歯科医学
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59 巻, 4 号
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  • 倉阪 雅巳, 田村 功
    原稿種別: 本文
    1996 年 59 巻 4 号 p. 281-291
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    ヒト頭頸部原発扁平上皮癌細胞のサイトケラチン(CK)発現をヌードマウス移植系を用いて生化学的, 免疫組織化学的に検索し, 癌の悪性度とCK1, 8, 18および19を中心としたCK分子の発現様式との関連について検討した. ウェスタンブロッティングと二次元電気泳動のべプチドマップから, 高分化型ヒト歯肉癌ヌードマウス移植系(GK-1)ではCK1, 5, 6, 8, 10, 11, 14, 18および19を, ヌードマウス移植系で低分化型を示すKB細胞(KB-N)ではCK5, 6, 7, 8, 10, 13, 14, 17, 18および19を発現し, さらに, CK18および19は分子サイズに多様性を伴うことが明らかとなった.
    これらのCK分子を免疫組織化学的に検索したところ, GK-1では, CK1, 5, 6, 10および14に対する反応がKB-Nより強く, KB-Nでは逆にCK8, 18および19に対する反応が強く, その範囲も広かった. またGK-1のCK8は胞巣内辺縁部の癌細胞で, また, CK19は大きい癌胞巣内のほとんどすべての癌細胞でそれぞれ強陽性の反応を示した.
    これらの結果は, CK1, 8, 18および19の発現およびCK18および19タンパク分子の化学的修飾がヒト頭頸部原発扁平上皮癌の悪性度と関連することを示唆するものである.
  • 菊池 優子, 清水谷 公成, 古跡 養之眞
    原稿種別: 本文
    1996 年 59 巻 4 号 p. 292-300
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌に対する放射線治療は, 根治性と同時に形態や口腔機能を温存し, 生活の質を良好に保ちうる治療法である. その反面, 放射線治療後の唾液腺機能障害による口内乾燥, 嚥下障害および放射線う蝕などが多く発症することも事実である.
    欧米では頭頸部領域の悪性腫瘍に対する放射線治療前, 治療中および治療後の口腔管理については配慮が行き届き, フッ化物の臨床応用が盛んに行われている. しかしながら, わが国ではこの点については依然として後進国である. 本研究は放射線治療後の頭頸部癌患者に対して, フッ化物利用が重篤な放射線う蝕の増加を抑制するか否かを検討したものである.
    対象患者は1990年から1994年の間に本学附属病院に来院した頭頸部癌根治照射患者28例(上咽頭癌: 2例, 中咽頭癌: 0例, 舌癌: 6例)である. これらの患者に対して1995年から1996年の間にフッ素応用を試みた. フッ素の臨床応用には, 癌患者の精神面での負担増にならめよう最も手軽に行えるフッ素洗口法を選択した. 方法は各患者に, 正しいフッ素洗口法とブラッシングの指導を行い, 同時に回転パノラマX線撮影と口腔内診査によって4か月ごとにDMF指数およびOHI-Sを用いて効果を判定した.
    その結果, 28例全例のDMFT指数は, 洗口前(期間の中央値は16か月)が2.9 (18.0±8.99 から20.9±8.40, p<0.01)の上昇に対し, 洗口後4か月から1年までの上昇は0.3 (20.9±8.40から21.2±8.26, p<0.01)であった. さらにOHI-Sでは洗口前から洗口後1年までの経時変化は, 上咽頭が1.0±076から0.4±0.60, 中咽頭が0.8±0.70から0.2±0.26そして舌が1.5±1.37から0.8±0.10と顕著に下降した(p<0.001). この観察期間中にアレルギー反応を含む重篤な副作用は認められなかった.
    以上のことから, 頭頸部癌根治照射後の患者に対するフッ素洗口法は放射線う蝕を予防する面で簡易かつ効果的であると考えられた.
  • 羽竹 豊
    原稿種別: 本文
    1996 年 59 巻 4 号 p. 301-312
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    歯周病の発症と進行のメカニズムの一端を解明する目的で, 多形核白血球(PMN)およびマクロファージ(Mφ)の機能が, 歯周病関連細菌由来の Lipopolysaccharide (LPS)と, これらの細胞が存在する環境中の溶存酸素濃度の変化により, どのような影響を受けるのかを検討した.
