日本歯科保存学雑誌
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63 巻 , 1 号
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原著
  • 澤井 健司郎, 保尾 謙三, 小正 玲子, 吉川 一志, 山本 一世
    2020 年 63 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/02
    ジャーナル フリー

     目的 : 本研究では, カリオテスターSUK-971 (三栄エムイー) を用いて脱灰試料のKnoop硬さを測定し, 非侵襲性歯髄覆罩 (AIPC) に対する各種覆髄剤への有効性を検討した.

     材料と方法 : ヒト抜去大臼歯から直径10mm, 厚さ2mmの円盤状の象牙質試料を作製し, 象牙質試料の歯髄腔側からアスピレーターで吸引しながら, エナメル質側を20mmol/l乳酸溶液に浸漬して, エナメル質側の硬さが20KHN程度となる脱灰象牙質試料とした. 脱灰象牙質試料に, 新規バイオアクティブガラス配合覆髄剤 (松風), Bio MTAセメント (モリタ), NEX MTAセメント (ジーシー) を貼付し, ベースセメント (松風) で被覆したものを覆髄試料, 覆髄剤を貼付せずベースセメントのみで被覆したものをコントロールとして作製し, 湿度100%容器中または再石灰化溶液中で1カ月間および3カ月間保管後, 軟化象牙質の硬さを測定した. 試料数は各条件につき3試料とし, 得られた値は一元配置分散分析およびTukeyの検定にて統計解析を行った (α=0.001). また硬さ測定後, 覆髄剤貼付部のSEM画像の観察を行った.

     結果および考察 : 新規バイオアクティブガラス配合覆髄剤, Bio MTAセメント, NEX MTAセメントを貼付した軟化象牙質試料では硬さが向上し, 石灰化物の緻密な沈着が認められた. 新規バイオアクティブガラスを配合した覆髄剤を用いることで, 脱灰象牙質の硬化が認められた.

     結論 : バイオアクティブガラスを配合した新規覆髄剤の軟化象牙質の硬化への有効性が示唆された.

  • 神谷 直孝, 神谷 昌宏, 藤田 (中島) 光, 岩崎 太郎, 谷本 安浩, 平山 聡司
    2020 年 63 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/02
    ジャーナル フリー

     目的 : 大型で深い窩洞で実施される積層充塡の処置時間延長への対応として, 深さ4mmの窩洞に一括充塡可能なバルクフィルコンポジットレジン (以下, バルクフィルレジン) が開発された. バルクフィルレジンを使用することでチェアタイムは短縮されるが, 発生する重合収縮応力 (以下, 収縮応力) は大きくなることが懸念される. そこで, バルクフィルレジンの収縮応力の経時的変動と応力発生に関連する機械的物性について検討を行った.

     材料と方法 : バルクフィルレジンとしてSDR (デンツプライシロナ, SDR), バルクベースハード (サンメディカル, BBH), ビューティフィルバルクフロー (松風, BBF) の3製品を実験試料とした. これらについて収縮応力, 曲げ強度, 弾性率, 重合収縮率および重合率の経時的変動を測定した. また, 金属窩洞および牛歯窩洞に各レジンを充塡し, 切断面をマイクロスコープで観察した.

     成績 : 収縮応力の発生挙動は, SDRとBBHは緩やかな上昇を示したが, BBFは急激な上昇を示した. 曲げ強度は, BBH, SDR, BBFの順に小さくなり, 各レジン間に有意差を認めた. 弾性率は, SDRがBBH, BBFと比較して有意に低い値を示した. 重合収縮率は, BBHがSDR, BBFと比較して有意に小さい値を示した. 重合率は, SDR, BBF, BBHの順に高かった. 金属窩洞の切断面観察において, SDRとBBHは窩壁とのギャップやレジン内の亀裂は認めなかったが, BBFは窩底隅角部のレジン内に亀裂の発生を認めた. 牛歯窩洞の切断面観察において, SDR, BBH, BBFとも窩壁とのギャップおよびレジン内の亀裂は認めなかった.

