日本歯科保存学雑誌
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57 巻 , 4 号
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原著
  • 仲西 宏介, 鈴木 奈央, 米田 雅裕, 山田 潤一, 廣藤 卓雄
    2014 年 57 巻 4 号 p. 293-300
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
     目的: 口臭の主成分である揮発性硫黄化合物は, 口腔内に棲息する嫌気性菌が歯垢や舌苔などに含まれる含硫アミノ酸を分解することによって発生する. 本研究では, 口臭除去を効能・効果とする口腔咽喉薬に注目し, それらの摂取が口臭および口腔内環境に与える影響について, 臨床的に客観評価することを目的とした.
     材料と方法: セチルピリジニウム塩化物水和物 (CPC), グリチルリチン酸二カリウム, キキョウエキスの3種の有効成分を配合したトローチ剤 (ローズウィンド, シオノギ製薬), CPCのみを配合したトローチ剤 (プロテクトドロップ, 常盤薬品工業), 有効成分を配合しない清涼菓子 (フリスク, クラシエホールディングス), 水による洗口について比較検討した. インフォームドコンセントが得られた大学生ボランティア82名 (男58名, 女24名, 平均年齢25.2±2.2歳) に対し, 非盲検ランダム化比較試験を実施した. 被験者を無作為にローズウィンド, プロテクトドロップ, フリスク, 水による洗口のいずれかに割り当て, 摂取あるいは洗口前後に, 口臭レベル, 刺激唾液量, 唾液pH, 唾液緩衝能, 舌の保湿度を測定した. 口臭測定前にメチオニン水溶液で洗口し, 誘発した揮発性硫黄化合物の濃度が1.9 log ppb (80 ppb) 以上の場合を解析対象とした.
     結果: 解析対象者の条件を満たした被験者は57名 (ローズウィンド群15名, プロテクトドロップ群14名, フリスク群14名, 水洗口群14名) であった. トローチ剤および清涼菓子はいずれも優れた口臭抑制効果を示し, 摂取前後に統計学的有意差がみられた. 特にトローチ剤では, 口臭がないとみなすレベルまで改善が認められた. 唾液検査の結果は, ローズウィンドで唾液pHが, プロテクトドロップで唾液緩衝能が, フリスクで刺激唾液量が, 摂取により有意に増加した. 舌の保湿度については, 統計学的有意差はなかったが, ローズウィンドのみ摂取後に増加した.
     結論: 今回検討したトローチ剤は, 優れた口臭抑制効果を示した. また, トローチ剤および清涼菓子の摂取は, 口腔の機能を活性化することが示唆された.
  • 渡辺 茂文, 堀田 康明, 日下部 修介, 小竹 宏朋, 堀田 正人
    2014 年 57 巻 4 号 p. 301-312
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
     目的: 象牙細管内容物が象牙細管の封鎖性に及ぼす影響は不明であり, 詳細な検討が必要である. そこで, 象牙質知覚過敏抑制剤を抜去直後の細管内容物をそのままにした象牙細管開口部に塗布し, その封鎖性を形態学的に検討した.
     材料と方法: 4種類の象牙質知覚過敏抑制剤 (MS Coat F, GLUMA Desensitizer, SHIELD FORCE PLUS, FL-BOND Ⅱ) を用いた. 抜去歯は朝日大学附属病院にて抜去された第三大臼歯を用いた. ①接触角と表面張力の測定: #1,600耐水研磨紙で研磨した平坦な象牙質を作製し, 37℃, 24時間, 真空中で乾燥したものと蒸留水中に浸漬したものに知覚過敏抑制剤を1μl滴下し, 経時的に60秒後まで接触角を測定した. 表面張力は懸滴法で, 知覚過敏抑制剤1μlの液滴が垂れ下がった状態から60秒後まで経時的に測定した. ②象牙細管の走査電子顕微鏡 (SEM) 観察と元素分析: 抜去直後の第三大臼歯の歯頸部を割断し, 象牙細管開口部を作製した. 抜去後30分以内に知覚過敏抑制剤を塗布した試料 (抜去直後試料) および人工唾液に4週間浸漬後の試料 (4週後試料) をグルタールアルデヒドで固定し, 象牙細管の封鎖性を形態学的に観察した. また, エネルギー分散型X線アナライザーでCa/Pモル比を求めた. 得られた値はすべて有意差検定 (ANOVA, Fisher’s PLSD test, p<0.05) を行った.
