目的 : セルフアドヒーシブレジンセメントの重合挙動に関する研究の一環として, セメント硬化時の重合収縮について検討した. また, セメントの無機フィラー含有量, セメント硬化後の熱膨張係数を測定するとともに硬化物のフィラー性状の走査電子顕微鏡 (SEM) 観察を行い, 考察資料とした.
材料と方法 : 実験に供試したセルフアドヒーシブレジンセメントは, G-CEM LinkAce (ジーシー, GL), BeautiCem SA (松風, BC), Maxcem Elite (Kerr, USA, ME) およびRely X Unicem 2 Automix (3M ESPE, USA, RU) の4製品である. また, 対照として前処理を必要とするレジンセメントのClearfil Esthetic Cement (クラレノリタケデンタル, EC), Rely X Ultimate (3M ESPE, UT) およびMultilink Automix (Ivoclar Vivadent, Liechtenstein, ML) の3製品を用いた. 無機フィラー含有量の測定は, 熱重量測定装置 (TG/DTA 6300, セイコーインスツル) を用いて行った. 熱膨張係数の測定に際しては, 熱膨張係数測定用試片を熱機械分析装置 (TMA/SS 6300, セイコーインスツル) を用いて加熱し, 30~80°C間の平均熱膨張係数 (×10
−6/°C) を求めた. 体積重合収縮率の測定に際しては, 精製水を満たしたディラトメーター内にレジンペーストを設置し, 照射に伴って生じる体積変化を体積重合収縮率 (vol%) として算出した.
成績 : 無機フィラー含有量は, 自己接着性レジンセメントでは, 55.3~66.9wt%, 従来型レジンセメントでは63.2~67.9wt%であり, ECが67.9wt%と最も高い値を示し, GLが55.3wt%と最も低い値を示した. 熱膨張係数は, セルフアドヒーシブレジンセメントで37.7~51.6×10
−6/°Cを, 従来型レジンセメントで37.2~56.5×10
−6/°Cであった. 体積重合収縮率に関しては, 照射開始から480秒後で2.14~4.30vol%であり, GLおよびECは, BC, ME, RU, UTおよびMLと比較して有意に低い値を示した.
結論 : 供試したセルフアドヒーシブレジンセメントの無機フィラー含有量, 熱膨張係数, 重合収縮率は, 製品によって異なるものの, 従来型レジンセメントに比較して同程度あるいは劣ることが示された.
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