     結論 : バルクフィルレジンの収縮応力の経時的変動と機械的物性は試料間で異なっていた. SDRの弾性率とBBHの重合収縮率は有意に小さく, 収縮応力の発生は緩やかであった. 金属窩洞の切断面観察でBBFのみレジン内に亀裂発生を認めたのは, BBFはほかの2試料に比べ弾性率と重合収縮率が大きく, 曲げ強度が低いことが原因と考えられた. しかし, 牛歯の窩洞切断面観察で窩壁とのギャップおよびレジン内の亀裂は認めなかったことから, バルクフィルレジンの臨床使用時に収縮応力による窩洞への影響は少ないことが示唆された.

  • 成石 浩司, 坂本 英次郎, 生田 貴久, 木戸 理恵, 木戸 淳一, 湯本 浩通
    2020 年 63 巻 1 号 p. 22-29
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/02
    ジャーナル フリー

     目的 : 一般的に, 臨床実習前の歯学部生に対する歯周病学の教育は, 座学講義と基礎 (模型) 実習を主体とする. 本研究の目的は, 歯周病学の講義および実習の評価試験の結果の関連性を調べ, 将来の歯学部生に対する歯周病学教育のあり方について考察することである.

     方法 : 2018年度後期から2019年度前期に徳島大学歯学部に在籍し, 歯周病学を履修する歯学部3〜4年次生43名を対象とした. 歯周病学の講義前後に当該分野に関する筆記試験 (5肢2択形式) を行い, さらに歯周病学の基礎 (模型) 実習の終了時に, 顎模型を用いてスケーリング・ルートプレーニングの実習試験を行った. 講義による学生の理解度・習得度の評価は, カイ二乗検定を用いて判定した. 筆記試験および実習試験の結果の関連性は, スピアマンの順位相関検定を用いて判定した. また, 筆記試験の点数を25点満点で9点以下, 10〜12点, 13点以上の3群に分類し, 各群間の実習試験点数の差異の有無について, ANOVA-Tukey HSD解析を用いて判定した. なお, p値が0.05未満を有意差ありと判定した.

     結果 : 歯周病学の講義後の筆記試験の点数は, 出題内容によって差はあるものの, 講義前と比較しておおむね有意に上昇した. 筆記試験の結果と実技試験の結果は, 有意に相関した (r=0.34, p=0.025). また筆記試験の点数が9点以下の群における実習試験の点数は, 筆記試験の点数が10〜12点, 13点以上の群と比較して有意に低かった (p<0.05). 一方, 筆記試験の点数が10〜12点と13点以上の群間における実習試験の点数に有意差は認められなかった (p=0.76).

     結論 : 臨床実習前の歯周病学の学生教育において, 筆記試験の点数と基礎 (模型) 実習試験の点数は有意に相関した. このことは, 将来の効果的な歯周病学の教育システム構築の一助となる可能性を示唆する.

  • 小野 瀬里奈, 大原 直子, 松崎 久美子, 澁谷 和彦, 横山 章人, 高橋 圭, 神農 泰生, 山路 公造, 島田 康史, 𠮷山 昌宏
    2020 年 63 巻 1 号 p. 30-37
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/02
    ジャーナル フリー

     目的 : 近年, 接着性コンポジットレジン修復の応用範囲が拡大している. コンポジットレジンの色彩学的研究が進められてきたが, 色差計による客観的な色差判定と視覚による主観的な色の評価は必ずしも一致しない. 本研究では, コンポジットレジンの視覚的色調評価法の確立を目指し, 主観的評価のデータを連続変数として測定することができるVisual Analog Scale (VAS) を応用し, その有用性を検討した.

     材料と方法 : 構造色発色コンポジットレジン (試作コンポジットレジン : ECM-001) と3種類の市販コンポジットレジン (A3) を用いた. A1, A2, A3, A3.5シェードの上顎中切歯の硬質レジン歯にⅤ級またはⅢ級窩洞を形成し, 上記のコンポジットレジンを充塡して, 白色または黒色背景上での色調適合性をVAS法にて判定した. そしてVAS値による評価と視覚的な評価の関連性を検討した. Ⅴ級窩洞およびⅢ級窩洞に充塡した4段階のシェードに対するコンポジットレジン間の有意差は一元配置分散分析およびTukey HSD testを, 背景間の有意差についてはt検定を用いて有意水準5%で解析した.

