日本歯科保存学雑誌
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58 巻 , 3 号
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総説
原著
  • 副島 寬貴, 武本 真治, 小田 豊, 河田 英司
    2015 年 58 巻 3 号 p. 185-191
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
     目的 : 根管処置歯に対して, ファイバー強化型コンポジットレジンポスト (FRCポスト) と支台築造用レジンを用いた支台築造法が多用されている. 本研究では, FRCポストを用いた直接法による支台築造法でのポスト&コアの維持力を明らかにすることを目的として, 根管処置した歯根に対してセルフアドヒーシブレジンセメント, セルフエッチングプライマー併用型コンポジット系レジンセメントおよび支台築造用レジンとボンディング材を併用する接着システムでFRCポストを植立し, そのポストの引抜き維持力を調べた.
     材料と方法 : 牛歯歯根に根管処置し, 直径3mmのドリルでポストスペースを形成した. このポストスペースに, セルフアドヒーシブレジンセメント, セルフエッチングプライマーを併用するコンポジット系接着性レジンセメントを用いてFRCポストを植立した. さらにコンポジットレジン修復と同様に, ボンディングシステムにより支台築造用レジンでFRCポストを植立するシステムを用いてポストを植立した. ポストを植立した牛歯歯根は1日または14日間, 37°Cの水中に保存した後, 万能材料試験機によるポストの引抜き試験を行い, ポストの引抜き維持力を調べた. また, 引抜いたポストの破断形態をデジタルマイクロスコープで観察した.
     成績 : 接着初期のポストの引抜き維持力には接着システムによる有意差が認められなかった. 14日水中保存したポストの維持力は, セルフエッチングプライマーを併用したコンポジット系レジンセメントがほかの接着システムより大きく, レジンセメントの凝集破壊が多く認められた.
     結論 : 直接法で植立したポストの引抜き維持力は, 接着初期では接着システムによる差異は認められないが, 保存期間14日後では従来型のセルフエッチングプライマーを併用したコンポジット系レジンセメントで植立したポストの維持力は増加し, セルフアドヒーシブセメントより大きな維持力を示した.
  • 藤田 光, 横田 容子, 内山 敏一, 岡田 珠美, 大村 基守, 西山 典宏, 平山 聡司
    2015 年 58 巻 3 号 p. 192-199
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
     目的 : ワンステップボンディング材であるクリアフィルトライエスボンドND (TSB-ND) に含有されている酸性モノマーMDPについて, TSB-NDとエナメル質または象牙質粉末とを反応させ, 反応前後における溶液と固体13C NMRスペクトルの変化から, MDPと歯質成分との相互作用の詳細について検討した. さらに, MDPの脱灰率がエナメル質と象牙質の接着強さに及ぼす影響を検討した.
     材料と方法 : TSB-ND 2.000g中に切削したウシ前歯歯冠エナメル質または象牙質粉末0.400gを10分間懸濁し, 振盪・攪拌した. その後, 懸濁液を遠心分離し, ボンディング材上澄み液と反応残渣の13C NMRスペクトルとを, 高分解能NMR (EX270) を用いて測定した. エナメル質または象牙質粉末を相互作用させる前後における, HEMAのビニル基メチレンカーボンNMRピークに対するTSB-NDに含有されるMDPのビニル基メチレンカーボンNMRピークの強度比を求めた. MDPのビニル基メチレンカーボンNMRピーク強度の減少率は, 反応前後の強度比の差を反応前の強度比で除して求め, これをMDPの歯質アパタイト成分の脱灰率とした. さらに, TSB-NDのエナメル質と象牙質に対するせん断接着強さを測定した.
     結果 : TSB-NDにエナメル質または象牙質粉末を相互作用させた際のMDPによる歯質アパタイト成分の脱灰率は, エナメル質で33.00%, 象牙質では40.50%を示した. また, TSB-NDのエナメル質に対する接着強さは15.04MPaで, 象牙質への接着強さは17.39MPaを示した.
     結論 : TSB-NDに配合されているMDPの歯質アパタイト成分の脱灰率は, エナメル質より象牙質のほうが高く, 歯質に対する接着強さは, エナメル質よりも象牙質で高い値を示した.
