日本歯科保存学雑誌
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58 巻 , 1 号
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原著
  • —歯内療法専門外来初診患者にみる現在の歯科臨床のニーズ—
    和達 礼子, 吉岡 俊彦, 花田 隆周, 原田 直子, 海老原 新, 須田 英明
    2015 年 58 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/02
    ジャーナル フリー
     目的 : 歯科治療の大多数は一般歯科医院にて行われているが, 経過不良症例は高次歯科医療機関で対応することがある. これらの症例を分析することにより, 一般歯科医師ならびに患者が解決に苦慮している問題点が明らかになると推測される. 一方, 近年歯の喪失の原因として歯の破折が増加していることが指摘されているが, わが国での具体的な調査は少ない. 本研究の目的は, 大学病院の歯内療法専門外来の初診患者のうち, 主訴が歯の破折にかかわる症例を調査することにより, 現在の歯科臨床の現状ならびに問題点を明らかにすることである.
     対象と方法 : 対象は, 平成23年6月中の22日間に東京医科歯科大学歯学部附属病院むし歯外来の歯内療法専門外来を受診した初診患者とした. 主訴の患歯について, 受診後に歯科診療録ならびにデンタルX線写真を参照し調査を行った.
     結果 : 歯内療法専門外来における当該月間の初診患者数は計462人であり, 主訴が歯の破折であった者は118人 (25.5%) であった. このうち, 破折線が確認された症例は44人 (37.3%), 破折線は確認されなかったがほかの所見から歯の破折が疑われた症例は74人 (62.7%) であった. 受診経緯は, ①他歯科医院を受診せず患者の意思で直接本院を受診した者が134人 (29.0%), ②他歯科医院からの依頼状を持参し本院を受診した者は111人 (24.0%), ③他歯科医院を受診するも症状が改善せず, 担当歯科医師の了承を得ずに依頼状を持参せず患者の意思で本院に転院した者は76人 (16.5%), ④他歯科医院での診断・治療方針について, 担当歯科医師以外の意見を求める, すなわちいわゆるセカンドオピニオンを希望し本院に転院した者は55人 (11.9%), ⑤本院の他診療科の担当歯科医師からの依頼状を持参し受診した者は86人 (18.6%) であった. 受診経緯①~⑤の各群における破折症例の割合は, ①が20人 (14.9%), ②は25人 (22.5%), ③は26人 (34.2%), ④は25人 (45.5%), ⑤は21人 (24.4%) であった.
     結論 : 本研究により, 歯の破折症例について以下のことが明らかになった. 1. 歯内療法専門外来に対する需要が高い. 2. 一般歯科医師に診断法を普及させる必要がある. 3. 客観的な確定診断法の確立が求められる. 4. 患者に歯の喪失原因になりうるという知識を普及させる必要がある.
  • 大原 直子, 澁谷 和彦, 田中 久美子, 星加 知宏, 遠藤 梓, 西村 麻衣子, 竹内 晶子, 山路 公造, 西谷 佳浩, 𠮷山 昌宏
    2015 年 58 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/02
    ジャーナル フリー
     目的 : 接着性レジンセメントにフッ化ナトリウムを配合することにより, セメントから溶出されるフッ素による歯質強化や修復歯の二次う蝕抑制機能が期待できる. しかしながら, フッ化物の配合およびその溶出はセメントの物性を低下させてしまう懸念がある. 本研究では, フッ化ナトリウムの配合が接着性レジンセメントの曲げ強さや水中浸漬による吸水および溶解に及ぼす影響について検討することを目的とした.
     材料と方法 : フッ化ナトリウムを0~20wt%の割合で配合したセルフアドヒーシブレジンセメントを試作し, 1日目から84日目までのフッ素溶出量を経時的に測定した. 次に, 初期硬化 (37°C水中24時間保管) 後およびサーマルサイクル負荷 (5°C-55°C, 10,000回) 後の3点曲げ強さを測定した. さらに, 30日間水中浸漬後の吸水および溶解量を測定し, フッ化ナトリウム配合率との関連を分析した.
     結果 : フッ素徐放量は, フッ化ナトリウムの配合率の増加とともに増加した. 初期硬化後の5wt%と10wt%フッ化ナトリウム配合セメントの3点曲げ強さは, 配合0wt%のセメントと比較して統計学的に有意な低下を認めなかったが, 15wt%以上の配合で有意に低下した. 15wt%配合セメントの曲げ強さと20wt%の配合セメントの曲げ強さには有意差を認めなかった. サーマルサイクル負荷後の曲げ強さの比較においても同様の結果が得られた. 30日間の吸水量では, 5wt%配合率のセメントは0wt%配合率のセメントとの間に差は認められなかったが, 10wt%と15wt%の配合は0wt%の配合セメントと有意差が生じた. 溶解量は, 0~10wt%のフッ化ナトリウム配合セメント間で有意差を認めなかった.