     結果 : ECM-001はⅤ級窩洞において, ほかのコンポジットレジンと比較して同等以上の色調適合性を示した. Ⅲ級窩洞では, ECM-001は白色背景時にいずれのシェードの人工歯に対しても優れた色調適合性を示した. しかし, 黒色背景時にはほかのコンポジットレジンのVAS値が上昇する傾向を示したのに対し, ECM-001のVAS値は低下する傾向にあった. VAS値による評価と視覚的な評価の関連性の検討では, 評価者のVASによる色調適合評価の傾向は大部分で一致しており, VAS値は肉眼で認識することのできる情報を反映していることが示された.

     結論 : VASを応用したコンポジットレジン修復の色調適合評価は, 構造色発色コンポジットレジンの色調評価にも有用であり, コンポジットレジン修復における新規視覚的評価法の一つとなる可能性を示した.

  • 石井 信之, 水野 潤造, 武藤 徳子, 鈴木 二郎, 室町 幸一郎, 下島 かおり, 藤巻 龍治, 宇都宮 舞衣, 山田 寛子, 木庭 大 ...
    2020 年 63 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/02
    ジャーナル フリー

     目的 : 現在では, 歯科用実体顕微鏡や拡大鏡を使用した拡大視野下の長時間にわたる精密歯科診療が求められ, 歯科医師や歯科衛生士の正確な手技への支援や肉体的負担を軽減できる歯科診療支援システムの開発が必要とされている. 本研究は歯科診療アシストスーツを開発することで, 歯科診療の精密性向上, 診療成功率の向上, および歯科医師や歯科衛生士の肉体的負担軽減を目的とする.

     材料と方法 : 歯科診療アシストスーツの上腕負担軽減効果を解析するために, 表面筋電図による解析と定量評価機能を有した臨床シミュレーション装置を使用した臼歯部窩洞形成を実施した.

     結果 : 歯科診療アシストスーツを作動することで, 上腕二頭筋および上腕三頭筋の平均振幅値はいずれも有意に減少し, 上腕の負担軽減効果が認められた. 臼歯部窩洞形成の客観的総合評価は, 歯科診療アシストスーツ作動前と比較して作動後に有意な高得点を示した.

     結論 : 本研究で開発した歯科診療アシストスーツは, 上腕二頭筋と上腕三頭筋の緊張を軽減することによって, 診療精度の向上と長時間診療における術者の負担軽減を可能にする装置であることが示された.

  • 杉井 英樹, 吉田 晋一郎, 友清 淳, 濱野 さゆり, 長谷川 大学, 前田 英史
    2020 年 63 巻 1 号 p. 44-51
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/02
    ジャーナル フリー

     目的 : 抜歯の原因として歯根破折が増加しているが, その要因としてポストに使用される金属と歯根象牙質の弾性率の違いが示唆されている. そこで, その対策としてファイバーポストとコンポジットレジンを併用し, 支台築造体自体の弾性率を象牙質のそれに近似させる試みがなされてきた. 近年, 根管象牙質とファイバーポスト併用レジン支台築造体の結合を増強させるため, ポスト部分にレジンセメントを, コア部分にフロアブルレジンを使用する方法が実施されている. しかしながら, これまでに未重合のレジンセメントと未重合のフロアブルレジンの結合力を評価した報告はない. そこで本研究では, レジンセメントを使用した支台築造を想定し, メチルメタクリレート (MMA) 系およびコンポジット系のレジンセメントを用いて, ①各セメントとフロアブルレジンを結合させた場合の剪断強さの比較, ②剪断試験に使用した試験体の破壊界面の観察を行い, 各セメントの結合力について検討を行うこととした.

     材料と方法 : レジンセメントは, MMA系のスーパーボンド (SB) およびコンポジット系のケミエースⅡ (CAⅡ) を使用し, フロアブルレジンは, バルクベースハード (BBH) を用いた. 混和した各セメントをモールドに塡入後, 10, 60秒および600秒でBBHに接触させ, 光照射を行った. その後, 37℃, 15分間静置してセメントが硬化した後, 37℃, 24時間水中浸漬し, 剪断強さの解析およびその破壊界面の観察を行った.

