歯科医学
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55 巻, 3 号
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  • 川崎 圭介
    原稿種別: 本文
    1992 年 55 巻 3 号 p. 205-218
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー
    総義歯の咬合干渉が義歯の機能時動揺にどのような影響を及ぼすかを知る目的で本研究を行った.
    5名の総義歯装着者について, 下顎総義歯の前歯部, 第一小臼歯部, 第二大臼歯部にそれぞれ咬合干渉を付与し, 咬みしめ時とカマボコ咀嚼時の上顎総義歯の動揺を分析した. 動揺の記録は田中に準じ, 上顎総義歯正中部に設置したマグネットの移動をMKG-K6ワイドセンサ (Myotronics社製) で3次元的に行った. 記録の計測は, 下顎安静位から軽く咬頭嵌合させた位置を原点として, 最大移動量と復位位置について行い, 干渉付与前の義歯を対照として検討し, 次の結果を得た.
    1. 咬みしめ時の動揺について
    1) 前歯部咬合接触の付与によって, 義歯の上方への移動量は増加したが, 側方移動量は減少し, 復位位置は原点に近づいた.
    2) 第一小臼歯部干渉の付与によって, 義歯の上方, 前方への移動量は大きく影響されなかったが, 側方移動量は増大した.
    3) 第二大臼歯部干渉の付与によって, 義歯の上方, 前方への移動量は減じた. 一方, 側方移動量は増加し, 義歯の水平的回転傾向が推察された.
    2. 咀嚼時の動揺について
    1) 前歯部咬合接触の付与によって, 義歯の上方, 前方への移動量はわずかに減少し, 復位位置は, 原点に近づいた. しかし, その影響は咬みしめ時に比べて小さかった.
    2) 第一小臼歯部干渉の付与によって, 干渉側咀嚼時に上方への移動量は著しく減少したが, 前方, 側方移動への影響は小さかった. 一方, 復位位置は原点よりも後下方となり, 義歯の脱離傾向が推察された.
    3) 第二大臼歯部干渉の付与によって, 干渉側咀嚼, 非干渉側咀嚼ともに, 義歯の上方, 前方への移動量は減少した. とくに非干渉側咀嚼では, 上方移動量の減少と復位位置の後下方位が著明で, 干渉を支点とした回転運動に伴う義歯の脱離現象が推察された.
  • 西川 久義
    原稿種別: 本文
    1992 年 55 巻 3 号 p. 219-232
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー
    咀嚼運動時ならびに咀嚼圧発現時の外側翼突筋下頭の働きを明らかにすることを目的とし, 成人男性8名について, 右外側翼突筋 (Lpt), 右咬筋 (Mm), 右側頭筋前部 (Ta) および右側頭筋後部 (Tp) の筋活動, ならびにMKGを用いた切歯部下顎運動を同時記録し, 筋活動と下顎位との時間的関係を詳細に分析した. その結果, 以下のことが明らかになった.
    1. 咀嚼1ストローク中のLpt筋活動時間の占める割合は, working sideで69.0%, balancing sideで61.6%であった.
    2. Working sideの開口相では, Lpt筋活動は最大開口位まで持続せず, 最小12 msecから最大81 msec以前に消失した. この筋活動の抑制は咀嚼側への下顎の側方移動に関連すると考えられる.
    3. Balancing sideのLptの筋活動は, 最大開口位を越えて閉口相初期まで, 最小4 msecから最大62 msecの継続があった. この筋活動は閉口筋と協調した閉口相初期の下顎側方移動に関連すると考えられる.
    4. Working sideの閉口相終末から咬合相の初期にかけてLptの筋活動は, 8名中6名に認められた. この筋活動はMm, Ta, Tpとの協調活動としての下顎のstabilizerとしての役割, および咀嚼終末相での顆頭の前内方への移動にmediotrusionとして関与する役割が考えられる.
    5. Working sideの咬合相では, Mmの活動消失後の咬合相後半にLptの強い筋活動が認められた. この活動は前側方咬合圧の発現と関連するものと示唆される. 6. 咀嚼時のLptの筋活動パターンは各被験者で異なり個人差が強かった.
    以上から, ヒト外側翼突筋の咀嚼中の筋活動は, 開口時の下顎の下方移動と側方移動, また閉口相初期の側方移動に関連し, 咀嚼運動の形成に大きな役割を果たしていた. また, 咬合相後半の活動から, 水平的咀嚼力の発現にも関連していることが示唆された.
  • 中川 雅夫, 池尾 隆
    原稿種別: 本文
    1992 年 55 巻 3 号 p. 233-255
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー
    私たちの講座で維持・繁殖させている老化促進モデルマウスのSAM-R/1系 (SAM-R/1//Odu) とSAM-P/8系 (SAM-P/8//Odu) マウスを用いて身体発育と初期行動発達の過程について調査し, その相互の関連および他系統マウスとの比較から, この両系統マウスを行動科学的に捉え考察を加えた.
