日本歯科保存学雑誌
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58 巻 , 5 号
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ミニレビュー
原著
  • 宮良 香菜, 八幡 祥生, 時田 大輔, 海老原 新, 塙 隆夫, 興地 隆史
    2015 年 58 巻 5 号 p. 356-362
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/02
    ジャーナル フリー
     目的 : NiTi製ファイルは, ステンレススチール製ファイルと比較して高い柔軟性を有しており, 湾曲根管において優れた根管追従性を示す. NiTi製ファイルでは製品ごとに独自の規格が採用されており, 刃部断面形態やテーパー, ピッチ, らせん角など, さまざまな特徴を付与した器具が数多く開発されている. 近年では, NiTi合金に熱処理を施し柔軟性や疲労特性を向上させた合金 (M-Wire) を用いたファイルも製品化されている.
     ProFile Vortexは, M-Wireの採用に加えて刃部形態の改変も施されており, 先行製品であるProFileと比較して柔軟性および破折抵抗性の向上が謳われている. 本研究ではProFile Vortexの機械的特性を明らかにすることを目的とし, その相変態挙動を調べるとともに, 根管追従性にかかわる曲げ特性を評価した.
     材料と方法 : 本研究ではProFile Vortex (30号, 0.06テーパー), および対照として同サイズのProFile, FlexMasterを用いた. まず, 各製品に用いられているNiTi合金の相変態挙動を調べるために, 示差走査熱量分析により相変態点を求めた. 次に, 片持ち梁曲げ試験により, 弾性変形領域および超弾性変形領域にそれぞれ相当する0.5mmおよび2.0mmたわみ時における曲げ荷重を計測した.
     結果 : ProFile Vortexのマルテンサイト変態開始温度と逆変態終了温度は, ProFileとFlexMasterより有意に高く (p<0.05), ともに37°C以上であった. また, ProFile Vortexの曲げ荷重は, FlexMasterと比較して有意に小さい値であったが (p<0.05), ProFileとの間に有意差は認められなかった (p>0.05).
     結論 : ProFile Vortexは口腔内温度で良好な超弾性特性を示す相変態挙動を有するとともに, 良好な柔軟性を示したことから, 湾曲根管の形成に有用であることが示唆された.
  • 鶴田 あゆみ, 掘江 卓, 堅田 和穂, 岸本 崇史, 長塚 由香, 八谷 文貴, 鈴木 未来, 冨士谷 盛興, 千田 彰
    2015 年 58 巻 5 号 p. 363-372
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/02
    ジャーナル フリー
     目的 : Er : YAGレーザー照射した象牙質において, レジン接着システムとしてのレジン添加型グラスアイオノマーセメント (RMGI) は, レジン系ボンディング材に比し安定した接着性を示すが, 接着強さの測定値は低いことを著者らは明らかにした. 本研究は, Er : YAGレーザー照射象牙質に対し良好な接着性を示す接着システムの開発を目指し, レーザー照射により生じた変性層を強化しRMGIの接着強さの向上を図る目的で, カルボン酸と金属塩の合剤による歯面処理効果について検討した.
     材料と方法 : 新鮮抜去ウシ前歯に調製した象牙質平坦面を, Er : YAGレーザーにより低出力照射 (50mJ/1pps) あるいはフィニッシング照射 (50mJ/1pps照射後150mJ/1ppsで仕上げ照射) した. 次いで, これら照射面ならびに非照射面に20%ポリアクリル酸+3%塩化アルミニウム水溶液 (Al), あるいは10%クエン酸+2%塩化第二鉄水溶液 (Fe) による歯面処理を施し, Fuji Lining Bond LCを塗布後Clearfil AP-Xを塡塞し, 微小引張接着強さを検討した (Schefféの検定, α=0.05). また, 破壊形態 (実体顕微鏡) および接合界面の様相 (SEM) も検討した.
     結果 : 非照射象牙質では, 歯面処理剤を併用しなかった場合の接着強さは約12MPa, AlあるいはFeを用いた場合の接着強さはいずれも約24MPaであり, 歯面処理剤を併用しなかったものに比し有意に高い値を示した. 一方, レーザー照射象牙質において歯面処理剤を併用しなかったものは接着強さの計測が不可能であった. また, Alの場合の接着強さは5~6MPa, Feのそれは10~13MPaであり, Feのほうが効果的であった. Feをレーザー照射象牙質に用いたときの破壊形態は, 界面破壊ならびに変性層からRMGIにわたる混合破壊がAlの場合より多く認められた. このことは, レジンの重合収縮や外力などの応力がFeにより強化された変性層とRMGI層の両層に集中し, その結果生じた歪みが両層に限局したことが接着強さの向上に繋がったものと考えられた.