    LPSは温フェノール・水抽出法に準じて, Porphyromonas gingivalis, Capnocytophaga ochrachea, Fusobacterium nucleatum および Actinobacillus actinomycetemcomitansより抽出, 精製したものを使用した. 各LPS標品の生物活性の指標としてエンドスペシーを用いたリムルステストを行い, Escherichia coli由来のLPSと比較検討した. また細胞培養液中の溶存酸素濃度は, 0.87, 1.35, 2.28および 3.78 ppmに調整した. PMNおよびMφは, グリコーゲンで誘導したマウス腹腔滲出細胞より分離した. これら食細胞の機能のうち遊走能と貪食能を測定した.
    PMNおよびMφの遊走能, 貪食能はともに, 濃度(2〜10 μg/mlに違いはあるものの, 各LPSにより有意に抑制された(p<0.01). この抑制の程度は, 各LPS標品のリムルステストによるエンドトキシン活性の値に比例した. また溶存酸素濃度が減少するに従って, PMNおよびMφの遊走能, 貪食能は低下し, 0.87 ppmにおいてそれぞれの機能は, 3.78 ppmと比較して有意に減表した(p<0.01).
    これらのことから, 歯周病関連細菌由来のLPSおよび細胞が存在する環境中の溶存酸素量の減少が, PMNおよびMφの機能に影響を及ぼすことが示唆された.
  • 三木 俊吾
    原稿種別: 本文
    1996 年 59 巻 4 号 p. 313-332
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    鋳造用コバルトクロム合金の加工条件が理工学的性質と生物学的性質に及ぼす影響について究明することを目的として, 鋳込温度および鋳造後の冷却速度を4とおりに変化させて成形した6種類の市販鋳造用コバルトクロム合金について, 機械的性質の測定, 破断面および金属組織の観察および主要金属元素の溶出量の測定などの理工学的性質の評価を行った. 一方で, ヒト子宮頸部由来の HeLa 229細胞を用い, ニュートラルレッド(NR)法および3-(4, 5-dimethyl thiazol-2yl)-2, 5-diphenyl tetrazolium bromide (MTT)法による細胞生存率, ストレスタンパク質(HSP 70)の観察などの細胞に対する影響を調べた. その結果, メーカー表示の液相点よりも100°C高い鋳込温度で鋳造後に空冷した条件では, 他の条件に比べて伸び以外の機械的性質が大きくなり, 一方, 伸びは250°C高い鋳込温度で鋳造後に水中急冷した条件では, 他の条件に比べて大きくなった. また, 破断面の観察では, 加工条件による破断面の相違はみられなかった. 合金間では5種類の合金で脆性破壊が認められたのに対して, ニッケル含有量が50%の合金で延性破壊でもった. 金属組織ではメーカー表示の液相点よりも100°C高い鋳込温度で鋳造後に空冷した条件では, 他の条件に比べて炭化物が多く析出しており, 連続していた. 主要金属元素の溶出量, NR法およびMTT法による細胞生存率とHSP70量では条件によって特徴を示すような一定の傾向は認められなかった. 以上の結果により, 本研究では機械的性質と生物学的性質との相関関係は認められなかった. 一方, 鋳込温度および冷却速度を変化させた場合についても, 金属組織の変化による一部の機械的性質への影響が認められたにもかかわらず, 理工学的性質あるいは生物学的性質への顕著な影響はなかった.
  • 中村 真一, 福島 久典
    原稿種別: 本文
    1996 年 59 巻 4 号 p. 333-343
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    Prevotella intermedia (P. intermedia) strain E 18の赤血球凝集因子と溶血因子の相関性を明らかにするために, 機械的剪断, 35,000 rpm, 2時間の遠心, Sepharose CL-4 Bおよび Arginine Sepharose 4Bで分離したそれぞれの活性画分の性状を検索した. その結果, ゲル濾過と Arginine Sepharose 4Bによる溶出で, 赤血球凝集活性と溶血活性のあるFB2とFC2を得た. FB2とFC2の赤血球凝集活性と溶血活性は, 熱に感受性を示し, 両画分の赤血球凝集活性は, trypsin, protease, lysozyme, β-galactosidase, β-glucosidaseおよび hyaluronidaseに感受性を示した. 一方, 両画分の溶血活性は protease処理で減少したが, 他の酵素ではむしろ増加した. とくに β-glucosidase処理で溶血活性は顕著な増加を示した. それゆえ, 赤血球凝集活性の活性部位は糖鎖に, 逆に溶血活性の活性部位はタンパクにあると考えられる. 両画分には protease, caseinase, gelatinase, chitinase, lecithinaseおよび IgG protease活性は認められなかったが, alkaline phosphatase, acid phosphatase, α-glucosidaseおよび α-fucosidase活性が認められた. 両画分の赤血球凝集活性に対するalkaline phosphatase, acid phosphatase, α-glucosidaseおよび α-fucosidaseの影響について検討した結果, α-fucosidaseによって強い阻害を受けた. したがって, 両画分の赤血球凝集活性は, 自らが産生する α-fucosidase様物質によって活性の減少がもたらされていると考えられる.