     結果: ①接触角と表面張力: 各知覚過敏抑制剤により接触角の値は有意に異なっていた. また, 真空中乾燥の象牙質と蒸留水中浸漬の象牙質との間に有意差を認め, 蒸留水浸漬のものが大きい接触角の値を示した. また, GLUMA Desensitizer, SHIELD FORCE PLUSは小さい値であった. 表面張力の値も各知覚過敏抑制剤によって有意に異なっていた. SHIELD FORCE PLUS, FL-BOND Ⅱは小さかった. ②象牙細管のSEM所見とCa/Pモル比: GLUMA Desensitizerは抜去直後試料での細管が開口されたままで, 細管内に有機質のようなものが観察されたが, 4週後試料では観察されなかった. MS Coat Fは抜去直後試料で細管内に微粒子や結晶が観察されたが, 4週後試料では観察されなかった. SHIELD FORCE PLUS, FL-BOND Ⅱは抜去直後, 4週後試料とも細管内に約20μm程度の長さのレジンタグ様のものが観察され, 細管は封鎖されていた. しかし, FL-BOND Ⅱは含有するフィラーが細管より大きいため, レジンの細管侵入を阻害していたものがあった. 4週後試料の細管開口付近のCa/P比から判断して, すべての知覚過敏抑制剤とも顕著なCaの沈着は起きていなかった.
     結論: 今回使用した象牙質知覚過敏抑制剤は湿潤象牙質にはぬれ性が悪く, 生活歯の象牙細管への侵入は歯髄内圧を考えるとかなり難しいと考えられた. しかし, SHIELD FORCE PLUSは抜去直後, 4週後試料とも細管内に約20μm程度の長さのレジンタグを形成し, 象牙細管は封鎖されていた.
  • 鶴田 あゆみ, 成橋 昌剛, 掘江 卓, 松井 治, 冨士谷 盛興, 千田 彰
    2014 年 57 巻 4 号 p. 313-324
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
     目的: 痛みを生じない程度の低出力でEr: YAGレーザー照射した象牙質面には, 構造欠陥や熱変性層が形成されレジンの接着性は低下するが, レジン添加型グラスアイオノマーセメント (RMGI) の接着性は照射出力にかかわらず安定しており, レジンボンディング材のような低下はないという報告がある. 本研究は, Er: YAGレーザー照射象牙質に対し良好な接着性を示すレジン接着システムの開発を目的に, 各種条件で照射した象牙質面に対するRMGIの接着性について, レジンボンディング材と比較検討した.
     材料と方法: 新鮮抜去ウシ前歯唇側根面部に調製した象牙質平坦面に, Er: YAGレーザーにより低出力照射 (50 mJ/1 pps), 中出力照射 (150 mJ/1 pps) およびフィニッシング照射 (50 mJ/1 pps照射後150 mJ/1 ppsで仕上げ照射) した. 次いで, これら照射面ならびに非照射面を, G-Bond Plus (G群), Self-Conditioner/Fuji Lining Bond LC (FLB群), およびSelf-Conditioner/Fuji Lining LC (FL群) で処理した後Clearfil AP-Xを塡塞し, 微小引張接着強さを検討した (Dunnetの多重比較検定, FisherのPLSD法, p=0.05). また, 接着試験後の破壊形態 (実体顕微鏡), および接合界面の様相 (SEM) も検討した.
     結果: G群では, いずれの照射条件でも非照射の場合より有意に低い接着強さを示した. FLB群およびFL群では, 低出力照射の接着強さはいずれも非照射の場合より低かったが, 中出力ならびにフィニッシング照射の接着強さは非照射とほぼ同等であった. また, G群では界面破壊あるいはレジンボンディング材と象牙質の混合破壊がほとんどで, 変性層からレジンボンディング材にわたる亀裂が多くの試料で観察されたが, FLB群とFL群ではいずれもRMGIと象牙質の混合破壊あるいはRMGI内凝集破壊であり, 照射面との接合状態はほぼ良好でRMGI内に亀裂が特徴的に観察された.
     結論: Er: YAGレーザー照射した象牙質において, RMGIは接着界面における歪みの集中が緩和され安定した接着性を示すことが明らかとなり, レーザー照射象牙質に対するレジン接着システムとしてRMGIを用いることの有用性が判明した.
  • —表面自由エネルギーからの検討—
    大塚 詠一朗, 辻本 暁正, 土屋 賢司, 植田 宏章, 金澤 智恵, 平井 一孝, 瀧本 正行, 川本 諒, 髙見澤 俊樹, ...
    2014 年 57 巻 4 号 p. 325-332
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
     目的: グラスアイオノマーセメント (以後, GIC) への表面処理がコンポジットレジンとの接着強さに及ぼす影響について, 剪断接着強さを測定するとともに表面自由エネルギーを測定することによって, 界面科学的な検討を加えた.
