日本歯科保存学雑誌
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62 巻 , 1 号
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総説
原著
  • 森川 裕仁, 保尾 謙三, 黄地 智子, 吉川 一志, 山本 一世
    2019 年 62 巻 1 号 p. 8-16
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/28
    ジャーナル フリー

     目的 : 本研究では, ハイブリッドレジンブロックに対してマトリックスレジンに含浸するプライマーを用いたレジンセメントの有効性, ならびにシランカップリング処理とサンドブラスト処理の併用について検討した.

     材料と方法 : CAD/CAM用ハイブリッドレジンブロックとして松風ブロックHCハード (松風, 以下, SH), ノンフィラー型レジンブロックとして試作レジンブロック (以下, NF) を作製して実験に用いた. 前処理材としてマトリックス含浸型プライマーのHCプライマー (以下HC, 松風) を用いた. SH, NFから被着体 (14×12×2mm), 試験体 (3×3×3mm) を作製して, 被着面にサンドブラスト処理を行った. 被着面の処理条件はHCプライマー処理 (HC群), 4%シラン配合試作プライマー処理 (HC+SI群), 試作4%シランカップリング処理 (SI群), 無処理 (NT群) とした. 各処理後に被着体と試験体を接着性レジンセメントブロックHCセム (松風) にて接着し, 硬化後37°C水中に24時間水中保管, およびサーマルサイクル負荷5,000回を行った (n=6). 万能試験機を用いてせん断接着試験を行い, 走査電子顕微鏡にて破断面の観察後, 一元配置分散分析およびTukeyの検定を用いて統計学的に検討を行った. さらにHCのマトリックスレジンへの含浸性を確認するためにNFの試験体 (14×12×2mm) を作製し, HC滴下後10分間放置しレーザーラマン顕微鏡を用いて分析を行った.

     結果および考察 : SH, NFともに24時間後はHC群, HC+SI群, SI群, NT群に有意差はなかったが, サーマル後はHC群, HC+SI群ともにSI群, NT群より有意に高い接着強さを示した. またHC群, HC+SI群は, 24時間後とサーマル後で接着強さに有意差が認められなかった. ラマン分光分析より, HCはマトリックスレジンに4~5μm含浸していることが確認された. これらより, 試作プライマーではマトリックスレジンへの含浸性とフィラーへの化学的結合の相乗効果により高い結合が得られたと考えられる.

     結論 : ハイブリッドレジンブロックに対する接着において, マトリックスレジン部に接着を求めるマトリックス含浸型プライマーの有効性が認められた. また, マトリックス含浸型プライマーにシランカップリング剤を加えた試作プライマーを用いることで, さらなる接着強さの向上が期待できることが示唆された.

  • 長沢 悠子, 日比野 靖, 江田 義和, 重田 浩貴, 中嶌 裕
    2019 年 62 巻 1 号 p. 17-26
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/28
    ジャーナル フリー

     目的 : 本研究ではセルフアドヒーシブレジンセメントを使用して, エッチングあるいはサンドブラスト処理後のCAD/CAM用セラミックブロックと支台築造用コンポジットレジンのせん断接着強さを測定した.

     材料と方法 : 75個の包埋をしたセラミックブロックをSiC#1200で研磨後に, ランダムに15個ずつ5つの処理条件に分けた. セラミックブロックの表面処理は9 wt%フッ化水素酸を0分 (コントロール), 1.5分, 5分, 30分そしてサンドブラスト処理の5条件とし, 処理後に表面粗さを測定した. 支台築造用コンポジットレジンで円板状試料を作製し, プライマー塗布後にセラミックブロックにセルフアドヒーシブレジンセメントで接着した.

     成績 : サンドブラスト処理は, フッ化水素酸処理よりも表面粗さが有意に大きい値を示した (p<0.05). フッ化水素酸処理5分およびサンドブラスト処理は, ほかの処理条件より大きい接着強さを示した (p<0.05).

     フッ化水素酸処理時間と表面粗さはすべての処理時間において相関係数r=0.450 (p<0.05), なおかつ, 処理時間0分から5分まではr=0.879 (p<0.05) でありいずれも正の相関を有した. また, 表面粗さと接着強さはすべての処理時間において相関係数r=0.460 (p<0.05), 処理時間0分から5分まではr=0.571 (p<0.05) といずれも正の相関を示した. 表面処理をした試料のせん断接着試験後の破壊様式は, 多くが凝集破壊を示した.

     結論 : フッ化水素酸によるセラミックのエッチングはサンドブラスト処理後のせん断接着強さと同等の値が得られた.