  • 千葉 敏江, 山本 雄嗣, 下田 信治, 桃井 保子
    2015 年 58 巻 3 号 p. 200-211
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
     目的 : 本研究の目的は, リン酸カルシウム系セメントの原理を応用したペースト (以下, APペースト) の含有成分による, 歯質ケア材としての有用性を解析することである. この目的に沿って, 1) APペースト由来の元素の象牙質への移行状態について, 2) 象牙質内および塗布面に析出したアパタイト結晶の同定, 3) 象牙質のアパタイト結晶の成長について解析した.
     材料と方法 : 本研究ではヒト抜去永久歯を用いた. 象牙質へのAPペースト由来の元素の分布と移行状態について, 元素分析を行った. 象牙質に開窓面を作製し, 50mmol/l酢酸で3日間脱灰後, 試験面に1日3回, 2週間連続してAPペーストを塗布した. その後, 試験片をエポキシ樹脂で包埋し, 観察面を鏡面研磨して二次電子および反射電子で観察した. また電子線プローブマイクロアナライザー (EPMA) により, Ca, P, Fの各元素について定量分析を行った. 標準試料としてハイドロキシアパタイト (HAp), 塩基性リン酸カルシウム (リン酸四カルシウム : TTCP), 酸性リン酸カルシウム (リン酸水素カルシウム : DCPA) を用い, 析出結晶の形態観察と, 電子線回折による結晶の同定を透過型電子顕微鏡 (TEM) で行った.
     結果 : 1) EPMAによる元素分析で, Ca, P, Fの象牙質歯質への明らかな移行と蓄積が確認された. 2) 象牙質表面および象牙細管内部に新たな結晶の析出が確認され, 電子線回折により, HApに転化していることが確認された. 3) APペースト由来の無機質により, 脱灰領域の象牙質の石灰化度は, 健常な管周および管間象牙質の無機質量にまで回復していた. 脱灰領域の結晶と塗布後の結晶では, 明らかな結晶成長と再石灰化が確認された.
     結論 : 本研究結果から, APペースト含有成分であるTTCP, DCPAに由来するCaおよびPイオンは, 象牙質に浸透してアパタイト結晶の成長を促進し, 塗布したAPペースト自体も象牙質と同成分のアパタイトとして再結晶化することから, 本ペースト製剤の歯質ケア剤として有用性が示唆された.
  • 成石 浩司, 梶浦 由加里, 西川 泰史, 板東 美香, 木戸 淳一, 永田 俊彦
    2015 年 58 巻 3 号 p. 212-218
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
     目的 : 漢方薬 (生薬) タンジンの主成分であるクリプトタンシノンは, 抗がん作用や抗炎症作用をもつことが知られている. しかしながら, クリプトタンシノンが歯周組織の炎症に対してどのような影響を及ぼすのかは不明である. 本研究の目的は, 歯肉線維芽細胞を標的として, その炎症関連分子の産生に及ぼすクリプトタンシノンの影響を調べることである.
     方法 : 細胞は歯肉線維芽細胞CRL-2014TM (ATCC) を用いた. クリプトタンシノンの濃度依存的な細胞障害作用の有無は, トリパンブルー染色法を用いて各濃度間における生細胞率の差を比較検討して評価した. 歯肉線維芽細胞のサイトカイン産生は, 市販のELISAキットを用いて, インターロイキン (IL) -1βで細胞を24時間刺激した後のIL-6およびVEGF産生量を測定して検討した. 一方, タンパク質分解酵素カテプシンLの産生は, IL-1βで細胞を24時間刺激した後に回収した全細胞タンパク質を用いて, ウエスタンブロット法によって検討した. なお, クリプトタンシノンはIL-1β添加の1時間前に細胞培養系に添加した. 各群における差異は, ANOVA Tukey-KramerのHSD検定によって有意差を検討した.
     結果 : クリプトタンシノンは, 10μmol/lまでは歯肉線維芽細胞の生細胞率に影響は与えないが, 100μmol/lでは有意に生細胞率を低下させた. また, 歯肉線維芽細胞におけるIL-1β誘導性のIL-6産生およびカテプシンL産生は, 10μmol/lクリプトタンシノンの添加によって著明に減少した. 一方, IL-1β誘導性のVEGF産生は, クリプトタンシノンの添加によっても変化しなかった.
