歯科医学
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54 巻, 6 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 松島 伸一, 嘉藤 幹夫
    原稿種別: 本文
    1991 年 54 巻 6 号 p. 467-482
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2017/02/23
    ジャーナル フリー
    乳歯の温度刺激に対する歯痛の発現についての研究は極めて少ないのが現状である. そこで, 私たちは, 下顎の第一乳臼歯および第二乳臼歯における窩洞の形態と修復材料の熱伝導率の相違による修復物および歯質内の温・冷熱分布について有限要素法を用いて解析し, 歯痛発生温度との関連について解明しようとした.
    その結果, 以下の結論を得た.
    1. 正常な下顎の第一乳臼歯および第二乳臼歯の咬合面に約57℃の温熱刺激または, 約21℃の冷熱刺激を加えたとき, それぞれ歯痛が発現する閾値に到達し, その閾値は髄角部で最初に発現した.
    2. 下顎の第一乳臼歯および第二乳臼歯の咬合面修復時には, 温度刺激が一定であれば, 熱伝導率の低い修復材料ほど歯痛発現の温度が低くなった.
    3. 下顎の第一乳臼歯および第二乳臼歯の隣接面の側室が, 深くなればなるほど, 熱伝導率の高い修復材料ほど歯痛発現の温度がいっそう高くなった.
    今回の研究によって, 乳臼歯修復窩洞の形態と修復材料の熱伝導率とが歯痛の発現に密接に関連していることが示唆された.
  • 川植 康史
    原稿種別: 本文
    1991 年 54 巻 6 号 p. 483-498
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2017/02/23
    ジャーナル フリー
    Cisplatin (CDDP) は有効な化学療法剤であるが, その腎毒性, 消化器障害のため臨床応用が制限されているのが現状である. cis-1, 1-Cyclobutanedicarboxylato (2R)-2-methyl-1, 4-butanediamine platinum (II) (以下, NK-121と略す) はCDDPの副作用軽減と抗腫瘍効果の増大を目的として開発された第二世代の白金化合物である. 懸案の腎毒性, 消化器障害は軽減されたが, その一方で骨髄機能抑制を認めると報告されている.
    著者はKB細胞移植ヌードマウス (4週齢, BALB/cA) を用いてNK-121の抗腫瘍効果および副作用の検討を行った. さらに, Peplomycin (以下, PEPと略す) との併用効果についても検討を行った.
    単独投与実験においては推定腫瘍重量が250〜300 mgになったものを, 併用投与実験については推定腫瘍重量が750〜800 mgのものを1群5匹として実験に供した. 抗腫瘍効果判定はBattelle Columbus Laboratories Protocolの判定基準に準じ, 実験開始後4日ごとに40日目まで行った. また, 副作用の指標として宿主の体重および白血球数, 赤血球数を測定した.
    結果はNK-121単独投与により著明な腫瘍の縮小を認めた. また, 体重減少は軽度であり, 白血球数, 赤血球数においても一時的な減少からの回復が認められた. PEPとの併用投与群では, NK-121単独投与群より高い抗腫瘍効果を得ることができ, 体重減少は同等の抗腫瘍効果を示す単独投与群に比べて少なかった.
    以上より, NK-121はKB細胞に対して抗腫瘍効果が高く, 副作用の少ない化学療法剤であると考える. また, PEPとの併用投与は副作用を回避しつつ, より高い抗腫瘍効果が得られる投与法と考える.
  • 池本 博之
    原稿種別: 本文
    1991 年 54 巻 6 号 p. 499-513
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2017/02/23
    ジャーナル フリー
    小児歯科臨床にキャスタブルセラミックスを応用する目的で, その摩耗性および圧縮疲労特性について検討した.
