日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
Print ISSN : 0387-2343
ISSN-L : 0387-2343
59 巻 , 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
総説
原著
  • 大久保 美佐, 村樫 悦子, 石黒 一美, 武内-五十嵐 寛子, 沼部 幸博
    2016 年 59 巻 4 号 p. 317-332
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

     目的 : 本研究の目的は, Nd : YAGレーザーの歯肉の創傷治癒過程に与える影響を細胞レベルで検索するために, ヒト歯肉線維芽細胞 (Gin-1) に対するNd : YAGレーザー照射のLLLTによる影響を細胞増殖, 細胞遊走能, 細胞増殖因子FGF-2, TGF-β1の発現, さらに熱ショックタンパク質 (HSP47) による熱の細胞傷害について探索することとした.

     方法 : Nd : YAGレーザーの照射条件0.5W (90μs/pulse, 100mJ/s, 5pps), 1.0W (90μs/pulse, 200mJ/s, 5pps), 2.0W (90μs/pulse, 400mJ/s, 5pps), 照射距離20mm, 照射時間30秒とした. 細胞増殖はMTT改良法を用いて, 照射後1, 3, 5日の計測を行った. ELISA法を用いて, 1, 2, 3日の培養上清を回収しFGF-2, TGF-β1の計測を行った. 細胞遊走試験を用いて, 5, 24時間の閉鎖率をスクラッチ形成直後と比較した. 細胞傷害については3時間, 1, 3日のLactate dehydrogenase (LDH) の計測を行った. HSP47はNd : YAGレーザー照射後3時間で細胞の固定処理を行い, その後蛍光免疫染色, 共焦点レーザーによる観察を行った.

     結果 : 細胞増殖は, 3日ではコントロール群と比較してすべてのレーザー照射群で, 5日目では200mJ/s, 400mJ/s群で統計学的有意な増加が認められた. FGF-2は, 1, 2日ではコントロール群と比較してすべてのレーザー照射群で統計学的有意な発現の増加が認められた. 3日では100mJ/sで統計学的有意な発現の増加が認められた. TGF-β1は, 1, 2日では200mJ/s群でコントロール群と比較して統計学的有意な発現の増加が認められた. 3日では100mJ/s, 200mJ/s群でコントロール群と比較して統計学的有意な発現の増加が認められた. 細胞遊走能は, 5時間ではコントロール群と比較して200mJ/s群で統計学的有意な増加が認められた. 24時間では, コントロール群と比較して200mJ/s, 400mJ/s群で統計学的有意な増加が認められた. LDHは, コントロール群と比較してすべてのレーザー照射群で統計学的有意な差が認められなかった. HSP47はすべての群で発現が認められた.

     結論 : 本研究のNd : YAGレーザー照射条件は, 細胞に対して傷害を与えることなくLLLTによる細胞活性化を促進したことが示唆された.

  • 黒川 弘康, 白圡 康司, 柴崎 翔, 秋葉 俊介, 今井 亜理紗, 須田 駿一, 矢吹 千晶, 鈴木 敏裕, 宮崎 真至
    2016 年 59 巻 4 号 p. 333-342
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

     目的 : 光線照射の有無がユニバーサルアドヒーシブ応用型レジンセメントの初期接着挙動に及ぼす影響について検討した.

     材料と方法 : 供試したユニバーサルアドヒーシブ応用型レジンセメントは, リライエックスアルティメイトレジンセメント (RXU) であり, 対照としてクリアフィルエステティックセメント (CEC) を用いた. 硬化させたレジン試片の被着面をシランカップリング処理し, 練和したセメント泥を塗布, 各製造者指示条件で処理したウシ歯象牙質被着面に圧接した. 余剰セメントを除去し, 30秒間光線照射を行った, あるいは照射をしないものをそれぞれ接着試片とした. これら接着試片を37±1°C, 相対湿度90±5%の条件で15分および1, 6, 12, 24時間保管した後, 剪断接着強さを測定した. また, 接着試験後のレジン側破断面および象牙質とレジンセメントの接合界面について, SEM観察を行った.

     成績 : 供試したいずれのレジンセメントにおいても, 各測定時期における接着強さは, 非照射群と比較して照射群で有意に高い値を示した. また, 各測定時期における接着強さをセメント間で比較すると, 光線照射の有無にかかわらず, CECと比較してRXUで有意に高い値を示した. 24時間保管した試片の接着試験後の破断面のSEM観察では, 非照射群では, いずれのレジンセメントにおいてもセメントの歯質からの剝離が観察され, RXUでレジン試片表面に残留したセメントの凝集破壊が観察されたのに対し, CECでは残留したセメント内に多数の空隙が観察された. 照射群において, RXUで象牙質およびレジン試片の凝集破壊が観察されたのに対し, CECではセメントの歯質からの剝離とともにレジン試片表面に残留したセメントの凝集破壊が観察された. 接合界面のSEM観察からは, 非照射群において, RXUでアドヒーシブからレジンセメントへの移行部に空隙の形成が, CECでは接合界面付近のレジンセメントに亀裂の伸展が観察された. 一方, 照射群ではいずれのレジンセメントにおいても密な接合状態が観察された.