     材料と方法: 実験に供試したセメントは, 従来型GICとしてFuji Ⅸ GP (ジーシー), レジン添加型GICとしてFuji Ⅱ LC EM (ジーシー) およびFuji Fill LC Flow (ジーシー) の合計3製品を使用した. 常温重合型レジンに形成した規格窩洞に, 製造者指示条件に従って練和したセメントを塡塞, 透明ストリップスを介して硬化させ被着面とした. なお, レジン添加型GICについては, 圧接後に製造者指示時間照射することによって硬化させた. 表面処理として, 被着面を35%リン酸水溶液で10秒間処理したもの, および10秒間サンドブラスト処理したものの2条件とし, 被着面に対し処理を施さないものをControlとした. それら処理面に対し, G-Bond Plusを塗布後コンポジットレジンを【E5A1A1】塞して接着試験用試片を製作した. これら試片を37℃精製水中に24時間保管後, 万能試験機 (Type 5500R, Instron) を用いてクロスヘッドスピード毎分1.0mmの条件で剪断接着強さの測定を行うとともに, 同様に処理を施した被着面に対して表面自由エネルギーの測定を行った. また, 処理面についてSEM観察を行った.
     成績: 従来型GICの接着強さは, Controlと比較して表面処理により向上したがレジン添加型ではControlと比較して, 表面処理によって接着強さは低下する傾向を示した. 従来型GICの表面自由エネルギーはControlと比較して, 表面処理によって向上する傾向にあるものの, レジン添加型においてはControlと比較して表面処理によって有意に低下する傾向を示した.
     結論: 本実験の結果から, グラスアイオノマーセメントに対する表面処理は使用するセメントの種類に留意して, その表面処理法を選択する必要性があることが示唆された.
  • 山口 博康, 矢作 保澄, 浅野 倉栄, 横田 兼欣, 常川 勝由
    2014 年 57 巻 4 号 p. 333-342
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
     目的: 新しい象牙質知覚過敏 (Dentin Hypersensitivity: Hys) 抑制材「ナノシール」はブラシで歯面を擦る操作が必要なく, 塗布するだけで歯面にナノ粒子の層を形成し, 象牙細管を封鎖してHys抑制効果を発現する新材料である. 今回, われわれは歯頸部および露出根面のHysに対してナノシール適用による疼痛抑制効果を明らかにすべく, 臨床使用を想定した象牙細管封鎖性試験および臨床評価を実施した.
     対象と方法: 象牙細管封鎖性試験には牛歯を用い, 血液や唾液の付着による汚染, 濡れた歯面への塗布, 十分な塗布時間がかけられないケースなど, 臨床的に想定される不利な条件においてナノシールを適用し, 象牙細管封鎖性をFE-SEMにて確認した.
     臨床評価については, Hysと診断された101症例を対象とし, 歯頸部および露出根面の象牙質にナノシールを塗布, 水洗し, 術前後の疼痛について評価を行った. 診査は処置1週間後に行い, 冷気刺激・擦過刺激による疼痛および患者による飲食やブラッシング時など生活のなかでの誘発痛について, 一元的評価法の痛みの強さの評価としてVisual Analogue Scale (VAS), 多元的評価法の痛みの強さの評価として, 簡易型McGill痛みの質問表中の6段階に分類したPresent Pain Intensity (PPI) を用いて評価した. 有効性については, VAS値の変化とPPIの変化を加味して総合判定した.
     結果:
     A. 象牙細管封鎖性試験
     血液や唾液の付着による汚染, 濡れた歯面 (2~4倍希釈), 塗布時間が十分でない場合 (3~8秒間), いずれの想定条件においても, 塗布後の象牙質表面はナノシールの生成物と思われる凝集物で完全に被覆されており, 同時に象牙細管も封鎖されていることが確認された.
     B. 臨床評価: 1. VAS値の変化; VASの平均値は術前の32.7±22.4から8.5±9.7に低下し, 術前後で疼痛症状が有意に改善された (paired t-test: p<0.01). 2. PPIの変化; PPIの平均スコアは術前の1.7±1.0から0.5±0.5に低下し, 術前後で疼痛症状が有意に改善された (paired t-test: p<0.01). 3. 有効性の総合評価; 101症例中, 87症例 (86.1%) でナノシールのHys抑制効果が認められ, 51症例 (50.5%) で症状が完全に消失した. 4. 安全性, 利便性; 全症例にわたって患歯, 周囲歯肉および口腔粘膜への為害作用はなく, 全身的副作用も認められなかった. 操作性は良好であり, 血液・唾液による汚染の影響を受けにくく, 隣接面や歯肉溝内にも使用できることが示された.
