日本歯科保存学雑誌
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61 巻 , 1 号
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原著
  • 深井 譲滋, 渡邊 昂洋, 岡部 達, 松島 潔
    2018 年 61 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー

     目的 : 歯髄組織を保存するためには, より確実に硬組織形成を促す必要があると考えられている. これまでに半導体レーザーを用いた歯髄の硬組織形成を調べる研究はなされているが, 硬組織形成能の違いが出力によるものなのか, 照射時間によるものなのか, 各波長で形成にかかわる因子が違うのかを検討する研究は行われていない. そこで, 本研究では半導体レーザーの硬組織形成能の機序を解明することを目的として 「波長」 に焦点を合わせ, 同出力条件下における, 660nmまたは810nmの半導体レーザーでの硬組織形成能の違いを比較検討した.

     材料と方法 : 日本大学松戸歯学部倫理委員会の承認を得て, 20歳の患者の矯正学的理由により抜去された第三大臼歯の歯髄組織を無菌的に取り出し培養した細胞をヒト歯髄培養細胞とし, 10%FBS添加α-MEMにて最長で30日間培養した. 培養上清約10cm上方から波長660nmもしくは810nmの半導体レーザーを出力300mWにて照射し, ALP活性, 石灰化結節の染色, osteocalcin (OCN) の遺伝子発現, BMP-2の遺伝子およびタンパク質発現について検討を行った.

     結果 : 出力を同一にした2つの波長の半導体レーザーを用いたとき, 両方の波長でALP活性の上昇およびOCNの発現量増加がみられ, どちらの照射群でもvon Kossa染色の染色性の増大が認められた. また無照射群と比べ, 660nm照射群におけるBMP-2の遺伝子およびタンパク質発現量は有意に上昇したが, 810nm照射群で有意差は認められなかった.

     結論 : 出力を同一にした2つの波長の半導体レーザーでは, 硬組織形成に関してBMP量に違いがあることが示唆された.

  • 細川 義隆, 細川 育子, 尾崎 和美, 松尾 敬志
    2018 年 61 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー

     目的 : テアフラビンは紅茶に含まれる渋味成分の一つであり, ポリフェノールに分類される色素成分である. テアフラビンは, 抗酸化作用・抗炎症作用などさまざまな生理活性作用が報告されているが, 口腔上皮細胞に対する作用に関しては不明な点が多く, 十分に明らかにされていない. 本研究では口腔上皮細胞に対するテアフラビンの抗炎症作用について調べることを目的とし, 炎症性サイトカインの一つであるインターロイキン (IL)-27が誘導するケモカイン産生に与えるテアフラビンの影響を明らかとするため検討を行った. 本研究では, Th1細胞浸潤に関与するケモカインであるCXC chemokine ligand (CXCL) 9, CXCL10およびCXCL11産生に着目した.

     材料と方法 : 口腔上皮細胞としてTR146細胞を用いた. TR146細胞のケモカイン産生は市販のELISAキットを用いて, テアフラビンにて1時間前処理後にIL-27で24時間刺激を行い, 上清中のCXCL9, CXCL10およびCXCL11産生を測定して検討した. また, IL-27が活性化するシグナル伝達経路に与えるテアフラビンの影響についてWestern blot法を用いて検討した. シグナル伝達経路としては, IL-27が活性化することが知られているprotein kinase B (Akt), extracellular signal-regulated kinase (ERK), signal transduction and activator of transcription (STAT) 1およびSTAT3に着目した.

     結果 : テアフラビンの前処理によりIL-27で誘導されたTR146細胞のCXCL9, CXCL10およびCXCL11産生は, 濃度依存的に抑制された. また, IL-27が誘導したAkt, ERK, STAT1およびSTAT3のリン酸化は, テアフラビン処理により抑制された.

     結論 : テアフラビンは口腔上皮細胞においてIL-27誘導ケモカイン産生を抑制することにより, 歯周炎組織の炎症を軽減できる可能性が示唆された.

