ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットを用いて, 糖尿病における耳下腺および膵臓の組織学的変化とその微細血管構築の変化を経時的に観察し, 類似の組織構造を有する両組織の組織学的反応の相違と, 細小血管症との関連性について検討した.
組織学的変化として, 耳下腺では, 糖尿病発症後1週で終末部腺細胞に萎縮像が出現し, 6週ではその萎縮像はさらに著明となり, 空胞変性や脂肪変性像も認められた. 16週では, 腺細胞の空胞変性は著しくなり, 小葉間ないし葉間導管の基底細胞に著明な変性像が出現していた. 腺間質の膠原線維は著しく増殖して網目状に広がり, 全体に線維化が進行していた. 膵臓の内分泌部では, 糖尿病発症後1週で, 膵島全体が萎縮像を呈し, 特にβ細胞に著しい萎縮像を認めた. 発症後16週では膵島は痕跡程度となり, 外分泌部では膵島周囲から萎縮像が拡がっていた. また, 腺房中心細胞のみに萎縮像が認められた.
微細血管構築については, 耳下腺では糖尿病発症後1週ではほとんど変化は認められず, 6週で腺房に分布する毛細血管網は粗い網目へと変化し, 16週で導管に分布する毛細血管網も次第に粗くなっていた. 膵臓では, 糖尿病発症後1週で内分泌部の毛細血管網は急激に縮小し, 16週ではほとんど消失した. 外分泌部の腺房に分布する毛細血管網は粗となったが, 導管に分布する毛細血管に変化は認められなかった.
以上の結果, ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットにおける初期の組織学的障害と細小血管症は, 最初膵臓内分泌部に出現し, 次いで耳下腺, その後膵臓外分泌部の順に発現し, また, 類似の組織構造を有していてもインスリン依存性は異なることが明らかとなった.
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