     結論 : フッ化ナトリウム配合率の増加は, フッ素徐放量を向上させる一方で, 3点曲げ強さの低下と吸水および溶解量を増加させる傾向を示した. 本研究の範囲内で, フッ化ナトリウム配合10wt%の接着性レジンセメントは, 機械的強度を低下させることなくフッ素徐放機能を付加できる可能性が示唆された.
  • 韓 臨麟, 興地 隆史
    2015 年 58 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/02
    ジャーナル フリー
     目的 : Surface pre-reacted glassionomer filler (S-PRGフィラー) は各種イオン徐放能を有する生体機能性材料であり, 同フィラー水中懸濁液の上清 (S-PRGフィラー抽出液) は, リン酸緩衝生理食塩水 (PBS) や人工唾液 (AS) との混和により沈殿生成を示すことが知られている. 本研究は, この性質に着目し, 人工脱灰牛歯の象牙質に対するS-PRGフィラー抽出液の象牙細管封鎖効果の検討を目的とした.
     材料と方法 : S-PRGフィラー抽出液 (固形物非含有, SF0) およびS-PRGフィラー50%含有スラリー材 (SF50) を実験材料として用い, これらをPBSあるいはASと混和後, 上清については高周波誘導結合プラズマ発光分析法, 析出物については波長分散型電子線マイクロアナライザー (EPMA) により元素分析を行った. また, 析出物結晶相をX線回折法 (XRD) で定性解析した. さらに, 牛歯歯根部象牙質試片に10%リン酸処理 (10秒) とヒドロキシアパタイト含有ペーストによる研磨を行って人工知覚過敏症象牙質を作製後, ここにSF0あるいはSF50, 次いでPBSあるいはASを塗布し, 走査電子顕微鏡による形態観察を行った.
     結果 : SF0とPBSとの混合上清では, Na, B, P, F, Sr, Si, Alが, SF0とASとの混合上清からは, これらに加えてCaが検出された. また, 析出物からはS-PRGフィラー抽出液に由来する元素 (Na, Sr, Si, Al, B, F) およびPBSやASに由来する元素 (P, Na, Ca) が検出された. XRDによる分析では, SF0とPBSとの混和後はNaClが, またSF0とASとを混和した場合はNa3H2P3O10・1.5H2Oが同定された. さらに, S-PRGフィラー抽出液 (SF0もしくはSF50), 次いでPBSまたはASで処理された人工知覚過敏症象牙質表層では, 象牙細管開口部や管間象牙質への不溶性析出物の沈着が生じることが確認された. 析出物の形成はSF50とASとの組合せで最も顕著に生じた.
     結論 : S-PRGフィラー抽出液とPBSあるいはASとの二段階処理が, 人工知覚過敏症象牙質に対して象牙細管封鎖能を示すことが確認された.
  • 服部 泰直, 岩田 有弘, 保尾 謙三, 吉川 一志, 山本 一世
    2015 年 58 巻 1 号 p. 26-34
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/02
    ジャーナル フリー
     目的 : ヒトの歯髄内圧と同様の圧を設定し, 象牙細管内の湿潤状態を臨床の状態に近づけた知覚過敏症罹患モデル象牙質を作製し, 光重合型コンポジットレジン充塡を行い, 象牙質知覚過敏症治療における光重合型コンポジットレジン被覆時における接着状態の研究を行った.
     材料と方法 : 被験歯としてヒト大臼歯を使用した. 実験には歯冠部象牙質を用い, モデルトリマーにて面出し後, 歯冠側面を耐水紙#600まで研磨した厚さ1mmの象牙質ディスクを作製した. 研摩後, ヒト歯髄内圧とされている25mmHgの圧を象牙質ディスクにかかるように設定し, 知覚過敏症罹患モデル象牙質とした. ボンディングシステムとして, BeautiBond Multi (以下, BB), G-BOND PLUS (以下, GB), Scotchbond Universal Adhesive (以下, SU) とCLEARFIL S3BOND ND Quick (以下, TB) を使用した. 知覚過敏症罹患モデル象牙質被着面に接着操作を行い, 罹患象牙質修復群とした. また, 厚さ1mmの象牙質ディスクを装置に装着せずに接着操作を行ったものをコントロール群とした. 接着後37°C水中に24時間保管後と6カ月保管後に引張接着試験を行い, それぞれ24hコントロール群, 24h罹患象牙質修復群, 6Mコントロール群および6M罹患象牙質修復群とした. 接着試験は引張強さの測定を行い, 平均値および標準偏差を算出した (n=7).
