日本歯科保存学雑誌
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61 巻 , 2 号
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誌上シンポジウム
原著
  • 東 仁, 森田 浩正, 津守 紀昌, 梅田 誠
    2018 年 61 巻 2 号 p. 96-103
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/07
    ジャーナル フリー

     目的 : MIS (minimally invasive surgery) の概念の下, 歯周組織再生療法を低侵襲な術式で行うことで, 良好な臨床結果が得られることが数多く報告されている. しかし, その良好な結果を導くことができる組織学的な根拠は, いまだ数少ない. 本研究は, 低侵襲に行う歯周外科が歯周組織の早期創傷治癒にどのように影響を与えるのかを明らかにするために, 侵襲の程度を変えた術式で歯周組織欠損を作成し, その早期治癒過程をそれぞれ組織学的に比較, 観察した.

     成績 : 対照側と比較して実験側では, 早期に炎症細胞性浸潤が消退し, 線維芽細胞が認められた. 骨欠損部に対するTRAP陽性細胞数は, 術後3, 5日目の実験側において, 対照側と比較して有意に低値を示した. さらに欠損部内の新生血管数は, 術後3, 5日目において, 対照側と比較して実験側のほうが, 有意に高値を示した.

     結論 : 低侵襲を考慮した歯周外科は, 術後早期における破骨細胞発現の抑制, 血管新生と創傷治癒の促進に影響することが示唆された.

  • 黒川 千尋, 東光 照夫, 玉崗 慶鐘, 小川 弘美, 小林 幹宏, 吉川 和子, 田中 智久, 真鍋 厚史
    2018 年 61 巻 2 号 p. 104-112
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/07
    ジャーナル フリー

     目的 : 歯の漂白は臨床診療で広く使用されている. 歯の漂白メカニズムは, 「過酸化水素から発生するヒドロキシルラジカルが, 有色二重結合分子を分解し無色分子にとする」 とされている. 本研究の目的は, この漂白メカニズムを明らかにするため, 過酸化水素の濃度および活性化時間を変化させ, ヒドロキシルラジカル発生量と漂白効果を検討することである.

     材料と方法 : 濃度3, 10, 20%と30%の過酸化水素水とスピントラッピング剤 (5,5-dimethyl-1-pyrroline-N-oxide (DMPO) ) とを混合し, ESR (Electro Spin Resonance) 法によりヒドロキシラジカル発生量を検討した. 過酸化水素の活性化は, 波長440nmのハロゲン光源を使用し0.5, 1, 2, 3, 5, 10分の照射時間で行った. 漂白効果の検討は, β-カロテンで染色した沪紙を3, 10, 20, 30%過酸化水素水に浸漬し, 0.5, 2, 10分間照射し, 漂白前後のCIELab値から色差ΔE*abを算出した. 色差値が大きいほど漂白効果が高いと判定した.

     結果 : ヒドロキシルラジカルの生成は, 過酸化水素の濃度が高く照射時間が長いと増加した. ΔE値はヒドロキシラジカル発生量と同様の傾向を示した. すなわち, ΔE*abは, 高い濃度, 長い活性化時間であるほど増加した.

     結論 : 過酸化水素の濃度および活性化時間は, 過酸化水素ラジカルの生成において重要な役割を果たした. 触媒の存在, 温度および漂白剤の物理的特性を含む要因に加え, ヒドロキシルラジカル量と色差値ΔE*ab値は, 歯の漂白効果と関連していた. 効果的かつ安全な歯の漂白剤を開発するには, 過酸化水素の濃度および活性化時間のみならず, ほかの要因も考慮する必要があると考えられた.

  • 藤田 (中島) 光, 岩井 啓寿, 熱田 亙, 内山 敏一, 和田 香織, 西山 典宏, 平山 聡司
    2018 年 61 巻 2 号 p. 113-124
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/07
    ジャーナル フリー

     目的 : 10-methacryloyloxydecyl dihydrogen phosphate (MDP) 含有のワンステップボンディング材 (G-Bond Plus) は, その簡略化された操作手順と安定的で高い歯質接着性を示すことから, 広く臨床使用されている. この研究の目的は, MDP含有ワンステップボンディング材により生成されるMDPカルシウム塩の分子種のタイプを決定し, MDPカルシウム塩のメカニズムを解明することである.

     材料と方法 : G-Bond Plus 1.000g中に切削したウシ前歯歯冠エナメル質または象牙質粉末0.200gをそれぞれ1, 30, 60分間振盪・攪拌した. その後, 懸濁液を遠心分離し, ボンディング材の反応残渣の31P NMRスペクトルを, EX 270スペクトロメーターを用いて測定した. エナメル質および象牙質反応物をリン-31核磁気共鳴 (31P NMR) スペクトル法およびX線回折技術を用いて分析した後, エナメル質および象牙質反応物の31P NMRスペクトルについて曲線適合分析を行った. 31P NMRスペクトルの曲線適合分析は, MDPカルシウム塩の合成モデル化合物から, いくつかのタイプのMDPカルシウム塩と, 非結晶リン酸二カルシウム二水和物が生成されたと仮定することで実行した.