    実験方法
    1. 摩耗体積測定試験 : 歯冠修復材料の物性に関係なく摩耗量を体積変化によって評価でき, また天然歯摩耗と直接比較できる摩耗体積測定法を新しく考案し, この測定方法の有効性について検討した. 次いでこの方法を用いてキャスタブルセラミックス, コンポジットレジンと乳歯の摩耗量をそれぞれ比較した. また, キャスタブルセラミックスの色調の調整に使用されるシェーディングポーセレンが摩耗性に影響を与えるかどうかを検討した.
    2. 繰り返し圧縮荷重試験 : 咬合力計を用いて乳臼歯部における小児の最大咬合力を測定し, その結果から繰り返し圧縮荷重試験の上限負荷荷重を設定した. 次いで最高100万回まで繰り返し圧縮荷重を加えたのち, 圧縮破壊強さの測定を行い, キャスタブルセラミックスの疲労特性について計測した.
    結論
    1. 新しく考案した摩耗体積測定法は, 摩耗体積を測定するのに有用であった.
    2. 各種歯冠修復材料を摩耗量で乳歯と比較したところ, キャスタブルセラミックスが最も乳歯に近い値を示した.
    3. キャスタブルセラミックスの疲労強度は, 100万回の繰り返し圧縮荷重試験後においても小児の最大咬合力よりも高い値を示した.
  • 松野 恭久
    原稿種別: 本文
    1991 年 54 巻 6 号 p. 514-526
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2017/02/23
    ジャーナル フリー
    ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットを用いて, 糖尿病における耳下腺および膵臓の組織学的変化とその微細血管構築の変化を経時的に観察し, 類似の組織構造を有する両組織の組織学的反応の相違と, 細小血管症との関連性について検討した.
    組織学的変化として, 耳下腺では, 糖尿病発症後1週で終末部腺細胞に萎縮像が出現し, 6週ではその萎縮像はさらに著明となり, 空胞変性や脂肪変性像も認められた. 16週では, 腺細胞の空胞変性は著しくなり, 小葉間ないし葉間導管の基底細胞に著明な変性像が出現していた. 腺間質の膠原線維は著しく増殖して網目状に広がり, 全体に線維化が進行していた. 膵臓の内分泌部では, 糖尿病発症後1週で, 膵島全体が萎縮像を呈し, 特にβ細胞に著しい萎縮像を認めた. 発症後16週では膵島は痕跡程度となり, 外分泌部では膵島周囲から萎縮像が拡がっていた. また, 腺房中心細胞のみに萎縮像が認められた.
    微細血管構築については, 耳下腺では糖尿病発症後1週ではほとんど変化は認められず, 6週で腺房に分布する毛細血管網は粗い網目へと変化し, 16週で導管に分布する毛細血管網も次第に粗くなっていた. 膵臓では, 糖尿病発症後1週で内分泌部の毛細血管網は急激に縮小し, 16週ではほとんど消失した. 外分泌部の腺房に分布する毛細血管網は粗となったが, 導管に分布する毛細血管に変化は認められなかった.
    以上の結果, ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットにおける初期の組織学的障害と細小血管症は, 最初膵臓内分泌部に出現し, 次いで耳下腺, その後膵臓外分泌部の順に発現し, また, 類似の組織構造を有していてもインスリン依存性は異なることが明らかとなった.
  • 江頭 勝, 成川 公一, 藤井 弁次
    原稿種別: 本文
    1991 年 54 巻 6 号 p. 527-530
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2017/02/23
    ジャーナル フリー
    6∣^^-の近心根は再三の根管治療にもかかわらず治癒不全な根突病巣を有していたので, ヘミセクション後抜去した. 抜去された近心根は固定性架工義歯で修復した. 支台歯である5∣^^-はparallel pinオンレーで, 6∣^^-遠心根は全部鋳造冠で修復した. 20年後, 患者は5∣^^-に咬合痛を訴えて来院した. エックス線診査によって当該歯には歯根膜空隙の拡大が認められた.
    ヘミセクションの臨床的成否の鍵は, 根分岐部における切断位置に大きく左右されることが判った. 切断位置は保存する根にできるだけ近く設定する必要がある。
大阪歯科学会例会抄録
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