日本歯科保存学雑誌
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59 巻 , 2 号
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原著
  • 中澤 悠里, 小正 聡, 髙橋 一也, 岡崎 定司, 小正 裕
    2016 年 59 巻 2 号 p. 151-160
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/06
    ジャーナル フリー
     目的 : 口腔清掃が十分に行えない要介護者などをはじめとする齲蝕感受性の高い高齢者にとって, QOLを保証・提供できる食品製作が期待される. そこで本研究では, 主要な代用甘味料の一つであるマルチトールに着目し, マルチトール含有クッキーを作製し, エナメル質表層の石灰化程度に及ぼす影響と試作したクッキーについてアンケート調査を行った.
     材料と方法 : 矯正的理由により抜去された健全な小臼歯からエナメル質ブロックを作製し, 試験試料とした. 任意の被験者より450mlの唾液を採取し, 唾液のみ, 唾液に5%マルチトール, 5%スクロース, 小麦粉, バター, 卵黄, ベーキングパウダー, マルチトール含有クッキー生地, スクロース含有クッキー生地をそれぞれ添加した物を作製し, それらにエナメル質ブロックを入れ, 37°Cの恒温器内で1週間浸漬した. 浸漬前後のpHを測定するとともにSEM, CMRによる表面観察, 石灰化程度の解析を行った. また, 健常成人102人に二重盲検法にて摂食させ, アンケートに回答させた.
     結果 : 唾液のみ, 5%マルチトール, 小麦粉, 卵黄, バター, ベーキングパウダーではほぼ脱灰像を認めなかった. 5%スクロース, スクロース含有クッキー生地では著しい脱灰を認めたものの, マルチトール含有クッキー生地ではほぼ脱灰を認めなかった. また, アンケート結果ではマルチトール含有クッキーは甘みが足りないという意見があったものの, 咀嚼しやすさや嚥下しやすさには満足度が高く, 多くの方が購入したいと答えた.
     結論 : 以上の結果から, マルチトール含有クッキーが高齢者のQOLを向上させる可能性のある食品として有用であることが明らかとなった.
  • 遠藤 肇, 石井 亮, 高見澤 俊樹, 大内 元, 崔 慶一, 川本 諒, 辻本 暁正, 宮崎 真至
    2016 年 59 巻 2 号 p. 161-168
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/06
    ジャーナル フリー
     目的 : セルフアドヒーシブレジンセメントの重合挙動に関する研究の一環として, セメント硬化時の重合収縮について検討した. また, セメントの無機フィラー含有量, セメント硬化後の熱膨張係数を測定するとともに硬化物のフィラー性状の走査電子顕微鏡 (SEM) 観察を行い, 考察資料とした.
     材料と方法 : 実験に供試したセルフアドヒーシブレジンセメントは, G-CEM LinkAce (ジーシー, GL), BeautiCem SA (松風, BC), Maxcem Elite (Kerr, USA, ME) およびRely X Unicem 2 Automix (3M ESPE, USA, RU) の4製品である. また, 対照として前処理を必要とするレジンセメントのClearfil Esthetic Cement (クラレノリタケデンタル, EC), Rely X Ultimate (3M ESPE, UT) およびMultilink Automix (Ivoclar Vivadent, Liechtenstein, ML) の3製品を用いた. 無機フィラー含有量の測定は, 熱重量測定装置 (TG/DTA 6300, セイコーインスツル) を用いて行った. 熱膨張係数の測定に際しては, 熱膨張係数測定用試片を熱機械分析装置 (TMA/SS 6300, セイコーインスツル) を用いて加熱し, 30~80°C間の平均熱膨張係数 (×10−6/°C) を求めた. 体積重合収縮率の測定に際しては, 精製水を満たしたディラトメーター内にレジンペーストを設置し, 照射に伴って生じる体積変化を体積重合収縮率 (vol%) として算出した.
     成績 : 無機フィラー含有量は, 自己接着性レジンセメントでは, 55.3~66.9wt%, 従来型レジンセメントでは63.2~67.9wt%であり, ECが67.9wt%と最も高い値を示し, GLが55.3wt%と最も低い値を示した. 熱膨張係数は, セルフアドヒーシブレジンセメントで37.7~51.6×10−6/°Cを, 従来型レジンセメントで37.2~56.5×10−6/°Cであった. 体積重合収縮率に関しては, 照射開始から480秒後で2.14~4.30vol%であり, GLおよびECは, BC, ME, RU, UTおよびMLと比較して有意に低い値を示した.