     成績 : SBは, 塡入後10秒の群で600秒の群よりも有意に高い剪断強さを示した一方, CAⅡは各群間で有意差を認めなかった. また, SBとCAⅡの剪断強さを比較した結果, 塡入後10秒のSB群がCAⅡ群に対し有意に高い値を示したが, 塡入後60秒および600秒では両セメント群間に有意差を認めなかった. 破壊界面に関して, SBは, 塡入後10秒および60秒の群でBBHの凝集破壊が90%認められた一方, 塡入後600秒の群でSBとBBHの混合破壊が90%を占めた. CAⅡは, 塡入後10, 60秒および600秒の群で, それぞれBBHの凝集破壊が100, 90%および70%認められた. また, SBおよびCAⅡ自身にはいずれの条件下でも凝集破壊は認められなかった.

     結論 : 未重合のSBは, BBHとの結合においてSB塡入後10秒程度でBBHを接触させることで最も高い結合力が生じ, さらに塡入後60秒でBBHに接触させた場合においても, CAⅡと同等の結合力を発揮することが示唆された. また, SBおよびCAⅡ自身に凝集破壊は認められなかったことより, 両セメントは安定した結合力を有していることが推察された.

  • 井波 智鶴, 岩﨑 小百合, 西谷 佳浩, 伊津野 真一
    2020 年 63 巻 1 号 p. 52-60
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/02
    ジャーナル フリー

     目的 : 歯髄温存療法や根管治療において, 微小漏洩や細菌侵入を防ぐことは重要であり, 辺縁封鎖性を有した材料が求められる. これまでわれわれは, mineral trioxide aggregate (MTA) の操作性や辺縁封鎖性を高めることを目的にレジン複合型MTA系材料を開発してきた. 本研究では, 新規レジン複合型MTA系材料の辺縁封鎖性ならびにレジン系修復材料との接合状態について, レジンを配合しない試作MTA材料との比較により評価した.

     材料と方法 : 白色ポルトランドセメント, 酸化ジルコニウムおよび2-ヒドロキシプロピルメタクリレートからなるペーストをトリブチルボラン (TBB : キャタリストV) により重合する新規レジン複合型MTA系材料 (PCX-TBB) と, 白色ポルトランドセメントとX線造影剤からなる粉材を水と混和して硬化させる試作MTA材料 (Exp-MTA) を実験に供した. ウシ歯根管にPCX-TBBあるいはExp-MTAを塡入し, 疑似体液中に10日間保管した後, 両材による辺縁封鎖性を界面への色素侵入試験により評価した. また, 材料と歯質界面の接合状態をSEMにより観察した. 次に, PCX-TBBおよびExp-MTAと接着性レジンセメントスーパーボンド (SB) を接着し, 37℃で24時間静置した後の引張接着強さを評価した.

     結果 : ウシ歯根管を用いた色素侵入試験において, PCX-TBBは10/10本で色素の侵入が認められなかった. Exp-MTAは7/10本で試料調製時にセメントが根管から剝離し, 10/10本で色素が侵入していた. 材料と歯質界面のSEM観察は, 試料が作製できたPCX-TBBのみ実施した. その結果, PCX-TBBと歯質の緊密な接合状態と象牙細管内に形成した多量のタグ様構造物が観察された. 両材とSBの接着強さはPCX-TBBで4.6±2.13 MPaであり, Exp-MTAの0.9±0.37 MPaよりも有意に高い値を示した. 破壊形態の比較では, PCX-TBBで15/15本がPCX-TBBの凝集破壊であり, Exp-MTAは15/15本が界面破壊であった.

     結論 : PCX-TBBは象牙質と緊密に接合し, レジン系修復材料とも親和性を示して良好に接着した. 本研究により, PCX-TBBが優れた辺縁封鎖性を有する材料であることが示唆された.

