日本歯科保存学雑誌
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60 巻 , 1 号
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原著
  • 古澤 一範, 保尾 謙三, 吉川 一志, 山本 一世
    2017 年 60 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー

     緒言 : 日本では高齢化が進んでいるが, 8020運動などの普及活動や歯科治療の発展により, 国民1人当たりの残存歯数は増加している. それに伴いう蝕や歯周病以外の非う蝕性疾患, 特に, 実質欠損を認めず, 知覚過敏症を呈する患者が増加している. その原因の一つとしてエナメル質の微細亀裂 (以下, エナメルクラック) が考えられる. 健全歯のエナメルクラック発生率は, 40歳以降では95%を超えるとの報告もある. 筆者らは即効性や簡便性などの点から, 象牙質知覚過敏抑制材 (以下, 知覚過敏抑制材) を用いてエナメルクラックを封鎖することはできないかと考えた. そこで本研究では, 知覚過敏症罹患モデル歯質を用いて, 透過抑制率の測定を行い検討した. また, 知覚過敏抑制材塗布後, 蒸留水と再石灰化溶液に保管することにより, 環境が封鎖性に与える影響についても同時に検討を行った.

     材料と方法 : エナメル亀裂試料をう蝕のない健全ウシ歯を用いて作製した. Pashleyらの報告に準じて作製した装置を用いて, 試料を装置に接続して内圧が25mmHgになるように規定した. 実験に使用した知覚過敏抑制材として, SUPER SEAL (SS), MS Coat F (MS), Nano Seal (NS), Teethmate Desensitizer (TD), G-Premio BOND (GP) を用いた. 各知覚過敏抑制材を塗布後, エナメルクラックの透過抑制率を測定した. 測定後, 試料を蒸留水中 (DW群) または再石灰化溶液 (RS群) に保管し, 1週間後, 1カ月後ならびに3カ月後にもエナメルクラックの透過抑制率を測定した.

     結果 : SS, TD, NSのDW群では, 塗布直後の透過抑制率に比べ, 1, 3カ月後の透過抑制率は有意に高い値を示した. SS, NSのRS群では, 塗布直後の透過抑制率に比べ, 1, 3カ月後の透過抑制率は有意に高い値を示した. TDのRS群では, 塗布直後の透過抑制率に比べ, 3カ月後の透過抑制率は有意に高い値を示した. MSのDW群, RS群では, 塗布直後の透過抑制率に比べ, 1週間後, 1, 3カ月後の透過抑制率は有意に高い値を示した. GPのDW群, RS群ともに塗布直後より高い封鎖性が得られたことにより, 1週間後, 1, 3カ月後と比べ有意差は認められなかった.

     結論 : 以上より, 各知覚過敏抑制材において効果発現の時期などに差はみられるものの, 繰り返し塗布することにより効果が表れることが示唆された.

  • 鷲尾 絢子, 吉居 慎二, 諸冨 孝彦, 北村 知昭
    2017 年 60 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー

     目的 : 感染根管治療等の再歯内治療では, 根管内にある充塡材を除去し根尖孔を穿通する必要がある. 本研究では, 新規に開発したバイオガラス配合シーラー (以下, BG配合シーラー) を用いた根管充塡の除去性と根尖孔穿通の可否を検討するとともに, 再根管形成・洗浄後の根管象牙質の状態を分析した.

     材料と方法 : ヒト抜去歯にBG配合シーラーおよび既存の各種シーラー (ユージノール系・非ユージノール系・バイオセラミック系) を用いて根管充塡を行い, 4週間後にガッタパーチャポイント除去器具で充塡材を除去した. 除去時に器具が作業長に到達する時間を測定するとともに, 根尖孔穿通の可否を確認した. さらに, 再根管形成・洗浄した被験歯根管壁の状態を電界放射型走査電子顕微鏡 (以下, FE-SEM) で分析した.

     成績 : 除去性試験では, 既存の根管充塡用シーラー同様, BG配合シーラーを用いた充塡材の除去および根尖孔穿通は可能であった. 再根管形成・洗浄後のFE-SEM観察では歯冠側および中央部根管の象牙細管は開口していたが, 根尖側では既存のシーラーを用いた場合と同様に象牙細管開口は非常に少なかった.

     結論 : 根管充塡用シーラーとして適切な物性を有するBG配合シーラーは, 硬化後も根管内からの除去が可能であった. 以上の結果は, BG配合シーラーを用いた根管充塡歯に対する再歯内治療が可能であることを示唆している.

  • 松﨑-田中 久美子, 大原 直子, 澁谷 和彦, 小野 瀬里奈, 横山 章人, 山路 公造, 𠮷山 昌宏
    2017 年 60 巻 1 号 p. 22-31
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー

     目的 : 象牙質知覚過敏抑制材の使用がコンポジットレジン修復に及ぼす影響を検討することを目的とし, 象牙細管開口モデルに対して知覚過敏抑制材を塗布し, セルフエッチング接着システムの接着性の評価を行った.

     材料と方法 : ヒト抜去小臼歯を用いて作製した象牙細管開口モデルに対して, 3種の象牙質知覚過敏抑制材 (MSコートONE, Fバニッシュ, ナノシール) を塗布し, 表面性状を形態学的に評価した. また, 知覚過敏抑制材を塗布し, 7日間37°C水中保管後にクリアフィルメガボンドFAを用いて歯面処理を行った被着面を形態学的に検討した. さらに, コンポジットレジンを築盛して作製した接着試料体に対して微小引張接着試験を行い, 接着強さを比較・検討した.

