ヒト頭頸部原発扁平上皮癌細胞のサイトケラチン(CK)発現をヌードマウス移植系を用いて生化学的, 免疫組織化学的に検索し, 癌の悪性度とCK1, 8, 18および19を中心としたCK分子の発現様式との関連について検討した. ウェスタンブロッティングと二次元電気泳動のべプチドマップから, 高分化型ヒト歯肉癌ヌードマウス移植系(GK-1)ではCK1, 5, 6, 8, 10, 11, 14, 18および19を, ヌードマウス移植系で低分化型を示すKB細胞(KB-N)ではCK5, 6, 7, 8, 10, 13, 14, 17, 18および19を発現し, さらに, CK18および19は分子サイズに多様性を伴うことが明らかとなった.
これらのCK分子を免疫組織化学的に検索したところ, GK-1では, CK1, 5, 6, 10および14に対する反応がKB-Nより強く, KB-Nでは逆にCK8, 18および19に対する反応が強く, その範囲も広かった. またGK-1のCK8は胞巣内辺縁部の癌細胞で, また, CK19は大きい癌胞巣内のほとんどすべての癌細胞でそれぞれ強陽性の反応を示した.
これらの結果は, CK1, 8, 18および19の発現およびCK18および19タンパク分子の化学的修飾がヒト頭頸部原発扁平上皮癌の悪性度と関連することを示唆するものである.
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