     結論 : 供試したセルフアドヒーシブレジンセメントの無機フィラー含有量, 熱膨張係数, 重合収縮率は, 製品によって異なるものの, 従来型レジンセメントに比較して同程度あるいは劣ることが示された.
  • —表面自由エネルギーと接着強さからの検討—
    石井 亮, 高見澤 俊樹, 辻本 暁正, 大内 元, 崔 慶一, 村山 良介, 宮崎 真至, 日野浦 光
    2016 年 59 巻 2 号 p. 169-177
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/06
    ジャーナル フリー
     目的 : 唾液汚染されたセラミックスへの表面処理がレジンセメントの接着性に及ぼす影響について, セラミックス表面の表面自由エネルギー, レジンセメントとの接着強さ測定およびSEM観察を行うことによって検討した.
     材料と方法 : 実験に供試したセラミックスブロックは, IPS e. max CAD (Ivoclar Vivadent, EM) とした. レジンセメントは, Multilink Automix (Ivoclar Vivadent, MA) を, セラミックスプライマーはMonobond Plus (Ivoclar Vivadent, MP) を用いた. また, 唾液汚染後のセラミックスに対する表面処理材として, Total Etch (Ivoclar Vivadent, TE) およびIvoclean (Ivoclar Vivadent, IC) を用いた. 表面自由エネルギー測定用試片の製作に際しては, 製造者指示に従って焼成したEMに対してIPS Ceramic Etching Gel (Ivoclar Vivadent, CE) を20秒間塗布したものを, Control試片として用いた. また, Control試片を37°Cヒト唾液中に浸漬したものを汚染被着面とし, この被着面に対してTE, ICおよびCE処理を行った試片に対して表面自由エネルギーの測定を行った. 接着試験に際しては, 表面自由エネルギー測定用試片と同様に調製したセラミックス被着面に対して, レジンセメントを塡塞した. これらの試片について, 37°C精製水中に24時間保管したものあるいは24時間保管後に温熱負荷を10,000回あるいは30,000回負荷したものを, 接着試験用試片とした. この試片に対して, 万能試験機を用いてクロスヘッドスピード毎分1.0mmの条件で剪断接着強さを測定した. また, 各処理後のEM表面についてSEM観察を行った.
     成績 : EMの表面自由エネルギーは, 唾液汚染によって低下するものの, 各表面処理によってその表面自由エネルギーは上昇した. このことから, 唾液汚染されたEM表面は, 各表面処理によって清掃効果を得たものと考えられた. セラミックスに対するレジンセメントの24時間後の接着強さは, 唾液汚染によって有意に低下するものの, 各表面処理を行うことによって向上した. 温熱負荷後のセラミックスに対するレジンセメントの接着強さは, いずれの条件においても24時間後と比較して低下するものの, その傾向は表面処理法によって異なるものであった.
     結論 : 本実験の結果から, 唾液汚染されたセラミックスへの表面処理がレジンセメントの接着性に及ぼす影響について検討した結果, 唾液汚染されたセラミックスに対する各表面処理は, 汚染面を改質することで表面自由エネルギーおよび接着強さの向上に寄与することが明らかとなった.
  • 工藤 値英子, 福家 教子, 稗貫 未希, 野呂 泰子, 北條 彩和子, 三辺 正人, 児玉 利朗, 高柴 正悟
    2016 年 59 巻 2 号 p. 178-186
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/06
    ジャーナル フリー
     目的 : 近年, 口腔インプラント治療の増加に伴い, 歯周病原細菌をはじめとする口腔細菌の感染症であるインプラント周囲炎が急増している. インプラント周囲炎は, 口腔インプラントの予後を左右する主な因子の一つであり, 細菌学的評価に基づいたインプラントを含む口腔内の感染管理の充実が求められる. そこでこのたび, 歯周病原細菌関連検査におけるインプラント周囲炎の予測因子の有用性について検討した.