     結論 : クリプトタンシノンは, 歯肉線維芽細胞におけるIL-1β誘導性IL-6およびカテプシンLの産生を抑制することで, 歯周組織の炎症を抑制する可能性が示唆された.
  • —横断的研究における口腔内の検査結果と多項目唾液検査システム (AL-55) の検査結果の関連について—
    西永 英司, 牧 利一, 斉藤 浩一, 深澤 哲, 鈴木 苗穂, 内山 千代子, 山本 高司, 村越 倫明, 大寺 基靖, 福田 功, 大久 ...
    2015 年 58 巻 3 号 p. 219-228
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
     目的 : 唾液による総合的な口腔検査法の確立を目指し, う蝕, 歯周病, 口腔清潔度に関する7項目の唾液因子を5分間で測定できる唾液検査システム (AL-55) を開発した. AL-55は, 7項目の試験片 ([う蝕] う蝕原性菌, pH, 酸緩衝能, [歯周病] 潜血, 白血球, タンパク質, [口腔清潔度] アンモニア) を貼付したストリップ状試験紙の色調変化を反射率として検出する. 本研究では, 口腔内およびAL-55の検査結果の相関を解析し, AL-55による検査が, 口腔内の状態把握に有用なものであるかについて検討を行った.
     方法 : 成人231名の対象者から, 洗口吐出液 (蒸留水3mlで10秒間含嗽した後の吐出液) を採取し, AL-55の試験紙に10μlずつ点着後, 1分および5分後に反射率を測定した. その後, 口腔内検査として, DMFT, PPD, BOP, GI, CPIを評価し, 口腔清潔度については洗口吐出液中の総菌数を測定した. 口腔内およびAL-55の検査結果の相関について, Spearman相関解析を用いて評価し (α=0.01), また, 対象者をDMFT, PPD, 総菌数によりおのおの3層別し, 各群におけるAL-55の検査結果を, Tukeyの多重比較検定を用いて群間比較した (α=0.05).
     結果 : [う蝕] DMFTは, AL-55によるう蝕原性菌の検査結果 (反射率) と有意な相関を示したが, pH・酸緩衝能の検査結果との相関は認められなかった. また, 対象者のDMFTを3層別し, AL-55による検査結果を比較した結果, う蝕原性菌の検査結果は軽度群と重度群の間に有意差を示したが, pH・酸緩衝能は3群間に有意差を認めなかった. [歯周病] PPD, BOP, GI, CPIは, AL-55による潜血, 白血球, タンパク質の検査結果と有意な相関を認めた. また, PPDを基に対象者を3層別し, AL-55の検査結果を比較した結果, 潜血は, 軽度群・中等度群・重度群のそれぞれの間に有意差を示し, 白血球, タンパク質は, 軽度群と重度群, および中等度群と重度群の間に有意差を示した. [口腔清潔度] 総菌数は, アンモニアの検査結果と有意な相関を認めた. また, 総菌数により対象者を3層別し比較した結果, アンモニアは3群間にそれぞれ有意差を認めた.
     結論 : 新たに開発した多項目唾液検査システム (AL-55) による検査結果と, 口腔内の検査結果に有意な相関を認め, AL-55が口腔内の状態把握に有用であることが明らかとなった.
症例報告
  • 安田 忠司, 濱 拓弥, 森永 啓嗣, 澁谷 俊昭
    2015 年 58 巻 3 号 p. 229-240
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
     目的 : 薬物性歯肉増殖を伴う慢性歯周炎患者に対して, 歯周基本治療, 歯周外科治療および補綴処置を行い良好な経過を得た. また初診時, 咀嚼が満足にできなかったため咀嚼能率判定表を用いて経時的な評価を行った結果, 咀嚼能の改善を確認することができ, Supportive Periodontal Therapy (SPT) 開始から約5年間良好に経過している症例を報告する.
