日本歯科保存学雑誌
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62 巻 , 6 号
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総説
ミニレビュー
原著
  • 第2報 : 湾曲根管模型 (J型およびS型) を用いた根管形成の習熟度について
    大嶋 淳, 川西 雄三, 岡 真太郎, 山田 朋美, 山口 幹代, 朝日 陽子, 外園 真規, 鍵岡 琢実, 渡邉 昌克, 内藤 克昭, 阿 ...
    2019 年 62 巻 6 号 p. 263-270
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/07
    ジャーナル フリー

     目的 : 弾性係数が小さく, 形状記憶性, 超弾性, ファイルテーパーの多様化といった特徴をもつニッケルチタン (NiTi) 製ロータリーファイルは, ステンレススチールファイルと比較して高い切削効率や作業時間の短縮, 優れた根管追従性を有し現在の歯科臨床においても頻繁に用いられるようになりつつある. 本研究では, 歯学部学生の臨床前基礎実習において, FKGレイス (FKG Dentaire, Switzerland) およびJ型, S型湾曲根管模型を用いた根管形成実習を実施し, 習熟到達度を評価した.

     材料と方法 : 大阪大学歯学部3年生56名に対して, J型およびS型エポキシレジン製透明湾曲根管模型を用いてFKGレイスによる形成実習を2回ずつ行った. Kファイル#15にて穿通し, 根管長を測定後, プリレイスによる根管上部のフレアー形成とKファイル#15によるグライドパス形成を行った. 作業長は根管長から1mm引いた長さとし, レイス#30/6%, #30/4%, #25/4%, #20/4%を順に用いて, 最終拡大号数を#30/6%として根管形成を行った.

     形成前後の根管模型をマイクロCT (R_mCT2, RIGAKU) にて撮影し, 根管長軸方向に対して根尖から垂直に1, 2, 3, 4, 5mmおよび6mmの位置で内湾側および外湾側の根管幅径増加量を計測した. その後, S型根管幅径増加量および形成時間について, 学生ならびに日本歯科保存学会専門医・認定医10名がおのおの2回実施した結果を比較した.

     結果 : J型根管1回目の根管形成では, 62.5%の学生が根尖破壊, 5.4%がレッジ形成を生じ, 成功率は32.1%だった. J型根管2回目では, 30.4%が根尖破壊, 3.6%がファイル破折, 3.6%がレッジ形成を生じたものの, 成功率は62.4%と改善した. S型根管1回目は23.2%が根尖破壊, 7.1%がファイル破折を生じた. S型根管2回目では7.1%がファイル破折を生じた. 根管形成に要した時間については, 学生のS型2回目の形成時間がS型1回目と比較し有意に短縮され, 専門医・認定医によるS型1回目, 2回目の形成時間と比較して有意差を認めないレベルまで改善した. 内湾側および外湾側の根管幅径増加量については, 学生1回目, 2回目, ならびに専門医・認定医の間で統計学的有意差を認めなかった.

     結論 : NiTiファイルを用いた湾曲根管形成実習において, 特に根尖部の形成に注意して実習回数を重ねることにより, 難易度の高いS型湾曲根管であっても迅速に, 正確に根管形成ができるようになり, 習熟到達度が向上することが明らかとなった.

  • 平木 大地, 植原 治, 原田 文也, 髙井 理衣, 高橋 周平, 虎谷 斉子, 森川 哲郎, 安彦 善裕
    2019 年 62 巻 6 号 p. 271-278
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/07
    ジャーナル フリー

     目的 : ホップには抗菌効果のあることから, 口腔細菌に対する抗菌作用も期待できるが, 歯周病原細菌Porphyromonas gingivalisに対しての抗菌効果およびそのメカニズムについては明らかにされていない. 本研究では, ホップの成分であるキサントフモール (XN) のP. gingivalisへの作用についてRNA-Seqによる網羅的解析を行った.