  • —スクロース濃度の影響とバイオフィルム形成関連遺伝子の発現解析—
    竹中 彰治, 長谷川 泰輔, 小田 真隆, 高橋 直紀, 磯野 俊仁, 大倉 直人, 山本 博文, 多部田 康一, 野杁 由一郎
    2020 年 63 巻 1 号 p. 61-72
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/02
    ジャーナル フリー

     目的 : 機能性糖脂質ビザンチン (Viz-S) は, Streptococcus mutansバイオフィルムを易剝離性に変化させることで抗バイオフィルム作用を示す. 本研究では, 培養条件のうち, スクロース濃度を変化させたときのS. mutansの抗バイオフィルム効果, 各種バイオフィルム形成関連遺伝子の転写量ならびにグルコシルトランスフェラーゼ (GTF) の発現について解析を行った.

     材料と方法 : 実験1・スクロース濃度を変化させたときのS. mutansの抗バイオフィルム効果 ; 0.2, 0.4, 0.8%および1.6%のスクロース含有Brain Heart Infusion培地に, 0, 10, 50μmol/lおよび75μmol/lのViz-Sを添加した. S. mutans UA159株を24時間嫌気培養することで, in vitroバイオフィルムモデルを作製した. リン酸緩衝生理食塩水 (PBS) で2回洗浄したときの残存バイオフィルム量をクリスタルバイオレット法 (CV法) により定量した. 実験2・遺伝子発現動態の解析 ; 0, 10μmol/lおよび50μmol/lのViz-S存在下で24時間培養後のバイオフィルム形成菌を回収し, mRNAを抽出後, cDNAを合成した. バイオフィルム形成関連遺伝子の転写量をReal-time PCR法で解析した. 実験3・ウエスタンブロッティング解析 ; in vitroバイオフィルムモデルを作製後, バイオフィルム形成菌と上清をそれぞれ回収した. タンパク質を抽出しSDS-PAGEを行った. 疎水性膜に転写し, 菌体結合型GTF (CA-GTF) 抗体および遊離型GTF (CF-GTF) 抗体を反応させた後, 酵素標識二次抗体を反応させた. 化学発光法により可視化し, タンパクの発現量を比較した.

     成績 : 10μmol/l Viz-S群のバイオフィルムは, PBSによる2回の洗浄により構造は変化しなかったが, 50μmol/l Viz-S群は0.8%までのスクロース含有条件下においてバイオフィルム構造が93%減少した. 1.6%のスクロース含有条件では32%のバイオフィルムが残存した. 75μmol/l Viz-S群は, 全スクロース濃度においてバイオフィルム形成が阻害された. 10μmol/l Viz-S群は, すべての条件下において, 遺伝子転写量の有意な変化はなかった. 50μmol/l Viz-S群のgtfBおよびgtfC遺伝子の転写は, 0.4%以上のスクロース含有条件で, コントロール群 (Viz-S非含有) と比較して有意に増加したが, gtfDの転写は, すべてのスクロース含有群で0.46〜0.66倍に減少した.

     ウエスタンブロッティング解析で50μmol/l Viz-S群のGTFBおよびGTFCの産生量を比較したところ, コントロール群と比較して0.2%および0.4%スクロース含有条件下で有意に低下し, 0.8%および1.6%スクロース含有条件下で有意に増加した. 一方, GTFDは, コントロール群と比較して1/20以下に産生量が減少した.

     結論 : 50μmol/lのViz-Sは口腔粘膜への為害性が低く, 殺菌ではない機序でS. mutansのバイオフィルムを剝離した. その機序の一つは, GTFDのタンパク発現を低下させることによるバイオフィルムの構造安定性の低下であった. 75μmol/lのViz-Sはバイオフィルム形成を抑制した.

  • 庵原 耕一郎, 中島 美砂子
    2020 年 63 巻 1 号 p. 73-82
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/02
    ジャーナル フリー

     目的 : 感染根管歯の新規除菌法の開発は, 最終的に歯の破折や抜歯にいたる予後を改善し, ひいては超高齢社会における健康長寿の達成に繋がると考えられる. 難治性感染根管においては, 通常根管貼薬に用いる水酸化カルシウム製剤などに対して耐性の通性嫌気性グラム陽性菌, 特にEnterococcus faecalisなどが優勢となり, 象牙細管内に深く侵入し, また根尖部の歯根表面にバイオフィルムを形成すると考えられている. ナノバブル水 (ナック) は圧縮空気を含み, 100〜200nmでマイナス帯電性である. われわれはブタの根管を用いたin vitroモデルにおいて, ナノバブル水が象牙細管への薬剤浸透促進効果, およびスミヤー層除去効果を有することを明らかにした. 今回は, 薬剤含有ナノバブル水がイヌの難治性根尖性歯周炎に有効であるかを検討することを目的とする.

