日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
Print ISSN : 0387-2343
ISSN-L : 0387-2343
59 巻 , 6 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
ミニレビュー
原著
  • 吉居 慎二, 鷲尾 絢子, 諸冨 孝彦, 北村 知昭
    2016 年 59 巻 6 号 p. 463-471
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー

     目的 : 根管充塡シーラーには良好な操作性や根管封鎖性に加え根尖歯周組織への高い生体親和性が求められるが, 現時点でこれらの所要性質を満たすシーラーは存在しないといわれている. 根管治療後における根尖歯周組織の理想的な創傷治癒を導くうえで, 生体材料として適した物理化学的特性・生体親和性を有するシーラーの開発が求められる. 今回, 新規に開発したバイオガラス配合シーラー (以下, BG配合シーラー) と既存のシーラーが根管封鎖性および根管象牙質に与える影響を比較検討した.

     材料と方法 : BG配合シーラーおよび既存の各種シーラー (ユージノール系・非ユージノール系・バイオセラミック系) を抜去歯根管内に充塡後, 封鎖性を色素漏洩試験で, シーラーと根管壁界面の状態を電界放射型走査電子顕微鏡 (以下, FE-SEM) およびエネルギー分散型X線分析法 (以下, EDX) で分析した.

     成績 : BG配合シーラーはほかのシーラーに比べ, 根尖側からの色素漏洩量が有意に少なかった. また, FE-SEMによる観察ではBG配合シーラーおよびバイオセラミック系シーラーでは, 象牙細管内にハイドロキシアパタイト様結晶の析出が確認された.

     結論 : BG配合シーラーが示す根管封鎖性は, 象牙細管内へのハイドロキシアパタイト様結晶の析出によるものと考えられる. 以上の結果は, BG配合シーラーが根管充塡シーラーとして有用であることを示唆している.

  • 尾形 英大, 高木 章三, 林 誠, 安川 拓也, 井比 陽奈, 平野 頼是, 鈴木 裕介, 松浦 慎吾, 小木曾 文内, CHOW Lau ...
    2016 年 59 巻 6 号 p. 472-478
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー

     目的 : リン酸カルシウムセメント (calcium phosphate cement : CPC) は水分の存在下でヒドロキシアパタイトを形成する自己硬化性リン酸カルシウムであり, 高い生体親和性と骨伝導性を兼ね備えているため骨補塡材として医科領域で応用されている. 近年, ヒドロキシアパタイトの水酸基の一部がフッ素に置換されたフッ素置換型ヒドロキシアパタイトは骨形成を促進し, 酸性環境下においてもヒドロキシアパタイトと比較して溶解性および吸収性が低いことが報告されている. そのため, フルオロアパタイト (fuluorapatite : FA) を形成するCPCは, 骨移植材としてだけではなく逆根管充塡, 穿孔封鎖および直接覆髄などの歯内療法用セメントとしての用途も考えられ, 幅広い臨床応用が推察される. 本研究の目的は, CPCにフッ化ナトリウムを添加することによってFAを形成するCPC (FA-forming CPC) を試作し, 理工学的特性を解析することである.

     材料と方法 : リン酸四カルシウム (tetracalcium phosphate : TTCP) と無水リン酸二カルシウム (dicalcium phosphate anhydrous : DCPA) から構成されたCPC粉末に, フッ化ナトリウムをフッ素/カルシウムのモル比が0~0.4になるように添加, 調整し, FA-forming CPC粉末とした. なお, TTCP粉末およびDCPA粉末の粒子径は, おのおの4.0μmと1.0μmを使用した. 溶液は0.5mol/lリン酸 (pH 5.6) を使用し操作性を考慮した粉液比2.5 (P/L=2.5) で練和した. 理工学的特性としては硬化時間, ダイアメトラル引張強さおよび多孔率を測定した. また, 硬化したFA-forming CPCに含有されるフッ素量の測定およびX線回折法 (X-ray diffraction : XRD) による成分分析も併せて行った.

     成績 : FA-forming CPCはフッ素を添加しなかったCPCと比較して, 硬化時間の短縮 (14.3~16.8分), ダイアメトラル引張強さの低下 (1.0~3.4MP) および多孔率の増加 (40.7~49.0vol%) が認められた. また, 添加したフッ素量の増加に伴い, 硬化したFA-forming CPCに取り込まれるフッ素量も有意に増加した. FA-forming CPC硬化後のXRDでは, 高い結晶性を有するFAの形成が確認された.

     結論 : 添加するフッ素量の増加に伴って, 高い結晶性を有するFAの形成が示された. FA-forming CPCの理工学的特性を解析した結果, 新たな骨補塡材および歯内療法用セメントとして応用できる可能性が示唆された.

