Noritake Dental) を, エナメル質切削面にはED PrimerII (Kuraray Noritake Dental) を用いて, 一方, 修復物内面にはサンドブラスト, 酸処理後にClearfil Ceramic Primer処理を行い, Clearfil Esthetic Cement (Kuraray Noritake Dental) を用いて合着させた. その後, 修復試料を動的荷重負荷群 (以後, (+) 群) と非負荷群 (以後, (−) 群) とに区分し, (+) 群に対しては複合機能試験機を用いて37°C水中における16.0kgf×300,000回 (90回/分) の繰り返し動的荷重を負荷した. 次いで, 全試料を1%メチレンブルー水溶液中に1時間浸漬後, 歯軸 (植立軸) と平行かつ舌側壁窩縁に直交する面によって縦切断し, 中心窩直下の接着面を有する厚さ1.05mmの板状試片を切り出した後の, 近・遠心部2試料の舌側壁 (以後, L壁) と頬側歯肉側壁 (以後, G壁) の色素浸透状態を200倍の実体顕微鏡を用いて判定し, より色素浸透している試料を代表値とした. 得られた結果は, Mann-WhitneyのU検定とWilcoxonの符号付順位検定による分析を行った.
     成績 : 分析の結果, 動的荷重の有無は, G壁漏洩に対しては有意な影響を与えないものの, L壁漏洩に対しては有意な影響を与え, さらにその漏洩は動的荷重 (+) 群が (−) 群より危険率1%で有意に大きいことが判明した. また (+) 群においてはL壁漏洩がG壁漏洩より危険率5%で有意に大きいものの, (−) 群においては両窩壁の漏洩に有意差は認められないことが判明した.
     結論 : 動的荷重の有無はL壁漏洩の発現に大きな影響を与えるものの, G壁漏洩には影響を与えない. また, L壁とG壁との違いによる漏洩の差異は動的荷重が負荷された場合のみ認められ, 負荷されない場合には認められない.
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