日本歯科保存学雑誌
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61 巻 , 5 号
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誌上シンポジウム
原著
  • 上田 尭之
    2018 年 61 巻 5 号 p. 270-281
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

     目的 : Diffusion chamber (DC) は, 細胞の増殖や分化を調べるために有用な方法である. これまでに, 骨髄細胞をDCに挿入する方法で, 骨芽細胞への分化や骨形成を調べるために幅広く応用されてきた. そこで本研究では, dentinogenesisの解析にDCが応用可能であるかを検討することを目的とした.

     材料と方法 : ラットの切歯歯髄組織から分離してきた歯髄細胞をDC内に挿入して, in vivoin vitroの実験を行った. すなわち歯髄細胞を含んだDCをラットの腹腔内に移植したものと (transplanted DC, T-DC), DCを培養皿で石灰化培地を使用して培養するもの (cultured DC, C-DC) に分けて実験を行った. 実験開始から5週間後に, それぞれのDCに対して組織学的な観察と生化学的な解析を行った. また, これらの結果をラットの切歯から分離した歯髄細胞の初代培養の解析結果と比較した.

     結果 : 腹腔内に移植したT-DCと培養したC-DCともに, 内部には石灰化物が確認できた. 免疫組織化学的染色によって, これらの石灰化物にはdentin sialo protein (DSP) とbone Gla protein (BGP) が含まれることが示された. T-DCとC-DC内での遺伝子発現を調べると, alkaline phosphatase (ALP), typeⅠ collagen, DSP, BGP, dentin matrix protein 1 (DMP-1) といった象牙質の基質形成に関連する遺伝子の発現を認めた. また, Wntシグナルのカノニカル経路に関連が深いectodinWnt10aの遺伝子発現もT-DCとC-DCの両方に認められた. EctodinWnt10aは, Wntシグナルを通して象牙芽細胞の分化や象牙質の基質形成をコントロールしていることが知られている. DCにみられたこれらの遺伝子発現は歯髄細胞の初代培養細胞にも発現しており, その発現量は同じレベルかもしくはDCのほうが高いレベルにあった.

     考察 : これらの結果はC-DCとT-DCの両方に象牙質様基質が形成されたことを示しており, DCはdentinogenesisの解析に応用可能であることが示唆された.

  • ―心拍変動解析を用いた自律神経活動評価―
    下地 伸司, 竹生 寛恵, 大嶌 理紗, 川浪 雅光, 菅谷 勉
    2018 年 61 巻 5 号 p. 282-291
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

     目的 : 歯科治療に対して恐怖心や不安感を有している患者は多く, それらを軽減させることは, 安心・安全な歯科治療を行うために重要である. そのための簡便な精神鎮静法の一つとしてアロマテラピーがあるが, 歯科領域ではまだ十分には検討されていない. 本研究の目的は, 健全な若年成人に対して歯周ポケット検査および超音波スケーラーを用いたスケーリングを行った際のアロマテラピーの効果について, 著者らが開発したモニターシステムを用いて自律神経活動の変化によって音楽鎮静法と比較することにより評価することである.

     対象と方法 : 15名 (26.1±1.1歳) の健全な若年成人ボランティアを対象とした. 同一被験者に対して精神鎮静法を行わない非精神鎮静群, アロマテラピーを行うアロマテラピー群, 音楽鎮静法を行う音楽鎮静群, アロマテラピーと音楽鎮静法の両方を行う併用群の4群を設けた. 4群を行う順序は, 中央割付法でランダム化して決定した. 最初に, 質問票 (DAS) を用いて歯科治療に対する恐怖心を評価した. 次に非精神鎮静群では, 処置前座位 (3分間), 処置前仰臥位 (3分間), 歯周ポケット検査 (3分間), スケーリング (5分間) および処置後仰臥位 (3分間) を順に行った際の血圧, 心拍数および自律神経活動について, 本モニターシステムを用いて評価した. その他の3群では, それぞれの精神鎮静法を施行して3分間後に同様の評価を行った. また, 処置前後の不安感についてVASによる評価を行った. 自律神経活動は, 心電図のR-R間隔を高周波成分 (HF) と低周波成分 (LF) に周波数解析することで, 交感神経活動 (LF/HF) を評価した. 統計学的分析は, Friedman testおよびWilcoxon signed-rank testを用いて行った (p<0.05).