  • 湊 華絵, 北島 佳代子, 新井 恭子, 五十嵐 勝
    2019 年 62 巻 1 号 p. 27-38
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/28
    ジャーナル フリー

     目的 : 本研究は, ラットの歯根未完成歯を抜髄した後の失活歯にリバスクラリゼーションを施し, 血餅上部にMTA (mineral trioxide aggregate) とcalcium hydroxide (CH) を用いた場合の新生組織の形成および根尖歯周組織の創傷部を組織学的に比較観察する目的で施された.

     材料と方法 : 6週齢のWistar系雄性ラットを使用した. ラバーダム防湿下で根管歯髄の除去を行った. Hファイルで根尖孔外に約1mm突き出して出血させた. 血餅の形成を確認し, MTAまたはCHを根管口部に貼付した. 実験期間は術後1, 2, 4週とした. これらの標本はHE染色で組織学的, DMP-1, nestinで免疫組織学的に観察した.

     成績 : MTA群はCH群に比べ新生組織の形成が根管全域にみられた. 新生組織の形成は, 術後1週 (p=0.041) と術後4週 (p=0.015) においてMTA群がCH群と比較して形成量が多く, 有意に異なっていた. 硬組織の形成は術後4週においてMTA群がCH群と比較して歯頸部1/3までの形成量が多く, 有意に異なっていた (p=0.004). また硬組織の形成は, MTA群間 (p=0.004) とCH群間 (p=0.041) において術後4週にかけて徐々に増加する傾向があった. 骨様硬組織の形成は術後4週にかけて徐々に増加する傾向がみられ, MTA群間において形成量は有意に異なっていた (p=0.015). 硬組織の形成はすべての症例で骨様硬組織であった. すべての症例で, 炎症性細胞浸潤はみられなかった. 石灰化の制御に関与するDMP-1の発現は, 術後1週においてMTA直下, MTA下の顆粒様組織, 根尖側の塊状構造の周囲に観察された. 象牙芽細胞の分化マーカーのnestinの発現は, 術後4週において根尖で観察された.

     結論 : この研究により歯根未完成歯に抜髄をし, リバスクラリゼーションを行った場合, CHよりMTAが根管内の組織再生と硬組織形成に有効であることが示された.

  • 保坂 啓一, 米倉 和秀, 田口 啓太, アントニーン ティヒー, 久野 裕介, 永野 大樹, 荒岡 大輔, 畑山 貴志, 佐藤 健人, 高 ...
    2019 年 62 巻 1 号 p. 39-46
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/28
    ジャーナル フリー

     目的 : 近年, 生活歯のみならず根管処置歯に対しても接着性コンポジットレジンを用いた直接法支台築造法が行われる機会が増加している. ポスト窩洞における根管壁象牙質への接着では, 窩底部は照射光エネルギーが十分に到達しにくいことから, これまでデュアルキュア型接着システムおよびデュアルキュア型コンポジットレジンが多く用いられてきた. 現在では, デュアルキュア型コンポジットレジンとの間のタッチキュア (接触重合) によって, ボンドへの光照射が困難な部位に関しても重合性の向上を目指すシステムが紹介されている. 本研究では, タッチキュアがセルフエッチシステムの根管壁象牙質への接着性能に及ぼす効果を検討した.

     材料と方法 : ヒト抜去下顎小臼歯12本に径1.5mm, 深さ8mmのポスト窩洞を形成した後, 1ステップセルフエッチシステム, クリアフィルユニバーサルボンドQuickER (UBQ, クラレノリタケデンタル) および2ステップセルフエッチシステム, クリアフィルメガボンド2 (SE2, クラレノリタケデンタル) を用いて業者指示どおり接着処理を行った. SE2のボンドについては, デュアルキュア型コンポジットレジンとの間でタッチキュアを促進するクリアフィルDCアクティベーター (DCA, クラレノリタケデンタル) との等量混和の有無によって2群を設定した. ボンドへの光照射は, LED光照射器を用いて業者指示どおりそれぞれ10秒間行った. その後, クリアフィルDCコアオートミックスONEを充塡し, LED光照射器を使用して20秒間光照射を行った. 各接着システムについて, 根管接着試料は37°C水中に24時間保管後, 歯根軸に対し直角方向に棒状試片 (断面0.6×0.6mm) を32本作製し, 1窩洞の棒状試片を均等に分け, 合計16本の歯冠側群と根尖側群を設定した. その後, クロスヘッドスピード1mm/minにて微小引張り接着試験を行った. 得られた結果は歯冠側および根尖側, 4試料ずつ分類し, 2-way ANOVAおよびBonferroni補正を用いたt検定を用いて有意水準5%にて統計処理を行った.

     結果 : すべての群において, 根尖側の接着強さは歯冠側の接着強さより有意に低い値を示した. 歯冠側では, SE2+DCA群はUBQ群より有意に高い値を示したものの, SE2+DCA群とSE2群間, SE2群とUBQ群間の間には有意差は認められなかった. 一方, 根尖側ではすべての材料間に有意差は認められなかった. 根尖側における破断面の観察から, UBQ群, SE2+DCA群におけるBlister Formationが認められた.

