日本歯科保存学雑誌
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61 巻 , 3 号
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総説
原著
  • 花田 隆周, 橋本 実樹, 池上 正資, 浦羽 真太郎, 花田 瞳, 中塚 敏弘, 小町谷 直樹, 広岡 明美, 興地 隆史, 吉成 伸夫
    2018 年 61 巻 3 号 p. 163-170
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/02
    ジャーナル フリー

     目的 : 現在まで, 2005年に厚生労働省が施行した歯科疾患実態調査に基づく永久歯の抜歯原因調査等の報告があるが, 抜歯原因に関する寄与因子まで検討した疫学的研究はほとんど存在しない. そこで本研究は, 長野県に位置する上伊那歯科医師会の管轄地域における永久歯の抜歯原因および考査を行うことを目的とした.

     材料と方法 : 2016年6月27日から8月6日までの41日間, 長野県上伊那地区の歯科医院に来院し, 本疫学調査の同意を文書で得た患者804名を対象とした. 各患者の性別, 年齢, 抜歯部位, 抜歯にいたった主要因, 口腔内状態 (咬耗, くさび状欠損, 口蓋隆起, 下顎隆起), 口腔内の清掃状態, 間食の習慣, 甘い物の嗜好, 定期歯科検診の受診, および歯髄の状態について調査を行い, ロジスティック回帰分析を行った.

     結果 : 管轄地域に開設している81上伊那歯科医師会会員診療所中56歯科医院が本研究に参加した. 被験者の男女比は男性54%, 女性46%であった. 年齢構成は75歳以上が23%と最多で, 次いで65~69歳が14%であった. 抜歯原因で最も多かったのが慢性歯周炎で, 26%であった. 次いで, 智歯周囲炎による抜歯が23%, 以下根尖性歯周炎21%, 歯の破折20%, う蝕による抜歯9%であった. 部位別では, 智歯を除いても大臼歯が30%を占めていた. 生活習慣や口腔内状態と抜歯要因とに関するロジスティック回帰分析により,

     1. 慢性歯周炎やう蝕を原因とする抜歯では, 口腔内清掃状態が有意なオッズ比を示した.

     2. う蝕および根尖性歯周炎を原因とする抜歯では, 定期歯科検診受診者が有意なオッズ比を示した.

     3. 歯の破折を原因とする抜歯では, 咬耗や, くさび状欠損が有意なオッズ比を示した.

    という結果を得た.

     結論 : 本調査では抜歯の原因として慢性歯周炎が最も高頻度であり, 次いで智歯周囲炎, 根尖性歯周炎, 歯の破折, う蝕の順であった. また本研究により, ①口腔内清掃状態はう蝕や慢性歯周炎による抜歯と関連があり, 良好な場合は抜歯のリスクが低いこと, ②定期歯科検診受診者では, う蝕および根尖性歯周炎による抜歯のリスクが低いこと, および③咬耗やくさび状欠損は歯の破折による抜歯のリスクを増加させることが示唆された.

  • 瀧野 浩之, 伊佐津 克彦, 長谷川 篤司
    2018 年 61 巻 3 号 p. 171-177
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/02
    ジャーナル フリー

     目的 : 根管治療を成功させるためには, 細菌を残したまま根管充塡を施すのではなく, 根管内および根尖孔周囲の無菌化が必須であり, そのためには細菌培養法を用いて根管の無菌性を確認するが, この方法は24~48時間の培養期間を必要とし, さらにテクニカルエラーによる細菌混入の可能性もある. 本研究では, 根管内の細菌の有無を, 波長約405nmの青色光を励起光として利用した, 根管内の無菌性を評価する方法を検討した.

     材料と方法 : 根管治療中の31根管を対象とした. 各症例において臨床症状を確認した後, 仮封と前回治療時の貼薬剤を除去し, 根管内に1滴程度のわずかな滅菌水を滴下した. その後, 滅菌されたペーパーポイントを極力無菌的に2本根管内に挿入し, 30秒程度静置した. これを資料として, それぞれ蛍光試験と細菌簡易培養試験に用いた. 蛍光試験には, 暗室に設置した光学顕微鏡に, CCDカメラ, 36 mW出力の406nmレーザー光源, 分光分析器, 解析用の市販ノートパソコンを組み合わせた顕微鏡マルチ測光システムを使用し, 得られた蛍光スペクトルの波形を観察・記録した. 細菌簡易培養検査は, 37°C に設定したフラン器にて培養, 48時間後に判定を行った.

     結果 : 臨床所見において, 根管充塡を行うことが不可能と判断された根管は10根管あり, そのすべての根管で, 蛍光試験および細菌簡易培養検査の両方において陽性であった. 残りの21根管のうち16根管でどちらの検査も陰性となった. ほかの5根管は細菌簡易培養検査の結果が陽性であったが, 5根管のうち2根管は分光分析の結果も陽性であり, 細菌の存在が示唆された. また3根管については陰性であり, テクニカルエラーの可能性が示唆された.

     結論 : 励起光を用いた励起蛍光による蛍光分析を用いた検査が, 根管内細菌の状態を評価できる可能性が示唆された. これより, 細菌簡易培養検査の代わりになる可能性が示唆された.