     結論 : Er : YAGレーザー照射された象牙質に対しては, 10%クエン酸+2%塩化第二鉄水溶液による歯面処理が, レジン接着システムとしてのRMGI系レジン接着システムの接着性向上に効果的であることが判明した.
  • 掘江 卓, 堅田 和穂, 河合 利浩, 松井 治, 堅田 尚生, 冨士谷 盛興, 千田 彰
    2015 年 58 巻 5 号 p. 373-380
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/02
    ジャーナル フリー
     目的 : 直接覆髄剤としてのMTAと同等の修復性反応を示した光硬化型ケイ酸カルシウム系覆髄剤 (TCL) の治癒機転を検索することを目的として, MTAおよびTCLにおける材料内外での元素 (P, Ca, SiおよびC) の移動, 溶出, あるいは析出などの挙動について, 電子線マイクロアナライザ (EPMA) あるいは高周波プラズマ発光分光分析装置 (ICP) を用いて詳細に検討した.
     材料と方法 : エポキシ樹脂に円柱形の規格孔を形成し, MTAあるいはTCLを塡塞した. いずれも硬化を確認後, 37°Cのリン酸緩衝生理食塩水 (PBS) 中に1, 3日あるいは7日間浸漬した. その後, これら試料および浸漬していない試料をエポキシ樹脂にて包埋し, 試料中央で切断した. 切断面を鏡面研磨し, カーボン蒸着後, P, Ca, SiおよびCの各元素分布の様相をEPMA分析した. 次に, 内径4.0mm, 高さ2.0mmの円柱形のシリコンモールドに, MTAあるいはTCLを塡塞, 硬化させ, 円柱型の試料を調製した. その後, 試料を20mlの37°C超純水に1, 3日あるいは7日間浸漬し, ICPを用いて各材料からの単位面積当たりのCaおよびSiの溶出量を測定した. 得られた結果はt検定を用いて統計学的処理を施した (α=0.05).
     結果 : MTAでは, Pの材料内部への浸入とともに水も浸透し, それに伴ってCaおよびSiが表面方向へ移動し, さらにCaおよびSiは材料外に持続的に溶出していた. TCLでは, MTAで観察されたような明確な材料内での元素移動は認められなかったが, 材料外へのCaならびにSiの持続的溶出はMTAと同程度に認められた. これは, TCLの表層に存在する高親水性レジンのポリエチレングリコールジメタクリレートを介して水が移動することにより生じたものと考えられた. PBSに浸漬したMTAおよびTCLのいずれの表面上においても, リン酸カルシウム様結晶物の析出を認めた. これらの結果は, いずれの材料からも同程度のCaとSiが溶出されることを示しており, TCLはMTAと同等の良好な直接覆髄効果を示すと推察された.
     結論 : TCLの元素の移動, 溶出および析出などはMTAとほぼ同様であり, そのためTCLはMTAと同等の直接覆髄効果を示すと考えられた.
  • 天川 丹, 林 都美香, 石井 信之
    2015 年 58 巻 5 号 p. 381-390
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/02
    ジャーナル フリー
     目的 : 垂直歯根破折歯の保存治療はきわめて困難で, 歯科医療において最も解決すべき問題と考えられている. 垂直歯根破折の早期診断が可能になることで, 長期に経過する歯内療法や感染による広範囲な歯槽骨吸収を回避することが可能である. 本研究は, 根管充塡後の垂直歯根破折歯を対象として歯根破折と臨床所見の相関関係を解析し, 歯根破折の早期診断法確立と破折を防止することを目的とした.
     材料と方法 : 八ケ岳歯科に来院した患者420名 (27~84歳), 459症例の垂直歯根破折歯を対象とした. 対象歯は根管充塡後の定期検診時に歯根破折と診断され, 臨床症状, エックス線所見, 支台築造形態と性状を臨床的に精査して歯根破折との関連性を調査した. なお, 歯根破折の確定診断は歯科用実体顕微鏡所見と外科治療時の直接観察で行った.