     方法 : イヌ2歳齢の歯を抜髄, 根管拡大後, 開放状態で1カ月放置し, その後貼薬せず仮封してさらに2カ月置き, 感染根管を作製した. まずドキシサイクリン塩酸塩について, ナノバブル水とともに洗浄と貼薬を4回行った. さらに同じ根管に対して, 抗菌ナノパーティクルをナノバブル水とともに洗浄と貼薬を3回行った. 釣菌した根管内細菌を嫌気培養し, 細菌コロニー数測定により除菌効果を評価した. 同様の操作を6〜15日ごとに4回目まで行った. 治療2カ月後に歯髄幹細胞の移植による歯髄再生治療を行った. さらに根管治療前, 治療2カ月後および細胞移植2カ月後の根尖病変の変化を歯科用CBCTにより解析した. 細胞移植2カ月後に抜歯し, パラフィン切片をグラム染色しバイオフィルムを観察した.

     結果 : ドキシサイクリン含有ナノバブル水は, 4回繰り返しても根管内を除菌できなかった. さらに抗菌ナノパーティクル含有ナノバブル水を3回適応することにより, 細菌数を検出限界以下に有意に減少させることができた. また, 歯根, 根尖周囲組織やセメント小腔にバイオフィルムはほとんどみられず, 根尖病変の縮小も有意にみられた. 一方, 抗菌ナノパーティクルのみではほとんど変化はみられなかった. さらに, 抗菌ナノパーティクル含有ナノバブル水を適応した根管においては細胞移植により根尖部歯周組織および歯髄の再生がみられた.

     結論 : これらの結果より, 抗菌ナノパーティクル含有ナノバブル水は難治性根尖性歯周炎の根管を除菌でき, 歯髄再生治療も有効となる可能性が示唆された.

  • 鴨井 久博, 吉峰 正彌, 三浦 悠, 濵田 真理子
    2020 年 63 巻 1 号 p. 83-89
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/02
    ジャーナル フリー

     目的 : う蝕や歯周疾患の予防のためには日々のプラーク・コントロールが重要であり, その方法として歯ブラシによるプラーク除去とともに水流により口腔内の汚れを洗い流す口腔洗浄器が使用されている. そこで今回, 口腔洗浄器による汚れの除去性能を向上させるために, キャビテーション気泡が発生するノズルから吐出される水流による除去効果について, 人工プラークを用いてin vitroで検証した. また, 臨床応用としてキャビテーション気泡を含む水流を吐出する口腔洗浄器を用いて, 歯周組織の改善への有用性および安全性を検証した.

     結果 : キャビテーションノズルから吐出されるキャビテーション気泡を含む水流は, 従来ノズルから吐出されるキャビテーション気泡を含まない水流と比較して有意に人工プラークを除去することが示された. また臨床応用においては, 口腔洗浄器は口腔内に為害作用がなく, キャビテーション気泡を含む水流により歯周組織の改善がみられた.

     結論 : キャビテーション気泡を含む水流による口腔内清掃は, 日々行う口腔内のプラーク・コントロールに対して有用性のあることが示された.

症例報告
  • 鷲尾 絢子, 小田 昌史, 森本 泰宏, 北村 知昭
    2020 年 63 巻 1 号 p. 90-95
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/02
    ジャーナル フリー

     目的 : 本報告では, 上顎第一・第二大臼歯に発症した慢性根尖膿瘍 (瘻孔を有する慢性根尖性歯周炎) に対する非外科的再根管治療, およびバイオアクティブガラス配合根管用シーラーを併用した単一ポイント根管充塡から1年後の経過を示す.

