目的 : 近年, MIの概念に基づいた治療が一般的になり, 大臼歯部の修復においてもⅡ級窩洞でCR修復が広く行われるようになっている. しかし大臼歯のⅡ級窩洞では, MIによる歯質削除量を極力抑えた幅の狭い窩洞が形成されると同時に, セクショナルマトリックスなどの歯の解剖学形態に合わせた隔壁が装着されるため, 重合のための光が窩洞最深部の歯肉側壁まで届きにくい環境となる. そこで本研究では, ハロゲン型照射器と発光ダイオード (以後, LED) 照射器を用いて, 光照射時の照射距離および光強度を規定して引張接着強さを測定することで, 照射器の照射エネルギーがCR修復時の接着強さに与える影響について検討を行った.
材料と方法 : 抜去牛歯の歯冠部唇側面をモデルトリマーで切削して象牙質平坦面を作製後, 耐水研磨紙#600で研磨し, 内径3mm, 高さ2mmの金属製冶具を両面テープで固定したものを実験用試料とした. 光照射器にはハロゲン型光射器としてCuring Light XL3000 (3M ESPE, XL) を, LED型光射器としてElipar S10 (3M ESPE, S10) とPENCURE 2000 (モリタ製作所, PC) を使用した. 各光照射器の照射距離を2, 7, 12, 22mmに規定し, 光強度のおよび引張接着強さの測定を行った. また, 光照射器の光強度を100, 200, 400, 600, 800, 1,000mW/cm
2に規定し, 引張接着強さの測定を行った.
成績 : 照射器の照射角度を咬合面に対して90°にした場合と比べて, 舌側方向から咬合面に対して60°に光照射した場合, すべての照射器において光強度は有意に低下した. 照射器の照射距離を2, 7, 12, 22mmと増加させると, すべての照射器において光強度は低下し, 接着強さも低下した. 照射器の光強度を100, 200, 400, 600mW/cm
2と増加させると, 接着強さは向上した. 照射器の光強度を100, 200, 400, 600mW/cm
2に規定し, それぞれの光エネルギー量を同一となるように照射時間を延長した場合, 100, 200mW/cm
2の光強度で照射時間を延長しても接着強さは600mW/cm
2に比べて有意に低下した.
結論 : 大臼歯のⅡ級窩洞へのコンポジット充塡の場合, 光強度が400mW/cm
2以上の照射器を使用し, 各ステップの照射において, 照射時間をできるかぎり延長することが望ましいことが示唆された.
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