     結論 : ユニバーサルアドヒーシブ応用型レジンセメントの初期接着強さは照射群と比較して非照射群で有意に低い値を示したことから, ユニバーサルアドヒーシブ応用型レジンセメントを臨床使用するにあたっては, 光線照射条件に留意することが重要であることが示唆された.

  • 鷲尾 絢子, 高倉 那奈, 伊東 優, 宮原 宏武, 花田 可緒理, 浦田 真梨子, 松山 篤史, 藤元 政考, 大塚 麻衣, 中川-吉居 ...
    2016 年 59 巻 4 号 p. 343-350
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

     目的 : これまでにわれわれは地域歯科医療との連携を目的として, 当科に来院した新患の治療開始前の診断 (初診時診断) に関する調査を行ってきた. 今回, より正確な分析を行うため, 当科を受診しマイクロスコープなどを用いた診断から治療のプロセスを経た結果としての最終的な診断 (確定時診断) を用いて, 症状および処置内容の関連性を調査した.

     材料と方法 : 2011年度から2013年度の3年間に九州歯科大学附属病院保存治療科を受診した初診患者で治療が終了した651名のなかから, 不可逆性歯髄炎 (Pul) あるいは根尖性歯周炎 (Per) の確定時診断名がついた382名439歯を調査対象とし, 診断内容, 年齢, 歯種, 紹介率, 処置内容について調査した.

     結果 : 診断名がPul, Perであった症例の割合は, 初診時および確定時診断の間で大きな差はなかった. 年齢構成はPul症例で20歳代 (26.6%), Per症例で60歳代 (21.3%) が最多であり, 歯種別ではPul, Per症例ともに下顎大臼歯部が最多であった. Pul, Per症例の紹介患者数は全体の半数以上の割合を占めていた. またPer患者では再歯内治療の割合が多かった.

     結論 : 以上の結果は, 一般歯科の高頻度治療の一つである歯内治療においても大学附属病院のような第二・三次医療機関が重要な役割を果たしていること, 再歯内治療の割合を抑制することが歯科医療のレベルを向上させるうえで喫緊の課題であること示している.

  • 加藤 昭人, 宮治 裕史, 小川 幸佑, 百瀬 赳人, 西田 絵利香, 村上 秀輔, 吉田 崇, 田中 佐織, 菅谷 勉, 川浪 雅光
    2016 年 59 巻 4 号 p. 351-358
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

     目的 : β-三リン酸カルシウム (β-TCP) は骨補塡材として臨床応用されているが, 吸収が遅いため組織置換に時間を要することや, 残留材料の汚染による不良な治癒発現の問題がある. そこでわれわれはナノ化技術を応用し, ナノサイズ化したβ-TCP粒子をコラーゲンスポンジに配合したβ-TCPナノ粒子配合コラーゲンスキャフォールドを創製した. このスキャフォールドをラット頭蓋骨に応用した研究では, 骨増生効果が認められ, またコラーゲンスポンジよりもすみやかに吸収されることが報告された. そこで本研究では, β-TCPナノ粒子配合コラーゲンスキャフォールドをイヌ抜歯窩へ埋植して骨形成効果を評価した.

     材料と方法 : β-TCP粒子 (平均粒径2.3μm) をナノ粒子に粉砕後, コール酸ナトリウムを分散剤として, β-TCPの水分散液を作製した. 次にコラーゲンスポンジを分散液に浸漬した後, 洗浄乾燥してβ-TCPスキャフォールドを作製した. ナノ粒子の付着状態を観察するために, スキャフォールド表面のSEM観察を行った. イヌ抜歯窩埋植試験はビーグル犬の上顎第一前臼歯抜歯窩に, 実験群ではβ-TCPナノ粒子配合コラーゲンスキャフォールド, 対照群ではコラーゲンスポンジの埋植を行い, 経時的なエックス線写真撮影による評価, ならびに2, 5週後における組織学的評価を行った.

     結果 : SEM観察においてコラーゲンスポンジ線維表面に100nm程度のβ-TCPナノ粒子が認められ, スポンジ内部は粒子で埋まることなく維持されていた. 抜歯窩埋植試験の結果, 実験群のエックス線写真では対照群と比較して不透過性の亢進が早期に認められた. 組織学的観察では, 2週の実験群で抜歯窩内に既存骨から連続する新生骨が多く認められ, スキャフォールド内部に多量の細胞や血管を観察した. 一方, 2週対照群の新生骨はわずかであった. 5週の実験群では抜歯窩内に残存スキャフォールドは認められず, 中心部まで新生骨を認めた. 対照群5週では新生骨が観察されたが, 一部の標本では抜歯窩中心部が結合組織と残存コラーゲンスポンジで占められていた. 2週における新生骨形成率は, 実験群が対照群に比べて約3倍以上と有意に大きく, 埋植材残存率は, 実験群が有意に小さかった.