    両系統とも19〜20リッターの産仔124〜178匹を対象に, 生後0〜21日目の身体発育について調査した結果,
    1. 体重の変化や体重増加率には, 両系統間で差がなかった.
    2. 耳介展開, 発毛, 切歯萌出および開眼の外形分化時期は, SAM-R/1//Oduで2.9, 8.3, 10.1および13.7日, SAM-P/8//Oduでは3.3, 8.3, 10,3および14.3日であった.
    両系統とも10〜11リッターの産仔25〜39匹を対象に, 反射・運動に関する19項目, negative geotaxis testおよびbar holding testを指標として初期行動発達過程について調査した結果,
    1. 両系統の初期行動発達過程は4期に大別できた.
    2. 第I〜III期の反射を中心とした過程においては, 両系統間に大きな差がなかった. 一方, 第IV期では, SAM-P/8//Oduで全身性の協応運動能力が劣っていた.
    3. SAM-P/8系マウスでは生後8週齢で学習・記憶障害を発症することから, この両系統間の差異は母性行動の変化に起因することが示唆された.
    以上の結果より, SAM-R/1系およびSAM-P/8系マウスの身体発育は両系統間で大きな差がなく, 他系統マウスとほぼ同様の経過をたどるが, SAM-P/8系マウスのもつ特有の行動変化の端緒は行動発達の初期過程にあり, 乳仔期の発育・発達過程における母獣の果たす役割の重要性が明示された.
  • 吉野 修史, 福島 久典
    原稿種別: 本文
    1992 年 55 巻 3 号 p. 256-268
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー
    Streptococcus oralis strain 2705から周毛性の線毛を分離精製した. 線毛は, Waring blenderによる機械的剪断, ammonium sulfateによる塩析, sucrose gradientによる遠心分離で精製した. 電顕では, 精製線毛は線維状構造物の凝集像として観察された. また, Sepharose CL-6Bを用いたゲル濾過では, void volumeに続いて単一ピークとして溶出された. さらに, 免疫電気泳動の結果, 単一の沈降線が観察された. したがって, 本線毛は, 形態学的, 免疫学的に, また, 分子量においても均一であると考えられる. SDS-PAGEの結果, 線毛は14 kDa付近に単一バンドとして確認された. また, Western blotでは, 精製線毛はSDS-PAGEで得られたバンドと同じ位置で明瞭な発色を示した. それゆえ, 本線毛は, 14 kDaのモノマーで構成されていると考えられる. Colony immunoblotでは, 精製線毛に対する抗血清とstrain 2705の間には明瞭な発色が認められたが, type Aの線毛を有する他のStreptococcus oralisでは認められなかった. したがって, Streptococcus oralisには, 抗原性の異なる周毛性線毛が存在すると考えられる.
  • 佐々木 好明, 福島 久典
    原稿種別: 本文
    1992 年 55 巻 3 号 p. 269-282
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー
    唾液と歯垢構成細菌のβ-lactamase, DNase, lecithinase, hyaluronidase, chondroitin sulfatase, trypsin, collagenase, lipase, chymotrypsin活性および粘性物質産生性を検討した. β-LactamaseとDNase活性は分離細菌の約4%にみられた. 一方, 比率は低いが, chymotrypsinを除く他の酵素あるいは粘性物質産生菌も認められた. β-Lactamase, DNase, hyaluronidase, lecithinaseおよびchondroitin sulfatase産生菌の中では, Prevotellaが優位を占めた. Trypsin産生菌としてはCapnocytophagaPorphyromonas gingivalisが分離された, Collagenase産生菌としてはPorphyromonas gingivalisのみが分離された. これらの結果は, 唾液や歯垢構成細菌が歯性感染症の増悪化へのポテンシャルをもっていることを示唆している.
  • 中谷 祐子, 福島 久典
    原稿種別: 本文
    1992 年 55 巻 3 号 p. 283-293
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー
    Prevotella intermedia strain 17は, 培養上清に存在するcell-freeの粘性物質と細胞表層と関連するcell-boundな粘性物質とを産生する. Prevotella intermedia strain 17から両粘性物質を分離精製し, 物理化学的性状および化学構造について検索した. 電子顕微鏡では, 両粘性物質とも微細な線維状構造が互いに絡み合っている像として観察された. 熱, pHおよび酵素に対する感受性は, 両物質ともきわめて類似していた. 両物質はいずれも中性糖からなり, uronic acid, hexosamineあるいはタンパク質は含まれていなかった. また, 両物質はgas liquid chromatographによる溶出パターンは類似しており, いずれもmannoseとglucose比は5 : 1であった. それゆえ, Prevotella intermedia strain 17によって産生されるcell-freeとcell-boundな粘性物質は同一物質であると考えられる. 100℃の加熱で, 両粘性物質とも粘性は消失した. 電顕観察では, 数本の長い線維状構造物が直線的に伸びており, 線維が絡み合った像は認められなかった. それゆえ, 粘性物質の粘性は, 個々の線維状物質の絡み合いによると推測される.
大阪歯科学会例会抄録
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