     結論: 本研究結果よりナノシールはHys抑制効果, 安全性, 利便性が示され日常臨床において有用であることが示唆された.
  • —物理的特性および根尖封鎖性について—
    鈴木 二郎, 岡田 周策, 横田 兼欣, 石井 信之
    2014 年 57 巻 4 号 p. 343-351
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
     目的: 現在, 根管充塡用シーラーとして酸化亜鉛ユージノール (ZOE) 系が頻用され, 良好な臨床成績を収めており, 実用的硬化直後にファイバーポストを用いた支台築造を行った場合でもユージノールによる保持力への影響は低く, 臨床使用上の問題は少ないことが報告されている. その一方, レジン材料重合阻害などへの懸念から, ユージノールを含まないシーラーも使用されている. この非ユージノール系の根管充塡用シーラーとしては, 粉液タイプの酸化亜鉛非ユージノール (非ZOE) 系シーラーが頻用されているが, 粉液製材特有の問題 (採取比・操作性など) がある. そこで今回, 非ZOE系ペーストタイプシーラー (CS-N) を開発し, 対照として市販の非ZOE系シーラー (キャナルスN, 昭和薬品化工) を供試し比較検討を行った.
     材料および方法: ISO 6876: 2012に準じたちょう度・操作時間・硬化時間・被膜厚さ・崩壊率・X線造影性の各種物理的特性試験, 臨床的硬化時間測定, 根尖封鎖性試験および使用感に関する術者アンケート調査 (採取しやすさ, 練和しやすさ, ちょう度) を行った.
     結果: ISO規格物理的特性試験において, CS-Nのちょう度・操作時間・硬化時間・被膜厚さ・崩壊率・X線造影性は, すべて根管充塡用シーラーとして適正値であり, 臨床的硬化時間は12分であった. 色素浸透による根尖封鎖性に統計学的有意差は認められず, 使用感に関するアンケートでは, ペーストタイプの簡便な操作性が総合的に評価され高い支持を得た.
     結論: 新しいペーストタイプの非ZOE系シーラー (CS-N) は, キャナルスNと同等の各種物理的特性および根尖封鎖性を有していた. また, 臨床的硬化時間が12分であることから, 歯冠側漏洩予防にも有用と考えられ, ペースト化による簡便な操作性に高い評価が得られた.
  • —シングルファイルシステム根管形成時の象牙質亀裂解析—
    青栁 佳伸, 武藤 徳子, 石井 信之
    2014 年 57 巻 4 号 p. 352-357
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
     目的: 本研究はNi-Tiロータリーファイルによる根管形成で発生するマイクロクラックについて, 往復運動切削によるシングルファイル (WaveOne, Reciproc) と回転切削するマルチファイル (ProTaper) を比較検討することを目的とした.
     材料と方法: 本研究は2根管2根尖孔形態の上顎小臼歯を選択し使用した. 実験は4群 (未形成群, ProTaper群, WaveOne群, Reciproc群) に分類し, 各群10歯20根管を供試した. 歯根破折の観察は根尖孔から1, 3, 5mmを水平切断し横断面を顕微鏡で観察した. 観察された歯根破折は統計処理を行い, 危険率5%で有意差検定を行った.
     結果: 未形成根管は歯根破折の発生は認められなかった. Ni-Tiロータリーファイルはシングルファイル (WaveOne, Reciproc) 群, およびマルチファイル (ProTaper) 群による発生頻度に有意差は認められなかった. しかしながら, 破折線の総数は根尖側3mmと5mmの位置が根尖側1mmの位置よりも増加していた.
     結論: 本研究において, Ni-Tiロータリーファイルによる根管形成時の歯根破折は, 往復運動による切削および回転切削のファイルシステムによる有意差は認められなかったが, いずれのシステムにおいても根尖から1~5mmに歯根破折が認められた.
  • 尾関 伸明, 山口 秀幸, 檜山 太希, 長谷 奈央子, 川合 里絵, 茂木 眞希雄, 中田 和彦
    2014 年 57 巻 4 号 p. 358-368
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
     目的: これまでにわれわれは, マトリックスメタロプロテアーゼ (Matrix metalloproteinase: MMP) -3がラットの歯髄創傷治癒に関与すること, さらに, 純化したマウス胚性幹細胞 (ES細胞: Embryonic stem cell) 由来象牙芽細胞において, 炎症性サイトカイン誘導MMP-3が象牙芽細胞の増殖を制御することを報告した. 本研究では, われわれが新たに確立したマウス人工多能性幹細胞 (iPS細胞: Induced pluripotent stem cell) 由来の純化象牙芽細胞を用いて, 炎症性サイトカインミクスチャー (CM: IL-1β, TNF-αおよびIFN-γ) 誘導MMP-3の新規な生理的役割を検討した.