     成績 : 24時間後の試料では, コントロール群においてTBが, 罹患象牙質修復群ではSUとTBがほかの製品に対し有意に高い接着強さを示した. 6カ月後の試料では, コントロール群では各製品間に有意な差は認められず, 罹患象牙質修復群ではSUがBBに対し有意に高い接着強さを示した. 各製品における24hコントロール群, 24h罹患象牙質修復群, 6Mコントロール群および6M罹患象牙質修復群間の比較では, TBのみで, 24hコントロール群と6Mコントロール群間で有意な差が認められた.
     結論 : 象牙質知覚過敏症を接着性レジンで治療する場合, リン酸エステル系モノマー (MDP) 含有のボンディングシステムの有効性が高い. また象牙細管からの水分の浸潤によって, 接着が経時的に破壊される可能性がある.
  • 中村 弘隆, 鵜飼 孝, 吉永 泰周, 白石 千秋, 吉永 美穂, 吉村 篤利, 原 宜興
    2015 年 58 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/02
    ジャーナル フリー
     目的 : 歯周病原細菌の感染と外傷性咬合は歯周炎の原因である. 炎症が起これば, 歯槽骨の吸収が誘導される. 当教室はこれまでマウス歯周組織へのLPS誘導性骨吸収におけるT細胞の関与について検討しており, T細胞が炎症性骨吸収促進に大きく関与することを報告した. 一方, 外傷性咬合によって誘導された骨吸収におけるT細胞の関与についてはまったく不明である. そこでin vivoにおいてT細胞が外傷性咬合時の破骨細胞形成に関与しているのかを検討するため, 正常ラットならびにT細胞が欠損しているヌードラットに, 外傷性咬合を付与したときの破骨細胞出現を組織学的に比較検討した.
     材料と方法 : 正常ラットに3日あるいは5日間, ヌードラットに3日間外傷性咬合を与えた後の根間中隔を病理組織学的に観察し, 破骨細胞の指標であるTRAP陽性細胞数とCD4陽性細胞数を計測した.
     結果 : 正常ラット, ヌードラットともに咬合性外傷付与後3日で根分岐部の骨吸収が認められたが, 統計学的に破骨細胞数の有意な差異は観察されなかった. また正常ラットに外傷性咬合を5日間付与したときの骨破壊において, CD4陽性T細胞の浸潤は認められなかった.
     結論 : 外傷性咬合による骨吸収初期においては, T細胞の影響は少ないと考えられる.
  • 西田 太郎, 勝海 一郎
    2015 年 58 巻 1 号 p. 42-52
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/02
    ジャーナル フリー
     目的 : 下顎切歯は単根歯であるにもかかわらず, 根管充塡後の予後が劣り, 根管治療の難しい歯種とされている. 試料を非破壊的に観察が可能なマイクロCTが, 内部構造の観察にさまざまな分野で用いられている. 本研究はマイクロCTを用いて, 下顎切歯の根管形態を明らかにすることを目的に行った.
     材料と方法 : ヒト抜去下顎切歯50歯に対しマイクロCTによる断層撮影を行い, 三次元構築した画像から, 根管形態, 根管軸の走行方向, 根管長, 根管湾曲度, 根尖孔開口位置および根尖部の根管形態について分析を行った.
     結果 : 根管は50歯中44歯が単根管で, 5歯が2根管1根尖孔, 1歯が2根管2根尖孔であった. 根管軸は53根管中27根管が切縁に, 25根管が唇側, 1根管が舌側に交差した. 根管長は唇舌方向からの観察では平均19.25mm, 近遠心方向では19.05mmと測定方向により差があった. 根管の唇舌的な湾曲は42歯でみられ10度未満よりも10度以上の強湾曲が多かったが, 近遠心的な湾曲は30歯でみられ10度未満の弱湾曲のほうが多かった. 根尖孔と根尖が一致した歯は8歯で認められた. 根尖孔の開口位置は根尖から唇側に平均0.34mm, 近心に0.03mm偏位していたが, 根尖孔の偏位の分布に相関は認められなかった. 根尖部の根管形態は, 近遠心方向からの観察では単一狭窄型が50歯中12歯, テーパー型12歯, パラレル型13歯, フレア型3歯, 根尖分岐型9歯, 複数狭窄型1歯であったが, 唇舌方向からでは単一狭窄型が5歯, テーパー型7歯, パラレル型37歯, フレア型1歯で, 観察方向により形態が異なっていた.