  • 三木 晴加, 富永 和也, 高橋 貫之, 田中 昭男, 梅田 誠
    2018 年 61 巻 1 号 p. 17-29
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー

     目的 : 歯周組織再生材料として, 広く利用されているエナメルマトリックスデリバティブ (EMD) を用いた動物実験によって, アメロジェニンエクソン5の部分配列に一致する物質が同定されている. それに注目した研究者らは, 同アミノ酸配列をもつペプチドを人工的に合成し, 歯周組織再生に対するそのペプチドの有効性をin vivoおよびin vitroで研究してきた. しかし, in vivoの実験でペプチドとEMDとの比較については未解明である.

     材料と方法 : ラットの上顎臼歯部に人工的に歯周組織欠損を作製し, 歯周組織欠損部に新規合成ペプチド (新規合成ペプチド群) とEMD (EMD群) をそれぞれ塗布した. 術後3, 5日および7日目に同部の標本を作製し, 病理組織学的および抗Ⅲ型コラーゲン抗体を用いて免疫組織化学的に観察した.

     成績 : 術後3日目の病理組織所見では, 対照群, 新規合成ペプチド群およびEMD群は同様の所見であったが, 術後5日目の新規合成ペプチド群とEMD群における歯周組織欠損部の血餅は消失していたのに対し, 対照群では血餅が残存していた. 鍍銀染色では術後7日目に, 新規合成ペプチド群とEMD群の両群で周囲に細網線維をもつ骨様石灰化物が認められた. 免疫組織化学的に観察するとⅢ型コラーゲンは, 新規合成ペプチド群とEMD群の両群では対照群と比べて早期に発現し, かつ減弱していた. 術後5日目および7日目の新規合成ペプチド群とEMD群の両群における付着上皮の深部増殖抑制率は, 対照群に比べて有意に抑制された.

     結論 : 新規合成ペプチドはEMDと同様に歯周組織における早期の創傷治癒過程を促進し, 再生を促す作用があることが示唆される.

  • 吉田 和貴, 前田 宗宏, 勝海 一郎, 五十嵐 勝
    2018 年 61 巻 1 号 p. 30-39
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー

     目的 : 本研究は, 上顎歯列模型の左右にヒト抜去上顎小臼歯を植立し, 口腔内を模すためファントム上で, ニッケルチタン製回転切削器具 (NiTi-r), ステンレススチール製回転切削器具 (SS-r), 手用ファイル (Hand) を用いて根管拡大形成を行い, 材質と切削様式の異なる器具を楕円根管で用いたときの切削効率をマイクロCT像で観察し, 分析することを目的とした.

     材料と方法 : 根尖から5mmの位置で, 根管の頰舌径が近遠心径の2倍以上を示す上顎小臼歯24本を本実験に使用した. 歯を上顎歯列模型の左右側に植立し, ファントムに装着した. 術者は9~10時の位置で臨床に即してファントム上で作業し, 拡大形成法から, 8歯 (左側 : 4歯, 右側 : 4歯) ずつ次の3群とした. NiTi-r群 (K3XFファイル), SS-r群 (ERTファイル), Hand群 (手用Kファイル). NiTi-r群とSS-r群ではブラッシングストローク下で, Hand群では円周ファイリングで拡大形成を行い, 作業時間および根管拡大形成前後のマイクロCT像から根管壁面切削率と根管容積増加率を計測し, 拡大形成群間および左右間で根管切削効率を評価した.

     結果 : HandはSS-rと比較して, 根管壁面切削率が有意に大きく, 作業時間は有意に長かった. NiTi-rはHandと比較して, 根管壁面切削率に有意差はなかったが, 作業時間は有意に短かった. NiTi-rとSS-r間で, 作業時間・根管壁面切削率・根管容積増加率において有意差はなかった. 根管容積増加量はSS-rとHandがNiTi-rと比較して大きかったが, 有意差はなかった. 作業時間・根管壁面切削率・根管容積増加率において, 左右間で有意差はなかった.