     方法 : 歯周病安定期治療あるいはインプラントリコール目的で受診中である, 20歳以上の口腔インプラント治療歴があるメインテナンス患者5名 (メインテナンス群) と, supportive periodontal therapy患者 (SPT患者) 10名 (SPT群) を対象とした. 対象の歯周ポケットとインプラント周囲ポケットの深さを測定し, パノラマX線写真から骨吸収がスクリューに及ぶインプラント (bone resoption in implant screw : BRIS) の有無を調査した. さらに, 歯周病原細菌に対する血漿IgG抗体価検査と歯周病原細菌量の唾液検査 (定量PCR法) を行った. 得られたデータについて, メインテナンス群とSPT群間, BRIS非保有群とBRIS保有群間において統計学的に評価した.
     結果 : BRIS保有患者数が, メインテナンス群よりもSPT群に有意に多かった. Porphyromonas. gingivalisに対する血漿IgG抗体価のcut-off値1.68を用いて陽性者と陰性者間で比較すると, 抗体価の陽性者数がメインテナンス群よりSPT群に有意に多かった. また, 唾液中の歯周病原細菌検出者数をメインテナンス群とSPT群間で比較したところ, 唾液中のTannerella forsythiaの保菌者がメインテナンス群よりSPT群に有意に多かった. さらに, 歯周病原細菌に対する血漿IgG抗体価と唾液中の歯周病原細菌検出者数をBRIS非保有群とBRIS保有群間で比較した. その結果, P. gingivalisに対する血漿IgG抗体価の陽性者数と唾液中のT. forsythiaの保菌者が, BRIS非保有群よりBRIS保有群に有意に多かった.
     結論 : 血液と唾液を用いた歯周病原細菌関連検査が, インプラント周囲炎の予測因子として有用である可能性が示唆された.
  • 水木 ゆき菜, 松尾 涼子, 片岡 有, 真鍋 厚史
    2016 年 59 巻 2 号 p. 187-196
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/06
    ジャーナル フリー
     目的 : 近年, 歯を白くするブリーチングのニーズが増加するなかで, 薬剤の歯質浸透の影響についての研究がいまだ少ないのが現状である. 波長走査型光干渉断層装置 (Swept-source Optical Coherence Tomography : 以下, SS-OCT) は, 非侵襲下で硬組織の断層像を観察することができる装置である. 今回, SS-OCTを用いてブリーチング前後の歯質内部の画像変化を観察した. さらに得られた画像を数値化し, 顕微ラマン分光分析と比較することにより, 過酸化水素水の歯質内拡散動態を併せて検討した.
     材料と方法 : 試料はヒト抜去前歯を合計20本用いた. 本研究で用いたヒト抜去歯は, 昭和大学歯学部医の倫理委員会の承認 (承認番号2014-039号) を得たものである. 試料をブリーチング1回 (Group 1), 3回 (Group 2), 6回 (Group 3), 9回 (Group 4) にグループ分けした. 松風ハイライトを用いてブリーチングを行い, 術前後に測色とSS-OCTを用いて歯質の観察を行った. 術後, 顕微ラマン分光分析により過酸化水素水の特有波長をエナメル質から象牙質まで測定した.
     成績 : ブリーチング前後のL*a*b*を測定した結果, すべての試料にブリーチング効果が認められた. ΔE*abはブリーチング回数の増加に伴い大きくなった. SS-OCTで得られた画像を絶対値化し数値にて表記した術前後のグラフを比較すると, 術後エナメル質表層の光反射強度が増加し, エナメル象牙境付近で光反射強度が減少する傾向が観察された. SS-OCTで得られた画像を数値化したデータの統計学的分析を行ったところ, 術前後でエナメル質表層, エナメル象牙境付近にてそれぞれ有意差が認められた (Student’s t-test, p<0.05). 顕微ラマン分光分析では, 過酸化水素水の特有波長である870cm−1付近が象牙質表層で強く観察された.
     結論 : SS-OCTと顕微ラマン分光分析の比較により, SS-OCTで得られた画像の変化は過酸化水素水の歯質内浸透によって組織構造変化を起こしたためだと考えられた. SS-OCTは被曝なく安全に歯質内面を観察することが可能であり, ブリーチング効果の新しい評価法として有効性があることが示唆された.