     結果 : 血圧, 心拍数およびVASは, 各段階でほとんど変化がなく, 有意な差は認められなかった. LF/HFは, 非精神鎮静群で処置時に処置前よりも有意に低い値を示すことが多かった. また, ほかの3群で処置前座位時および仰臥位時に非精神鎮静群よりも有意に低い値を示した.

     結論 : 健全な若年成人では, アロマテラピーを行った際は, 行わなかった際と比較して歯周ポケット検査および超音波スケーラーを用いたスケーリング前の座位時および仰臥位時において交感神経活動が低下する. その程度は音楽鎮静法と同程度だったが, 併用することでさらに低下することはなかった.

  • 堀場 直樹, 藤田 将典, 山口 正孝, 松本 享, 中田 和彦
    2018 年 61 巻 5 号 p. 292-304
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

     目的 : 本研究の目的は, 安全で操作性の良い, 一般歯科医師にも広く普及するような根管消毒薬を, 行政機関から認可を得やすいと考えられる食品添加物を用いて開発することである.

     材料および方法 : 被験材料として, 3種類の精油を含む9種類の既存食品添加物, 2種類の精油を含む3種類の天然香料基原物質, ならびに1種類の指定食品添加物の計13種類の食品添加物を用いた. 各抽出物の抗菌効果はEscherichia coli, Lactobacillus casei, Enterococcus faecalisに対して, カップ法と液体希釈法を用いて検討した.

     結果 : カップ法では, 原液の精油および柑橘種子抽出物 (GSE) 以外の食品添加物には抗菌効果は認められなかった. 精油ではオレガノの抗菌効果が最も強く, 次いでタイムであった. 液体希釈法では, 鉄抽出物含有アスコルビン酸とプロタミンは, E. coliに対して強い抗菌作用が認められた. L. caseiE. faecalisに対しては, 強い, あるいは弱い抗菌作用を認めた. アスコルビン酸単独およびGSEも, L. caseiE. faecalisに対して抗菌作用を示した.

     結論 : アスコルビン酸を含む食品添加物は, E. coliなど3種の通性嫌気性菌に対して抗菌効果が認められた. このことは, これらの食品添加物が根管消毒薬として有用となる可能性を示唆している.

  • 東 春生, 鳥居 詳司, 高橋 慶壮
    2018 年 61 巻 5 号 p. 305-315
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

     目的 : ステップバック (SB) 法は広く普及しているが, 科学的な評価はほとんどなされていない. 近年, さまざまな根管形成の結果がマイクロCTで評価され, その科学的基盤が改善されてきた. 本研究の目的は, 最適な根管形成を行うために関与しうる要因をマイクロCTを用いて評価するための実験系を確立し, SB法においてステンレススチール (SS) ファイルの回転角度が及ぼす効果を調べることである.

     材料と方法 : 49本の上顎犬歯を鋳型にした樹脂製の透明根管模型を用いた. 試料はKファイルの回転角度 (15°, 30°, 60°, 90°, 180°) に応じて5つに分類し, SB法で根管形成を行った (n=7). JHエンドシステムとニッケルチタン (Ni-Ti) ロータリーシステム (以下, Reciproc) を対照群とした (n=7). 試料の根管形成前後における三次元根管形態をマイクロCTで撮影した. 根尖孔から4mm歯冠側までの部位を撮影した根管形成前後の画像をコンピュータ上で重ね合わせ, 画像解析ソフトを使用して評価した. トランスポーテーションの距離と根管内壁の切削量は, 根管形成前後のデータを基に算出した.

     結果 : トランスポーテーションの距離は対照2群に比較してSB 5群で長く, SB 5群間においてSSファイル回転角度が大きくなるにつれて長くなる傾向を示した. 根管内壁の切削量はSB5群に比較して対照2群で少なく, SB 5群間においてファイル回転角度が大きいほど多かった. 水平断面像の解析から, 本来の根管形態を保持している最適のファイル回転角度は30°および60°であった. 根管形成時間では, 対照2群に比較してSB 5群で有意に長かった.

     結論 : 本研究は構築された実験系が根管形成を科学的に評価するために有効であること, およびSB法における最適なSSファイル回転角度は30°~60°付近であることを示す.

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