     結論 : 楕円根管を有する上顎左右側小臼歯をファントム上の顎模型で拡大形成したところ, NiTi-rは短時間で効率的に切削でき, 手用ファイルと同様に適切な拡大形成ができた.

  • 新井 恭子, 松田 浩一郎, 山田 理絵, 北島 佳代子, 北野 芳枝, 朝比奈 壮郎, 五十嵐 勝
    2018 年 61 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー

     目的 : 本研究では, Ni-Tiシングルファイル法としてRECIPROC (VDW, Germany, 以下, RE), Ni-Tiマルチファイル法としてTwisted File (SybronEndo, USA, 以下, TF) とProTaper (Dentsply, Switzerland, 以下, PT) およびステンレススチール製の手用Kファイル (ZIPPERER, Germany, 以下, SSK) を用い, 総拡大形成時間, 拡大形成後の根管偏位量, 拡大形成時の荷重について比較検討を行った.

     材料と方法 : 30度湾曲透明根管模型 (END-TRAINING-BLOC A0177, Dentsply) をRE, TF, PT, SSKで拡大形成した (各群n=9). 拡大形成前後の重ね合わせ画像で根尖孔から0~9mmの位置で根管偏位量を求めた. また, 総拡大形成時間, 押し込み荷重, 引き抜き荷重を測定した. 結果は, 一元配置分散分析の後, Games-Howellの方法で多重比較検定を行った (p<0.05).

     結果 : 総拡大形成時間はTF群<RE群<PT群<SSK群となり, すべての群間で有意差がみられた. 根管偏位量は, 根尖から0, 1mmではすべての群間に有意差はみられなかった. 2, 3mmではRE群とTF群, PT群, およびSSK群とTF群, PT群の間に有意差がみられた. 4mmではRE群とTF群, PT群, およびSSK群とTF群, PT群, TF群とPT群の間に有意差がみられた. 5mmでは, RE群とTF群, PT群の間に有意差がみられた. 6mmではRE群とほかの群, SSK群とほかの群の間にそれぞれ有意差がみられた. 7mmではSSK群とほかの群, TF群とPT群の間にそれぞれ有意差がみられた. 8, 9mmでは, SSK群とほかの群間に有意差がみられた. 拡大形成時の荷重はTF群<PT群<RE群<SSK群となった. 押し込み荷重ではすべての群間で有意差があり, 引き抜き荷重ではPT群とTF群には有意差がなく, ほかの群間では有意差があった.

     結論 : シングルファイル法のRECIPROCは, マルチファイル法のTwisted FileとProTaperに比べて高い切削能を示すが, 根尖湾曲部の内側で切削量が大きくなるため, strip perforationの防止が必要であることが示唆された.

症例報告
  • 内田 剛也, 松島 友二, 長野 孝俊, 五味 一博
    2018 年 61 巻 1 号 p. 48-57
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー

     目的 : 顎関節症と外傷性咬合との関連についてはこれまで明確な結論は得られていないが, 同時期に同側に顎関節症と咬合性外傷が発症していることから, なんらかの関連があることも疑われる. 今回, 顎関節症を示す重度歯周炎患者に包括的治療を行うことで良好な結果が得られたので報告する.

     症例 : 患者は32歳の女性. 右側臼歯部に外傷性咬合を認め重度慢性歯周炎と診断した患者であり, 右側顎関節に顎関節症状を示していた. 顎関節治療として徒手的治療 (マニピュレーション) とスプリント治療を行い, 歯周治療後に矯正治療と補綴治療による咬合再構成を行った. 包括的治療により良好な治療経過が得られたが, 経過観察を行うなかで右側に顎関節症状の再発を認めた. 顎関節治療を行うことで, 咬合の不調和を伴うことなく, 歯周組織は安定した状態を維持している.

     結論 : 顎関節症を有する歯周病患者では, 顎運動が不安定になり外傷性咬合を生じる可能性があると考えられることから, 歯周治療だけではなく顎関節や咬合に関しての検査や管理を継続的に行っていくことが必要であると考えられた.

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