歯科医学
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62 巻, 2 号
選択された号の論文の28件中1~28を表示しています
  • 池田 直也, 内田 愼爾, 井上 宏
    原稿種別: 本文
    1999 年 62 巻 2 号 p. 77-89
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    バイトプレート上における咬合接触状態の変化が,開閉口運動と開閉口筋活動に及ぼす影響を観察するため,下顎両側臼歯部歯列を覆う実験用バイトプレートを作製し,上顎臼歯部の左右機能咬頭を8点接触させるよう調節した(AL).この状態からバイトプレート上の咬合接触点を7__-6__-5__-∣5__-6__-7__-,7__-6__-∣6__-7__-,6__-∣6__-,6__-∣接触と変化させていき,各接触状態でopen-close-clench cycleを行わせた.この時の外側翼突筋下頭(Lpt),顎二腹筋削腹(Dig),咬筋(Mm)からの筋電図を,MKG下顎切歯点運動とともに記録し,下顎運動とEMGの時間的要素,筋活動要素,開閉口経路,閉口時終末顎位の分析から,次のような結果を得た. Cycle time,各筋のdurationおよびintervalは,おおむね咬合接触の減少とともに短縮した.平均開口加速度はAL接触から6__-∣6__-接触まで有意に増加したが,6__-∣接触で再び低下した.変異係数(CV)の観察では,cycle timeのCV値には接触点の変化による変動が見られなかった.durationのCV値は,開口筋,MmともにALでは低い値を示し,接触点が変わると変動したが,その傾向は筋間で異なった.積分値は開口筋,Mmとも接触点の減少により低下する傾向を示した.開閉口経路は,接触点の変化により変化しなかった.切歯点の閉口時終末点平均値は,接触点の変化によって,左右,前後方向とも有意に変動しなかったが,そのばらつきを示す標準偏差(SD)は,6__-∣接触時に他の接触条件に比べて左右方向で有意に増大した. 以上の結果より,AL接触は開閉口リズムは遅いものの規則性に優れており,接触点の減少によって開閉口運動に要するエネルギーは少なくなり,開閉口速度は速くなるがリズム性は乱れる可能性が示唆された.特に片側性の接触では,リズムばかりでなく,終末顎位にも影響を及ぼすことが示された.
  • 米田 修, 梅原 久範, 堂前 尚親
    原稿種別: 本文
    1999 年 62 巻 2 号 p. 90-97
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    Chemokineは白血球の遊走能を増強させるcytokineとして発見されたが,その後遊走能のみならずT細胞,マクロファージやNK細胞を活性化し,慢性炎症性疾患や自己免疫疾患および臓器移植時の拒絶反応などに関与することが明らかになってきた.NK細胞の抗腫瘍細胞殺傷能を利用して,NK細胞とIL-2などのcytokineとの併用による養子免疫療法が試みられているが,重大な副作用として出現する血管内皮細胞傷害に基づくvascular leak syndrome (VLS)が治療上の隘路となっている.今回われわれは,血管内皮細胞上に発現するfractalkineのNK細胞活性に及ぼす影響について検討し,以下の結果を得た.NK細胞は細胞表面上に発現したfractalkine receptorを介して固相化したfractalkineに接着し,また,NK細胞からのBLTE esterase放出量は固相化したfractalkineにより増加しており,脱顆粒の亢進によるNK活性の増強が示唆された.次に,血管内皮細胞株であるECV 304細胞(control-ECV)にfractalkineを遺伝子導入したfractalkine-ECV細胞(fractalkine-ECV)を作製し,NK細胞との接着能および細胞傷害能を検討した.これらの細胞とNK細胞の接着は,control-ECVと比較してfractalkine-ECVで増加しており,また,fractalkine-ECVとの細胞接着増強は抗LFA-1抗体によるブロックに対しては抵抗性であったが,可溶型fractalkineによって有意に低下した.さらに,fractalkine-ECVはcontrol-ECVに比べてNK細胞の細胞傷害に対する感受性が亢進している結果も得た.以上より,fractalkineはNK細胞に対して接着分子として機能すると同時に細胞傷害活性をも増強させることが明らかとなった.炎症局所においては,血管内皮細胞上に発現されたfractalkineによりNK細胞が活性化を受けて血管内皮細胞を傷害している可能性が示唆された.
  • 川崎 弘二, 阪本 充, 重松 芳樹, 鈴木 一, 村田 省三, 井上 富夫, 奥村 紀子, 土居 貴士, 神原 正樹
    原稿種別: 本文
    1999 年 62 巻 2 号 p. 98-104
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    液膜落下法(特許第2782502号)は非破壊の状態で,固体表面に吸着したタンパク質表面のぬれ性状を測定することが可能である.吸着タンパク質表面のぬれ性状はバルク濃度,吸着媒の表面処理などのファクターにより大きく変化するが,液膜落下法は定性分析法であるため吸着タンパク質量と吸着タンパク質表面のぬれ性状の関係については明らかでない.そこで,X線光電子分光測定定装置を応用し,窒素のスペクトル面積の変化から,酸性フッ素リン酸(APF)溶液処理ハイドロキシアパタイト(HAp)上に吸着したヒト血清アルブミン(HSA)量とそのぬれ性状の関係について検討した.その結果高濃度HSA溶液に浸漬した場合,HApのAPF処理にかかわらず,吸着量は吸着処理時間とともに増加することがわかった.低濃度HSA溶液に浸漬した場合,吸着量はゆるやかな増加傾向を示したが吸着量は少なかった. 以上のことから,HApにHSA溶液による吸着処理を行った場合,吸着タンパク質量と吸着タンパク質表面のぬれ性状は比例関係にないことが明らかになった.それは,HApのAPF処理によってHApの表面性状が異なり,吸着タンパク質が大きくコンホメーション変化を起こしたためと考えている.