     材料および方法 : 歯周病原細菌P. gingivalisへのXNの影響について, 次世代シーケンサーを用いたRNA-Seqによるトランスクリプトーム解析を行った. P. gingivalis W83株をXNと嫌気培養し, 最小発育阻止濃度 (MIC) の測定, 抽出したRNAを用いRNA-SeqおよびReal time PCRによる再現性の確認を行った.

     結果 : トランスクリプトーム解析で発現が増加していたものにmolecular chaperone GroES, nucleotide exchange factor GrpEおよびmolecular chaperone HtpGなどのHeat Shock Proteinにかかわる遺伝子が認められた. 低下していたものにFe-S cluster assembly protein SufB, Fe-S cluster assembly protein SufDおよびFe-S cluster assembly ATPase SufCが認められた. SufB, SufDおよびSufC遺伝子は, 鉄の取り込みや鉄-硫黄クラスターの形成において重要な役割を果たしていると考えられることから, XNはP. gingivalisの発育に必要な鉄の取り込みを阻害する可能性がある.

     結論 : ホップ成分XNがin vitroで歯周病原細菌P. gingivalisの発育抑制効果を有することが示唆された.

  • 金子 至, 内川 宗敏, 松井 力, 汲田 剛, 三溝 泰弘, 丸山 慶四郎, 菅谷 勉
    2019 年 62 巻 6 号 p. 279-285
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/07
    ジャーナル フリー

     目的 : メタシールSoftはセルフアドヒーシブシステムで, 接着性のレジン系シーラーのなかでも操作が簡便で, 根管洗浄剤や水分の影響を受けにくく, 根管壁から重合が開始されるなどの利点があり, 高い封鎖性が期待できる. 本研究では, メタシールSoftで根管充塡を行った後の治療成績を評価した.

     材料と方法 : 本研究は, 2013年10月から2019年5月までの間に6施設においてメタシールSoftを用いて根管充塡を行った患者を後ろ向きに調査した. 調査項目は, 年齢, 性別, 歯種, 診断名, 治療歴, デンタルエックス線写真による根尖部骨吸収像の有無, 自発痛, 打診痛, 腫脹, 圧痛, 瘻孔の有無, 治療方法, 根管充塡方法とした. 根管充塡後の予後は, 術前および根管充塡後のデンタルエックス線写真により, 根尖部骨吸収像が (1) 消失, (2) 縮小, (3) 不変または拡大の3群に分類し, エックス線写真検査結果が (1) または (2) に分類され, 臨床検査結果がすべて正常なものを成功, (3) に分類されるか臨床症状が一つでも出現したものを失敗と評価した. 成功率は, 抜髄および感染根管治療で分類し, 感染根管治療はさらに術前の病変の有無, 歯内療法の履歴の有無で分類し, Kaplan-Meier法で算出した.

     結果 : 対象は197人 (52.0±15.1歳) の381歯で, 抜髄が86歯, 感染根管治療が295歯であった. 感染根管治療を行った歯で, 術前に根尖部骨吸収像がみられたのは115歯, このうち初回治療歯は31歯, 再治療歯は84歯であった. 観察期間は最長5年1カ月, 平均3年6カ月で, 抜髄の成功率は, 1年後97.6%, 2年後96.4%, 5年後96.4%であった. 根尖に病変のみられなかった歯の感染根管治療では, それぞれ98.9, 98.9, 95.3%であった. 根尖に病変のみられた歯の初回治療では64.5, 92.9, 92.9%, 再治療では45.2, 60.7, 75.7%であった.

     結論 : 成功率は抜髄, 感染根管治療とも高く, 観察期間の5年間では経時的に成功率が低下することはなかった.