     結果 : 歯根破折は50歳代に最も好発し, 歯種別では下顎大臼歯が最も多かった. 歯根破折歯は打診反応が共通して認められた. 歯根破折の特徴的エックス線所見 (Perilateral radiolucency, “Halo” radiolucency) は全体の20%を示したが, ほかの症例は歯周病変および根尖病変との鑑別診断を必要とした. 歯科用実体顕微鏡による確定診断は有用であった. 歯根破折歯の80%は, 歯冠部限局のコアおよび根管長1/4以下のポストコア症例であった.
     結論 : 歯根破折の早期診断には定期検診による打診反応と規格エックス線所見が有用であり, 確定診断には歯科用実体顕微鏡所見がきわめて有用であった. 根管充塡後の垂直歯根破折防止には, 根管長1/2以上のポストコアが有用であることが示唆された.
  • 山口 貴央, 野村 義明, 花田 信弘, 森戸 亮行, 山崎 泰志, 吉田 拓正, 細矢 哲康
    2015 年 58 巻 5 号 p. 391-397
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/02
    ジャーナル フリー
     目的 : 歯根膜の恒常性維持には, TGF-β1とBMP-2の存在とその比が関与するといわれている. BMP-2を制御するタンパクとしてPLAP-1が知られているが, TGF-β1を制御するタンパクは明らかにされていない. そこで, われわれは培養正常ヒト歯根膜線維芽細胞 (hPdLF) と培養正常ヒト歯肉線維芽細胞 (Gin-1) についてマイクロアレイを用いて遺伝子発現量の比を算出し, 特にhPdLFで発現量の比が高く歯根膜での意義が明らかとされていないleucine rich repeat containing 32 (LRRC32) について, 歯周組織における特異性を明らかとするために, 歯根膜に隣接する組織由来の培養細胞 (Gin-1, 正常ヒト皮膚線維芽細胞 (NHDF), 正常ヒト骨芽細胞 (NHOst), ヒト上皮細胞 (HeLa) ) を培養し, RT-PCR法を用いて比較・検討した.
     材料と方法 : 培養したhPdLF, Gin-1からtotal RNAを抽出し, マイクロアレイによる解析を行った. RT-PCR法はhPdLF, Gin-1, NHDF, NHOst, HeLaそれぞれの培養細胞からtotal RNAを抽出・精製し, 逆転写して得られたcDNAを用いた. GAPDHを内部標準として, LRRC32と石灰化の指標とされるPeriostin, osteocalcin (OC), osteopontin (OPN), RUNX2, bone sialoprotein (BSP) ならびにTGF-β1について遺伝子発現を調べた.
     結果 : マイクロアレイによる解析で, Gin-1に比べhPdLFで強く発現しているLRRC32を見いだした. RT-PCR法により3種のhPdLFでLRRC32の遺伝子発現を認めたが, 軟組織由来のGin-1, NHDF, HeLaではLRRC32の遺伝子発現は認められなかった. 一方で, 硬組織由来のNHOstでLRRC32の遺伝子発現を認めた. 石灰化のマーカーとなる遺伝子の発現は, hPdLFでOPN, OC, RUNX2, Osterixの遺伝子発現が観察され, NHOstでOC, RUNX2, Osterixの遺伝子発現が観察された.
     結論 : LRRC32は歯根膜に恒常的に発現しており, 硬組織形成に関与する組織に発現していることが示唆された.
  • 藤田 光, 関根 (加藤) 哲子, 岡田 珠美, 伊東 哲明, 内山 敏一, 西山 典宏, 平山 聡司
    2015 年 58 巻 5 号 p. 398-405
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/02
    ジャーナル フリー
     目的 : ワンステップボンディング材は保管期間や保管温度により, 歯質に対する接着強さが低下する傾向がある. 本研究は, 歯質に対する接着強さの低下を引き起こすワンステップボンディング材の変性メカニズムを調べるために, ワンステップボンディング材に含まれる機能性モノマーの加水分解について, 核磁気共鳴法 (13C NMR法) と接着強さを用いて検討した.
