歯科医学
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62 巻, 4 号
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  • 壺内 建行
    原稿種別: 本文
    1999 年 62 巻 4 号 p. 179-195
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    人為的な歯の移動により惹起される歯根吸収の発現部位に関して, 圧迫側歯根面についての報告はみられるが、牽引側歯根面における報告は少ない.そこで, 本研究では, ラットの上顎第一臼歯の牽引側歯根面に注目し, その歯根吸収像を光顕的に観察し, さらに細胞接着分子であるvitronectinの局在について免疫組織化学的に観察した.歯の移動は, Waldo法に準じ, ゴム片(A群(32匹):1×1×0.65mm, B群(32匹):1×1×1.0mm)をラットの左側第一臼歯および第二臼歯部に挿入し, 右側臼歯部は未処置のまま対照群とした.1, 3, 5, 7日後にHE染色とトルイジンブルー染色, ならびにデキストランポリマー法によるvitronectinの免疫染色を行った.ゴム片挿入後, 1日目および3日目の実験群では, A・B群とも牽引側歯根表面にvitronectinの局在は確認できなかったが, 歯槽骨面では破骨細胞によるびまん性ならびに穿下性吸収像が認められた.5日群および7日群の牽引側歯根表面では, 破歯細胞と考えられる多核巨細胞が見られ, その周辺部にvitronectinの局在を認めたが, 7日群では5日群と比較し, vitronectinの局在は歯根表面の広い範囲に及んでいた.対照群では, A・B群とも全観察期間を通じて, vitronectinの局在は認められなかったが, 歯槽骨面では破骨細胞によるびまん性の骨吸収像が認められた.A・B群ともにvitronectinの局在に関して著明な差は認められなかったが, 歯根吸収は, わずかにB群のほうがA群よりも強く認められた.本実験では, 5日群よりも7日群において, 牽引側歯根面で歯根吸収像およびvitronectinの局在が広範囲に認められた.以上より, 牽引側歯根面でも, 破歯細胞がvitronectinを介在して歯根表面に接着し, かつ歯根膜線維が伸展されることで歯根吸収が進行していくと考えられた.また, 牽引側歯根面におけるvi-tronectinの局在は, 矯正力の大きさよりも矯正力の作用時間による影響を強く受けいることが示唆された.
  • 古玉 克平, 佐久間 泰司, 加藤 裕彦, 田村 仁孝, 森 尚美, 岡 正樹, 吉川 洋史, 上田 裕
    原稿種別: 本文
    1999 年 62 巻 4 号 p. 197-200
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    われわれはマイクロダイアリシス法を用い, 前頭皮質のドーパミン代謝にミダゾラムが及ぼす影響について検討した.体重200〜280gのSprague-Dawley系雄性ラットを全身麻酔のあと, 前頭皮質に相当する部位にガイドカニューレを固定した.次に頸部の皮膚を切開剥離して外頸静脈を露出させ, 小動物用ディスポシーベルキットを留置して静脈路を確保した.さらに電気刺激を与えるために, 眼窩下神経の支配領域にあたる左側上唇部に極間距離2mmの双極釣針電極を埋め込み, 皮下を通しまとめて後頸部より露出させた.実験は手術後1週間飼育したのちに行った.前頭皮質のドーパミンの測定はマイクロダイアリシス法を用い, 高速液体クロマトグラフィーでドーパミン量を測定した.実験群をA群(侵害刺激のみを与えた群)とB群(侵害刺激に加えてミダゾラムを与えた群)に分けた.A群は刺激直後よりドーパミン量が増加し, 電気刺激20分後には170%, 60分後には261%まで上昇し, そのままプラトーとなった(20分後, 60分後, 120分後で有意差があった).これはラットが覚醒しているために, 疼痛, ストレスや不安により引き起こされた変化ではないかと考えられた.一方, B群は刺激後よりドーパミン量が減少し, 電気刺激20分後には84%, 60分後には63%となり, そのままプラトーとなった(60分後, 100分後, 120分後で有意差があった).両群間を比較すると, コントロールを除くいずれの側定点でも, A群がB群よりも有意に高い値を示した.この原因として, ミダゾラム投与により不安やストレスが軽減されることにより, 上昇が抑制されたのではないかと考えられた.