     結論 : 1ステップセルフエッチシステム, 2ステップセルフエッチシステムともに深部根管壁象牙質では接着強さが減少し, タッチキュアの付与による接着性能向上効果は認められなかった. 溶媒が残存しやすく, 照射光の到達しにくいポスト窩洞深部の重合性の改善に関する課題が示唆された.

症例報告
  • 保坂 啓一, 田代 浩史, 高橋 真広, 岸川 隆蔵, 中島 正俊, 大槻 昌幸, 田上 順次
    2019 年 62 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/28
    ジャーナル フリー

     目的 : 接着歯学の発展に伴い, Minimal Intervention Dentistryのコンセプトに基づく歯質接着システムとコンポジットレジンを用いた直接法接着修復治療は, 臨床的有効性と経済的効率性の観点から, 典型的な窩洞のみならず, 空隙歯列の空隙閉鎖, 歯冠形態の改善, 前歯部少数歯欠損補綴までさまざまな症例に多く用いられている. 少数歯欠損補綴に関しては, コンポジットレジンのみで修復する方法は強度が不足することから, より高い強度と破折抵抗性を求めて, ファイバー繊維がしばしば併用されてきた. しかし術式は単純ではなく, 高度な技術が必要である. 近年, 接着性レジンの接着性能やフロアブルコンポジットレジンの物性が向上したことから, 術式がシンプルなコンポジットレジンのみの修復が改めて見直されている. しかし, その報告はあまり多くない. 今回, 大臼歯部1歯欠損補綴に対して最新の接着システムとフロアブルコンポジットレジンのみを用いたダイレクトブリッジ修復を行い, これまでのところ良好な結果を得ているので報告する.

     症例 : 29歳女性. 下顎左側第一大臼歯は歯根破折の診断により抜歯された. 欠損隣接歯には全周に2, 3mm程度のポケットが観察されたのみで, 全顎的な歯周炎はなく, すべての歯に病的な動揺は認められなかった. また, 矯正歯科治療後の患者で咬合に問題は認められなかった. あらかじめ, 作業用模型上欠損部にポンティックのワックスアップを行い, ポンティック部の咬合面・基底面のシリコンコアを作成した. 2018年2月, 欠損側エナメル質には, リン酸ジェルを用いて酸処理を行った後, ツーステップセルフエッチングシステムを用いてメーカー指示どおり歯面処理を行い, フロアブルコンポジットレジンのみを用いて積層充塡を行いながらダイレクトブリッジ構造を構築した. 咬合調整および形態修正研磨を行い, 1週間後に予後を確認した.

     結果 : 9カ月経過後の時点においても, 良好な予後が確認されている.

     結論 : 本症例では, フロアブルコンポジットレジンのみを用いた直接法修復によって大臼歯部1歯欠損補綴治療を完了し良好な予後を得た. ファイバー繊維による補強構造を必要とせず, フロアブルコンポジットレジンのみの修復により良好な予後が得られたことから, 単純化された術式によるダイレクトブリッジ修復の臨床応用が今後期待される.

  • 北島 佳代子
    2019 年 62 巻 1 号 p. 54-64
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/28
    ジャーナル フリー

     目的 : 垂直性歯根破折 (VRF) は, 予後不良となることから抜歯の適応とされてきた. 近年, 破折片を接着するために接着剤が応用されるようになり (接着療法), 良好な臨床症例が報告されている. しかし, その接着療法の弱点は, 技術的な困難性と, 炎症や感染がときどき起こること, その結果として深い歯周ポケットが残存することである. 本報告では, 意図的再植術を応用し, レジンを用いた根管内接着法とmineral trioxide aggregate (MTA) を用いた歯根表面の接着法の併用法がVRFの2症例に適用された.

     材料と方法 : VRFを伴う患歯は最初に抜歯され, 歯根表面の破折線の1層を残して根管側から感染歯質が大きく切削除去された. 続いて, 歯を一塊として強固に固定するために, 殺菌された根管は補強用ファイバーコアに沿ってDC型コア用レジンで充塡された. その後ライン状の窩洞が歯根表面の破折線上に形成され, 再植前にMTAで充塡された. 最後に処置された歯は, 搔爬・洗浄された後の抜歯窩に再植された.

     結果 : 本法を施行した2症例は, 炎症や歯周ポケットを残存せず, 良好な経過を示している.

     結論 : 意図的再植術を応用し, レジンを用いた根管内接着法とMTAを用いた歯根表面の接着法の併用法が施された2症例において, 感染源のより的確な排除とMTAの作用により, 結果として歯周組織の再構築が達成された. この方法は, 急性症状や歯周ポケットを伴わない垂直性歯根破折のための画期的な方法として期待される.

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