日本歯科保存学雑誌
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総説
原著
  • 田村 隆仁, 宮田 泰伎, 氷見 一馬, 羽鳥 啓介, 中村 健志, 清水 康平, 鈴木 裕介, 蓮池 聡, 井上 聖也, 岡田 將司, 藪 ...
    2022 年 65 巻 3 号 p. 198-204
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

     目的:根尖性歯周炎は,感染根管に起因した二次的病変として発症するリンパ球活性の増進,炎症性細胞の遊走や浸潤および破骨細胞の活性化を伴う根尖周囲の炎症性疾患で,疼痛や根尖部歯肉の腫脹など,さまざまな臨床症状を引き起こす.これまでに,根尖性歯周炎の病態を解明することを目的として,サイトカインや成長因子のようなさまざまな炎症性メディエーターの関与について研究が行われてきているが,その詳細は明らかにされていない.そこで本研究では歯根肉芽腫の病態を解明することを目的として,慢性炎症性疾患の病態に関与することが報告されているカルシウム結合タンパクS100A8とS100A9に着目し,両タンパクの歯根肉芽腫と健常歯肉におけるタンパクおよび遺伝子発現の検索を行った.

     材料と方法:日本大学歯学部付属歯科病院歯内療法科に来院し,根尖性歯周炎と診断され歯根尖切除法が適応とされた患者から根尖病変組織を採取した.採取した試料はただちに二分割し,一方を10%ホルマリンで固定およびパラフィン切片の作製後,病理組織学的検索を行った.加えて,病理組織学的検索の結果,歯根肉芽腫と診断した試料を用いて,免疫組織化学的検索を行った.他方は,OCTコンパウンドに包埋し,ドライアイス–アセトンで凍結した後,real-time polymerase chain reaction(PCR)法による遺伝子発現の検索を行った.また,健常歯肉組織は埋伏智歯抜歯時に採取し,根尖性歯周炎と同様に検索を行った.なお,被験者に対して試料を本実験に使用することを説明し,文書にて同意を得た後に試料採取を行った(EP18D014).

     成績:病理組織学的検索の結果,採取した44例の根尖病変組織のうち,32例は歯根肉芽腫,12例は歯根囊胞であった.次に歯根肉芽腫組織と健常歯肉組織に対して,蛍光標識した抗体を用いて免疫組織化学的検索を行った結果,健常歯肉中ではS100A8とS100A9タンパクの発現を認めなかったが,歯根肉芽腫では両タンパクの発現を認めた.また,real-time PCR法を用いて検索した結果,健常歯肉と比較して歯根肉芽腫では有意に高いS100A8とS100A9遺伝子の発現を認めた.

     結論:慢性炎症性疾患である歯根肉芽腫中でS100A8およびS100A9が発現し,S100A8およびS100A9は慢性炎症性疾患においてその病態に関与していることから,口腔内の慢性炎症性疾患である歯根肉芽腫においても病態の調節に関与している可能性が示唆された.

  • 神尾 直人, 葉山 朋美, 渡邊 昂洋, 深井 譲滋, 鈴木 誠, 五明 夏子, 倉持 光成, 岡部 達, 松島 潔
    2022 年 65 巻 3 号 p. 205-214
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

     目的:Kallikrein-kininカスケードは炎症時における血管透過性亢進や発痛に関与するが,組織カリクレインとも呼ばれるkallikrein-related peptidase(KLK)は,そのカスケードを担うだけでなく,生体内でさまざまな機能を示す.また,グラム陰性菌の外膜成分であるlipopolysaccharide(LPS)は起炎物質の一つとして知られており,歯髄でもまた炎症の誘発・進展に作用する.著者らは,歯髄でLPSがKLK8の発現を促進し,さらにKLK8が炎症促進的に作用するという仮定の下,ヒト歯髄培養細胞を用いて基礎的研究を行った.

     材料と方法:抜去歯よりアウトグロースした細胞をヒト歯髄培養細胞とし,10% FCS添加α-MEMにて培養した.培養上清中にLPSを添加後のKLK8発現量の変化,もしくはKLK8添加後のCOX-2発現について,RT-PCR法,Western blot法にて検索した.細胞内の遊離カルシウムイオン濃度の測定は,蛍光カルシウムプローブFura-2を用いた蛍光連続測定にて行い,また培養上清中に放出されたPGE2量をenzyme immunoassay kitにて検討した.

     成績:ヒト歯髄培養細胞において,LPSは時間依存的,濃度依存的にKLK8 mRNAとタンパク質の発現を促進した.LPSによるKLK8タンパク質発現はERK1/2,P38 MAPK阻害剤で抑制された.また,KLK8はPAR-1受容体非依存的にCOX-2タンパク質発現および培養上清中PGE2産生を促進し,その効果はtyrosine kinase阻害剤で抑制された.

     結論:LPSはKLK8の産生に関与し,kallikrein-kininカスケードに影響を及ぼすことで歯髄炎の進行に関わることが示唆された.またKLK8は歯髄でkininogen活性化だけでなくPAR-1非依存的,tyrosine kinase依存的にCOX-2の産生,PGE2の分泌を促進する可能性が示唆された.

  • 中野 貴文, 川村 和章, 椎谷 亨, 山本 龍生, 向井 義晴
    2022 年 65 巻 3 号 p. 215-220
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

     目的:活動性根面齲蝕に類似した象牙質病巣を作製し,ジェルタイプのフッ化物含有知覚過敏治療材の塗布時間の違いによる病巣変化と進行停止効果について,TMR(Transverse microradiography)を用いて検討を行った.

     材料と方法:フッ化物含有象牙質知覚過敏治療材として,MSコートHysブロックジェルを使用した.ウシ歯根部象牙質に耐酸性バーニッシュを塗布し,2×3mmの被験面を作製した.実験群はBaseline lesion群,Control群,30s-Tr群,5min-Tr群の4群とした.4群とも脱灰溶液(1.5mM CaCl2,0.9mM KH2PO4,50mM酢酸,0.2ppm F,pH 5.0)を注いで24時間37°Cで基準病巣を作製した後,Baseline lesion群はこの直後にTMR分析を行った.他の3群は各処理を行った後に96時間脱灰を行い,TMR分析を行った.被験面処理方法は,Control群では脱イオン水を30秒間,30 s-Tr群ではHysブロックジェルを30秒間,5min-Tr群ではHysブロックジェルを5分間塗布した.すべての群の試料から薄切片を切り出した後,TMR撮影してミネラルプロファイルから脱灰深度とミネラル喪失量を測定した.統計分析はKruskal-Wallis検定ならびにSteel-Dwassの多重比較検定により,有意水準5%で実施した.

     結果:5min-Tr群のミネラルプロファイルはControl群に比較し顕著に高いミネラルvol%を示し,特に表層部は約45vol%であった.各群の病巣深度は,Baseline lesion群で71.5μm,Control群で165.8μm,30 s-Tr群で155.7μm,5min-Tr群で100.1μmであり,ミネラル喪失量は,Baseline lesion群で2,020.0vol%×μm,Control群で4,727.5vol%×μm,30 s-Tr群で3,592.5vol%×μm,5min-Tr群で2,102.5vol%×μmであった.病巣深度およびミネラル喪失量とも,5min-Tr群はControl群および30s-Tr群に比較し有意に小さな値を示した.

     結論:表層の再石灰化が乏しい根面脱灰病巣に対し,MSコートHysブロックジェルを規定の塗布時間を超えて5分間処理することにより,効果的な病巣進行停止効果が認められた.

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