  • 高津 兆雄
    原稿種別: 本文
    1999 年 62 巻 4 号 p. 201-211
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    歯周疾患治療における, 線維素溶解酵素剤(エレース軟膏®)と局所抗生物質軟膏(ペリオクリン®歯科用軟膏)との併用による有用性を知るために, 臨床的および細菌学的に検索した.臨床的検索では, 実験開始前にプラークコントロール, スケーリングを行ったのち, コントロール群, エレース軟膏®単独投与群, ペリオクリン®単独投与群, エレース軟膏®とペリオクリン®併用投与群の4群を設定し, 投与前後の種々な臨床パラメータを比較した.細菌学的検索では, 投与前後に4群の歯周ポケットから細菌を分離し, 総菌数と黒色色素産生嫌気性グラム陰性桿菌(BPNAR)数および全コロニー数に対する偏性嫌気性菌とBPNAR数の割合を比較した.さらに, 臨床分離菌株に対する塩酸ミノサイクリン単独群およびエレースと塩酸ミノサイクリンとの混合剤の最小発育阻止濃度(MIC)を測定した.その結果, エレース軟膏®とペリオクリン®の併用投与群は他の実験群に比較して, すべての臨床パラメータ, 総菌数, 偏性嫌気性菌の割合, BPNAR数およびBPNAR数の割合において, 強い減少傾向を示した.また, 臨床分離菌株に対するMIC検索で, エレースと塩酸ミノサイクリンとの混合剤のMICは, 塩酸ミノサイクリン単独群より低濃度に推移した.これらの結果から, エレース軟膏®とペリオクリン®の併用はペリオクリン®単独使用よりも有効であることが示唆された.
  • 井上 博
    原稿種別: 本文
    1999 年 62 巻 4 号 p. 212-220
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    炎症歯周組織にはT細胞やNK細胞等のリンパ球浸潤を認め, 局所的免疫反応が歯周疾患の発症と進展の要因であると考えられる.今回, IL-2依存性ヒトNK様細胞株であるNK3.3細胞を用いて, NK細胞増殖に及ぼすCD2刺激とIL-2の協調効果およびそのシグナル伝達経路について検討した.CD2架橋刺激によりNK細胞のIL-2依存性増殖が有意に増強した.CD2架橋刺激ではSyk, Shc, Cblのチロシンリン酸化が誘導され, IL-2刺激ではShcのチロシンリン酸化が誘導された.Cblは刺激の如何に関わらずGrb2のN-末端のSH-3ドメインを介して結合していた.一方, Shcは刺激依存性にGrb2のSH2ドメインを介して結合していた.以上の結果より, CD2およびIL-2によるNK細胞活性化にアダプタータンパクが深く関わっている可能性が示唆された.
  • 前田 健生
    原稿種別: 本文
    1999 年 62 巻 4 号 p. 221-230
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    Prevotella intermedia MA 1-V2のβ-lactam薬耐性機構におけるβ-lactamaseの役割を明らかにするために, ペリプラズム間隙中β-lactamase活性の阻害と, 菌の増殖および最小発育阻止濃度(MIC)の関係, 外膜透過性障害および薬剤の排出について検討した.ペリプラズム間隙中β-lactamase活性は0.25〜8μg / mlの阻害剤を添加した場合, clavulanic acid (CVA)で57〜80%, sulbactam (SBT)で73〜88%およびtazobactam (TAZ)で64〜88%阻害された.また, 3種阻害剤と3種β-lactam薬(piperacillin:PIPC, cefazolin:CEZ, cefteram:CFTM)の各種組み合わせを同時に添加し, 0.5時間後に, ペリプラズム間隙中のβ-lactamase活性を測定すると80〜96%が阻害された.つぎに増殖に影響のない濃度の阻害剤(CVAとTAZ:0.5μg / ml, SBT:1μg / ml)とβ-lactam薬(PIPCとCFTM:128μg / ml, CEZ:64μg / ml)の各種組み合わせを, 前培養菌液接種3時間後に添加すると, 生菌数は全組み合わせで減少した.同濃度の阻害剤を同時に添加した3種β-lactam薬のMICは, β-lactam薬単独の場合よりも1 / 512〜1 / 16に減少した.これらの事実は, ペリプラズム間隙中の酵素活性が阻害された結果, 併用したβ-lactam薬本来の抗菌力が発揮され, 生菌数とMICの減少を引き起こしたことを示している.外膜透過性の障害は512μg / mlのethylenediamine tetraacetic acid disodium saltとPIPC, CEZおよびCFTM添加培地におけるMICを, β-lactam薬の排出はプロトンポンプ阻害剤のcarbonyl cyanide m-chlorophenylhydrazone 5μg / mlとPIPC, CEZおよびCFTM添加培地で生菌数をそれぞれ測定して検討した.その結果, MICおよび生菌数の減少は認められなかった.以上の結果から, 本菌株のβ-lactam薬耐性では, β-lactamaseが直接耐性に関与する最も重要な因子であると推定される.