     結果 : 3種の象牙質知覚過敏抑制材を塗布した象牙細管開口モデル表面においては, いずれも知覚過敏抑制効果を表す形態学的特徴を示し, 接着システムのプライミング効果に違いを認めたものの, 接着強さは象牙細管開口モデル群ならびに3種の象牙質知覚過敏抑制材塗布群の間に有意差を認めなかった (p>0.05).

     結論 : 象牙細管開口モデルに対して本研究で使用した3種の象牙質知覚過敏抑制材は, その後に使用した接着システムの接着強さに影響を及ぼさないことが示された.

  • 川島 伸之, 戸村 淳嗣, 横田 兼欣, 興地 隆史
    2017 年 60 巻 1 号 p. 32-39
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
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     目的 : 根管形成後の根管壁象牙質表面は, 細菌を含有し緊密な封鎖を阻害するスミヤー層に覆われている. またスミヤー層は, 根管洗浄液や根管貼薬剤の象牙細管内への浸透を阻害し, 象牙細管内細菌の排除を妨げる. スミヤー層の除去にはEDTA溶液の使用が最も一般的であるが, 高濃度のEDTA溶液を作用させると象牙質の過脱灰 (浸食) が生じる可能性も指摘されている. 本研究では, pHを調整した3% EDTA製剤の根管壁象牙質に対するスミヤー層除去効果, ならびに同製剤による象牙質過脱灰の有無を検討した.

     材料と方法 : ヒト抜去歯より象牙質試片を作製し, その表面に耐水研磨紙#600にてスミヤー層を実験的に作製した. 次いで, 3% EDTA製剤 (スメアクリーン, 日本歯科薬品, pH=9.5 : SC), 14.3% EDTA製剤 (モルホニン歯科用液, 昭和薬品化工, pH=7.2 : MH), あるいは20%クエン酸製剤 (ウルトラデントクエン酸20%, ウルトラデントジャパン, pH=1.4 : CA) を, 各メーカーの指示に従い象牙質試片に適用し, 走査電子顕微鏡 (SEM) にてスミヤー層の除去効果と象牙質の過脱灰を評価した. さらにSCとMHは30分まで作用させ, エネルギー分散型X線分析装置を用いCaおよびPのマッピングを行った. また, 単根ヒト抜去歯の根管をNi-Tiロータリーファイル (EndoWave, モリタ) にて形成後, SCで根管洗浄を行い, スミヤー層除去効果をSEMにて評価した.

     結果 : 象牙質試片を用いた実験では, スミヤー層は3種の根管清掃剤によりほぼ完全に除去された. 象牙質の浸食はSCとMHではほとんど認められなかったが, CAでは観察された. さらに30分間処理後においては, MHではSCと比較して象牙質の脱灰がより明瞭に観察された. Ni-Tiロータリーファイルにより形成されたスミヤー層は, 根中央部ではSCにてほぼ完全に除去されていたが, 根尖部ではわずかな残存が観察された.

     結論 : 本研究に供した3% EDTA製剤 (SC) は, 14.3% EDTA製剤 (MH) および20%クエン酸製剤 (CA) と同等なスミヤー層除去効果を示すとともに, Ni-Tiロータリーファイルで形成されたスミヤー層を効果的に除去した. 象牙質の浸食性変化はSCで最も軽微に観察された.

症例報告
  • 鵜飼 孝, 原 宜興
    2017 年 60 巻 1 号 p. 40-48
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー

     目的 : 歯周組織の破壊した歯の保存においては, 原因の同定や適切な治療方針の立案が重要である. しかし症状や所見から原因を正確に同定することが困難な場合がある. 今回, 深い歯周ポケットが広範囲に存在し, 根尖を越える部分までの骨吸収があり抜歯適応と考えられた歯の治療において, 歯内治療が効果的であった歯周-歯内病変の2症例を報告する.

     症例1 : 54歳女性. 主訴 ; 左下奥歯の歯肉の腫脹を繰り返している. 現症 ; 下顎左側第二小臼歯に7mm以上の深いプロービングデプス (PD) が広範囲に存在し, エックス線写真では根尖周囲よりも, 骨頂部分で広い骨吸収像が認められた. 下顎左側第二小臼歯には補綴物が装着されており, 歯髄の状態は確認できない. 治療経過 ; 補綴物咬合面から歯質にアクセスすると歯髄が失活していることが確認できたので, 感染根管治療を施行した. 3週間後には著明に歯周ポケットの改善がみられ, その後歯槽骨の改善もみられた.

     症例2 : 33歳女性. 主訴 ; 右下奥の歯肉が腫脹して出血する. 現症 ; 下顎右側第二大臼歯に6mm以上の深いPDが広範囲に存在し, エックス線写真で遠心根周囲には根尖を越える骨吸収と, 根分岐部の透過像がみられるが, 根分岐部病変は触知できなかった. またエックス線写真上で下顎右側第二大臼歯は適正に根管充塡されているようにみえるが, 根尖部周囲には透過像が認められる. 治療経過 ; 根管充塡状態は良好にみえるが根尖部に透過像があることから, 歯内病変の影響があると考え, 歯内治療から開始した. 歯内治療後のエックス線写真で遠心根根尖部と根分岐部の透過像が改善した. その後のスケーリング・ルートプレーニングとフラップ手術により, 遠心の骨欠損部分の改善が認められた.

     結論 : 両症例とも根尖を越える部分まで骨吸収が及んでおり, 抜歯あるいはヘミセクション適応と考えられる状態であったが, 歯内治療を先行することで骨の改善がみられ, 歯を保存することができた.

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