日本歯科保存学雑誌
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総説
原著
  • 神農 泰生, 島田 康史, 松﨑 久美子, 横山 章人, SADR Alireza, 角 保徳, 田上 順次, 𠮷山 昌宏
    2021 年 64 巻 4 号 p. 265-270
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/31
    ジャーナル フリー

     目的 : 審美歯科に対するニーズが高まっているなか, 漂白処置はその中心として認識され, 手法の簡便化とともに急速に広がりをみせている. しかし, 漂白のメカニズムに関しては色素の分解のほか, エナメル質の結晶構造の変化や微小脱灰などの報告があるものの, 明確な結論は出ていない. 一方で, 波長掃引型光干渉断層計 (Swept-source Optical Coherence Tomography, SS-OCT) は近赤外線レーザーの波長を掃引し, その干渉シグナルを用いて非破壊・非侵襲的に解像度の高い断層画像をリアルタイムで取得できる装置である. 特にエナメル質への透過性が高く, 散乱係数の変化によるOCTシグナルの増加と減衰係数の変化によって, 歯の脱灰と再石灰化の評価に有用である. そこで本研究では, SS-OCTの漂白歯面観察への応用を考え, 未漂白の歯面と漂白後の歯面をSS-OCTを用いて観察・解析し, 漂白による歯面変化を評価した.

     材料と方法 : う蝕のないヒト抜去前歯を使用し, 唇側エナメル質を正中にて区分けし, 片側を被覆した. 被覆していない面をSHOFU Hi-Liteを用いて, 通法に従い計27回の漂白を行った. その後, SS-OCTを用いて断層画像を未漂白歯面と漂白歯面から取得し, 画像解析ソフトImage Jを用いて深度400μmまでのシグナル強度の積分値 (AUC400) および減衰係数 (μt) を算出し, 画像データと併せて検討した.

     結果 : 漂白歯面のμtは未漂白歯面に対して有意に高かった. AUC400は漂白歯面が未漂白歯面に対して有意に高かった. また各歯で比較した場合, μtは10本中6本で, 漂白歯面が未漂白歯面に対して有意に高くなっていた. AUC400は10本中5本で, 漂白歯面が未漂白歯面に対して有意に高くなっていた. そのうち, 10本中5本がμt・AUC400ともに有意に差があり, 4本がともに有意差が認められなかった.

     結論 : SS-OCTによって観察される漂白による歯面変化は, 典型的な脱灰像とは異なる結果であった. μtとAUC400の変化には相関の可能性があり, 漂白による歯面変化が各歯の歯面性質によって異なる可能性が示唆された.

  • 佐藤 隆明, 田端 倫子, 畑山 貴志, 赤羽根 広大, 佐藤 綾花, 馬場 雄大, 高橋 礼奈, 井上 剛, 平石 典子, 角 保徳, 島 ...
    2021 年 64 巻 4 号 p. 271-278
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/31
    ジャーナル フリー

     目的 : エナメル象牙境に対するリン酸エッチングの影響について波長掃引型光干渉断層計 (SS-OCT) および従来の走査電子顕微鏡 (SEM) を用いて検討を行った.

     材料と方法 : 健全ヒト抜去歯を半切後, #600耐水研磨紙を用いて研削した面に対して, 以下の異なる歯面処理を施した. 1) 歯面処理を行わないコントロール (CT群), 2) クリアフィルメガボンド2 (クラレノリタケデンタル) のプライマーを20秒間塗布後, エアーにて5秒間乾燥 (SE群), 3) エナメルコンディショナー (松風) を15秒間塗布後, 10秒間水洗, 5秒間エアー乾燥 (EC群), 4) Kエッチャントシリンジ (クラレノリタケデンタル) を15秒間塗布後, 10秒間水洗, 5秒間エアー乾燥 (KE群). 各歯面処理を施した後, 試料はただちに湿箱にて保管し, レーザー顕微鏡 (CLSM, キーエンス) およびSS-OCT (サンテック) を用いてエナメル象牙境部の観察を行った. その後, 試料を乾燥, 金蒸着し, SEMを用いて観察を行った.

     結果 : CLSM観察にて, いずれの群においても歯質面にクラックは認められなかった. 一方SS-OCT観察にて, KE群に歯面処理した面からエナメル象牙境に沿って0.5mmほど輝度が上昇した白線を認めた. この白線は, 他の群においては認められなかった. SEM観察において, CT群にて削条痕およびスミヤー層の残留が観察された. 一方, SE群・EC群・KE群において, 明瞭なエナメル質および象牙質が観察され, 象牙質部に象牙細管構造が観察された. さらにKE群においては, エナメル質部にエナメル小柱構造が観察された.

     結論 : リン酸エッチングによって過度な脱灰が引き起こされ, エナメル象牙境がより脆弱な状態になる可能性が示唆された. またこの脆弱性は, SS-OCTを用いることによりエナメル象牙境に沿って輝度が上昇した白線として観察された.

