日本歯科保存学雑誌
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60 巻 , 2 号
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原著
  • 白井 要, 伊藤 修一, 中塚 侑子, 清水 伸太郎, 河野 舞, 斎藤 隆史, 長澤 敏行, 古市 保志
    2017 年 60 巻 2 号 p. 69-77
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/08
    ジャーナル フリー

     目的 : 感染根管治療の目的は, 根管口を通じて侵入した根管内細菌の排除や, 根管内に残留した歯髄壊死組織の除去である. 根管内の歯髄壊死組織や感染象牙質の除去は化学的・機械的清掃では困難なことが多く, 根管貼薬剤を使用することは感染根管治療の治療効果向上のために不可欠である. S-PRG (Surface reaction type Pre-Reacted Glass-ionomer technology) フィラーは, 多種のイオンを徐放する材料として多くの歯科材料に配合され, S-PRGフィラーが放出するイオンは抗菌作用や硬組織の石灰化を促進することが明らかにされている. そこで本研究では, 試作S-PRGフィラー含有水性ペーストを根管貼薬剤として用いて, 根尖孔外に及ぼす影響について検討を行った.

     材料と方法 : 実験材料として, S-PRGフィラー含有根管貼薬剤ペースト (松風, 以下, S-PRGペースト) を用いた. 実験には, 生活歯として抜去された下顎小臼歯を用いた. 根管用切削器具にて根管拡大形成を行い, S-PRGペーストを根管内に充塡した. その後, 根尖孔外pHおよび根尖孔と象牙細管からの溶出イオンを測定した. コントロールとして, 水酸化カルシウム製根管貼薬剤を用いた.

     成績 : 根管内にS-PRGペーストを貼薬したときの根尖孔外pHは, 貼薬12時間後に上昇を認め, 5日後には最大値である7.7±0.3まで上昇し続けた. S-PRGペーストを貼薬した根管において, 根尖孔外にはSiO32− (ケイ酸イオン : Si), Al3+ (アルミニウムイオン), Sr2+ (ストロンチウムイオン), BO33− (ホウ酸イオン : B), Na+ (ナトリウムイオン : Na), F (フッ化物イオン) が検出され, 象牙細管から歯根外に溶出したイオンとして, Si, B, Naが検出された. また, Bは象牙質の厚さが増加しても溶出イオン量に有意な減少を認めなかった. 根尖孔外を酸性環境にした根管内にS-PRGペーストを貼薬したところ, 12時間後にはpHの上昇を認め, 1週間後には6.3±0.2まで上昇した.

     結論 : 根管貼薬剤としてS-PRGフィラーを使用したところ, 根尖孔外のpHの上昇と各種イオンの放出が認められた. 以上から, S-PRGフィラーは根管貼薬剤ペーストとして根尖孔外の殺菌や石灰化促進に有効である可能性が示唆された.

  • 井出 翔太郎, 山口 麻衣, 田中 智久, マイケル マイヤース, 東光 照夫, 真鍋 厚史
    2017 年 60 巻 2 号 p. 78-88
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/08
    ジャーナル フリー

     目的 : 今回シラン処理 (SC (+)) と未処理 (SC (−)) フィラーの試作コンポジットレジンを用いて, 色調安定性および表面性状に及ぼすシランカップリング処理の影響を検討した.

     材料と方法 : 試作コンポジットレジンをステンレスモールドリングに塡入して光照射を行い重合させ, 計80個の試験片を作製した. 試験片は耐水研磨紙#600, #1,000, #1,500, #4,000で研磨後, 酸化アルミナ粉末とバフにより鏡面研磨を行った. 40個の試験片はローダミンに浸漬した状態で, 5~60°Cを1サイクルとして係留時間30秒間で1,000回と10,000回サーマルサイクル試験を行った. 残りの40個の試験片はローダミン0.01%水溶液に24, 48, 72時間, 7日間浸漬した. サーマルサイクルおよび浸漬前後, 測色器にて測色を行い, 不透明度とΔE*abを算出した. 表面粗さの計測は接触型表面粗さ計にて中心線平均表面粗さ (Ra) を算出した. 吸水量は, 試験片の初期重量に対する重量変化の百分率を算出し吸水量とした. 走査型電子顕微鏡にて表面性状の観察を行った.

     結果 : ΔE*ab, 表面粗さ, 吸水量はSC (+) と比較し, SC (−) が有意に高い値を示した. 不透明度は浸漬時には未処理群と処理群間に有意差は認められなかったが, サーマルサイクル後には両者に有意差が認められた.

     考察 : SC (−) はサーマルサイクルによるマトリックスレジンとフィラーの不完全な接着の劣化により間隙が生じ, この間隙から吸水し, マトリックスレジン中に色素が拡散することで, 内部に色素が浸透し着色したと考えられる.