     結論 : 本研究により, 下顎切歯の根管分岐や湾曲による根管形態の複雑さ, また根管軸の唇側偏位による髄室開拡の行いにくさが, 根管治療の難度を高める要因であることを明らかにした.
  • 荒牧 音, 高橋 礼奈, 和田 敬広, 宇尾 基弘, 田上 順次
    2015 年 58 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/02
    ジャーナル フリー
     目的 : ダイレクトクラウンは, 近年3M ESPEより開発されたコンポジットレジンクラウン材料である. 未硬化な状態においても歯冠の形態を保持でき, 製作から装着までの過程を1回のアポイントで完了できる利点をもつ. しかし, 重合直後のコンポジットレジンとレジンセメントの接着性能に関する詳細な検討はなされていない. そこで本研究では, ダイレクトクラウンによる補綴物作製後の経過時間がレジンセメント接着性能に与える影響について, ほかの材料と比較検討を行った.
     材料と方法 : ダイレクトクラウンとリライエックスユニセム2オートミックス (3M ESPE), クリアフィルエステニアC & B (以下, エステニアC & B) とパナビアF 2.0 (クラレノリタケデンタル) の2種類のコンポジットレジンとレジンセメントを組み合わせて使用し, ダイレクトクラウンおよびエステニアのディスクを作製した. ディスクを作製直後にレジンセメントにて接着する群 (0h-ダイレクトクラウン群, 0h-エステニアC & B群) と48時間後に接着する群 (48h-ダイレクトクラウン群, 48h-エステニアC & B群) に分け, 微小引張り試験を行い, 試験後の破断面形態を走査電子顕微鏡下にて観察した. またダイレクトクラウンでは全反射型フーリエ赤外吸収分光法 (以下, ATR-FTIR) を用い, ディスク作製直後と24時間後について重合に関する検討を行った.
     成績 : 0h-ダイレクトクラウン群 (76.6±13.4MPa) は, 0h-エステニアC & B群 (60.9±14.8MPa), 48h-ダイレクトクラウン群 (45.8±9.7MPa), 48h-エステニアC & B群 (53.7±12.5MPa) と比べて有意に高い接着強さを示した. また微小引張り試験後の破断面観察では, 0h-ダイレクトクラウン群では混合破壊が多くみられ, コンポジットレジンとレジンセメント間の界面破壊は全くみられなかった. ほかの3群では, コンポジットレジンとレジンセメント間の界面破壊と混合破壊が主にみられた. ATR-FTIR分析より, 作製直後のダイレクトクラウンは24時間後のダイレクトクラウンと比べ, 表層の重合度が低いことが示唆された.
     結論 : 作製直後のダイレクトクラウンは, 作製48時間後のダイレクトクラウン, 作製直後のエステニアC & B, 作製48時間後のエステニアC & Bと比較して, レジンセメントに対して高い接着強さを示した.
  • 第1報 : 上顎大臼歯の窩洞形成をミラーで見ながら行う従来法との比較
    藤江 英宏, 林 応璣, 齋藤 渉, 英 將生, 藤江 進, 桃井 保子
    2015 年 58 巻 1 号 p. 60-70
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/02
    ジャーナル フリー
     目的 : 私たちは口腔内カメラで術野を撮影し, その映像を見ながら治療する手法を考案し, 日々の臨床に役立ててきた. この研究の目的は上顎大臼歯を窩洞形成する際, 口腔内カメラで人工歯を撮影してその映像を見ながら行う方法とミラーで見ながら行う方法とを比較して, どちらが正確かを調べることである.
     材料と方法 : 対象者を鶴見大学歯学部保存修復学の授業および実習を終了した4年生24人とした. 彼らはミラーで見ながら上顎大臼歯の窩洞形成をする実習を3時間30分受け, 口腔内カメラ (Satellite Scope DP-6 ver. 2, アールエフ) を左手に持って上顎大臼歯を撮影し, その映像を見ながら右手で窩洞形成する実習を2時間30分受けた. なお, 口腔内カメラを用いる際, モニター上のタービンハンドピースの動きの方向と実際の動きの方向を一致させるため, 口腔内カメラの元の映像を180度回転し, さらに左右反転させた映像が用いられた. 実験では上顎左側第一大臼歯のメラミン歯 (A2AN-95, ニッシン) をマネキンにセットし, 12時の位置で窩洞形成を行った. この人工歯の咬合面は平坦で, その中央に十字型のラインが印刷されている. 対象者は十字型のラインの内側を過不足なく, 窩底が平坦になるようにインレー形成用ダイヤモンドポイント (301, 松風) で削るように指示された. 1本目の人工歯はミラーで見ながら, 2本目の人工歯は口腔内カメラの映像を見ながら窩洞形成した. 評価方法は窩洞外形と窩洞の深さの均一性について2人のインストラクターが肉眼で優劣を判断し, χ2検定を行った. また窩洞形成時間も測定し, ウィルコクソンの符号付順位和検定を行った.
