日本歯科保存学雑誌
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61 巻 , 6 号
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総説
ミニレビュー
原著
  • ―接触する基質の硬さが細胞分化に及ぼす影響―
    吉田 晋一郎, 和田 尚久, 長谷川 大学, 御手洗 裕美, 有馬 麻衣, 友清 淳, 濱野 さゆり, 杉井 英樹, 前田 英史
    2018 年 61 巻 6 号 p. 343-353
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/07
    ジャーナル フリー

     目的 : 重篤な歯周炎や外傷などのケースにおいては, 歯槽骨を含め歯の支持組織である歯根膜組織の破壊が進む. ゆえに, 歯根膜組織再生を誘導することができる細胞移植を用いた新規歯周組織再生療法の開発が望まれている. 歯髄組織には歯髄幹細胞が豊富に含まれており, 再生医療の現場では重要な細胞源として注目されている. 近年, 間葉系幹細胞は接する基質の硬さにより分化の運命が方向づけられるとの報告がされている. そこで本研究では, 歯根膜スペースへ移植した歯髄細胞が, 接する基質の硬さを触知して歯根膜様細胞分化を遂げる能力を有する可能性を考え, 歯周組織を再生させる細胞源としての有用性について検討することとした.

     材料と方法 : ヒト歯髄細胞およびヒト歯根膜細胞は, 全身疾患を有さない抜歯目的の患者より抜去した歯から単離し, またヒト歯髄幹細胞およびヒト歯根膜幹細胞は, それぞれヒト歯髄細胞およびヒト歯根膜細胞からsingle colony selectionにより単離して用いた. 各種遺伝子発現を, 定量的RT-PCR法を用いて検討した. 骨芽細胞・脂肪細胞および軟骨細胞誘導実験は, alizarin red S染色, oil red O染色およびalcian blue染色によって評価した. 細胞表面抗原の発現を, フローサイトメーターを用いて測定した. 健全なブタ下顎骨から縦10mm×横10mm×高さ3mmに整形したブタ顎骨スライスを採取し, 実験に用いた. ラットGFP発現歯髄細胞の歯根膜組織へのホーミングについて, ラット第一臼歯の意図的再植時に, 抜歯窩へ細胞移植を行い, 免疫組織化学的染色法を用いて解析した.

     成績 : ヒト歯髄細胞とヒト歯根膜細胞における歯根膜関連因子の遺伝子発現を比較した結果, ヒト歯根膜細胞において有意な高発現を認めた. ヒト歯髄幹細胞およびヒト歯根膜幹細胞は, 多分化能を示し幹細胞マーカーを高発現していた. また, ヒト歯髄細胞およびヒト歯根膜細胞と同様に, ヒト歯髄幹細胞と比較してヒト歯根膜幹細胞は歯根膜関連遺伝子の高発現を認めた. ブタ顎骨スライス上でヒト歯髄幹細胞を培養した結果, 歯根膜関連遺伝子発現は, 培養ディッシュ上で培養した歯髄幹細胞と比較して有意に上昇しており, その発現量はヒト歯根膜幹細胞と同等であった. 加えて, 抜歯窩に移植したラットGFP発現歯髄細胞は, 再植歯周囲の歯根膜組織内に多く生着していることが認められた.

     結論 : ヒト歯髄幹細胞を骨基質上で培養すると歯根膜関連遺伝子発現が上昇し, 歯根膜組織を再生させる細胞源として有用である可能性が示唆された.

  • ―リアルタイム定量PCR法による解析―
    石澤 将人, 富山 潔, 長谷川 晴彦, 浜田 信城, 向井 義晴
    2018 年 61 巻 6 号 p. 354-360
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/07
    ジャーナル フリー

     目的 : 本研究では, 刺激唾液より培養したポリマイクロバイアルバイオフィルム (多種細菌から構成されるバイオフィルム) を用いて, Surface pre-reacted grass ionomer (S-PRG) フィラーから溶出されたフッ化物, ストロンチウムおよびホウ酸などのイオンが含まれているS-PRGフィラー溶出液の, バイオフィルムに対する抗菌効果を検討した.

     材料と方法 : S-PRGフィラーを蒸留水に懸濁して各種イオンを溶出させた上清を作製した (110.5ppm F). 本溶液を添加して作製したbuffered McBain 2005培養液をS-PRGフィラー溶出液含有培養群 (PRG群), また, S-PRGフィラー溶出液と同濃度のフッ化物を含むフッ化ナトリウム含有培養群 (NaF群) を作製し, これら2群を試験培養液群とした. 対照群にはbuffered McBain 2005培養液 (Cont群) を使用した. ポリマイクロバイアルバイオフィルムモデルは健康な被験者1名の刺激唾液を用い, 培養液中にカバーグラスを懸架, 37℃で10時間嫌気培養後, 新鮮培養液に交換, 継続して24時間まで嫌気培養することにより作製した. その後, 実験開始24時間から48時間後まで各種試験培養液を用いて嫌気培養した. 各実験群における48時間後の生菌数を測定し, 実験群間生菌数の比較は, one-way ANOVAおよびGames-Howell検定によりSPSS-PC. Ver. 10.1を用い有意水準5%で行った. また, 48時間後に形成されたポリマイクロバイアルバイオフィルムの全細菌数, ならびに, Streptococcus属, Actinomyces属およびVeillonella属の遺伝子コピー数を推定し, 各群のデータを比較, 検討した.