大阪歯科学会シンポジウム
  • 岩井 康智
    原稿種別: 本文
    1999 年 62 巻 4 号 p. 233-238
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    解剖学的ならびに生物学的な立場からみると, ヒトの系統発生および個体発生における総合咀嚼器官の進化または退化には, 環境因子が深く関与している.一方, 正常咬合は総合咀嚼器官が正常に機能するための重要な要件とされている.咬合の静態と動態, 即ち形態的ならびに生理的にともに正常であることが, 形態学的立場からの理想的咬合の条件である.
  • 川本 達雄
    原稿種別: 本文
    1999 年 62 巻 4 号 p. 239-242
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    矯正歯科臨床では, 治療目標として正常咬合を認識する目的で, 咬合を考えてきた.そして初期には, 咬合というものを上下顎歯列弓が接触した状態で, 静的かつ形態的にとらえていた.なぜなら, この時代には乾燥頭蓋骨を中心とした形態人類学的研究が中心だったからである.このため, 感覚的な要素が入り込み, 研究者, 術者によって正常咬合がいくつも存在することになった.この上下顎歯列弓の噛み合わせという静的な見方も, 機能を考慮に入れはじめるとともに, 歯の咬頭接触関係, 咬頭嵌合の状態を精密に表現する必要性にせまられた.しかし, これとても咬合というものを静的にみていることには変わりなかった.その後, 歯列弓の頭蓋に対する位置が問題にされるようになり, 模型上に頭蓋の位置を記録することで, 上下顎歯列弓の咬合状態に加えて, 頭蓋に対する位置が認識されるようになった.さらに, 頭部X線規格写真の出現で, 頭蓋に対する歯列弓の位置をより広範囲に認識できるようになった.このころから, 正常咬合を表現するのに歯の咬合接触のみでは不十分であるとする考え方がでてきた.すなわち, 下顎骨の運動に関与する筋群の機能的要因に目が向けられるようになった.それと同時に, 顎関節にも目が向けられ, 下顎頭の正常位置について議論がなされた.最近では, 形態的な評価法として顎関節部のX線写真に加えて, CT, MRI等の診査器機, および精密な顎運動測定器, 筋電図などを利用して咬合に関する情報が以前とは比べものにならないくらい容易に入手できるようになっている.それでも, 咬合に関する統一見解が得られるには至っていない.というよりは逆に, 数十年前よりもむずかしくなっている.情報量が増せば増すほど, 考えなければならない要素が増えるというジレンマがここにある.
  • 前田 照太
    原稿種別: 本文
    1999 年 62 巻 4 号 p. 243-248
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    中心咬合位centric occlusionと咬頭嵌合位intercuspal positionは一般的にほぼ同義語とされており, 上下の歯列が最大の接触面積をもって嵌合したときの下顎の位置と定義されている.しかし, glossary of prosthodontic terms, 6th editionには, "中心位における咬合関係を中心咬合位といい, 下顎が中心位にあるときの上下顎対合歯間の咬合関係である.この咬合位は咬頭嵌合位と一致しているとは限らない."と定義されている.このように下顎位を表現する用語は曖昧で, とくに中心位centric relationの定義は時代とともにさまざまに変化してきた.下顎位は, 上下の歯の位置関係から表現する場合を咬合位と, 顆頭の位置として表現する場合を顆頭位(下顎頭位)と区別し, さらに神経筋系によって規定される下顎位を付け加えている.ここでいう咬合位に含まれるものが中心咬合位, 咬頭嵌合位である.顆頭位には, 中心位, 顆頭安定位, 靭帯位ligamentous positionなどがあり, 神経筋系に関連するものが下顎安静位mandibular rest po-sition, 筋肉位muscular positionなどである.これらの概要を説明し, さらに下顎が機能を営むうえで最も頻繁に用いられる重要な顎位である中心咬合位についてその補綴学からみた定義, その顎位の意味するものを考察した.
  • 田中 昌博
    原稿種別: 本文
    1999 年 62 巻 4 号 p. 249-252
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    下顎位の中でも, 咬頭嵌合位は, 習慣性閉口および咀嚼運動の終末位であり, 機能的に最も重要であると考えている.咬頭嵌合位での咬合接触状態について, われわれはブラック・シリコーンによるadd画像法ならびにT-Scanシステムから客観的に研究してきた.その結果, 健常者から得た咬頭嵌合位での正常咬合の基準を, 以下に示す.1.弱い咬みしめで, 両側のすべての臼歯に接触がある.2.強い咬みしめで, 両側のすべての臼歯に接触がある.3.弱い咬みしめでの接触位置は, 強い咬みしめでも移動しない.4.接触力が両側臼歯で均等である.5.接触時間が両側臼歯で同時である.
大阪歯科学会例会抄録
博士論文内容要旨および論文審査結果要旨
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