  • 石井 志織, 今﨑 麻里, 石動 更, 藤川 晴彦, 福田 康, 西永 英司
    2019 年 62 巻 6 号 p. 286-295
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/07
    ジャーナル フリー

     目的 : 根面う蝕予防効果の高い歯磨剤の開発を目指し, われわれは根面う蝕の進行機序に基づいたシーズスクリーニングを行い, ピロリドンカルボン酸 (以下, PCA) に象牙質の脱灰の発生・進行を抑制する可能性を見いだした. 本研究では, PCAとフッ化物 (以下, F) を配合した新規歯磨剤の根面う蝕予防に対する有用性検証を目的に, 象牙質の脱灰抑制・コラーゲン分解抑制効果をin vitroで評価した. さらにPCAによる象牙質の脱灰・コラーゲン分解抑制効果の機序を検討した.

     材料と方法 :

     1. 各種歯磨剤の有用性評価 ; ウシ歯根から, 健全象牙質ブロックとコラーゲン露出象牙質ブロックを調製した. 健全象牙質ブロックを歯磨剤 (1,450ppm F [TP-1450F], 3,000ppm F [TP-3000F], 1,450ppm F+PCA [TP-1450F+PCA] 配合) の希釈懸濁液で処置し, 人工唾液に浸漬した. また, コラーゲン露出象牙質ブロックを各種歯磨剤の希釈懸濁液で処置し, コラゲナーゼを含む人工唾液に浸漬した. 各象牙質ブロックを脱灰液に浸漬後, 原子吸光光度計で溶出カルシウム (以下, Ca) イオン量を定量した. さらに, 共焦点ラマン顕微鏡を用い, コラーゲン露出象牙質ブロック表層のヒドロキシプロリン (以下, HYP) 量を測定した.

     2. 作用機序の評価 ; 健全・コラーゲン露出象牙質ブロックをそれぞれ, 1,450ppm F (S-1450F), 1,450ppm F+PCA (S-1450F+PCA) 水溶液の希釈液に浸漬後, 各象牙質ブロックのF滞留量をイオン電極で定量した. また, PCAをコラーゲン, コラゲナーゼと混合し, 反応後のコラーゲン分解量を測定した. さらに, 水晶振動子マイクロバランス法を用い, コラーゲンとハイドロキシアパタイト (以下, HAP) に対するPCAの初期吸着量と水洗浄後の残存量を測定し, 残存率を算出した.

     結果 : 1. 健全・コラーゲン露出象牙質ブロックのいずれにおいても, 溶出Caイオン量はTP-1450F+PCA群でTP-1450F群より有意に抑制された. コラーゲン露出象牙質ブロック表層のHYP量はTP-1450F+PCA群でTP-1450F, TP-3000F群より有意に高かった. 2. 健全・コラーゲン露出象牙質ブロックのいずれにおいても, F滞留量はS-1450F+PCA群でS-1450F群より有意に高かった. PCAはコラゲナーゼによるコラーゲン分解を抑制し, HAPよりもコラーゲンに対して有意に高い残存率を示した.

     結論 : In vitroにおいて, TP-1450F+PCAはTP-1450Fより健全・コラーゲン露出象牙質ブロックの脱灰を有意に抑制し, TP-1450F, TP-3000Fよりコラーゲン露出象牙質ブロックのコラーゲン分解を有意に抑制した. 本結果には, PCAの象牙質へのF滞留性の向上作用やコラゲナーゼによるコラーゲン分解抑制作用, コラーゲンへの吸着作用の関与が推察された.

  • 臼歯咬合面齲蝕と隣接面齲蝕の診断における画像特性の影響
    島田 康史, 荒木 和之, 角 保徳, 田上 順次, 𠮷山 昌宏
    2019 年 62 巻 6 号 p. 296-303
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/07
    ジャーナル フリー

     目的 : 齲蝕は世界に最も蔓延した疾患の一つである. 今日の齲蝕治療において, 切削介入の対象となるのは主として細菌感染した象牙質齲蝕であり, 適切な治療を行うためには齲蝕の進行度を正確に診断する必要がある. 光干渉断層計 (Optical coherence tomography, 以下, OCT) は光を使って生体の断層画像を得る装置であり, なかでも波長掃引型OCT (Swept-source OCT, 以下, SS-OCT) は画像深度が深く, 歯科臨床での応用が期待されている. 本研究は臼歯咬合面と隣接面の象牙質齲蝕について, SS-OCTを用いた診断の有用性を評価した.