  • 長塚 由香, 掘江 卓, 八谷 文貴, 鈴木 未来, 堅田 和穂, 岸本 崇史, 竹口 あゆみ, 大口 景子, 河合 利浩, 松井 治, 冨 ...
    2016 年 59 巻 6 号 p. 479-488
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー

     目的 : 本研究は, ハイドロキシアパタイトの吸収波長に近い波長9.3μmのCO2レーザーを照射したエナメル質の形状ならびに性状の変化について詳細に検討するとともに, 生じた変化を波長10.6μmの場合と比較検討することを目的として, まず種々のエネルギー密度で波長9.3μmのCO2レーザーをエナメル質に照射したときに生じた形態変化の検討とその三次元画像解析を行い, それらの結果を波長10.6μmの場合と比較検討した.

     材料と方法 : 新鮮ウシ抜去前歯唇側歯質から調製したエナメル質に, 波長9.3μmの試作CO2レーザー (タカラベルモント) を3種のエネルギー密度 (119.0J/cm2, 158.7J/cm2, 238.1J/cm2) でおのおの0.1秒ずつ照射した (それぞれ9.3L群, 9.3M群および9.3H群). また, 波長10.6μmのCO2レーザー (ベルレーザー, タカラベルモント) を同様の条件で照射した (それぞれ10.6L群, 10.6M群および10.6H群). これら照射面の形態変化を走査電子顕微鏡 (SEM) を用いて観察し, さらに, 形状解析レーザ顕微鏡を用いて3D画像解析を行った.

     結果 : 波長9.3μmのCO2レーザーを照射したエナメル質には, 波長10.6μmと同様の膨隆, 亀裂, 鱗片状, 硝子様あるいはクレーター状の形態変化が観察され, 3D画像とそのプロファイルにより膨隆が認められた. 3D画像解析では, 鱗片状の形態変化の面積, 膨隆の面積や高さ, クレーター状の形態変化の深さはいずれも9.3群のほうが10.6群の場合に比べ大きい値を示した. しかし亀裂は, 9.3群では照射野内に限局して認められたが, 10.6群では照射野外に及ぶものが認められた.

     結論 : 本実験の条件下では, 生じた形態学的変化の種類は, 波長にかかわらず同じであったが, その程度は, 同一エネルギー密度でも波長の違いにより異なっており, 波長9.3μmのCO2レーザーのほうが顕著であることが明らかになった.

  • 保尾 謙三, 高 波, 岩田 有弘, 吉川 一志, 王 人可, 黄 定明, 山本 一世
    2016 年 59 巻 6 号 p. 489-496
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー

     目的 : Er : YAGレーザー (以下, レーザー) は歯の硬組織切削に優れており, 臨床応用されている. しかし, レーザー照射象牙質は, レーザー非照射象牙質と比べてコンポジットレジンの接着強さの低下が報告されている. その原因として, レーザー照射象牙質表面に形成される変性層の影響が考えられている. そこで本研究では, レーザー照射象牙質表面に形成される変性層の除去を目的とした臨床的な器具による前処理が, レーザー照射象牙質に対するコンポジットレジンの接着強さに与える影響について検討を行った.

     材料と方法 : 抜去ウシ前歯唇側面に象牙質平坦面を形成後, 先端出力100mJ, 10ppsでレーザー照射を行った. 照射後, 以下の方法で照射象牙質面を処理した. 照射面を20秒間リン酸エッチング処理 (PA), 球型スチールバー#4で20秒間切削 (RB), スプーンエキスカベーターで20秒間切削 (SE), エアーアブレーションで20秒間噴射研削 (AA), スマートバー#2で20秒間切削 (SB). 接着システムにClearfil Mega Bond, コンポジットレジンにClearfil AP-Xを用いて通法どおり接着操作を行い, 引張接着強さを測定し, 一元配置分散処理およびSchefféの検定にて統計処理を行った (p<0.05).

     結果 : RB群, AA群は, レーザー非照射群と有意差が認められない程度まで接着強さが回復した. PA群, SE群, SB群は, レーザー非照射群と比べて有意に低い接着強さを示した.

     結論 : Er : YAGレーザー照射象牙質に対するコンポジットレジンの接着強さは, 球型スチールバーによる切削, あるいはエアーアブレーションによる噴射研削により改善することが認められた.

  • 森田 十誉子, 山崎 洋治, 湯之上 志保, 細久保 和美, 武儀山 みさき, 石井 孝典, 冨士谷 盛興, 千田 彰
    2016 年 59 巻 6 号 p. 497-508
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー

     目的 : 成人の歯周病健診の実施率は低く, 歯周病を簡易にスクリーニングし, かつ保健指導の実効性をもつ健診法が求められている. そこで著者らは, 唾液検査と質問紙調査を組み合わせた簡易な口腔保健指導プログラムの開発を試みた. そして, そのプログラムが健診受診者の歯科医院への受診行動および歯と歯肉の健康のためのセルフケア行動の変容に繋がることの検証を目的に, まず小集団を対象として調査検討し, 本プログラムの有用性について検索した.