  • —漂白・着色抑制・脱灰抑制—
    小川 弘美, 黒川 千尋, 星野 睦代, 玉崗 慶鐘, 東光 照夫, 柴 肇一, 真鍋 厚史
    2016 年 59 巻 2 号 p. 197-205
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/06
    ジャーナル フリー
     目的 : 歯の漂白法は歯科臨床において不可欠な治療となりつつあるが, 処置後, 有色飲食物や酸性食品の摂取が制限される. 近年, 着色物や酸性物の影響を軽減できるとされるポリリン酸含有の漂白剤が臨床に紹介されている. 本研究は, ヒト抜去歯を用いポリリン酸含有の試作漂白剤の漂白・着色抑制・脱灰抑制効果を検討したものである.
     材料と方法 : 35本のヒト抜去歯を漂白効果の検討に使用した. 処理は, 10%ポリリン酸と10%過酸化尿素の混合溶液 (PPa+CP), 10%ポリリン酸 (PPa), 10%過酸化尿素 (CP), Nite White Excel (NWE), 人工唾液サリベート (SA) の5群に分け各試片数は7とした. 各群は1回2時間, これを14回行い, 処理前後のL*a*b*値から色差ΔE*ab値を算出した.
     別の35本のヒト抜去歯を着色抑制効果の検討に用いた. 漂白効果と同様の試片を用い, 各群で2時間処理後, ただちに着色液 (珈琲液) に15分間浸漬し着色液浸漬前後のL*a*b*値から色差ΔE*ab値を算出した.
     脱灰抑制効果の検討は, 走査型電子顕微鏡 (SEM) 観察で2本, キャピラリー電気泳動試験で3本のヒト抜去上顎前歯を使用し, それぞれ, エナメル質表面をPPa, SAまたは蒸留水で2時間処理した後, 40%リン酸で30秒間処理し水洗したものを試料とした. 処理後のエナメル質表面をSEM観察 (n=2), 処理後の希釈液についてカオチン分析キットを用いキャピラリー電気泳動でCa溶出量を測定した (n=3).
     結果 : 漂白後, NWE, PPa+CP, CPの色差ΔE*abは大きな値を示したが, PPa+CPとNWEの間に有意差は認められなかった. 色素沈着の検討では浸漬後, PPa+CP, PPaの色差ΔE*abはCPとSAと比較し有意に低い値を示した. SEM像は, 両群ともにエナメル小柱断面の構造が認められ, PPa群と比較してSA群がより深層まで脱灰されている像が観察された. Ca2+はSA群での溶出量を100%とすると, PPa群では66.3%となった.
     結論 : 本研究では, ポリリン酸を含有した試作漂白剤は従来の漂白剤と同等の漂白効果があり, 着色抑制・脱灰抑制効果を有することが示唆された.
  • 井出 祐樹
    2016 年 59 巻 2 号 p. 206-218
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/06
    ジャーナル フリー
     目的 : エストロゲンは骨組織のリモデリングに大きな影響を与えるホルモンとして, 古くから知られている. その受容体は骨芽細胞や破骨細胞において確認されているが, 近年では象牙芽細胞においてもその存在が確認されている. しかし, 象牙芽細胞のエストロゲン受容体 (ER) の機能については不明な点が多く, 明確にされているとはいいがたい. そこで今回, ラットエストロゲン欠乏モデルを作製し, エストロゲンが象牙芽細胞の機能に及ぼす影響を組織化学的に検討した.
     材料と方法 : 実験は10週齢の雌SDラット96匹を用いた. 卵巣を摘出したものをOVX (Ovariectomized rats) 群, 開腹のみ行ったものをSham (Sham-operated rats) 群, OVX手術の翌日からエストラジオール (E2) を投与したものをOVX+E2群とした. 全群とも4週間飼育し, 日ごとの体重変化の測定を行った. その後, 修復象牙質形成を誘導するため, 下顎両側第一臼歯に直径1.0mmの窩洞形成を行い, 光重合型コンポジットレジンを充塡した. 術後3, 7, 14日間飼育した後, 歯を摘出し試料とした. 同時に血液および大腿骨を採取し, 血中E2濃度測定と二重エネルギーX線吸収法 (DEXA法) にて骨密度測定を行った. 各試料はH-E染色を行い, 14日の群では, Alcian blue染色およびERα, βに対する免疫組織化学染色も行った. 一方, 第二象牙質の形成量を比較するため, 窩洞形成を行っていない各群に対し3日間隔でCalceinの投与を行い, 蛍光顕微鏡にて観察した.