     材料と方法 : ヒト抜去大臼歯のなかから咬合面または隣接面に齲蝕を有する歯と健全歯をシリコン印象材に植立し, 歯列模型を作製した. 大臼歯の咬合面側から, SS-OCT (吉田製作所) を用いて咬合面または隣接面の3D画像を取得し, 3D画像から評価部位の2Dの断面画像を抽出した. SS-OCT画像を撮影した後, 歯列模型の頰側面からデジタル口内法エックス線写真 (Dentnavi Hands XD35, 吉田製作所) を撮影した. 得られたSS-OCT画像およびデジタル口内法エックス線写真の画像を用い, 象牙質齲蝕の診断を行った. 評価者は臨床経験5年以上の歯科医師10名とし, 齲蝕の進行度を4段階にスコア分類した. その後, 歯を半切して評価部位を齲蝕検知液で染色し, 半切面から得られた結果を基準として, SS-OCTおよび口内法エックス線写真の, 咬合面および隣接面の象牙質齲蝕に対する感度と特異度, カッパ係数を算出し, 有意水準α=0.05にて比較した.

     結果 : 咬合面および隣接面の象牙質齲蝕に対するSS-OCTの感度は, 口内法エックス線写真よりも有意に高い結果が得られたが (p<0.05), 特異度に有意差はみられなかった (p>0.05). しかしながら, SS-OCTの咬合面齲蝕に対する感度はやや低くなる傾向がみられた (p<0.05). SS-OCTの診断によるカッパ係数は, 咬合面および隣接面の象牙質齲蝕に対して同程度の高い一致率が得られたのに対し (p>0.05), 口内法エックス線写真のカッパ係数は隣接面齲蝕において有意に低く (p<0.05), 診断法による違いがみられた.

     結論 : SS-OCT画像を用いた象牙質齲蝕の診断は, 咬合面および隣接面において有用性を確認することができた. また観察する部位によって感度に違いがみられ, 画像特性を理解する必要性が示唆された.

  • 本郷 智之, 渡辺 聡, 高野 晃, 山内 慎也, 星原 康宏, 八尾 香奈子, 佐竹 和久, 興地 隆史
    2019 年 62 巻 6 号 p. 304-310
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/07
    ジャーナル フリー

     目的 : レーザーを用いた根管洗浄法は優れた根管清掃効果を示すことが報告されているが, 根尖孔からの洗浄液溢出のリスクが懸念されている. 本研究では, 光熱変換チップ (Thermo-optically Powered tip : TOPチップ) を使用した980nm半導体レーザー (Alta Modular Laser System : MLS) によって根管洗浄液の活性化を行った際に, 根尖孔外に生じる圧力を評価することを目的とした.

     材料と方法 : プラスチック製根管模型 (先端径0.40mm, テーパー6%) に蒸留水を満たし, MLSおよびTOPチップによる根管洗浄 (TOP群) あるいは従来のシリンジ洗浄 (SI群) を, TOPチップならびに洗浄針の先端を根尖孔から2, 5, 10mmの位置に設置した状態で20秒間行った. レーザー設定値は2W (120mJ, 16pps) とした. 洗浄中に根尖孔外に生じる圧力は, 根管模型根尖部に圧力計測装置を接続して計測した. 二元配置分散分析およびTukey-Kramer法により, 有意水準5%で統計解析した.

     結果 : SI群 (根尖孔から2, 5mm) では, 他群と比較して有意に大きい圧力が生じた (p<0.05). TOP群では, チップ挿入深度の相違による圧力の有意差は認められなかった (p>0.05).

     結論 : 本実験条件下では, MLSおよびTOPチップによる根管洗浄液活性化を行った場合に根尖孔外に生じる圧力は, チップ挿入深度が深い条件では従来のシリンジ洗浄と比較して有意に低値を示した.

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