     材料と方法 : ワンステップボンディング材としてG-BOND PLUS (G-BP) を使用し, これを0, 3, 7週間および14週間40°C恒温槽中に保管してNMRの試料とした. 13C NMRの試料は, G-BP 300mgとジメチルスルホキシド250mgをNMR管に精秤し, 振盪・攪拌して13C NMR法により解析した. また, 保管期間の同じ試料を用いて, エナメル質および象牙質のせん断接着強さの測定も行った.
     結果 : G-BPを40°Cに保管すると, メタクリル酸のカルボキシル基カルボニルカーボンおよびエチレングリコールのメチレンカーボンに帰属されるNMRピークが検出され, 保管時間が長くなるに従い, それらのNMRピーク強度は増大した. またトリメリット酸のカルボキシル基カルボニルカーボンに帰属されるNMRピークも検出された. G-BPを14週間40°Cで保管すると, 4-METのエステル基が加水分解し, メタクリル酸, エチレングリコールおよびトリメリット酸が生成され, 4-METのメタクリロキシエステル基は13.76%分解した. エナメル質の接着強さは, 保管期間0日の場合17.20MPaであったが, 保管期間が長くなるにつれて接着強さは低下し, 保管期間14週間では12.33MPaまで低下した. また象牙質でも同様に, 保管期間が長くなると接着強さは15.36MPaから11.61MPaまで低下した. 歯質に対するレジンの接着強度は, ワンステップボンディング材中の4-METが保管期間の延長とともに加水分解が進行して変性し, 接着強さが低下した.
     結論 : 歯質に対するレジンの接着強さは, ワンステップボンディング材の保管期間の延長により, 機能性モノマーの変性に起因することがわかった.
  • 中澤 弘貴, 馬場 俊晃, 辻本 恭久
    2015 年 58 巻 5 号 p. 406-415
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/02
    ジャーナル フリー
     目的 : 根管治療を成功に導くためには, 歯根と根管の解剖学的特徴を理解することが重要である. 医療用CTを用いて三次元的形態を把握しながら治療を行うことは, 根管治療の成功率の向上に大きく貢献すると考える. 本研究では, 日本人の上顎第一大臼歯 (M1) および上顎第二大臼歯 (M2) の歯根, 根管の形態を分析することとした.
     材料と方法 : 2010年1月から2014年3月までの期間に日本大学松戸歯学部付属病院を受診した, 20歳から29歳の日本人 (合計443名, うち男性220名, 女性223名) のM1, M2のmulti-detector CT (MDCT) 画像を試料とした. 原則として左側歯を用いたが, 欠損や齲蝕による歯冠崩壊, 充塡物や補綴物による障害陰影のある場合は右側歯を用いた. MDCT画像から歯根を観察, 分析し, さらにVertucciの報告に従い近心頰側根 (MBR), 遠心頰側根 (DBR) と口蓋根 (PR) の根管形態を分析し, 分類した.
     結果および考察 : 歯根数はM1で3根が男女ともに約95%観察された. 歯根の癒合率は, M1とM2を比べるとM2が高かった (p<0.01). M2では癒合根が男性約33%, 女性約53%であり, 女性は男性と比べ歯根の癒合率が高かった (p<0.01). M2においてはインド (26.8%), 中国 (18.0%), 韓国 (24.73%), ブラジル (20.6%) の集団と比較して高い割合で歯根の癒合が起こることが示唆された. Vertucciの分類結果から, M1のMBRでは根管が分岐しないⅠ型は, 男性34.1%, 女性36.7%, M2では男性, 女性ともに約70%観察された. M2と比べてM1ではMBRの2根管の割合が高かった (p<0.01). MBR 2根管の形態では, 根管が合流せず, 2根尖孔存在する形態のものが最も多く検出された. DBR, PRではほとんどがⅠ型の1根管であった.
     結論 : 歯内治療を成功に導くためにCTを使用し, 患歯の歯根・根管形態を理解することが重要である. MBRの2根管の存在を意識したアクセスキャビティーが必要である.
  • 村樫 悦子, 石黒 一美, 沼部 幸博
    2015 年 58 巻 5 号 p. 416-424
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/02
    ジャーナル フリー
     目的 : フランス海岸松の樹皮 (以下, フラバンジェノール®) は活性酸素の消去および血流促進などの効果をもつと報告されているが, 歯周組織におけるフラバンジェノール®の効果は報告が皆無である. 本研究は, ヒト歯周組織由来培養細胞 (歯肉線維芽細胞および歯根膜細胞) に対するフラバンジェノール®の効果について検索することを目的とした.