     症例 : 42歳男性. かかりつけ歯科医院より, 上顎右側大臼歯部歯肉に存在する改善しない瘻孔の治療を目的に紹介された. 口腔内診査, 口内法エックス線撮影, および歯科用コーンビームCT (CBCT) 撮影から上顎右側第一・第二大臼歯の慢性根尖膿瘍と診断した. 両大臼歯の根尖病変は融合し, 両歯の頰側根根尖を含んでいた. 非外科的再根管治療後, バイオアクティブガラス配合根管用シーラーを併用した単一ポイント根管充塡法により根管充塡を行った. 口内法エックス線画像では適切な根管充塡が確認され, CBCT画像による術前および術後1年の比較では, 両大臼歯根尖部の融合していた透過像はほぼ消失していた. また, 両大臼歯に近接した上顎洞底粘膜の肥厚は有意に消退し正常状態を示していた.

     結論 : 本症例における非外科的再根管治療の成功は, バイオアクティブガラス配合根管用シーラーを併用した単一ポイント根管充塡法が根管充塡法の成功を見込める選択肢であることを示唆している.

  • 水谷 幸嗣, 三上 理沙子, 松浦 孝典, 和泉 雄一, 岩田 隆紀, 青木 章
    2020 年 63 巻 1 号 p. 96-104
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/02
    ジャーナル フリー

     緒言 : 歯周外科治療において, 切開と剝離を最小限にする 「侵襲の低い歯周外科手術」 の手技がいくつか確立してきており, 低侵襲による良好な治癒経過が再生療法の結果にも有効な影響を与えることが多くの臨床研究で報告されている. またEr : YAGレーザーを歯周治療に用いる際に根面のデブライドメントや軟組織治療だけでなく, レーザー光の止血効果を活用し, 術部の血餅を安定化させるという新しい技法により臨床成績の向上と, 飛躍的な応用範囲の拡大がなされている. 本稿では, 歯周外科の侵襲をより小さくし, かつ歯周組織再生の効果が促進されることを期待し, 垂直性骨欠損に対してEr : YAGレーザーをmodified minimally invasive surgical technique (M-MIST) に併用した症例を報告する.

     症例 : 患者は57歳女性, 上顎右側臼歯部からの出血が改善しないことを主訴に来院した. 歯周ポケット検査の結果から上顎右側第一小臼歯は動揺度1度を示し, 近心口蓋側に7mmのプロービングポケット深さ (PPD) を認め, 限局型重度慢性歯周炎と診断した. 歯周基本治療後の再評価で, 上顎右側小臼歯近心に頰側5mm, 口蓋側6mmのPPDが残存したため歯周外科手術を実施した. 本症例では, 外科的侵襲を最小限にすることを意図し, M-MISTのデザインで, 歯間乳頭を剝離せずに頰側歯肉のみを剝離した. Er : YAGレーザーにより歯肉切開, 肉芽組織の除去と根面のデブライドメントを注水下で行った. そして搔爬後に, 骨欠損内の出血に対してEr : YAGレーザーを非注水のdefocus照射を行うことで, 主に血液表面を凝固させて, 組織への直接的な損傷を最小限にした止血方法をとることで, 血液を血餅として骨欠損内に安定して貯留させることができた. その後, 弁を復位縫合した.

     成績 : 術後は鎮痛剤1錠を服用したのみで, その後は痛みを感じることなく経過した. 術後11カ月の再評価時にはPPDは頰側口蓋側ともに2mm, CAL 2mmとなり, 4mmのアタッチメントゲインが認められた. デンタルエックス線写真から欠損部において不透過性の亢進が観察された. 現在は, 3カ月ごとのメインテナンスを継続しており, 術後7年の経過において2mmのPPDを維持している.

     結論 : 本症例では, 垂直性骨欠損へのmodified minimally invasive surgical technique (M-MIST) にEr : YAGレーザーを切開, 搔爬, 血餅へのdefocus照射に併用し, 良好な経過を得ることができ, 長期に安定した状態を維持することができている. この複合的な術式は, 侵襲を最小にして歯周組織再生を目指す場合の選択肢になりうることが示唆された.

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