     結果 : 培養48時間後の総生菌数 ; PRG群は, Cont群およびNaF群に比較し, 顕著に総生菌数を抑制した. 細菌叢への影響 ; 全細菌コピー数は, PRG群が他群に比べて抑制されており, Cont群とNaF群は同等であった (Cont群 : 8.24×109, NaF群 : 4.68×109, PRG群 : 8.30×108). また, Streptococcus属およびActinomyces属についても, PRG群が他群に比べて強い抑制を示し (Streptococcus属 : Cont群 ; 2.10×109, NaF群 ; 1.19×109, PRG群 ; 3.83×108, Actinomyces属 : Cont群 ; 8.69×106, NaF群 ; 3.27×106, PRG群 ; 4.23×105), 特にVeillonella属に対する抑制が顕著であった (Cont群 : 2.06×109, NaF群 : 1.90×109, PRG群 : 7.58×107).

     結論 : S-PRG溶出液が含む多種のイオンは, バイオフィルムの成熟を抑制し生菌数を減じるだけでなくバイオフィルムのinitial colonyzerである菌属を抑制することが示された.

  • 長谷川 晴彦, 椎谷 亨, 見明 康雄, 日髙 恒輝, 國松 雄一, 石澤 将人, 二瓶 智太郎, 向井 義晴
    2018 年 61 巻 6 号 p. 361-367
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/07
    ジャーナル フリー

     目的 : 本研究では象牙質の脱灰抑制能について, 亜鉛・フッ化物・カルシウムを含有するガラスを用いて歯質保護を目的として新たに開発された亜鉛ガラス含有グラスアイオノマーセメントを, Transverse Microradiography (TMR) を用いて比較検討するとともに, 電子線マイクロアナライザー (Electron Probe Micro Analyzer, 以下, EPMA) にて象牙質に取り込まれた元素の分析を行った.

     材料と方法 : 実験群は, 非処理群 (以下, コントロール), 従来型グラスアイオノマーセメント (Fuji Ⅶ) 群 (以下, F7) および亜鉛ガラス含有グラスアイオノマーセメント群 (以下, C10) の3群とした. 各セメントを説明書どおりに練和後, ウシ歯根象牙質試料表面に乗せた2×3mmの穴あきテフロンシート (厚さ100μm) 内に塗布し, 圧接した. 5分経過後テフロンシートと余剰部分を除去し, 隣接する象牙質面を2×3mm残して耐酸性バーニッシュを施した. なお, コントロールはセメントで被覆する面を耐酸性バーニッシュで被覆し, 2×3mmの窓あけのみの状態にした. これら試料を容器の底部にワックスを用いて固定し, 上部より酸性溶液 (1.5mmol/l CaCl2, 0.9mmol/l KH2PO4, 50mmol/l acetic acid, 0.1ppm F, pH 5.0) を注入, 37℃で4日間脱灰を行った. なお, 溶液は24時間ごとに新鮮な脱灰液と交換した. 脱灰終了後, 試料を300μmに薄切してTMR撮影を行い, 分析用ソフトを用いて各群の平均ミネラルプロファイルを作成し, 平均ミネラル喪失量を測定した. また, 交換時に回収した脱灰液のフッ化物イオン濃度を測定した. ミネラル喪失量の統計分析はone-way ANOVAおよびTukey testを用い, 有意水準5%で行った (n=6). C10群の脱灰象牙質に取り込まれた元素 (Ca, P, F, Zn) に関しては, EPMAで切断面を分析した.

     結果 : 各群の平均ミネラルプロファイルでは, C10が表層および病巣体部ともにほかの群と比べて高いミネラルボリューム%を示した. ミネラル喪失量では, C10がほかの2群と比較して有意に少ない値を示した. EPMAの線分析からC10でZnが表層にきわめて薄く, Fも40μm程度取り込まれていることを確認した. CaおよびPは, TMRのミネラルプロファイルと類似した分散状態を示した. 脱灰溶液中のフッ化物イオン濃度は, C10がF7よりも高い値を示した.

     結論 : 亜鉛ガラス含有グラスアイオノマーセメントを塗布した隣接部の象牙質は, 脱灰が抑制されることが示された.

  • 吉川 和子, 片岡 有, 小林 幹宏, 山口 麻衣, 小川 弘美, 宮﨑 隆, 真鍋 厚史
    2018 年 61 巻 6 号 p. 368-377
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/07
    ジャーナル フリー

     目的 : 歯科材料の屈折率計測に対するSS-OCTの可能性に加え, メタルフリー修復材料の屈折率に関しての検討を行った.