     結果 : 窩洞外形の正確性について, 24人の対象者のうち21人は口腔内カメラを用いた窩洞形成のほうがミラーを用いたものよりも優れていた. 窩洞の深さの均一性については, 2人のインストラクターの評価が一致した23人のうち, 19人は口腔内カメラを用いた窩洞形成のほうが優れていた. χ2検定の結果, 窩洞外形と窩洞の深さの両方の評価方法において, 口腔内カメラを用いる方法は, ミラーを用いる方法より有意に優れていた. 窩洞形成の時間については, ミラーを用いた場合158秒 (±79秒), 口腔内カメラを用いた場合150秒 (±52秒) で有意差はなかった.
     結論 : 口腔内カメラの映像を見ながら行う上顎左側第一大臼歯の窩洞形成は, ミラーで見ながら行う従来の窩洞形成と比較して, 有意に正確であることが示された.
症例報告
  • 山田 雅司, 宮吉 教仁, 関谷 紗世, 村松 敬, 古澤 成博
    2015 年 58 巻 1 号 p. 71-80
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/02
    ジャーナル フリー
     目的 : ビスホスホネート (BP) 製剤静脈内投与患者において, 隣在歯の根尖性歯周炎により生じたと診断されたインプラント体周囲への骨欠損に対して, 非外科的歯内治療によって治癒を導くことができた症例について報告する.
     症例の概要 : 患者は51歳女性. 上顎左側前歯部の自発痛と歯肉腫脹を主訴とし, 21, 23歯と22部インプラントの保存治療を希望して来院された. 多発性骨髄腫の転移予防のために, BP製剤 (ゾメタ) の静脈投与を受けていた. 21歯, 23歯はともに打診痛・咬合時痛・根尖部圧痛を認め, 動揺度2度, プロービングデプスは全周3mm以内であった. 21, 22根尖部歯肉にサイナストラクトを認めた. 22部インプラント周囲の歯肉に発赤, 腫脹はなく, 動揺も認められず, プロービングデプスは全周1mmで, エックス線写真にて歯頸部での皿状の吸収を認めたが, 炎症所見は認めなかった. エックス線写真とコーンビームCT (CBCT) 所見より, 21, 23根尖部から, 22部インプラント部を含む透過像を認めた. 以上の所見から, 上行性インプラント周囲炎と診断し, 21, 23歯の根尖性歯周炎は認められるがインプラント体への感染の可能性は少ないと判断した. 患者には保存治療と外科的治療のリスクを説明したところ非外科的な治療を希望されたため, 21, 23歯に対して非外科的歯内治療である根管治療を開始した.
     21歯に穿孔部を認めたためMineral Trioxide Aggregateにて穿孔封鎖を行い, 根管充塡後, テンポラリークラウンにて経過観察を行い, 治癒傾向が認められたため歯冠補綴を行った. 補綴1年後において21, 23歯の臨床症状は, 自覚症状は認めず, 打診痛・咬合時痛・根尖部圧痛はなく, プロービングデプスは全周2mm以内, 動揺もなく, サイナストラクトは消失した. エックス線写真, CBCT所見において, 根尖部透過像は縮小傾向を認めていた. 咬合等の機能にも問題はなく, 治癒中と診断された. また22部インプラントも著変を認めなかった.
     考察および結論 : 今回の症例では, 根尖性周囲炎由来の大きな骨欠損を認め, インプラント周囲骨も吸収していたが, インプラント体まで感染が波及していなかったために, 根尖性周囲炎の治癒に伴い周囲骨も再生したものと考えられた. 早期における感染源の可及的除去と予防がBP製剤による顎骨壊死に大きく影響を与えるため, インプラントに近接する根尖性歯周炎は, インプラント周囲炎との鑑別, インプラント体への感染の有無の診断と迅速な治療が予後に大きく影響を及ぼすものと思われた.
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