目的 : 本研究の目的は, 12~13歳時とその3年後の15~16歳時の2度, 同一対象者に対してう蝕のリスク要因の調査, 比較を試みることである. 特に, リアルタイムPCR法を用いてう蝕原因菌の
Streptococcus mutansと
Streptococcus sobrinusの詳細な細菌数の変化を調査することにより, この時期のう蝕に与える
S. mutansと
S. sobrinus菌数の影響を検討し, 青年期のう蝕予防の手がかりを得ようと試みた.
方法 : 2010年に中学1年生 (12~13歳) で, 2013年に高校1年生 (15~16歳) に進学した合計88名を対象とした. 口腔内検査に先立ち刺激唾液を採取して, リアルタイムPCR法によって唾液中の
S. mutansと
S. sobrinusの菌数を測定した. 事前に手技を統一した歯科医師によって, DMFTが調査された.
結果 : 12~13歳の段階で
S. mutansと
S. sobrinusが非検出 (10
3cells/m
l未満) だった者が32名 (36.4%) で, その内の75%にあたる24名は, 3年後でもこれらの細菌は非検出だった. また, 15~16歳時のみこれらの細菌が検出 (10
3cells/m
l以上) された者は9.1%, 12~13歳時のみに検出された者は5.7%だった. 12~13歳時とその3年後の15~16歳時ともにこれらの細菌が検出された者は, 57.9%だった. 両年ともに検出された者は, その他の者たちに比べてDMFT値が高い傾向にあった.
結論 : 本研究から, 27.3%の者において, 12~13歳時に
S. mutansと
S. sobrinusが定着しておらず, その後3年間非定着のままで経過することが確認された. また両年ともに
S. mutansや
S. sobrinusが検出された者においては, 両菌の定着が強く疑われた.
S. mutansや
S. sobrinusが定着した者たちは, 非定着の者に比べより重度なう蝕が多い傾向にあり, う蝕予防やう蝕を重症化させないためには, 両菌を定着させないことが重要であることが示された. また本研究から, 細菌の定着を確認するには2回以上の細菌検査が必要であり, これが学校健診などの場で実施されることが望ましいことが示唆された.
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