     フィラー表面のシランカップリング処理がコンポジットレジンの色調安定性に影響を及ぼすことが判明した.

  • —マイクロCTを用いたアブフラクションモデルによる解析—
    半場 秀典, 中村 圭喜, 二階堂 徹, 村松 敬, 古澤 成博, 田上 順次
    2017 年 60 巻 2 号 p. 89-95
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/08
    ジャーナル フリー

     目的 : 咬耗や加齢変化によってエナメル質の菲薄化を呈することがある. さらにエナメル質が菲薄化した歯に過度な咬合力が加わると, エナメル質から象牙質へ達するマイクロクラックが生じる可能性がある. また, 咬合が関与する非う蝕性の歯頸部硬組織欠損 (NCCL) は, アブフラクションと定義される. アブフラクションの発生とマイクロクラックとの関係については不明な点が多く, 脱灰も関与しているという報告がある. 本研究では, セメントエナメル境 (CEJ) 付近の脱灰とマイクロクラックの進行の関係について, 3次元的に非破壊で観察可能なマイクロCTを用いて検討を行った.

     材料と方法 : NCCLを有するヒト抜去小臼歯8本を使用した. CEJ下1mm根尖よりの範囲を除く全根面にネイルバーニッシュを塗布し, 歯を人工脱灰液中に0, 7, 14日間浸漬後, マイクロCT (SMX-100CT, 島津製作所) を用いて撮影を行った. 撮影後のデータを骨梁構造計測ソフト (TRI/3DBON, ラトック) により3次元構築し, 歯冠全体のミネラル変化およびマイクロクラックを解析した. また, 観察後の試料を包埋, 半切し, 研磨後にSEM観察を行った. マイクロCTで得られた歯冠側面中央部のエナメル質に観察されたマイクロクラックの最大幅を求め, 統計学的処理を行った.

     結果 : 脱灰前後のマイクロCT像を比較した結果, 全体的なミネラル低下を示し, 特に歯冠側面やCEJ下根面の顕著なミネラル低下が認められた. 脱灰の進行により, CEJ付近のエナメル質が菲薄化して残存する形態が観察された. マイクロクラック幅の計測の結果, 14日間脱灰後の幅は7日後よりも有意に増加した (p<0.05). NCCL付近のSEM像とマイクロCT像において, 同部位に数μm以上のマイクロクラックが観察された.

     結論 : 本研究で使用したNCCLを有する小臼歯において, マイクロクラックに沿って脱灰が進行することが示唆された. またマイクロCT解析は, 3次元的に脱灰およびマイクロクラックを観察することができ, アブフラクションを想定した解析モデルの経時的な観察に有用であることが示唆された.

  • 鷲尾 絢子, 吉居 慎二, 諸冨 孝彦, 前田 英史, 北村 知昭
    2017 年 60 巻 2 号 p. 96-104
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/08
    ジャーナル フリー

     目的 : 根管充塡用シーラー (以下, シーラー) には生体親和性が必須である. 本研究では, 新規に開発したバイオガラス配合シーラー (以下, BG配合シーラー) の生体親和性を明らかにすることを目的として, 細胞遊走能と生存能に及ぼす影響を検討した.

     材料と方法 : Transwellの下層wellに歯根膜細胞 (HPDLC) と骨芽細胞様細胞 (MC3T3-E1) を播種・培養後に既存の各種シーラー (ユージノール系・非ユージノール系) およびBG配合シーラーを入れたinsertを挿入し, 細胞遊走試験により細胞遊走能を, トリパンブルー染色により細胞生存能を測定した.

     成績 : 細胞遊走試験において, HPDLCはユージノール系シーラーノーマル刺激群では生存細胞が認められず細胞遊走能は測定できなかった. ユージノール系シーラークイック, 非ユージノール系シーラーおよびBG配合シーラー刺激群では, 細胞遊走は認められるもののcontrolと比較して抑制されていた. MC3T3-E1は, ユージノール系シーラーノーマル刺激群では細胞は生存しているものの細胞遊走は認められなかった. ユージノール系シーラークイック, 非ユージノール系シーラーおよびBG配合シーラー刺激群では, controlと比較して細胞遊走に差は認められなかった. 細胞生存試験において, ユージノール系シーラーノーマルおよびユージノール系シーラークイック刺激群では細胞生存数は著しく低下したが, 非ユージノール系シーラーおよびBG配合シーラー刺激群では経時的に細胞生存数は増加した.

     結論 : BG配合シーラーは歯根膜細胞の遊走能に影響を与えるものの阻害はしないこと, 骨芽細胞様細胞の細胞遊走には影響しないこと, また両細胞の生存能には影響しないことが明らかとなった. 以上の結果は, BG配合シーラーは高い生体親和性を有することを示唆している.

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