  • ―それぞれの材料およびそれらを付き合わせ接着したときの接着強さについて―
    鈴木 未来, 掘江 卓, 長塚 由香, 八谷 文貴, 井上 和穂, 岸本 崇史, 村田 公成, 冨士谷 盛興, 千田 彰
    2018 年 61 巻 3 号 p. 178-189
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/02
    ジャーナル フリー

     目的 : CAD/CAMレジンブロックと各種レジンセメントの接着試料 (C-RC) あるいは象牙質に対する各種レジンセメントの接着試料 (D-RC) の初期接着強さ, レジンブロックと象牙質の被着面をレジンセメントで付き合わせ接着した試料 (D-RC-C) の初期接着強さを比較検討するとともに, 象牙質が被着面に含まれる場合のワンステップセルフエッチシステム使用の効果も検討した.

     材料と方法 : #800仕上げ/サンドブラスト/リン酸/シラン処理 (Ceramic Primer Plus, クラレノリタケデンタル) したレジンブロック (Cerasmart, ジーシー) と#800仕上げのウシ象牙質に平坦な被着面を調製し, セルフエッチシステムおよびレジンセメントとしてScotchbond Universal Adhesive, RelyX Unicem2 Automix, RelyX Ultimate Resin Cement (おのおのSBU, UN, UL, 3M ESPE) とClearfil Universalbond Quick, SA luting plus (おのおのCUQ, SA, クラレノリタケデンタル) を用いた. C-RCでは各レジンセメントのみを塗布し, またD-RCとD-RC-CではSBU−/UN (UN群), SBU+/UL (UL群), CUQ−/SA (SA−群), CUQ+/SA (SA+群) などの各接着試片を調製後, 微小引張接着強さと破壊形態を検討した. なお, 微小引張接着強さの測定結果は一元配置分散分析とTukey’s testを用いてα=0.05で統計分析を行った.

     成績 : UNおよびUL群のC-RCは66~68MPaの良好な接着強さを示した. UN群のD-RCおよびD-RC-Cは5~10MPaで界面破壊が多くみられたが, セルフエッチシステムを併用したUL群は31~33MPaと有意に高く, SBU, ULあるいは象牙質内凝集破壊が出現し, セルフエッチシステムの接着促進効果が認められた. 一方, SA−群とSA+群のC-RCは41MPaで界面破壊が多くみられた. D-RCあるいはD-RC-CではSA−群の試片は象牙質とレジンセメントは全く接着していなかったが, SA+群では界面破壊が中心の14~27MPaの接着強さを示すようになった.

     結論 : レジンブロックや象牙質におけるレジンセメントの接着試験の結果は, それらを付き合わせ接着したときの結果と必ずしも同様でないことが判明した. また, それらの良好な接着性獲得のためには, セルフエッチシステムの併用によるレジンセメントの象牙質接着性向上を図る必要性が判明した.

  • 山田 嘉重, 木村 裕一, 菊井 徹哉
    2018 年 61 巻 3 号 p. 190-199
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/02
    ジャーナル フリー

     目的 : 本研究の目的は, 化学–機械的齲蝕除去剤と手用切削器具を併用して齲蝕象牙質の除去を行った後の窩洞面に, グラスアイオノマーセメントを用いて修復した際の歯質とセメント間の接着状態を確認することである.

     材料と方法 : 本研究では歯頸部に慢性齲蝕を有するヒト抜去永久歯25本を使用した. 齲蝕象牙質表面に塗布する化学–機械的齲蝕除去剤として10%ブロメラインと20%リモネンを配合した試作薬剤を使用し, スプーンエキスカベーターにて齲蝕除去を行った. 齲蝕除去後の窩洞面は, 実体顕微鏡にて問題がないことを確認した後に試料を各5本ずつの5グループに分類した. それぞれのグループの窩洞は, 従来型グラスアイオノマーセメントとしてフジⅨGPエクストラを, レジン添加型グラスアイオノマーセメントとしてハイ-ボンドレジグラス, レジン系グラスアイオノマーセメントとしてジーセム, アドシールドRM, イオノタイト–Fを用いて充塡した. その後10,000回サーマルサイクリングを施行した後に, 辺縁漏洩試験を行った. 最終的にすべての試料はダイヤモンドディスクにより分割し, 走査電子顕微鏡にて観察した.

     結果 : 辺縁漏洩試験の結果では, 漏洩が全くない試料は確認されなかった. 漏洩状態はフジⅨGPエクストラがすべての試料のなかで顕著で, 残りの4種類のグラスアイオノマーセメントは若干の漏洩状態の差異が認められるものの, 近似した良好な結果を示した. 走査電子顕微鏡観察でもフジⅨGPエクストラではセメントと歯質の境界に空隙を生じている試料が多くみられたのに対し, 残りの4種類のグラスアイオノマーセメントでは歯質とのギャップは顕著には観察されなかった.

     結論 : 今回の結果から, 化学–機械的齲蝕除去剤と手用切削器具を用いた齲蝕除去窩洞の修復処置に対しては, 従来型のグラスアイオノマーセメントよりレジン系グラスアイオノマーセメントを選択することが推奨される.

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