     材料と方法: セルソーターを用いてα2 integrin陽性マウスiPS細胞由来象牙芽細胞を98%以上高純度化し, CMを添加し, RT-PCR法とウエスタンブロット法によりMMP-3 mRNAならびにタンパク質発現を評価した. MMP-3 siRNAを用いたMMP-3遺伝子のノックダウンにより, CMによる細胞増殖とアポトーシス細胞死の評価ならびにレスキュー実験を行った.
     結果: 低濃度CM添加群 (1, 3U) において, MMP-3遺伝子, タンパク質発現, 酵素活性ならびに細胞増殖の亢進が統計的有意 (p<0.05) に認められた. さらに, 低濃度CM添加群はMMP-3 siRNA処理により, 細胞増殖の抑制とアポトーシス細胞死が惹起され (p<0.05), リコンビナントMMP-3の添加でアポトーシス細胞死はレスキューされた.
     結論: CMは比較的低濃度ではマウスiPS細胞由来象牙芽細胞の増殖およびMMP-3の発現の亢進が観察された一方で, 高濃度CM添加群 (5U) では細胞増殖の低下とアポトーシス細胞死が惹起された. したがって, これまで組織破壊に関与すると考えられてきたMMP-3が, 歯髄の炎症時における象牙芽細胞の増殖と抗アポトーシス作用を制御することで, 歯髄創傷治癒に関与する可能性が示唆された.
  • 織田 洋武, 丸山 昂介, 坪川 瑞樹, 塩田 剛太郎, 鴨井 久博, 長弘 謙樹, 佐藤 聡
    2014 年 57 巻 4 号 p. 369-376
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
     目的: 医療分野で殺菌材として使用されているオゾンは, 発生したOHラジカルの酸化還元反応により殺菌作用が起こるため, 耐性菌が発生しにくいと考えられている. そして, オゾン含有の溶液であるオゾン水やオゾンジェルは, 医療分野の消毒や食品分野の消毒などさまざまな分野で幅広く応用されている. 本研究ではオゾンジェルの口腔内病原細菌に対する殺菌効果, ならびに歯周組織細胞への影響をin vitroにて検証した.
     材料と方法: 殺菌試験はStreptococcus mutans (ATCC25175), Streptococcus sanguinis (ATCC49296), Aggregatibacter actinomycetemcomitans (ATCC29522), Porphyromonas gingivalis (W83, ATCC33277) の5菌種を使用した. 各細菌を洗浄後, オゾンジェル (125, 250, 500ppm) にて1分間処理した. その後段階希釈を行い, 寒天培地に塗抹後S. mutans, S. sanguinis, A. actinomycetemcomitansは48時間, P. gingivalisは72時間培養を行った. 評価はColony Forming Units (CFU) にて行った. 細胞毒性試験は, ヒト歯肉線維芽細胞とヒト歯根膜線維芽細胞を用いた. 細胞を培養後, 滅菌蒸留水で希釈したオゾンジェル (0, 50, 100, 200, 500, 1,000ppm) を1, 5分間それぞれ作用させた. その後, 8日間の細胞増殖の変化を測定した. そして, オゾンジェルを0~4,000ppmに調整した培養液中にて, ヒト歯肉線維芽細胞とヒト歯根膜線維芽細胞の細胞生存率を測定した.
     結果と考察: 125ppm以上のオゾンジェルはP. gingivalisA. actinomycetemcomitansの増殖を有意に抑制した. 500ppmのオゾンジェルはS. sanguinisの増殖を有意に抑制した. しかし, S. mutansの増殖は500ppmのオゾンジェルにおいても抑制されなかった. 細胞毒性試験においては, ヒト歯肉線維芽細胞とヒト歯根膜線維芽細胞ともに10ppm以上で有意な細胞生存率の低下が認められた. 細胞増殖試験においては, 濃度と作用時間に依存して増殖の抑制を認めた. そして, 5分間のオゾンジェルの作用によってヒト歯肉線維芽細胞とヒト歯根膜線維芽細胞の増殖は認められなかった. オゾンジェルは歯周病原細菌に強い殺菌能を認めた. そして, 低濃度のオゾンジェルは歯周組織由来の線維芽細胞の増殖を抑制した. これらの結果から, オゾンジェルのう蝕病原細菌と歯周病原細菌に対する有用性が示唆された.
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