     結論 : β-TCPナノ粒子配合コラーゲンスキャフォールドは良好な生体親和性・吸収性を示し, イヌ抜歯窩の骨形成を促進した.

  • 大木 彩子, 松田 康裕, 橋本 直樹, 奥山 克史, 船戸 良基, 川本 千春, 小松 久憲, 佐野 英彦
    2016 年 59 巻 4 号 p. 359-369
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

     目的 : フッ化物バーニッシュは, 欧米諸国でう蝕の予防などに用いられているフッ化物徐放性材料である. 本研究では, フッ化物バーニッシュの材料除去後の残存状態と, 自動pHサイクル装置を用い, 材料を塗布した根面象牙質の脱灰抑制効果およびフッ素の取り込みを検討した.

     材料と方法 : 材料は, フッ化物バーニッシュ2種類 (CTX2 Varnish (FVC), White Fluoride Varnish (FVB) ) と従来型グラスアイオノマーセメント (Fuji Ⅸ GP FAST CAPSULE (FN) ) とした. 使用したヒト抜去大臼歯 (n=9) のうち1本は, 歯根面表層より10×5mmの試料を3個作製し, 各歯表面に各材料をそれぞれ塗布し, 37°C脱イオン水中に24時間浸漬した. その後, 塗布した材料の半分を除去し, SEM, EDS, In-air μPIXE/PIGEにより材料除去前後の歯表面を観察し, 残存状態を評価した. 残りの8本はそれぞれ頰舌的・近遠心的に4分割した. 各歯の3分割試料にそれぞれ各材料を塗布し, 残りは材料を塗布しないコントロール (Con) とした. 37°C脱イオン水中に24時間浸漬後, 塗布部位が含まれるように歯軸に平行に切断し, 材料除去後, 厚さ約200μmに調整した. その後, 材料を塗布した面以外すべてをワックスで被覆した. 自動pHサイクルを連続4週間稼働させ, 各試料のTransverse Micro Radiography (TMR) をpHサイクル開始前, 2, 4週後に撮影し, CEJに近接した象牙質の脱灰量の変化を評価した. また, pHサイクル開始4週後にIn-air μPIXE/PIGEを行い, フッ素の取り込みを評価した.

     成績 : 材料除去後に一部, 材料の残存を認めた. 脱灰量は, 2週後ではすべての材料群でConと比較して有意に低い値を認めた. 4週後ではFVBおよびFNはConと比べ有意に低い値が認められた. またフッ素の取り込みでは, 全群間に有意差は認められなかったが, 材料塗布群はConと比較して多くのフッ素が取り込まれる傾向を示した.

     結論 : フッ化物徐放性材料は, 機械的に材料を除去した後も材料が一部残存し, またフッ化物バーニッシュは, グラスアイオノマーセメントと同程度に根面象牙質の脱灰抑制効果があり, フッ素の取り込みを認めた.

  • 中村 裕子, 井出 祐樹, 鈴木 瑛子, 上田 堯之, 日下 洋平, 横瀬 敏志
    2016 年 59 巻 4 号 p. 370-380
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

     目的 : MTA (Mineral Trioxide Aggregate) セメントが直接覆髄における歯髄細胞の硬組織形成を早期に誘導することが臨床報告されている. しかし, どのような作用機序で働き, 硬組織形成に関与しているか, その詳細は明確ではない. われわれはこれまでに, 象牙芽細胞の分化と機能に対してWntシグナルが重要な役割を果たしていることを明らかにしてきた. そこで今回は, ラットの露髄部に覆髄材としてMTAセメントを用いることにより, 早期における歯髄再生と硬組織形成に及ぼす作用を形態学的に観察し, さらにDSPP・Wnt抗体を用いた免疫組織染色を行うことで作用機序の一端を解明することを試みた.

     材料と方法 : SDラット臼歯咬合面に直径約1mmの露髄面を作成した. その後MTAを用いて露髄面を覆髄し, その上部を光重合型コンポジットレジンにて修復した. 術後5, 7, 10日および21日後, 上顎骨を摘出し, 10%中性緩衝ホルマリン液にて固定した. 各試料に対して, ヘマトキシリン・エオジン (H-E) 染色による組織学的観察を行うとともに, DSPP抗体・Wnt抗体を用いた免疫組織染色を行い観察した.

     結果 : 組織学的な観察からMTAによる覆髄処置群は, 露髄直下に血管様組織の増殖と被蓋硬組織の形成が認められ, 周囲には象牙芽細胞様細胞の配列が認められた. 21日経過群では, 露髄部を覆うdentin bridgeの完成が認められた. 免疫組織化学的観察から, 7日経過後のMTA群の新生象牙芽細胞様層にWnt10aの陽性反応が認められた. さらに抗DSPP染色でも, 陽性反応が観察された.

     結論 : MTAを用いた直接覆髄後の歯髄組織は, 早期に血管様組織の形成と象牙芽細胞様細胞の分化誘導が行われ, 修復象牙質が形成されていく様子が観察された. また, 直接覆髄処置による象牙芽細胞の分化にWntシグナル経路が関与することが示唆された.

feedback
Top