     材料と方法 : 本研究の評価の対象者は, 四日市歯科医師会 (三重県) 主催の母子歯科保健事業に参加した児童の保護者110名のなかで, プログラム実施 (初回) から2カ月後に質問紙調査の回答が得られた75名 (男性1名, 女性74名, 平均年齢36.5歳) および8カ月後に質問紙調査と唾液検査に参加した61名 (男性1名, 女性60名, 平均年齢37.3歳) とした. 唾液検査では洗口吐出液の濁度およびヘモグロビン濃度を測定し, 質問紙調査では歯周病に関する自覚症状および口腔清掃習慣など11項目を評価した. これらの結果をレーダーチャートにまとめ, その場で歯科衛生士から対象者に個別に保健指導を行った.

     結果 : 1. 過去1年間に歯科医院受診がなかった対象者のうち, プログラム実施2カ月後および8カ月後に, それぞれ11.8%および16.7%の対象者が歯科医院を受診した. 2. デンタルフロスの使用頻度は, プログラム実施2カ月後に有意に増加したが (p<0.05), 8カ月後では初回に比べ差異は認められなくなった. また, 歯と歯肉の健康のためのセルフケア行動を新たに実行した対象者は, 2カ月後で50.7%, 8カ月後で32.8%であった. 3. 洗口吐出液の濁度およびヘモグロビン濃度は, 初回に比べて8カ月後に有意に減少した (それぞれp<0.05, p<0.01). 4. 過去1年間に歯科医院への受診のなかった対象者では, 濁度と歯科医院への受診との間に有意な関連性が認められ, 歯科医院受診は濁度の高い集団で多かった (p<0.05). また, ヘモグロビン濃度と歯と歯肉の健康のための新たなセルフケア行動の実行との間に有意な関連性が認められ, 新たなセルフケア行動はヘモグロビン濃度の高い集団で多かった (p<0.01).

     結論 : 唾液検査と質問紙調査を組み合わせた口腔保健指導プログラムの実施が, 歯科医院への受診行動および歯と歯肉の健康のためのセルフケア行動の変容に繋がる可能性があることが示唆された.

  • 八谷 文貴, 清水 大, 杉田 好彦, 野本 周嗣, 冨士谷 盛興, 千田 彰
    2016 年 59 巻 6 号 p. 509-515
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー

     目的 : He-Neレーザー照射が種々の細胞に及ぼすLLLT (Low Level Laser Therapy) 効果を検証することを目的に, 正常な細胞と病態学的に異常な細胞 (癌細胞) に対し種々の照射条件, すなわち種々のエネルギー密度と照射時間でHe-Neレーザー照射したときの細胞増殖活性を比較検討した.

     材料と方法 : 培養ヒト歯肉由来線維芽細胞 (HGF-1), 培養ヒト口腔頰粘膜由来扁平上皮癌細胞 (H157), および培養ヒト口腔底由来扁平上皮癌細胞 (H314) を研究に供した. 宮島らの方法に従い, チューブの底部に沈渣, ペレット状になった細胞に対し, 遠心管の下方からHe-Neレーザーを照射した. 照射条件であるエネルギー密度と照射時間は, L1 : 1.38J/cm2, 10分, L2 : 5.75J/cm2, 42分, L3 : 5.75J/cm2, 10分, Cont : レーザー非照射の4群に分けた. L1およびL2は, 遠心管の底部からレーザー照射口まで20.2mm離し, L3は遠心管の底部にレーザー照射口を接触させ, 上記のエネルギー密度になるように照射した. また, 出力は照射前後に毎回計測し, 変化のないことを確認した. レーザー照射した細胞を含む培養液を24穴ポリスチレンプレートを使用して, 3.0×104cells/wellにて播種し, 培養開始時, 3, 6, 12, 24, 48, 72時間あるいは120時間培養した. その後, 培養細胞をWST-8にて呈色反応させ, 96穴ポリスチレンプレートに分割し, マイクロプレートリーダーを用いて, 吸光度 (OD=450) にて6回計測し平均値を値とした. 得られた各データは, Student’s t-test (α=0.05) にて統計処理を行った.

     結果 : L1では, HGF-1およびH314において, Contに対し有意に高い細胞増殖活性を示した (p<0.05). L2では, いずれの細胞でも有意に低い細胞増殖活性を示した (p<0.05). L3では, いずれの細胞でも有意に高い細胞増殖活性を示した (p<0.05).

     結論 : 種々の照射条件でHe-Neレーザー照射した正常細胞と病態学的に異常な細胞に対するLLLT効果はいずれも認められ, 照射条件の設定がきわめて重要であることが明らかとなった. さらに生じたLLLT効果の程度は細胞ごとに異なっており, 種々の細胞は至適な照射条件を有することが新たに判明した.

正誤表
feedback
Top