症例報告
  • 木幡 雅, 大塚 源, 大西 小雪, 森竹 宣之, 黒田 恭平, 長谷川 達也, 濱田 康弘, 加藤 智崇, 前田 祐貴, 岡本 祐幸, 北 ...
    2021 年 64 巻 4 号 p. 279-284
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/31
    ジャーナル フリー

     目的 : 歯内-歯周疾患においては, より影響力の強い感染根管治療を先行させる治療が一般的に行われている. 智歯周囲炎による骨欠損に隣在歯の根尖性歯周炎が併発した場合について, 明確な治療方針は示されていない. そこで今回, 本症例ではより影響力の強いと考えた感染根管治療を優先して行い, 良好な結果が得られたので報告する.

     症例 : 患者は36歳女性. 左下奥歯の周囲歯肉の腫れを主訴に来院した. 彼女は妊娠6カ月であった. 約10年前に下顎左側第二大臼歯のインレー修復処置を施されたが, その後, 無症状で経過していた. 半年ほど前から下顎左側第二大臼歯の遠心歯肉に腫脹を覚えた. 下顎左側第二大臼歯に, 局所的に深在性歯周ポケットと2度の動揺が認められた. 下顎左側第三大臼歯の歯冠の一部が露出し, 周囲歯肉に軽度の発赤腫脹がみられた. デンタルエックス線検査の結果, 下顎左側第二大臼歯の根尖に歯冠大の透過像を認め, 下顎左側第三大臼歯は水平埋伏した状態で近心隣接面直下に半月様透過像が認められた. 下顎左側第二大臼歯は, 歯髄電気診の結果, 失活していた. 下顎左側第二大臼歯の慢性根尖性歯周炎, 下顎左側第三大臼歯の慢性智歯周囲炎と診断した. 最初に, 下顎左側第二大臼歯の感染根管処置を施し, 臨床症状消失後に側方加圧充塡法で根管充塡し, 支台築造を行った. その後, 下顎左側第三大臼歯の抜歯を行った. 下顎左側第二大臼歯は暫間被覆冠で経過観察し, 全部鋳造冠で最終補綴を行った. その後1年, 良好に経過している.

     結論 : 慢性根尖性歯周炎と智歯周囲炎が併発した場合, より影響力の強い感染根管治療を先行して行えば, 病変の大きさにかかわらず治癒傾向に導ける可能性が示唆された.

  • 永原 隆吉, 武田 克浩, 岩田 倫幸, 柴 秀樹, 水野 智仁
    2021 年 64 巻 4 号 p. 285-295
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/31
    ジャーナル フリー

     緒言 : 広汎型慢性歯周炎 (Stage Ⅲ Grade A) に対し, 遅延型自家歯牙移植術および歯周組織再生療法と歯周形成手術などを含む各種歯周外科治療を行い, 良好な治療経過を得た症例を報告する.

     症例 : 65歳女性. 歯の動揺を主訴として来院した. 多数の歯の位置異常と早期接触/咬頭干渉を認めた. 臼歯部を中心に6~8mmの深い歯周ポケットが存在し, ┌6舌側にⅡ度の根分岐部病変が認められた. 動揺度3の7┐と┌7からは排膿があった. 4mmと5mmのprobing depth (PD) 部位の割合は18.5%, 6mm以上のPDは18.5%, bleeding on probing (BOP) は24.1%, plaque control record (PCR) は33.3%およびperiodontal inflamed surface area (PISA) は886.6mm2であった. エックス線所見では, 7┬7に根尖まで広がる混合型骨吸収, ┌6近心には垂直性骨吸収を認めた. cone-beam computed tomographyから, └7遠心の垂直性骨欠損および┌6の近心 (2壁性骨欠損) から舌側根分岐部に及ぶ骨吸収像があることが判明した. 骨隆起が上下顎の唇頰側に認められた. 遅延型自家歯牙移植術 (┌8を┌7相当部へ) および各種歯周外科治療 (┌6にbone swaging法を併用した歯周組織再生誘導法 (GTR法) と遊離歯肉移植術, └7にGTR法, └67間に歯肉剝離搔爬術, 76┘に歯肉剝離搔爬術と歯槽骨整形術) を実施した. 引き続き, 3カ月ごとのsupportive periodontal therapyに移行した. 初診から7年経過しているが, 移植歯や歯周組織の状態は安定している (4mmと5mmのPD : 4.2%, 6mm以上のPD : 0.0%, BOP : 6.9%, PCR : 10.4%, PISA : 68.0mm2).

     結論 : 広汎型慢性歯周炎に対して, 遅延型自家歯牙移植術と複数の歯周外科治療を施行した結果, 長期に安定した歯周組織の維持に成功した.

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