     方法 : 歯肉線維芽細胞および歯根膜細胞に0, 10, 100mg/mlのフラバンジェノール®添加培地を3分間作用させた後, 培養液を廃棄して, Hanks’ Balanced Salt Solutionsにて洗浄し, 24時間培養後, 抗酸化能の測定 (ROS阻害率), 細胞増殖率およびATP産生の測定を行い, 歯肉線維芽細胞および歯根膜細胞に対するフラバンジェノール®の効果について検索を行った.
     結果 : フラバンジェノール®の抗酸化能 (ROS阻害率) : 100mg/mlおよび10mg/mlフラバンジェノール®添加群において統計学的有意なROS阻害を示した. 細胞増殖率 : 歯肉線維芽細胞もしくは歯根膜細胞において, フラバンジェノール®非添加群と比較しフラバンジェノール®添加濃度に対し依存的に細胞増殖傾向を示したが, 統計学的有意差は認められなかった. 抗酸化能 (ROS阻害率) : 歯肉線維芽細胞もしくは歯根膜細胞において, フラバンジェノール®非添加群と比較しフラバンジェノール®添加濃度依存的に統計学的に有意なROS阻害率の増加 (p<0.05) が認められた. ATP産生の測定 : 歯肉線維芽細胞において, フラバンジェノール®非添加群と比較し, 100mg/mlフラバンジェノール®添加群において統計学的に有意なATP産生率の増加 (p<0.01) が認められた.
     結論 : 以上より, フラバンジェノール®in vitroにおいて, ヒト歯周組織由来培養細胞の代謝活性を促進することにより歯周組織への有用性が示唆された.
症例報告
  • 工藤 値英子, 水川 展吉, 中川 沙紀, 柳 文修, 江口 元治, 松香 芳三, 吉岡 裕也, 高柴 正悟
    2015 年 58 巻 5 号 p. 425-434
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/02
    ジャーナル フリー
     目的 : 放射線が照射された顎骨では, 骨の細胞活性能が低下し, 細菌感染により骨髄炎を発症しやすい. 今回, 下咽頭癌に対する放射線治療の既往がある患者に発症した46の根尖性歯周炎に起因する放射線性下顎骨骨髄炎に対して, 抗菌薬投与と感染根管治療の併用によって保存的治療を行い, 良好な経過を得た症例について報告し, その対処法を考察する.
     症例の概要 : 患者は58歳男性. 下咽頭癌に対して, 岡山大学病院耳鼻咽喉科と放射線科にて2006年11月から2007年1月まで化学放射線療法を受けた. 2010年5月初旬に右側下顎部に疼痛を自覚していたところ, 定期検査時の18F-fluoro-deoxyglucose positron emission tomography-computed tomography (FDG-PET/CT) 検査にて, 下顎右側にFDG異常集積が認められた. 当院歯周科および口腔外科にて, 46の根尖性歯周炎に起因する放射線性下顎骨骨髄炎と診断された. 口腔外科にて抗菌薬および鎮痛剤の投与が継続され, 同科からの依頼により当科にて46の根管治療を継続した.
     治療経過 : 46に対して感染根管治療を継続するも, 右側下顎部の自発痛が続き, 弓倉症状による強い打診痛の範囲が46から前方へと波及した. 下顎骨に放射線治療の既往があるため, 下顎骨骨髄の減圧を目的とした外科処置を行うことができなかった. そこで, 外科処置に代わる減圧手段として, MR画像上における浮腫性変化を示す範囲内の全歯に対して根管開放を行い, 並行して耳鼻咽喉科での抗癌剤中止に加えて口腔外科での抗菌薬投与を継続した. さらに, これらの歯を咬合させないよう安静に維持することで, 急性症状が軽快して骨髄炎を沈静化させることができた. その後から現在まで, 下顎部は良好に経過している.
     考察および結論 : 46の根尖性歯周炎に起因する放射線性下顎骨骨髄炎に対して, 抗菌薬投与と感染根管治療の併用によって良好な経過を得ることができた. 顎骨への放射線照射を行う患者において, 放射線治療前に医科歯科連携下による歯性感染巣除去を行い, 顎骨骨髄炎を予防することが重要である.
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