     結果 : OVX群は, Sham群, OVX+E2群と比較して, 体重の増加と血中E2濃度の低下を示した. また, DEXAおよびH-E染色の結果から, 骨密度および骨梁の減少が認められ, 骨粗鬆症の病態を呈していることが示された. 免疫組織化学染色の結果から, ERα, βが象牙芽細胞に局在することが示された. 窩洞形成後にみられる修復象牙質の形成量は, Sham群と比較してOVX群が低くなり, E2の投与によりその形成量の減少が抑制された. 第二象牙質の形成量においても同様の傾向が認められた.
     結論 : OVX群は骨粗鬆症の症状を呈し, 修復象牙質および第二象牙質の形成量が抑制されることが示された. OVX+E2群では, そのような病態を示さず, 各象牙質形成量の減少が抑制された. 以上の結果から, エストロゲンが象牙芽細胞の機能に関与することが示唆された.
  • 高井 英樹, 相羽 悠喜子, 蔦森 麻衣, 廣松 勇樹, 加藤 彩子, 丹野 努, 中山 洋平, 小方 頼昌
    2016 年 59 巻 2 号 p. 219-227
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/06
    ジャーナル フリー
     目的 : サンゴ焼成カルシウムを配合したアルカリ性ノンアルコールタイプの洗口剤 (マグナキャプス・デントセーフ) の殺菌効果および臨床的有用性を解析することを目的とした.
     材料と方法 : サンゴ焼成カルシウム水溶液10ml中にPorphyromonas gingivalis (8.5×108/ml), Streptococcus mutans (7.4×107/ml), Escherichia coli (9.4×107/ml), Legionella pneumophila (8.0×108/ml), Salmonella enterica (8.8×107/ml), Staphylococcus aureus (5.0×107/ml) またはVibrio parahaemolyticus (3.1×107/ml) 菌液を0.1ml加えて室温で静置し, 継時的に回収して, 生菌数を測定した. 次に, 39歳から86歳の男女20名を被験者とし, サンゴ洗口群10名とプラセボ洗口群10名の2群に分け, 1日3回 (1回約10ml, 1分間洗口), 1カ月間使用前後に, プロービングポケット深さ (PPD), 臨床的アタッチメントレベル (CAL), ポケット測定時の出血 (BOP), Plaque Index (PlI) およびGingival Index (GI) の測定を行った. さらに, 洗口剤使用前後に歯肉溝滲出液 (GCF) を最深PPD部位から採取し, PCRインベーダー法で歯周病原菌3菌種 (Aggregatibacter actinomycetemcomitans, Prevotella intermedia, P. gingivalis) の計測を行った.
     結果 : サンゴ焼成カルシウム水溶液中では, P. gingivalisは1分後, E. coliV. parahaemolyticusは5分後, S. mutans, L. pneumophilaおよびS. entericaは15分後, S. aureusは60分後に生菌が検出されなくなった. サンゴ洗口群およびプラセボ洗口群の両者で, 洗口前と比較して洗口1カ月後にPPD, CAL, BOP, GIおよびPlIに有意な改善は認められなかったが, サンゴ洗口剤1カ月使用後の, BOP, GIおよびPlIに改善傾向が認められた. サンゴ洗口群およびプラセボ洗口群の両者で, 洗口後の平均総菌数, A. actinomycetemcomitans数, P. intermedia数およびP. gingivalis数は, 洗口前と比べて有意な減少は認められなかった.
     結論 : サンゴ焼成カルシウム水溶液は, 今回使用した6菌種に対して殺菌作用を有していた. サンゴ洗口剤とプラセボ洗口剤を1カ月間使用前後の歯周病関連臨床パラメーターと最深PPD内からのプラーク中の細菌検査の結果を比較した結果, 両群間に有意差は認められなかった. しかし, サンゴ洗口群で臨床パラメーター中のBOP, GIおよびPlIに改善傾向が認められたことから, さらに長期の比較検討が必要であると考えられた.