     結果 : G-Bond Plusのエナメル質および象牙質反応物を曲線適合分析した結果, 脱灰エナメル質および象牙質中に, 数種類のMDPカルシウム塩および非結晶な第二リン酸カルシウムが生成していることが明らかになった. エナメル質および象牙質により生成されたMDPカルシウム塩と第二リン酸カルシウムの量は反応時間で異なり, エナメル質および象牙質によって生成されたMDPカルシウム塩の分子種は, MDP単量体モノマー, MDP二量体のモノカルシウム塩, MDP単量体およびMDP二量体のジカルシウム塩であった.

     結論 : エナメル質および象牙質によって生成されたMDPカルシウム塩の分子種は, MDP単量体モノマー, MDP二量体のモノカルシウム塩, MDP単量体およびMDP二量体のジカルシウム塩の4種類であった.

  • ―RECIPROC Directによる根管形態の変化―
    毛塚 甫, 下島 かおり, 武藤 徳子, 石井 信之
    2018 年 61 巻 2 号 p. 125-131
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/07
    ジャーナル フリー

     目的 : Reciprocは往復運動により, 1本のファイルで根管形成を可能にしたNi-Tiロータリーファイルである. ReciprocはX Smart Plusによる駆動システムで根管を形成していたが, 歯科用ユニットに接続可能なReciproc専用ハンドピース (RECIPROC Direct) が開発されファイルの回転数が制御可能になった. 本研究は, RECIPROC Direct使用時の回転数と根管壁変位量の関係を明確にし, RECIPROC Direct使用時の切削特性を解析することを目的とした.

     材料と方法 : 術者は, Ni-Tiロータリーファイル使用経験3年以上の歯科医師によって行った. 根管形成は, RECIPROC Directに装着したReciproc R25/08ファイルを使用して, 透明湾曲根管模型60本に対して, 回転数の異なる実験群1 (20,000rpm), 実験群2 (15,000rpm) とX Smart Plusによる対照群の3群に分類した. 形成後の根管形態は, 根管壁変位量と根管中央値変位量を測定し評価した. さらに, 根管形成所要時間を計測し比較検討した.

     結果 : 全実験群において, 根管形成中のレッジ形成, ファイル破折は認められなかった. 実験群および対照群の根管壁変位量を解析した結果, 実験群1は対照群と比較して内湾側変位量が増加し, 外湾側変位量は減少した. 一方, 実験群2は対照群と比較して内湾側変位量が減少し, 外湾側変位量は同等であった. 根管中央値変位量を測定した結果, 実験群1は最も内湾側に変位したが, 実験群2は変位が少なかった. 根管形成時間は実験群1 : 34.4±3.8秒, 実験群2 : 55.9±8.4秒, 対照群 : 44.6±3.8秒であった.

     結論 : Reciprocの切削特性を, RECIPROC DirectとX Smart Plusを使用して比較検討した結果, RECIPROC Directは回転数の相違によって根管形態に影響することが示された. 本研究結果から, RECIPROC Direct使用によるReciprocの根管形成は回転数を15,000rpmに設定することで解剖学的根管形態を維持することが示された.

  • 寺田 裕, 長澤 敏行, 小西 ゆみ子, 尾立 達治, 森 真理, 舞田 健夫, 森谷 満, 井出 肇, 辻 昌宏, 川上 智史, 古市 保 ...
    2018 年 61 巻 2 号 p. 132-144
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/07
    ジャーナル フリー

     目的 : 歯周病と動脈硬化との関連については以前から研究されているが, 日本人における脂質異常症患者のみを対象とした動脈硬化と, 歯周炎を含む口腔内との関連を調査した報告はほとんどない. 本研究ではこれらの関係を明らかにすることを目的として, 脂質異常症患者における頸動脈超音波検査および歯周組織検査の記録を分析した.

     対象と方法 : 北海道医療大学病院内科通院中の脂質異常症患者のなかで, 同歯科も受診し, 頸動脈超音波検査・血清脂質測定・歯周組織検査を実施済の52名を対象とした. 動脈硬化進展指標である頸動脈の最大内中膜厚 (max-IMT) はSpearmanの順位相関係数による各検査項目との相関分析を行うとともに, 異常肥厚値の1.1mm以上と正常値である同未満で二区分後カイ二乗, またはFisher正確確率検定を用いて分析した. その後従属変数をmax-IMTに設定して重回帰分析, および二項ロジスティック回帰分析を行った.