     症例と治療経過 : 患者は59歳女性. 歯肉腫脹を主訴に来院した. 2007年7月頃から歯肉の腫脹に気づいていたが, 痛みがないため放置していた. しかし1カ月前より歯肉の痛みを覚え近医を受診したところ, 専門的治療を勧められ2008年1月21日に本学附属病院を受診した. 全身既往歴として高血圧症があり, 2003年5月からニフェジピンを服用していた. Probing Pocket Depth (PPD) 4mm以上の割合は100%で, 上顎前歯および臼歯部に線維性の歯肉増殖を認め, X線所見では, 下顎前歯部では根尖に及ぶ骨吸収が多数歯に認められ, 臼歯部も歯冠崩壊が著明であり保存不可能歯が多数認められた. 検査の結果, 薬物性歯肉増殖を伴う広汎型重度慢性歯周炎と診断した. 治療経過は歯周基本治療として, Tooth Blushing Instruction (TBI), 保存不可能歯の抜歯, Scaling and Root Planing (SRP), 治療用義歯の装着をした. 再評価検査後, 歯周外科処置を行い, 歯槽骨の平坦化を行った. 歯周組織の安定を確認後, プロビジョナルレストレーションによる咬合治療などを駆使して最終補綴を行い, SPTに移行した. 現在SPT開始から4年8カ月経過し, 良好な状態を維持している. 初診時には満足に咀嚼できなかったため咀嚼能率判定表を用いて食生活指導を実施した結果, 経時的に咀嚼能率の改善を認めた. また歯周外科時に採取した歯肉の組織学的所見から, 口腔上皮は有棘層の肥厚, 不規則に伸長した上皮脚がみられ, 結合組織ではコラーゲン線維が密に太い束を形成し, 上皮の基底層・傍基底層に多数のProliferating Cell Nuclear Antigen (PCNA) 陽性細胞を認めた.
     結論 : 重度慢性歯周病患者に対し咀嚼能率判定表を用いることにより, 経時的な咀嚼能の改善を確認することができる.
  • 窪川 恵太, 海瀬 聖仁, 三木 学, 岩井 由紀子, 石岡 康明, 尾﨑 友輝, 上條 博之, 内田 啓一, 田口 明, 山下 秀一郎, ...
    2015 年 58 巻 3 号 p. 241-252
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
     目的 : 現在, わが国において施行される歯周組織再生療法は, 骨移植術, 歯周組織再生誘導 (Guided Tissue Regeneration : GTR) 法, エナメルマトリックスタンパク質の応用の3療法である. 今回, 咬合性外傷により悪化したと推察される限局型中等度慢性歯周炎患者に対し, 骨移植 (β-Tricalcium Phosphate : β-TCP) を伴用したGTR法を施行し, 良好な結果が得られた症例を報告する.
     症例 : 患者は58歳 (初診時), 女性. 上顎右側犬歯部からの歯肉出血を主訴として, 近在歯科医院から歯周組織再生療法施行依頼により紹介されて来院した. 口腔内既往歴は, 1975年 (27歳) から, う蝕による修復および補綴処置を繰り返し受けていた. 初診時の平均プロービングデプス (Probing Depth : PD) は3.6mm, PD 4mm以上の部位率は43.5%, プロービング時の出血 (Bleeding on Probing : BOP) 率は28.3%であった. O’LearyのPlaque Control Recordは60.8%であり, 口腔清掃状態は不良であった. 辺縁歯肉には著明な炎症は認められず, 上顎前歯部にうっ血を認める程度であった. 歯列咬合所見として, 上顎臼歯部欠損に伴う下顎咬合平面の乱れがみられ, 13に早期接触を認めた. 前歯部の被蓋関係は, オーバージェット : 2mm, オーバーバイト : 3mmであった. エックス線所見として, 13, 22に高度な垂直性歯槽骨吸収, 47の根分岐部病変, および48根尖部に透過像を認めた. 通法どおり歯周基本治療を開始し, 再評価検査後13に残存したPD 4mm以上の部位に対し, 歯周組織再生療法を施行した. その後, 依頼歯科医院にて継続治療の予定であったが, 患者が本学における包括的な歯科治療を希望したため, 依頼医と相談のうえ, 治療計画を修正し, 以後の処置を施行した. 現在, 術後6年経過し歯周組織は安定しているが, 47舌側中央部にBOPは認められないもののPD 5mmの歯周ポケットと根分岐部病変が残存しているため, Supportive Periodontal Therapyを継続している.
     結論 : 高度な垂直性歯槽骨欠損部に対し, 骨移植術とGTR法併用の歯周組織再生療法を施行した結果, 歯周外科処置後6年経過して, 歯周組織には骨再生所見がみられ, 経過は安定している.
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