    FB2, FC2および P. intermedia strain 17の線毛を抗原として, 25 kDaのタンパク(E 18 HA)に対する抗血清とを反応させた結果, 沈降線はFB2とFC2との間にのみ認められた. それゆえ, FB2とFC2は共通する epitopeを含むが, P. intermedia strain 17の線毛性赤血球凝集因子と P.intermedia strain E 18の非線毛性赤血球凝集および溶血因子は, 抗原性が異なる因子であるといえる.
  • 仲尾 峰泰, 辰巳 浩隆
    原稿種別: 本文
    1996 年 59 巻 4 号 p. 344-355
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    MRCNSの多様な表現形質を遺伝的に明らかにするため, MRCNSを DNA-DNA hybridizationで同定し, それぞれの菌株の chromosomal DNA, mec A 遺伝子, plasmid DNAおよびphage誘発性を検索した.
    その結果, DNA-DNA hybridizationによる同定では, 供試菌の60%が S. epidermidisであった. PFGE による chromosomal DNAの分析では, 14 genotypeに分類され, そのうち, 12株の S. epidermidisは, 9 genotypeに分かれた. 1株を除くすべての菌株が, mec A 遺伝子を保有していた. Plasmid DNAの分析では, 1株を除き, 全試菌が plasmid DNAを保有し, それぞれ異なった plasmid profileを示した. 供試菌の41%から phageが誘発され, 正六角形をした short head の phageが観察された. また, 供試菌の35%が, β-lactamaseを産生した.
    以上の結果から, MRSA screening agarに発育した CNS, とくに S. epidermidisは, mec A遺伝子をもち, 遺伝的に多種多様で, 外来性や内在性のDNAを容易に出し入れする可能性の高い菌種であることが示唆される.
  • 杉村 忠敬, 松本 俊郎, 稲田 篠治, 吉田 洋
    原稿種別: 本文
    1996 年 59 巻 4 号 p. 356-364
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    摘出したイスの下顎骨の下顎底を第一大臼歯の歯軸が基底面に垂直になるように超硬石膏で固定し, 第一大臼歯の舌側に取り付けたフックにボールベヤリングを使用した装置で側方荷重を加え, 第一大臼歯および下顎骨表面の変位をホログラフィー干渉法で観察した. なお, 荷重は第一大臼歯に対して頬側から90°, 頬側遠心60°, 45°および30°の方向からそれぞれ歯軸に対して60°, 45°および30°の各方向から加えた.
    第一大臼歯に対して頬側90°方向から側方荷重を加えると, 第一大臼歯には遠心部よりも近心部のほうが大きく変位していることを示す遠心上方から近心下方へ向かう直線状の干渉じまが現われた. 荷重を90°方向から遠心方向に変えるにつれて, 下顎骨を固定している超硬石膏の基底面に対する干渉じまの勾配は徐々に大きくなる傾向が認められた. このことは, 歯が回転状の変位をしていることを示している. また, 歯軸方向への荷重の角度を小さくするにつれて, すなわち, 荷重をより水平方向に変えるにつれて, 干渉じまの数は増大した. このことは, 水平方向の力は歯を著しく変位させやすいことを示している.
    一方, 下顎畳表面では第一大臼歯に対して頬側90°方向から荷重を加えたときには, 最初に第一大臼歯の歯根の先端に相当する部位に円弧状の第一干渉じまが認められた. そして, 荷重を水平方向に変えるにつれて, 第一干渉じまは歯頚部方向に移動して, 第一干渉じまが最初に認められた部位に第二干渉じまが現われた. この現象は荷重の方向を水平の方向に変えれば変えるほど著しかった. なお, 荷重を90°方向から遠心方向に変えるにつれて, 干渉じまの数は減少し歯槽頂部に集中する傾向が認められた.
大阪歯科学会例会抄録
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