     結果 : 52名中max-IMT≥1.1mm群は11名 (21%) であった. 相関分析で統計学的に有意か, 有意水準境界線上の歯科変数は残存歯数, 平均プロービングポケットデプス (PPD), PPD≥4mm, およびPPD≥6mmの歯数の百分率であった. 重回帰分析の結果max-IMT値の肥厚に対して残存歯数{偏回帰係数 (β) =−0.014, 95%信頼区間 (CI) =−0.024~−0.003, p=0.014}, および高比重リポタンパクコレステロール (β=−0.005, 95%CI=−0.008~−0.002, p=0.003) の減少が有意に関連していた. カイ二乗またはFisher正確確率検定で, 人数分布に統計学的有意差がみられた歯科変数は, 中央値二区分したPPD≥6mmの歯数の百分率であった. 二項ロジスティック回帰分析の結果max-IMT≥1.1mm群に対して, PPD≥6mm歯数割合が中央値 (4.16%) を超える者が有意に関連していた{オッズ比 (OR) =8.275, 95%CI=1.462~46.844, p=0.017}. また男性が有意ではない関連する変数として選択された (OR=4.196, 95%CI=0.914~19.252, p=0.065).

     結論 : 脂質異常症患者においてmax-IMTの肥厚と喪失歯数の増加, あるいは重度歯周炎の存在との間に関連が示唆された.

症例報告
  • 椛島 浩明, 米田 雅裕, 中牟田 博敬, 大曲 紗生, 荒木 公一, 都築 尊, 柏村 晴子, 廣藤 卓雄
    2018 年 61 巻 2 号 p. 145-152
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/07
    ジャーナル フリー

     目的 : 抗菌薬アレルギー, 喘息の既往, 糖尿病などの患者に, 特に外科処置を行う際には全身的な配慮が必要である. 今回, 上記患者に漢方薬 (排膿散及湯, 立効散) を応用して外科治療を行い良好な結果を得たので報告する.

     症例1 : 48歳女性. 上顎左側側切歯歯肉腫脹の繰り返しを主訴に来院. 既往歴 : 抗菌薬アレルギーと小児喘息の既往. 現症 : 上顎左側側切歯根尖相当部歯肉に境界明瞭な小豆大の腫脹を認めた. 治療経過 : デンタルエックス線画像ならびに3DX画像にて根尖周囲にエックス線透過像を認め, 慢性化膿性根尖性歯周炎の診断の下, 感染根管治療を行った. 根管充塡後, 術前から術後にかけて排膿散及湯を服用させ, 歯根端切除を行った. 鎮痛剤として立効散を処方した. 抗菌薬を使用しなかったが術後の強い炎症や疼痛の発現はなく, 6カ月経過後根尖部エックス線透過像の減少を認め, 順調に推移している.

     症例2 : 28歳女性. 上顎右側中切歯歯肉腫脹の繰り返しを主訴に来院. 既往歴 : 親族に抗菌薬アレルギー. 患者は授乳期間中であった. 現症 : 上顎右側中切歯根尖相当部歯肉に境界明瞭な小豆大の腫脹を認めた. 治療経過 : 慢性化膿性根尖性歯周炎の診断の下, 感染根管治療を行った. 根管充塡後, 術前から術後に排膿散及湯を服用させ, 膿瘍切開・根尖搔爬を行った. 鎮痛剤として立効散を処方. 抗菌薬を使用しなかったが, 術後の強い炎症や疼痛の発現はなかった. 術後3カ月臨床的に良好な推移で, エックス線診断でも根尖周囲の透過像が減少している.

     症例3 : 52歳男性. 歯肉腫脹とブラッシング時の出血を主訴に来院. 既往歴 : Ⅱ型糖尿病 (HbA1c=6.5%) と小児喘息. 現症 : 全顎的に歯肉腫脹, プロービング深さはほとんどの歯で4mm以上あった. 全歯でプロービング時の出血を認め, 一部では排膿も認めた. 治療経過 : 中等度慢性歯周炎と診断し, 歯周基本治療を行った. 基本治療後の精密検査で5mm以上の歯周ポケット残存歯に, 歯肉剝離搔爬手術を行った. 術前より術後にかけて排膿散及湯を服用させ, 鎮痛剤として立効散を処方した. 抗菌薬を使用しなかったが術後に強い炎症はなく, その後プロービング深さはすべて3mm以下に減少した.

     結論 : 今回, 抗菌薬アレルギー・授乳中・糖尿病など全身状態に配慮が必要な患者に外科処置を行ったが, 排膿散及湯・立効散は感染予防, 疼痛軽減に有効であると考えられた.

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