     材料と方法 : 10×10×1.0mm (縦×横×厚み) のESTELITE BLOCK (EB), IPS Empress CAD (IEP), IPS e-max CAD (IEM), VITA SUPRINITY for KaVo ARCTICA (VS), NACERA pearl 1 (NA) の試料 (5種×5個, 合計25個) を用意した. それぞれの試料に, 任意の計測ポイント8点をマークした. Optical path length (OPL) 法により得られた光学的距離 (OPL) とactual thicknessより, それぞれ屈折率を算出した. それぞれの屈折率の平均値を材料ごとのデータとし統計分析を行った.

     結果 : 従来法であるアッベ屈折計 (KPR-30A, 島津製作所) にて計測が不可能であったNAの屈折率は2.227 (±0.023) であった. NAはほかの材料の屈折率に比べ有意な値を示した (p<0.05). ほかの材料は1.5近傍の数値を示した. IEM>VS>EB>IEPの順に屈折率が減少していく傾向が認められた. 回帰分析ではすべての試料が負の相関を示した.

     結論 : SS-OCTを利用して, OPL matching methodにより, 代表的なメタルフリー修復材料の屈折率の測定を行い, 以下の結論を得た. 1. 従来法のアッベ屈折計では屈折率を計測することができないNAを含む, すべてのメタルフリー修復物の屈折率計測が可能であった. 2. 4種類の歯冠色材料の屈折率は約1.5であったが, NAは約2.2と有意に大きい値を示した. 3. すべての材料において, actual thicknessと屈折率の間に負の相関が認められた. 4. OCTの画像深度は組織の透光性に左右され, 照射光は表面から深層に進むにつれ減衰する. 本研究で実施した回帰分析の結果においても, SS-OCTで計測した屈折率は厚みに支配されることが確認された. 5. 事前に歯冠修復材料の屈折率を計測してデータ化しておくことにより, チェアサイドで簡便に厚みを計測できる可能性が示唆された. 6. 本研究により, SS-OCTの画像診断技術にとどまらない幅広い臨床応用の可能性が示唆された.

  • ―マイクロCT画像と病理組織像による検討―
    泉 利雄, 丸田 道人, 水上 正彦, 松本 典祥, 畠山 純子, 中山 英明, 小嶺 文誉, 松﨑 英津子, 阿南 壽
    2018 年 61 巻 6 号 p. 378-387
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/07
    ジャーナル フリー

     目的 : 生体活性ガラス (以下, BAG) にstrontium (以下, Sr) を含有させた, 粒子状BAGをラットの頭頂骨骨欠損部に埋入すると, Srを含まないBAG粒子に比べて骨形成が促進される. しかし, 骨欠損部の出血による粒子の流失・溶解により骨形成がない部位が生じやすい. そこで, γポリグルタミン酸 (以下, γ-PGA) とBAG粒子との練和物からdisc状硬化体を作製した. discをラットの骨欠損部に埋入して, その生体内安定性を検証すること, およびSrを含まないdiscとSrを含有するdiscの骨形成能を比較しdiscから放出されるSrの骨形成促進作用を明らかにすることが研究目的である.

     材料および方法 : SiO2 53 wt%, CaO 20 wt%, Na2O 23 wt%, P2O5 4 wt%の組成のガラス (Sr0) およびSr0のCaOをすべてSrOで置換したガラス (Sr100) をおのおの合成した後, 粒径40μm以下の粉末を得た. さらに, ガラス粉末をγ-PGAで練和し硬化させ, 直径6mm厚さ2mmのdiscを得た.

     12週齢のSD系ラット頭頂骨に直径6mmの骨欠損を作製し, Sr0あるいはSr100のdiscを欠損部に埋入し, 何も埋入しないものを対照群とした. 処置の1, 2カ月および3カ月後にマイクロCT撮影を行い, 3カ月後のマイクロCT撮影後安楽死させ, 光学顕微鏡で新生骨量を定量分析した.

     成績 : 対照群では, エックス線透過像はわずかに減少した. Sr0 discは崩壊せず骨欠損部にとどまっており, 断面ではdisc周囲にエックス線不透過像の増大を認めなかった. Sr100 discも骨欠損部にとどまっていたが, 断面の1, 2カ月例ではdisc表面に顆粒状のエックス線不透過像を認め, 3カ月例ではdiscと離れた硬膜付近にエックス線不透過像の増大を認めた. 術後3カ月での光顕所見では, 対照群とSr0 disc群でほとんど新生骨形成を認めなかったが, Sr100 disc表面の一部と硬膜表面には新生骨形成を認めた. さらに画像解析により, 対照群およびSr0 disc群と比較して, Sr100 disc群の新生骨形成量の有意な増加が明らかとなった.

     結論 : Srを含有したBAGとγ-PGAを練和して作製したdiscは, 実験期間中骨欠損部にとどまっており, discから放出されるSrが骨欠損部の骨形成を促進する可能性があることが示唆された.

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