  • —エナメル質耐酸性, 象牙細管封鎖性および元素の取り込みについて—
    韓 臨麟, 福島 正義
    2016 年 59 巻 2 号 p. 228-235
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/06
    ジャーナル フリー
     緒言 : わが国におけるフッ化物配合歯磨剤の普及率が9割に達している現在, フッ化物の効果をより確実なものにするための研究が進められている. 最近では, 機能化されたリン酸三カルシウム (fTCP) とフッ化物を配合した歯磨剤が販売されている. 本研究は, この歯磨剤の機能的効果を解明するため, 歯質耐酸性, 象牙細管の封鎖性および元素の取り込みなどについて検討を行った.
     材料および方法 : フッ化物と機能化されたfTCPを同時配合した歯磨剤 : Clinpro toothpaste (3M ESPE, USA, 以下, クリンプロ歯磨剤) を実験に用いた. また, 口腔環境のシミュレーションとして人工唾液を用いた. 実験にはヒト新鮮抜去歯を用いた. クリンプロ歯磨剤を用いて, 抜去歯のエナメル質面に1, 4週あるいは8週間の処理を行った後, 乳酸脱灰液にて脱灰させ, EDTA滴定法による脱灰中のカルシウム含有量を測定した (n=5). また, ヒト抜去歯の歯根試片を用いて人工象牙質知覚過敏症試片を作製し, クリンプロ歯磨剤による1, 4週あるいは8週間 (n=5) の処理をそれぞれ行った. これら試片について, 走査電子顕微鏡で処理面の微細構造的観察を行った. さらに, 各処理期間の試片について, 開口象牙細管の封鎖率を算出した. 一方, 実験方法の2) に準じて, クリンプロ歯磨剤を1, 4週あるいは8週間処理した根面象牙質試片 (各n=3) について波長分散型マイクロアナライザーを用いて, Ca, F, Pの検索を行った.
     結果 : クリンプロ歯磨剤未処理の対照試片と比べて, 1週間処理した試片ではCa2+溶出量の減少を示し, また, 4週間あるいは8週間処理し続けた場合, Ca2+溶出値はさらに低下していた. また, クリンプロ歯磨剤処理1, 4週あるいは8週間後の象牙質面試片では, 処理期間が長いほど封鎖された象牙細管の数が増加していた. さらに, クリンプロ歯磨剤処理の象牙質界面部におけるCa, PおよびFの取り込みは, 処理期間の長い試片ほど深く浸透していたことが認められた.
     考察 : クリンプロ歯磨剤の処理により, 象牙細管開口径の狭窄化や封鎖などが観察されたことにより, 本剤の象牙質知覚過敏症の抑制効果が期待できるものと考えられる. また, クリンプロ歯磨剤処理後では, エナメル質脱灰量の減少やF, CaあるいはPが硬組織に取り込まれたことから, 歯質強化効果が示唆され, う蝕進行抑制に寄与することが期待される.
症例報告
  • 高林 正行, 増田 宜子
    2016 年 59 巻 2 号 p. 236-242
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/06
    ジャーナル フリー
     緒言 : 根尖病変の有無にかかわらず, 失活した根未完成永久歯の治療はApexificationが行われてきた. しかしこの治療法では根が成長しないなど, ほかにも欠点が多い. 近年Revascularizationと題し, 失活した根未完成永久歯に対し行った治療により根の伸長および幅径の増加が認められた症例の報告があり, その治療法について近年さまざまな研究および報告がされている. 今回, 昭和大学歯科病院歯内治療科にて適応症の患者に対し治療を行った症例を報告する.
     症例 : 患者は15歳の女性. 右顎が腫れたと当院歯内治療科に紹介された. 診察したところ患歯は下顎右側第二小臼歯, Regenerative endodontic treatmentの適応と判断し, 治療方針の説明を行い同意を得て治療を開始した. 治療はAAE Clinical Considerations for a Regenerative Procedureに則って行い, 根管充塡後経過を追っているが臨床症状の再燃はなく, X線診査においても根尖病変は縮小の傾向を認め, 根尖部および根管内に硬組織の添加が確認できた. 隣在歯に比べ若干の歯冠部の変色を認めるが, 根管充塡後12カ月の段階で電気歯髄診にて陽性反応があり経過は良好である.
     結論 : Regenerative endodontic treatmentは失活した根未完成永久歯の治療に有用であると考えられる. 引き続き本症例の経過観察を行う予定である.
正誤表
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