  • 田村 功, 山形 栄二, 奥田 裕司, 有山 金一郎, 畑下 芳史
    原稿種別: 本文
    1999 年 62 巻 2 号 p. 105-110
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    ラット顎下腺のサイトケラチン(CK)発現に及ぼすビタミンA欠乏の影響を生化学的に追究した.ビタミンA欠乏飼料で飼育した実験群ラットでは,対照群ラットに比べて飼育後6週から7週にかけて体重増加の抑制が起こり,顎下腺の湿重量,乾燥重量,組織乾燥重量あたりの総タンパク質量,および血清レチノール結合タンパク質量は低下傾向を示し,組織乾燥重量あたりのDNA量は増加傾向を示した.イムノブロッティングと二次元電気泳動のペプチドマップから,実験群および対照群のラットとも顎下線細胞はCK5,7,10,13,14,15,17,18および19を発現していることが確認された.これらのCKのうち,実験群ラットの顎下腺ではCK14,15,および19が対照群よりも明瞭に検出された. これらの結果から,ビタミンAの欠乏によって顎下腺細胞に重層上皮化の起こっていることが示唆された.
  • 高橋 一也, 小野 圭昭, 権田 悦通, 羅 建平, 兪 偉, 叶 少波
    原稿種別: 本文
    1999 年 62 巻 2 号 p. 111-118
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    補綴臨床での無歯顎患者の機能回復を診査する項目の一つに咬合力がある.有歯顎者の咬合力に関する研究は従来から数多く行われているが,総義歯装着者の咬合力の発現に影響を与えている因子については,顎堤形態が大きく関与していると経験的に考えられるものの,未だに解明されていない. そこで今回,無歯顎患者の咬合力の発現に影響を与えている顎堤形態の因子を明らかにすることを目的として,ロードセルを用いて総義歯装着者の咬合力の測定と非接触型高速3次元曲面形状計測装置を用いて顎堤形態を計測した. その計測データをもとに,上海第二医科大学口腔医学院口腔修復科来院患者と大阪歯科大学附属病院歯科補綴第一科来院患者との上下顎の顎堤形態の比較ならびに,咬合力発現に影響をおよぼす因子の検討を行った. その結果,顎堤形態因子が咬合力発現に影響を及ぼしている可能性が示唆された.
大阪歯科学会例会抄録
  • 高津 兆雄
    原稿種別: 本文
    1999 年 62 巻 2 号 p. 119-120
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    We evaluated the effect of administration of fibrinolysin (Elase ointment) and an antibiotic (Periocline^<<【○!R】>>) in periodontal pockets. Each patient received the following treatment: scaling alone at one site (group A), Elase^<【○!R】> administration four times at one week intervals at a second site (group B), Periocline^<【○!R】> administration four times at one week intervals at a third site (group C), and Elase^<【○!R】> administration four times at one week intervals in combination with Periocline^<【○!R】> at a fourth site (group D). Clinical and microbiological evaluations were performed before treatment as a baseline and one week after completion of treatment. All groups showed improvement over the baseline. Counts of viable organisms, anaerobes and black pigmented gram-negative anaerobic rods improved in all groups after treatment compared with the baseline.
  • 村上 浩孝, 内橋 賢二, 吉田 洋
    原稿種別: 本文
    1999 年 62 巻 2 号 p. 120-122
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    We examined the relationship between E-cadherin (E-CD), protein kinase C (PKC) and assembly of the tight junction (Tj) in rat submandibular gland acinar cells using male Wistar rats weighing 250 to 300g. Several infusion mediums were injected into the oral opening of the main duct of the submandibular gland. The junctional complex of the acinar cells was double-labeled with anti-E-CD antibody and anti-ZO-1 antibody, which is anantibody for the first known protein component of the Tj. When Ringer's solution was injected in the duct, E-CD labels were highly concentrated at the adherens junction (Aj), and the Tj zone was exclusively labeled by ZO-1. In addition, the Tj was impermeable to microperoxidase. Evidently, the two proteins were not intermixed. Neither intraductal injection of anti-E-CD antibody solution nor stimulation by carbachol produced labels for ZO-1 at the Tj zone, although these proteins were occasionally intermixed at the Aj zone. In these cases, the Tj was permeable to microperoxidase. In traductal injection of anti-E-CD antibody solution with PKC agonist, resulted in a high concentration of E-CD labels in the Aj zone, while the ZO-1 was labeled exclusively in the Tj zone. We found that the Tj was impermeable to microperoxidase. These results suggest that E-CD plays a major role in mediating intercellular physical adhesion, and that PKC may be active in signaling the pathway activated by E-CD-mediated cell-cell adhesion. In addition, PKC agonist triggers the translocation of preformed Tj subcomplexes.
  • 米田 修, 梅原 久範, 堂前 尚親
    原稿種別: 本文
    1999 年 62 巻 2 号 p. 123-124
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    Chemokines were initially reported as chemoattractant cytokines synthesized at inflammation sites and have been shown to induce leukocyte activation in various diseases. We have investigated the effects of a novel chemokine, fractalkine on NK cell activity. NK cells expressed fractalkine receptors and adhered efficiently to immobilized fractalkine. Immobilized fractalkine enhanced NK cell granular exocytosis in a dose-dependent manner. NK cells exhibited increased adherence and enhanced NK cytolytic activity against fractalkine-transfected endothelial cells compared with control endothelial cells. These results suggest that fractalkine may play an important role in NK cell-mediated endotheilal damage, leading to vasculopathy and organ failure.
博士論文内容要旨および論文審査結果要旨
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