日本歯科保存学雑誌
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62 巻, 5 号
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総説
誌上シンポジウム
原著
  • 江幡 香里, 稲本 京子, 柴田 直樹, 中田 和彦
    2019 年 62 巻 5 号 p. 243-250
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル フリー

     目的 : 愛知学院大学歯学部附属病院歯内治療科には多くの患者が紹介により来院しているが, その数は年々増加傾向にある. そのため, 円滑な受け入れ体制の整備や地域医療機関との緊密な病診連携の推進が喫緊の課題となっている. そこで今回, 当科に紹介された初診患者に関する各種医療情報を調査し, 大学病院としての役割を検証した.

     材料と方法 : 2014年4月から2017年3月までの3年間に, 愛知学院大学歯学部附属病院歯内治療科宛ての紹介状を持参し, 本院総合初診科に来院した患者を対象とした. 初診紹介患者に関する医療情報として, 性別と年代, 患者居住地と紹介元歯科医院所在地, 紹介目的, 依頼部位, 臨床症状, 診断名, 紹介元で根管処置が困難とされた要因, 本院での処置方針と方針決定後の患者動向について調査を行い, 紹介元からの提供情報と本院で得られたデータを比較検討した.

     結果 : 2014, 2015, 2016年度の結果は, 次のような同様の傾向を示した. 紹介患者の来院人数は, 各年度で約500名であり, 男女比は約3 : 7の割合で女性患者が多く, 年齢構成は, 30歳代と40歳代で全体の約半数を占めた. 患者居住地と紹介元歯科医院所在地ともに, 9割以上が愛知県で, そのうち名古屋市が全体の約半数を占めた. 紹介目的は, 9割以上が紹介元歯科医院で対応困難な症例に対する治療の依頼であり, 依頼部位は, 上下顎第一および第二大臼歯が全体の約6割を占めた. 紹介元と本院の両方で最も多く認められた臨床症状は 「疼痛」 であり, 本院初診時での診査では, 疼痛の性状のなかで 「打診痛」 が半数以上を占めた. 本院での診断名は, 「根尖性歯周炎」 が最も多く, 全体の約7割を占めた. 根管処置が困難な要因 (根管閉鎖, 根管内異物, 穿孔など) があると判断され当院に紹介された患者は, 全体の約3割であった. 本院での処置方針は, 「感染根管処置」 が全体の約6割を占め, 方針決定後の患者動向は, 当院歯内治療科での処置希望が全体の約6割であった.

     結論 : 今回の実態調査から, 当科に期待されている役割は, 精査と確定診断ならびに難症例への対応であることが判明した. 今後, 大学病院の歯内治療科として, 社会から求められる歯内治療を確実に提供し続けるために, 円滑な対応ができるような新たなシステムづくりが急務である.

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